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立夏とふたりの野獣 1

 10, 2011 15:50
◆この話はオマケのコピー本にしようと思って書き始めた話です。
内容の詰めに時間的余裕がなくなり、コピー本への掲載を断念しましたが、1万文字程書き上がっていました。
まだゆっくり書いている余裕が無いので、この話を上げて行こうと思っています。
暫くは零時更新予定です。

タイトルから分かるように、3Pあります。
地雷の方はごめんなさい。







「先生……もう止めて下さい」
「どうして?」
「だ、だって変ですよ。僕は男なのに……こんな」
「君しかいないんだから、仕方ない。諦めた方がいいと思うよ」
「先生……恥ずかしいです。こんな……見られているし」

 相馬立夏(そうまりつか)は、佐伯慶吾に腰を掴まれた状態で、正面の椅子に座る柳川徹に目を向けた。
「俺なら構わないから、気にせずに続ければ?」
「や、柳川さん助けてくれないのですか。僕……無理です」
「目の保養だ。慶吾さっさと終わらせろよ」
「了解。ほら立夏、大きく息を吸って下腹に力入れてみて」
「痛いし、きついです。もう無理です先生……」
「もう少しだから我慢して、おい徹、見ていないで手伝えよ」

 佐伯の言葉に、徹が渋々と腰を上げ立夏の肩を抑え込んだ。
「立夏、じっとしていろよ。動くから苦しいんだ。慶吾、今のうちに一気にやれ」
「ああ、行くよ立夏」
 佐伯は、そう声を掛けるとぐいっと力を籠めた。
「あぁ……苦しい」
 涙目になる立夏の顔を徹は、にやにやして見ていた。
「立夏、綺麗だぜ」

「やっと入った!」佐伯が歓喜の声を上げた。
「あぁ苦しい……早く済ませて下さいね、先生」
「分かっているよ、ほら今度は徹の出番だよ」


 それから二時間後、立夏は半裸状態で、ぐったりとしてソファにうつ伏せになっていた。額には脂汗が滲んでいる。体を覆っているのは小さなビキニパンツだけだ。
「先生、約束通りちゃんとバイト代に上乗せして下さいよ」
「分かってるよ、五千円付けておくから心配しないで」
(二時間で五千円か……ちょっと美味しいかも)立夏はそんな事を考えていたが、まだ体は思うように動いてくれないので、横になったままだった。


「おい、立夏。二万円出すって話に乗らないか?」
「二万円!」
 立夏は上半身だけ起して、徹の方を見た。
「いい……美味しい話には何か裏があるもん。特に徹さんじゃ余計に怪しい」
「大した事じゃないさ、ただ黙って写真を撮られていればいいんだ」
「写真?」
「面白そうだね、立夏写真撮ってもらえば?」
「また変な衣装を着ろって言うんじゃないんですか?」
「心配するな、変な衣装なんか着なくてもいい」

「ちょっと、さっきから聞いていれば、何が変な衣装だよ。立派なウェディングドレスにケチ付けるつもりなのか二人とも?」
「いえいえ、素敵なドレスですよ。ちゃんとした人が着れば」
「仕方ないでだろう、モデルが急に来られなくなったのに、明日から徹が写真撮りに沖縄に行くって言うし。今日しかチャンスが無かったんだ」

「で、どうする立夏?二時間で二万円は美味しいだろう?」
「う……ん、どうしようかな?」
「時給一万円、捨てるには勿体無い話だと思うんだが?」
 徹の吐いた言葉に、立夏の目が輝いた。(時給一万円……)
「本当に、変な写真じゃないのならやってもいいけど……」
 はっきり言って、佐伯も徹も何を考えているか分からない所がある人間だ。簡単に乗る訳には行かないが、やはり今の立夏には二万円の金は、かなり魅力的だった。

 立夏は、八つ年上の姉と二人で生きて来た。その姉が来春に結婚する。まだ学生である立夏は独立をしなくてはならなかった。姉は一緒に暮らそうと言ってくれるが、結婚する姉にそこまで甘えるつもりも、甘えていいとも思っていなかった。
 立夏たちは、七年前に両親を相次いで亡くした。その時姉は二十歳になったばかりで、年の離れた弟立夏はまだ中学一年だった。その後は姉が親代わりに立夏を育ててくれた。
 そして立夏は、今その時の姉と同じ二十歳になっていた。姉からの援助と奨学金で大学にも通っている。高校までしか学歴のない姉が、男なら大学は出ておくべきと無理をして塾にも通わせてくれた。

 身内も少ないのだからと、結婚式も上げようとしない姉に立夏はウェディングドレスをプレゼントしようと決めたのだ。姉にとって最高の門出にしてやりたい、それが立夏の姉への恩返しでもあった。

 佐伯慶吾、この男が一点物のウェディングドレスを作る男だ。立夏は大学の女子に色々リサーチしてこの佐伯のドレスと出会った。女子の間では結構有名で、時々ファッション誌でも紹介されているらしい。

 立夏が電話して佐伯を訪ねたのが今から三か月前。ブランド名『慶』だったので、まさかこんな若い?男だとは思わなくて驚いた。
背は立夏よりも五センチくらい高めで、スレンダーで繊細な雰囲気の美人だ。男に美人というのも変かもしれないが、綺麗としか表現の方法が無い。だが性格は見た目や言葉使いとは違って結構男っぽかった。
 
 立夏の話に感動してくれて、喜んで引き受けてくれたが、何せ一点物のドレスは立夏には高かった。女子に聞いてある程度の値段は想像していたが、やはり直接聞いても高い……。
だけど、だからこそ姉に贈りたい。
 立夏は佐伯の元で雑用のアルバイトをする事を条件に、ドレスを作ってもらう事を約束してもらった。きっちりドレスの代金を稼げるまでは、ここのバイトの事も姉には内緒だった。

 そして、佐伯の広告用の写真を撮っているのが、繊細な写真を撮るようには見えない柳川徹。自称風景カメラマン。でも依頼が来れば何でも撮るらしい。
 徹は体格も良く185を超える大男だ。佐伯の繊細な指が綺麗なドレスを作り出すのは分かるが、この徹の武骨な指で切るシャッターからも素晴らしい写真が生まれる。

 この二人と接するようになって、立夏もクリエィティブな仕事をしたいなどと考え出したが、まだ何も見出してはいないし、何の才能も芽を出しては来ない。
 だから頑張って、アルバイトに加えて臨時で、何でもやっていた。そこから何か切欠が掴めるかもしれないと佐伯に言われ頷いたのが、事の始まりだった。



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立夏とふたりの野獣 2

 11, 2011 00:12
 今日来られなくなったモデルの代わりに、立夏がウェディングドレスを着たのも、その為だった。華奢な立夏でも流石に女性のドレスは厳しい。
 だが化粧してカツラも付けたおかげで、知っている人間に見られても立夏だとは分からないだろう。化粧は化けるという字が使われている事を納得した日でもあった。


「で、どうするんだ?」
 ソファの上でうつらうつらしていた立夏は、徹の声で現実に引き戻された。
「本当に二万円くれるの?現金で?」
「ああ、何なら前金でもいいぞ」
「前金!やるっ!」
 立夏は結局目先の現金に釣られて徹の話を受けてしまった。

 佐伯が、自分の財布から二万円抜き出して立夏に渡した。この二人は同級生だと聞いているが、それだけの関係なのか立夏は良く分かっていなかった。
「徹への払いから差し引いておくよ」
(そうか、撮影代として先生が、徹さんに払う分があるから、それでいいのか)
立夏にとっては、どうでもいい事だが、二人の間にきちんとビジネスが成り立っている事に何故か安心していた。

「場所を俺の部屋に移動しよう」
「機材はここにも揃っているのに?」
 さっき嫌がる立夏を無理矢理女装させて、ウェディングドレスの撮影を終えたばかりだ。
「ここじゃ雰囲気が出ない」徹はそう言うと、愛用のカメラを持って立ち上がった。
「慶吾、お前のガウンを立夏に貸してやって」
「あいよ」

「えー?僕このまま移動するの?」
「直ぐだろ?」何を言っているんだ?というような冷たい視線が徹から飛んでくる。
 実際、慶吾と徹はマンションのお隣さん同士だ。昨年事務所も作業場も兼用出来るような物件を二人で探し、今のマンションに落ち着いたらしかった。
 慶吾の部屋は、一番狭い部屋を寝室にして、後は打ち合わせや簡単な撮影に使っている部屋と、仕事部屋だった。慶吾は渋谷の繁華街から少し離れた場所に小さな店も持っていた。

 一方徹の部屋は、一番小さな部屋を暗室にして、後はいったい何処で寝ているのだろうか?と思うほどに全てがごちゃ混ぜになった部屋だった。
「先生、徹さんの部屋の何処に撮影に使える場所があるっていうんだろうね」
 立夏は部屋を移動しながら、慶吾の耳に小声で囁いた。
「大丈夫なんじゃないの、ベッド一つあれば……」
 慶吾の言葉の意味を聞き返す前に、徹の部屋には着いてしまう。部屋の中は相変わらず物が散乱していたが、一足先に部屋に戻った徹はベッドの上の物を放り投げていた所だった。

「ほら、立夏ここに座って」
「ベ、ベッドなんかあったんだ……」
 立夏は、ベッドに座れと言われた事よりも、ベッドそのものの存在に驚いていた。
「ほら早く。ガウンも脱いでパンツも脱げよ」
「ええっ、パンツも。じゃあ何着ればいいの?」
「着る必要は無い」
 あっさりと立夏の疑問は切り捨てられてしまった。
「も、もしかして裸の写真撮るんですか?」
「もしかしなくても分かれよ立夏」
「そんな……僕の裸なんか撮っても意味ないでしょう?胸も無いし……」

「そういう趣味の人も世の中にはいるんだから。まして立夏みたいに若くて可愛い子なら見ているだけでもいいんじゃないか?」
「慶吾さんまで……僕無理だから裸なんて誰か知っている奴にでも見られたら大変だし」
「心配するな、ちゃんとモザイクは掛けるから、体だけ見たら誰だか分からないさ」
「ふふ……立夏のなんてモザイク掛ける程立派じゃないだろう?」
 まだ見た事もないくせに、慶吾がそう言って笑っていた。
「慶吾さんまで酷い、僕……無理だからお金返します」

「立夏、違約金って知っているか?倍返し出来るのかよ立夏に」
「え……っ倍返し」
 一度財布に入った二万円が消えるだけでも気分は痛いのに、倍返しともなれば、今日無理に着たドレスのバイト代を足しても足りない。
「そんなぁ……」
「だから、脱いで黙って微笑んでいれば金になるんだ。ほらさっさと準備しろ」

 立夏に金が必要だと知っているくせに徹は容赦なかった。
(はぁ……僕だって分からなければいいか……)
 立夏は深く溜め息を吐いてから、ガウンを脱ぎ捨て下着のゴムに手を入れ、一気に足元まで下した。にやにやして眺めている慶吾と目が合って、恥ずかしくて目を逸らした。

 立夏が脱ぎ出した段階からシャッターの音が聞こえ、立夏は思わず両手で前を隠してしまった。
「先ずは、ベッドに軽く腰掛けて」
 諦めて徹の指示通りに立夏は動き始めた。ここまで来たら言う事を聞いてさっさと終わらせてしまいたかった。女性の目が無いとはいえ、やはり人前で全裸を晒すには抵抗のあるお年頃だ。

「少しだけ脚を開いて」
「両手を後ろに突いて、胸を突き出して」
「片膝を立てて、前を隠すようにして」
 次々と徹の口からは、指示が出る。立夏が動作を変えている間もシャッター音はし続ける。
「あの……徹さんって風景でしょう?どうしてこんな写真撮るんですか?」
 立夏は素朴な疑問をぶつけてみた。立夏の視線の先で慶吾が渋い顔をしていた事に気づき、立夏は内心(もしかして地雷踏んだ?)と思ってしまった。だが、もう後の祭り。

 徹の指示が徐々に立夏に大胆なポーズをとらせ始めた。
「四つん這いになって、肩で体を支えてカメラ見て」
「もう少し色気のある顔しろ」
「指で自分の乳首を抓んでみて」

「え……っ、乳首って僕男だし……」
「男でも乳首付いているだろうが、言われた通りにしろ」
 カメラを持った徹に何を言っても無駄だと諦め、立夏は言われたように自分の小さな乳首を抓んだ。
「もう少し色気欲しいな、右手はそのままで、左手でペニス握って」
「ええーっ!」
 人前に晒しているだけでも凄い事なのに、握ろとは……思わず立夏の動きが止まった。 徹が小さく舌打ちをし、立夏は一瞬息を飲んでしまった。

「おい慶吾。少し手伝ってやって」
「了解ー」
 立夏は慶吾の楽しそうな声に、徹の指示は自分の聞き間違いだったのかとさえ思ってしまった。それほどに慶吾の声には躊躇いも何も無かった。


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立夏とふたりの野獣 3

 12, 2011 00:00
 慶吾の重みでベッドが軋んだ。
「立夏」
 立夏の背後に回った慶吾が甘い声で囁きその耳たぶを舐めた。
「ああん」
 立夏は自分でも驚くような声を出してしまい、顔から火が出そうな程恥ずかしくなった。

「ちょっと先生……くすぐったいから止めて下さいよ」
「ふふ、立夏は敏感だな。手伝い甲斐があるよ」
 慶吾が何をどう手伝おうというのか、立夏には全く分からなかった。

「立夏、慶吾の事は気にしないで任せておけ。立夏は目線をカメラから外さないように、こっちを見ていて」
 徹に指示され、立夏は目線をカメラに戻した。
「あ……っ」背後から慶吾の手が伸びて来て乳首を抓った。
「おっ、いい表情だ」
 立夏の敏感な反応に徹が、満足そうにシャッターを切る。いつの間にか、慶吾の指にはオイルのような物が塗られていて、ぬるぬるした指で立夏は乳首を弄られていた。

「あぁ」その感触に、自然と声が漏れてしまい、立夏は悔しくて唇を噛んだ。
「いいね、そういう表情もそそられるぞ」どうやら、その顔は徹のお気に召したようだった。
 立夏以上に褒められ気分を良くしたのは、後ろに座る慶吾らしかった。慶吾の指に両方の乳首をじんじんする程に弄られ、立夏は少しずつ妙な気分になってきた。

「立夏勃って来たな」
 楽しそうな声と共に、慶吾の動きはテンポ良くなってきて、立夏を追い詰めて来る。
「勃ってないから……」
 いや、本当は少し固くなって来ているのは自分でも分かっていたが、立夏はそれを認めたくなかった。姉の、晴れの門出を祝うドレスを作る男に、乳首を弄られて勃起などしたら、姉に申し訳ない。立夏は、純白のドレスを穢してしまいたくはなかった。

 それから一時間余りで撮影は終了した。立夏はシャッター音に解放されるより、慶吾の手から解放された方に安堵の息を吐いた。立夏の気持ちを知らないで、穢そうとする慶吾から姉を守ったような気分だった。


「いい子だ。だけど可愛くない子だ」
 慶吾はそう耳元で囁くと、さっさと自分の部屋に帰ってしまった。慶吾に見捨てられたような気分になり、立夏は少し寂しさを覚えた。
「さあ立夏、もう帰っていいぞ。俺はこれから暗室に篭るし、慶吾はきっと飲みにでも行くだろうよ」
「は、はい……お疲れ様でした。失礼します」
 徹からも突き放されたような気分で、立夏の寂しさは一つ増えてしまう。


 姉とずっと二人きりで、男兄弟の楽しさは知らない。慶吾と徹みたいな兄がいたら楽しかったかもしれない、などと考えながら衣服を身に着けていた。

「評判良かったら、また頼むかもしれないぞ、いいか?」
 ダメと拒否しても、きっと自分は言い包められるだろうと思うから、立夏は黙って頷いた。
「じゃあ、気を付けて帰れよ」
「はい、徹さんも明日からの撮影旅行気を付けて下さいね」
 立夏がそんな事を言ったせいか、徹が少し驚いた顔を見せてから、ああとだけ答えてくれた。


 立夏は、火金土と週に3日、慶吾のマンションに通っていた。簡単な雑用で、時給千円は大学生の立夏にとっては、条件の良いバイトだ。今日みたいな余禄もあるのも嬉しい。
 だが、慶吾があと少し強く攻めていたら、自分は耐えられなかったかもしれないと思う。無事に撮影を終えた事に安堵しながら、立夏は駅へ向かう道を急いだ。夜九時を過ぎると姉の冬香が心配する。立夏が成人しても冬香にとっては、いつまでも中学生の子供と同じらしい。

 冬香はいい妻になり、いい母になるだろう。何を犠牲にしても姉には幸せになって欲しかった。
「あともう少し……」
 慶吾は通常の半値で作ってくれると約束してくれた。その金額まであと五万円。来月には資金が作れる。立夏にとって今日の臨時収入二万五千円は随分と助かったのだ。


「ただいま」
「お帰り、遅かったのね」
「うん、バイト」
「そう……あまり無理をしないでね」
 まるで親子のような、夫婦のような会話を交わしながら、立夏は遅い夕飯を摂った。

 食後、姉が剥いてくれた梨を食べていると、言いにくそうに姉が口を開いた。
「りっちゃん、明日……その……」
「明日どうかした?」
「ううん、何でもないわ。梨美味しい?」
「うん、美味しいよ。明日は原口さんとデート?」
 土曜日の夜だ、結婚が決まっている恋人同士がデートしない方がおかしい。
「う……ん、もしかしたら」
「ん?泊まってくるの?」
 立夏の言葉に姉は、顔を真っ赤にして小さく頷いた。二十八にもなって全然すれていない姉を可愛く思った。原口さんもきっとこんな所を好きになったのだろうと、立夏は嬉しかった。

「うん、たまには泊まってきなよ、僕なら一人で平気だから。つか、姉ちゃんが結婚したら必然的に一人になるんだから、慣れておかなくっちゃね」
「りっちゃん、本当に一緒に暮らさないの?」
「当たり前でしょ。どこに新婚家庭についていく二十歳の男がいると思う?」
「でも……」
「もうこの話は終わり。姉ちゃんも僕の事は気にしないで、楽しんで来てよ」
 立夏の言葉に、また姉の顔が染まる。
(あぁ……きっと最近原口さんと結ばれたのだ)姉の反応の初々しさに立夏の口元も緩む。
「僕も、明日バイトだし、土曜日だから遅くまで仕事するつもりだから、心配しないで」
「うん、りっちゃんも気を付けてね」
 きっと傍から見たら、甘ったれた姉弟関係かもしれないけど、だからこそここまで来られたのだ。

 姉は容姿からお嬢様風に見られがちだった。性格もおっとりしていて苦労しているようには見えなかった。
 でも立夏は知っていた。姉が布団の中で幾度嗚咽を漏らし、眠れない夜を過ごしていたのかを……


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昨夜気づいたのですが……
以前に「俺様な姫と二人の侍」という話を書いた事があります。
私って……3Pを書こうと思ったら、こういうタイトルしか思い浮かばないみたいです……
はぁ……、自分のセンスのなさに深く溜め息を吐いた夜でした。

立夏とふたりの野獣 4

 13, 2011 00:00
 翌日の土曜日、大学も休みなので立夏は早めにバイトに向かった。
「立夏早かったな、今日はちょっと忙しくなりそうだけど、遅くなったら冬香さんが心配する?」
「いえ、大丈夫です」立夏は、その後に姉は泊まりだという言葉を続けられなかった。
 慶吾は、姉冬香の職場を立夏から聞き、一度だけ近くで冬香を見た事があった。慶吾は、見ただけで大まかなサイズが分かると言う。あとは仮縫いの時に微調整をするだけで良いと言うのだ。

 今回は、サプライズなので、形になるまでは冬香に知られる訳にはいかないのだ。立夏とよく似ているからイメージは掴みやすいと、慶吾は言っていた。流石にプロだ。

「今日店にドレスを一着届けてもらいたいんだけど」
「店にですか、分かりました」
 立夏は一度だけ、慶吾に店に連れて行かれた事があった。分かりにくい場所でも無いので、立夏一人でも充分に事は足りる。普段は、車で店の従業員が取りに来るのだが、今日はその暇が無かったそうだ。

「十二時までに届けて欲しいんだけど?」
 立夏が時計を見ると、まだ十時を過ぎたばかりだ。慶吾の店までは余裕で間に合う。四十分もあれば着いてしまう。
「はい分かりました」
 立夏が持たされたのは、出来たばかりのドレスが入った大きな箱だ。
「落すんじゃないよ」
 揶揄するように、慶吾に言われ立夏は口を尖らせた。
「子供じゃないんだし、それにこんなに大きな荷物を落すわけがないですよ」
「ふふふ、まあ気を付けて行って来て。店には電話を入れておくから」
「はい、では行って来ます」

 多少神経質で真面目な立夏は、時間に余裕を持って慶吾のマンションを出た。時給で働いている以上は、時間を無駄にする訳にもいかない。
「あ、立夏。帰りに若葉亭の和弁当を買って来てくれないか?立夏の分も買っていいから。お金持っている?じゃあ立て替えておいてくれるか?。領収書を貰っておいて」
「はーい、じゃあ行って来ます」
 
 外に出ると、朝は晴れていたのに、少しだけどんよりとした雲が広がっていた。気になったが、立夏はもう一度戻るのも面倒に思い、そのまま駅に向かった。


 渋谷の駅に着くと、そこからは十五分程徒歩だ。電車に乗っている間に、雲行きが更に怪しくなって来ていた。何とか店までは持つだろうと、立夏は大きな箱を抱えて足を速めた。

 土曜日ともなると、渋谷の街には若者が溢れている。遊んでいる同年代の子を見ても、立夏は羨ましいとは思わない。逆に今の自分の生活の方が充実している。大学で勉強をして、バイトをして小金も稼ぎ、姉の喜ぶ顔も近いうちに見られるのだ。

 そんな事を考えながら歩いていた立夏の口元は緩んでいた。
「おい、何笑っているんだよ」
 突然の声に、立夏はそれが自分へ向けられたものだとは気付かなかった。
「おい、何シカトしてるんだよ」
 今度は声と一緒に、立夏の前に二人の少年が立ち塞がった。
「え……っ僕?」
「そう、あんた」
 自分よりも年下にしか見えない少年に、あんた呼ばわりされて立夏も眉を顰めたが、ここで揉め事を起す訳にもいかないので、とりあえず足を止めた。

「えっと……君たちを笑ったんじゃないんだ、ちょっと思い出し笑いをしていて……気分を害したのなら謝るよ」
「思い出し笑いだって!厭らしいねお兄さん」
 下手に出た立夏に少年達は態度を増長させているようだ。こんな相手に構っている暇はない。
「僕、急ぐから」
 立夏が、少年の体をかわし歩き始めた時に、一人の少年に肩を掴まれた。顔だけ見ると少年だが、その態度はいっぱしのチンピラのようだった。

「離してくれない?君たちの相手をしている時間は僕には無いから……」
 喧嘩慣れしているような、二人の少年を前にして、立夏は怖くない訳では無かったが、本当に時間が惜しいと思っていた。




 慶吾の部屋では、苛々した様子で慶吾が受話器を置いていた。
「いったい何やっているのだろう立夏は……」
 もうとっくに店に着き、慶吾の元に戻って来てもいい時間なのに、店にも着いていないらしい。慶吾は駅に電話を掛け、電車の遅れは無いか確認をしてみたが、平常運転で何のトラブルも無いとの返事だった。

 慶吾は三十分おきくらいに店に電話を入れたが、まだ立夏は姿を見せていないと言う返事に、心配は募るばかりだった。
(あのバカ何やっているのだ……)
 腕時計を見ると、もう夕方の五時を過ぎてしまった。慶吾は我慢出来ずに、車の鍵をポケットに捩じ込み部屋を出た。入れ違いになったら困ると思い、部屋の鍵は開けたままの状態で、マンションのエントランスまで下りた。


「雨か……傘も持っていないはずなのに」ひとり呟いて道路に出てみた。結構な降りようにズボンのポケットから車の鍵を取り出した。
 ふと、先を見ると立夏らしい人影がゆっくりと、マンションに向かって歩いて来る。手には出た時と同じ大きな荷物を抱えていた。

「立夏!」待ちきれないで、慶吾は雨の中人影に走り寄った。
「せ、先生。ごめんなさい」
 濡れねずみになった立夏が、出かけた時とは違うボロボロの服装と、腫らした顔で立ち止まった。

「立夏!いったい何が?」
「先生、ごめんなさい」
 立夏は、箱を胸に抱え直してただ詫びの言葉を繰り返すばかりだった。

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◇すみません、連載中の話はもう少し待っていて下さいネ^^;
今はこの立夏のストックだけなのです。落ち着いたら再開致します!◇

立夏とふたりの野獣 5

 14, 2011 00:00
「取敢えず、部屋に戻ろう」
 このままでは、二人とも雨に濡れるばかりだ。なかなか先に進もうとしない立夏の手を無理に引っ張り、慶吾は自分の部屋に戻って来た。

「先にシャワー使って来なさい。話はそれからだ」
 秋の夕刻に降る雨は、もう冷たい。冷えからなのか、立夏の体が小刻みに震えていた。
「先生、僕……」
「話は後だと言ったよな?」
「は……はい。シャワー借ります」
 慶吾は、まだ何か言いたそうな立夏を浴室に追い立てた。


 浴室からシャワーの音が聞こえる。慶吾は着替えを見繕って脱衣場に置き、立夏に声を掛けた。
「立夏、着替えここに置いておくから、着なさい」
 シャワーの音で聞こえなかったのかと思い、もう一度声を掛けるが、返事が無い。慶吾は三度声を掛けると共に浴室のドアを開けた。

「立夏!大丈夫か?」
 浴室の床に座り込んでいた立夏が、驚いたように顔を上げた。シャワーの水なのか涙なのか分からない水滴が頬を濡らしている。
 慶吾は一つ溜め息を落してから、自分も中途半端に濡れた服を脱ぎ捨て、浴室に入った。

「ほら、立てないのか?何処か痛いのか?」
「先生……」
 いや、聞かなくても立夏の顔を見れば、痛いのがよく判る。眉毛の上辺りを殴られたのだろう、目の周りまで既に青あざが浮き出ていた。唇の端も少し切れているようだが、滲んだ血はもう固まっていた。

「ここに座って」
 慶吾は、浴室の椅子に立夏を座らせ、髪を洗ってやった。簡単に背中も流してやり足も洗う。その間立夏は一言も発せずただ黙って、慶吾の言いなりになっていた。
 立夏を座らせたまま、慶吾は自分も簡単に雨の湿気を洗い流す。
 立夏の帰って来た時の様子を見れば何があったか、大体は察しがついた。

「これ飲んで」
 風呂上り立夏は、慶吾から新しい下着を貰い少し大き目のシャツと、慶吾がジョギングする時に履くジャージを着せられた。そして慶吾が淹れてくれた温かいココアのカップを両手で大事そうに持っている。

「落ち着いたら何があったか話して」
 慶吾に促され、立夏は静かに話し出した。
 渋谷で二人の不良に絡まれて、財布を巻き上げられ携帯電話を壊された事。そして慶吾のマンションまで歩いて帰って来た事を話した。

「はぁ……店が近いだろう?どうして店に行かなかったのか?」
 溜め息を吐きながら慶吾が尋ねた。誰が考えても渋谷からここまで帰って来るよりは、店に行った方が早いと思うだろう。

「だ、だって……あそこは……あそこは、女の人の聖域だから、ボロボロの僕が行ったら穢すようで……」
 立夏は、女性の最高の時を飾るドレスを売る店に行けなかったのだ。
「はぁ……っ、立夏はまだ女性に夢を抱いている年頃か」違う部分で慶吾が感心していた。

「先生……雨で汚れたドレスは僕が弁償します。今日受け取る予定だった方にも、僕が謝りに行きます」
 思いつめた顔で立夏がそう言うと、慶吾が口元を緩めた。
「あのドレスはディスプレイ用だ。特定の人の為に作ったのでは無いから安心しなさい。それより傷の手当をしよう」
 
 ドレスの箱は雨で汚れただけでは無かった。きっと立夏が体を張って守ったのだろうと、慶吾は思っていた。売れば幾らかの金になる新品のドレスを、不良たちが見過ごす筈はないだろう。

 慶吾は傷の手当をしながら、今夜はこの部屋に泊まるように立夏に言った。
「お姉さんに連絡しておくか?」
「はい……」
 立夏は、部屋の電話を借りて姉に連絡を入れた。姉の方から何度も立夏の携帯に電話を入れていたらしい。冬香も今夜は帰れないそうだ。立夏はバイトが忙しくて、今夜は泊めてもらう事と携帯電話を落して使えなくなった事を姉に報告した。
 そして慶吾が途中で電話を代わり、大人の対応で話を付けてくれた。

 電話を切った後、慶吾は立夏の口元を指でなぞった。
「あーあ、二・三日は愛しい姉さんに会えないぞ」
 立夏もさっき浴室の鏡で、自分の顔を見て驚いた。歩いている時はまだ興奮していたせいか、痛みは感じなかった。顔の傷よりも長い時間歩いた脚の方が疲れ痛かったからだ。
 まるで漫画のように、自分の目の周りに、青あざが出来ていた。違う意味(あれは本当なんだ)と感心したりもしていた。目の上の絆創膏も傷全部を隠しきれてはいない。

「すみません、お世話になります。それと……弁償しますから、金額を教えて下さい」
 いくらディスプレイ用だと言っても、金額が決まっていない筈はない。場合によっては、そのまま売られてしまう事もあるのだと、立夏は知っていた。

「大丈夫だ、立夏から金を取るつもりはない。不可抗力だったんだから仕方ないだろう」
「でも、そういう訳には……」
「それよりも俺は腹が減った」
「あ……」
 昼食用の弁当も結局買えなかった。立夏もこの部屋を出てから何も口に入れていなかった。
「先生、もしかして何も食べていないんですか?」
「それは、立夏も同じだろう?」
 弁当を買って来れなかった事も、ドレスを汚してしまった事も慶吾は責めない。その事が逆に立夏を申し訳なさでいっぱいにさせている。

「僕、何か作りましょうか?」
 基本家での食事は姉が作ってくれていたが、傍で立夏も手伝ったり簡単な物は教わったりもしていた。慶吾よりはマシな物が作れそうな気がした。
「うちの冷蔵庫にアルコール以外の物が入っていると思うか?いいさ、今夜は何かデリバリーしよう」
 慶吾は揶揄するように言い、デリバリーする為にパソコンを開いた。
 結局簡単な所でピザとサラダを注文して、慶吾は冷蔵庫から冷えたビールを取り出した。

「立夏も飲むか?」
「僕は飲むと眠くなるから……」
 今日はバイトどころじゃなかった、まだやる事は沢山残っている筈だ。せめてそれくらいは済ませてから休みたかった。
「そうか、じゃあピザ食べながら飲んで今夜は早く寝なさい」
「先生……」まだ何か言おうとする立夏に「そうしなさい」と慶吾は諭すように言った。
「はい、すみません」
 今の立夏は慶吾に従うしかない。



 無理に食べさせたピザと、無理に飲ませたビールのせいで頬を桜色に染めている立夏が、ソファの上で小さな寝息を立てていた。
 慶吾は、立夏を起さないように抱き上げ自分のベッドに寝かせた。


「さて……始めるか……」
 そう小さく呟くと、慶吾は仕事に使っている部屋でデザインブックを広げた。
 今日渡せなかったドレスの主に『貴方のイメージにぴったりな素晴らしいデザインが閃いた』などと口から出まかせを言い、納期を1週間延ばしてもらった。
 慶吾は深く溜め息を落してから、鉛筆を動かし始めたが浮かぶ映像は立夏の可愛い寝顔だった。



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立夏とふたりの野獣 6

 19, 2011 00:00
「立夏……起きて、朝だよ」
 立夏の肩をそっと揺らす手は姉の物ではなかった。少しだけベッドで微睡んでから立夏はガバッと身を起した。
「先生……?」
 立夏は一瞬どうしてここに慶吾がいるのか理解できない様子で、慶吾を見詰めている。
「トーストでいいか?玉子はスクランブルしか出来ないから、それで我慢しなさい」
「……あ―――っツツッ」
 今の状況をやっと把握出来た立夏が大きな声出した。そして口端の痛さに顔を歪める。

「大丈夫か?ふふふっ昨日よりも酷い顔になっているぞ」
 慶吾が笑いを含んだ顔でそう言うと、立夏は慌てて洗面所に駆け込んだ。

「あ~これじゃあ姉さん心配するな……」
「俺だって心配しているんだけど?」
 何時の間にか背後に立っていた慶吾に揶揄するように言われ、立夏は昨夜の失敗を思い出し身を強張らせた。
「先生、本当にごめんなさい……」

「そんな事よりも飯だ」
「そんな事って……」
 だが、立夏の言葉など気にならない様子で慶吾は食卓に着いた。
「これ先生が?」
 食卓の上には、こんがりと焼かれたトーストとスクランブルエッグと、コンビニのサラダらしき物が並んでいた。立夏はバイトに来て3か月、慶吾が珈琲を淹れる姿さえ見た事がないのにと、シンプルな食事でも感動してしまった。そしてそれだけ慶吾に気を使わせてしまっている自分を尚更責めた。

「頂きます、ほら立夏も食べなさい。大したものじゃないけど……」
「いえ……頂きます」
 まだ大きな口を開けると、口端が痛むので立夏はトーストを手で千切りながら口に運んだ。
「先生は結婚しないのですか?」
 見た目も職業も格好いい慶吾だったが、女性の影が全くなくて立夏は思い切って聞いてみた。

「結婚?しないよ。俺も徹も」
「徹さんも?どうして?」
「さあね。一人が楽だからじゃない?」
 全く他人事のように慶吾が口端を上げながら言った。でもどうして徹もしないと言い切れるのだろうか?そんな疑問を立夏はトーストと一緒に呑み込んだ。

「さて、どうする?あと2・3日泊まる?」
 慶吾の質問に立夏は項垂れる。この顔で部屋に戻っても姉は心配するが、バイト先に2日も3日も泊まるのも如何なものかと思われてしまう。考え込んだ立夏を慶吾は口元を緩めて見ていた。

「本当に立夏は、お姉さんが大事なんだな」
「だ、だって二人っきりだから……」
 自分の今の悩みは子供じみているかもしれないが、今の立夏には姉よりも大切な存在などいなかった。

「お姉さんだと分かっていても妬けるね」
 慶吾のからかう言葉に立夏は少しだけ口を尖らせた。

「今夜まで泊めて下さい」
 立夏は、やっと決心がついて慶吾にお願いした。
「いいよ、何日でも泊めてあげるよ」
「今夜まででいいです」
 立夏に普段の口調が戻って来て、慶吾は立夏に悟られないように安堵の息を吐いた。


 その時玄関で乱暴な音がした。


「あ……っ」その音の主に気づいた慶吾が眉根を寄せながら小さな声を発した。

「くそっ、台風で飛行機飛ばない……立夏?」
「徹さん……おはようございます……」
「どうして立夏がこんな朝にこの部屋にいるんだ?」
 不機嫌そうな徹の声と顔に立夏がまた小さくなった。

「昨夜はお泊りだよねぇ立夏」
 慶吾が徹の不機嫌さも気にしないで、逆にからかうように言い放つ。
「泊まり?」
 徹の不機嫌な顔がさらに不機嫌になり、立夏は怖くなり目を逸らした。


「てめぇ、立夏に何した?」
 突然徹が慶吾の胸倉を掴んで立たせた。だが当の慶吾はニヤニヤしたままで、徹の言動を全く恐れてはいない。
「徹さんっ!何を。僕が先生に迷惑かけて泊めてもらったんです」

「それに何だ立夏のあの顔は?」
 立夏の言葉など徹の耳には入っていないようだ。
「お前まさか……無理やり……」

 何が何だか分からない立夏は、今にも慶吾に殴りかかりそうな気配の腕に飛びついた。
「あっ!」
 徹の引いた肘に立夏の顔が当たり、立夏は小さな悲鳴を上げて蹲った。



 それから1時間後―――

「あーあ、まるでパンダだな……」
「誰のせいだと思っているんですか?それにどうして僕が此処に泊まっただけで喧嘩になるんですか?」
 立夏は訳の分からないうちに、片方だけだった目の周りの青あざが両方に広がり、少々ふてくされていた。完全に姉に合わす顔が無い。

「これで1週間は泊まりだな」
 立夏の心配を他所に慶吾はすこぶる機嫌が良かった。
「俺がやったんだから、俺の部屋に泊まれ」
「僕……事情を姉に話して帰りますから」

「「駄目だ」」
 立夏の言葉に珍しく二人の意見が一致した。




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発送までの間をもたせようと書いた話が終わらなかった……
自分の首を毎回絞めている私ですが、更新していないにも関わらずポチして下さり有難うございました。
だから、頑張れます!!


立夏とふたりの野獣 7

 20, 2011 00:11
 さすがに2泊目となると姉も不安な声をしていた。
「何か、ご迷惑をお掛けしているのではないのね?」
「うん、先生の仕事が凄い忙しくて……」
「立夏でもお役にたてるの?」
「姉ちゃん、僕だってもう大人だよ。そんなに僕のことばかり心配しないでよ。姉ちゃんはご主人の事だけを考えてくれればいいから」
「ご、ご主人だなんて……まだ早いわよ」
 電話口で姉が顔を真っ赤にしているのが想像出来た。
「だから心配しないでね、もしかしたらあと何日か泊めてもらうかもしれないから」

 その後、幾つかのやり取りを終えて立夏が電話を切った。
ふと見ると、慶吾と徹がにやけた顔で立夏を眺めていた。
「まるで、新婚さんの会話だな」
 さっきまで剣呑な雰囲気だったのに、長年の付き合いのせいなのか、今は普段と全く変わらない二人の顔を交互に見ながら、慶吾に向かって頭を下げた。
「今夜も宜しくお願いします」

「じゃあ明日は俺の所に泊まれ」
「徹さんの部屋の何処に僕が寝られる場所があると言うのですか?」
「だからほら……重なって寝ればいいだろう?」
「はあ?それこそ寝にくくて仕方ないですよ」


「そんな事より、俺はちょっと出かけて来るよ」
 慶吾がそう言って立ち上がった。
「先生、仕事ですか?それなら僕も手伝います」
「いや……仕事じゃないよ。ちょっと野暮用さ」

「ああ、行って来い。立夏の事は心配するな、俺がきちんと面倒見てやるからゆっくり楽しんで来い」
 徹は嬉しそうに慶吾の背中を押した。
「悪いが頼むよ。夕飯の材料は俺が買って来るから、昼飯は適当に食べておいて」
「先生……」
 立夏は置いて行かれる子供のような顔をして慶吾を見た。
「大丈夫、心配しないで。立夏はゆっくり休んでいなさい」

 慶吾は、店の二階の作業場でドレスの作り直しをするつもりだった。デザイン画のラフは夕べ立夏が寝入ってから描き上げていた。だがそれ以上の作業は立夏の前では出来ない。徹が帰って来たのは想定外だったが、逆に立夏に寂しい思いをさせるよりはマシかもしれないと、自分に言い聞かした。

「僕は子供じゃありませんから」
 二人があまりにも子供扱いするので、立夏は不満そうに口を開いた。
「そうだな、悪かった」
 徹が珍しく立夏に同意し、謝った。

「子供じゃこんな色気のある顔はしないよな」
 謝った言葉の後に、徹はにやにやと厭らしい笑みを漏らしながら、胸ポケットから数枚の写真を抜き取った。

「え……?」
 だが、徹から写真を受け取り眺めていた慶吾の顔が厳しいものに変わる。
「先生、何?」
 立夏がその写真を覗き込もうとしても、慶吾は見せてくれなかった。
「狡い、ふたりだけで楽しんで」
 立夏は先の徹の言葉を全く理解しておらずに、何の写真か気づいていなかった。


「立夏、また写真のバイトするか?」
 慶吾の顔色などお構いなしに、徹がそう声を掛けてきた。
「写真って……どっちの?」
 立夏はこの徹にまともな写真など撮ってもらった事はない。女装しているか、何も着ていないか……

「徹!俺のいない所で勝手な真似はするなよ。立夏もモデルなんかなるな。分かった?」
「先生……はい、分かりました」
 立夏は慶吾の言葉に素直に従ったが、徹は肩を竦め煙草に火を点けた。

「この部屋は禁煙だ。吸うなら自分の部屋に戻ってから吸えよ」
「はいはい、部屋に帰るよ」
 慶吾の不機嫌な声に、徹も素直に従う。そんな二人は仲がいいのか悪いのか、立夏はまた首を傾げる。


「じゃあ行って来るよ。なるべく早く帰るから」
「ふん、まるで新婚だな」
 揶揄するような言葉を吐きながら徹が荷物を抱え自分の部屋に戻ろうとしていた。

「俺がいない間にちょっかい出すなよ」
 慶吾は一緒に玄関の扉を開けながら、徹にしか聞こえないような声で呟いた。
「いってらっしゃい」
 何も気づかない立夏は、二人の背中に向かって明るい声を掛けていた。



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何か……「萌え」ない回ですね……。
書き間違い教えて頂きましたヽ(゚∀゚)ノ有り難うございます。

それと、私のエロPCは「行った、言った」と打とうとしても先崎に「達った」が出て来ます。
だから、時々気づかないでそのままの時が、あります。
何回か前の話で見つけました。えっと……まだ訂正していません^^;


立夏とふたりの野獣 8

 22, 2011 00:07
慶吾が出かけてしまい、徹も自室も戻った。急に一人っきりになった立夏は落ち着かずに、部屋の中をうろうろしてから、そうは散らかっていない部屋の片づけを始めた。
昨日何の仕事もしていないのだ、少しくらいは役に立ちたかった。

慶吾の描いたデザイン画をまとめたり、ゴミを捨てたりと大してやる事は無く静かに時が流れて行った。
部屋の掃除も立夏は自分の部屋でもここまで丁寧にやらない、と思う程磨いた。

もう直ぐ昼飯時だという頃に、自宅兼事務所の電話が鳴った。
少し迷った後に、立夏はその受話器を持ち上げた。
「慶デザインです」
「私、前野と申しますが先生は?」
「只今外出中でして……何かお約束でも?」

電話の相手は若い女性だ、個人的な用事か仕事の用事か立夏は分かりかねた。
「そうですか……あの慶デザインの方ですか?」
「はい」
ま、とりあえずバイトだけどこの際そう答えるしか、立夏には返事のしようが無かった。

ほっとしたような声の前野が言葉を続けた。
「昨日届くはずだったドレスの事なのですが……」
「昨日……?」
「はい、お店の方で受け取る予定だったのですが、受取りが1週間伸びてしまいまして……」
「あ……」


立夏の失敗と合致する言葉に、立夏の顔から血の気が引いて行った。
「それで……実は、今日妊娠している事が分かって……出来たらサイズの調整をしてもらえないかと思って電話したのですが」
「妊娠……おめでとうございます。では改めて連絡させますので、それで宜しいでしょうか?」
「すみません、勝手を申しまして。宜しくお願いします」

前野の幸せそうな声と裏腹に、立夏の顔は強張っていく。
「先生の嘘吐き……」
ぼそっと立夏は呟いて、携帯を取り出そうとした。
「あ……」
携帯も壊されて使えない事に今頃気づいた。
立夏は、慶吾の携帯番号など記憶している筈もない。


―――トントン
「おー開いているぞー」
立夏は仕方なく徹の部屋の扉をノックした。徹に携帯を借りるしかない。
「あの、先生の携帯番号教えて下さい」
立夏は扉を開け、顔を少しだけ覗かせてそう声を掛けた。

「立夏か、入って来い」
そう言う徹は、風呂上りなのかジーンズだけを履き上半身はまだ裸のままだった。立夏の胸は、見慣れない大人の男にドキリと小さな音を立てた。

「失礼します」
何故か立夏は徹を直視する事は出来ずにいた。
「そうか、携帯壊れたんだったな。ほれ」
そう言うと徹は自分の携帯を立夏に投げて寄越した。
「着信履歴のどこかにあるだろう?」
立夏は礼の言葉を述べてから、徹の携帯を弄り慶吾の履歴を探した。それは直ぐに見つかる程に回数が多かった。

「それ使って掛けろ」
「はい……ありがとうございます」
立夏は着信履歴から慶吾に電話を掛けた。

「徹?」
数回のコールで慶吾は機嫌よく電話に出た。
「いえ、僕……立夏です」
「どうした?」一瞬の間があったけど、慶吾はトーンを変えずに立夏に応対する。

「あの、前野さんって方から電話があって……妊娠が分かったからサイズの調整をして下さいって伝言で……」
「まえ……分かった。俺から電話を入れておく。立夏は今日休みなんだから、いちいち事務所の電話に出なくていいぞ」
「はい……」
何だか立夏は慶吾に自分を否定されたようで、気落ちしてしまった。

「それより昼飯は、徹と何か食べるんだぞ」
「先生、前野さんてもしかして……」
「はあ?立夏の知らない人だ」
立夏の考えを聞く前に、切り捨てられる。

「徹と代わってくれる?」

「徹さん、先生が代わってって」
そう言いながら立夏は徹に向けて携帯を差し出した。
徹の応対は素っ気なく何度か返事をしただけで、電話を切ってしまった。
ふたりにしか分からないような会話に立夏は何故か疎外感だけが募った。


「ラーメンんとカツ丼とどっちがいい?」
「……ラーメン」
立夏は単価の安そうな方を選んで答えた。
そんな立夏をちらっと見ながら、徹は何処かに出前の電話をしていた。


「徹さん……写真の……あのバイト、もう無いの?僕やろうかな?」
立夏はドレス代を弁償しようと決めた。そうなると徹の話に乗るしかないと思った。この際バイトの内容など気にしている余裕はない。
だが立夏の瞳は、純白のドレスを穢す事になるのだろうかという危惧の中、不安そうに揺れていた。


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今日もイク? yes

立夏とふたりの野獣 9

 23, 2011 00:17
「駄目だ、慶吾が怒る」
先日までは自分でやらないか?などと聞いてきた徹の言葉とは思えなかった。
「どうして?それにこの前だって先生は何も言わなかった」
言わなかったどころじゃない、徹に言われて手だけ参加しているのだ。

「この前と今回じゃ状況が違う」
立夏は、どうして徹が頑なに拒否するのか全く分からなかった。
「先生には内緒にする」
慶吾はこの状況で立夏がそんなバイトをすると言い出したら、その原因を追究するだろう。そうなるとドレスの弁償の話になってしまい、きっと余計に叱られてしまいそうだった。


女子じゃないんだから、裸の写真を撮られてもあまり影響はないと、立夏は考えていた。
「減る物じゃないし……」
立夏の口からは珍しくいまどきの若者風の言葉が零れてしまった。
先日は、ドレスの撮影の流れでなし崩しっぽい撮影だったので、立夏の中にも警戒心は全く芽生えていなかったのだ。

「立夏、これ見ろ」
徹は乱雑な机の上からがさがさっと探し当てた雑誌を、立夏に投げて寄越した。
「うっ……」
その雑誌の表紙からして立夏の想像を超えていた。
筋肉剥き出しの男性が表紙の雑誌だった。

「俺の友達が編集部にいる。今度写真撮るんだったらマジそこに売りつけるぞ」
徹が脅すように立夏に言って来た。
「マジって?」
じゃあ先日の撮影は何だったのだろう?自分は2万円もの金を既に受け取っているのだ。

「これは海外のだ」
そう言って徹がもう1冊の雑誌を寄越した。それは表紙を見ただけで嗜好が分かるような物だった。立夏は無意識のうちに頁をぱらぱらと捲った。
そしてあまりの衝撃に体から力が抜け、腰を落した。その落した先は先日立夏が痴態を見せた徹のベッドの上だとは立夏は気づいていないようだ。

「無防備だな……街でいいバイトがあるなんて声掛けられても付いて行くんじゃないぞ」
「え……あっ」
言われて思い出した事があった。去年バイトに行っていた駅近くで、2度ほど声を掛けられた事があった。運悪く(当時はそう思っていた)本当にバイトに遅刻しそうで立夏は呼び止められて一度は立ち止まったが、急いでいるのでと言って話を聞く事は出来なかった。

立夏の表情を見てとった徹が深く溜め息を吐いた。
「全く、簡単に騙されるんじゃないぞ」
徹の声は、揶揄するよりも安堵の色を含んでいた気がしたが、立夏はそんな徹をきっと睨んで聞いた。
「じゃあ、この前撮った写真は何?」

「あれは……趣味と実益?」
「はあ?何それ……」
「いいんだ、俺が撮る分には安心して撮られていろ」
何か勝手な言い分に立夏は納得できないでいた。

「趣味って誰の?」
「お、俺のだ。綺麗な被写体には食指が動く。撮ってみたいと思うんだ」
「じゃあ実益って?」
「そ、それは……お前の写真を撮ってくれって依頼があったからだ」
「誰から?」
「企業秘密だ」
「何かそれって変じゃない?」
「変じゃない」

全くもって納得などいかないし、徹の言っている事はぶれぶれだ。
何時の間にか徹が立夏の目の前に立ち、立夏を見下ろすような体勢になっていた。
立夏は、渡された外国の雑誌を見てはいないが、まだ手に持っていた。その雑誌を立夏に持たせたまま徹が捲り始めた。

ある頁で手を止めた徹が、立夏に諭すように言う。
「こんな写真を撮ってもいいのか?」
徹が開いた頁には、ひとりの男が背後から犬の交尾のように重なっている写真だった。
ひと目見て立夏は眉を寄せた。だがほんの少しだけ体の奥に疼くものを感じたが、その感覚を即座に否定して雑誌を閉じた。

でも口から飛び出した言葉は、立夏自身も思いもよらなかった言葉だった。

「こんなの一人じゃ撮れない」
自分の言葉が、自分の声となり鼓膜に響いて立夏は驚いた。
「あ……そういう意味じゃなくて……」
慌てて訂正したが、徹の口端が厭らしく上がった。

「へえ?根っこは否定しないんだ?」
「あ、え、あの……」
徹が言う根っことはきっと男性同士の繋がりの事を言っているんだと思えた。

立夏は一番最初に否定する所を間違えたと、自分でも徹に言われるまで気づかなかったのだ。
狼狽える立夏の至近距離に徹の男らしく精悍な顔があった。
息がかかる程の位置にある徹の唇が、立夏の柔らかい唇を掠めた。

キスされるような気配はしていたけど、まさか本当にされるとは思わなかった立夏は、目を開けたまま徹のスローモーションのような動きをただ見ていた。


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◇すみません日曜日、月曜日は地方に行きますので、更新は難しいと思います◇



次の間はこちらから^^;

立夏とふたりの野獣 10

 24, 2011 00:00
掠めた唇が舞い戻って来た。だが立夏は微動だにしない。
「目つぶれよ」
徹の言葉に立夏は無意識に瞼を閉じた。何故素直に従っているんだろうと、もうひとりの自分が問い掛けた時に徹の頭が揺れた。その衝撃が触れた唇から立夏に伝わる。

「何やってるんだよ」
「あ…っ」
低い声に立夏は我に返り、徹は悪戯が見つかった時のような、罰の悪そうな顔を見せた。

「早かったな」
徹はしれっとして答えるが、立夏は怖くて慶吾の顔を直視できなかった。

「だから何やってるんだって聞いているんだけど?」
さっきよりは幾分落ち着いた声だったがそれでも立夏には充分怖かった。

立夏の視線の先にはさっき徹に見せられた雑誌が、頁を開いたまま投げ出されていた。

「あ…っ」
立夏はこの時やっと今までの辻妻が合った気がした。考えなくても慶吾と徹の関係は最初から不思議だったのだ。

二人があの雑誌のような関係なら今慶吾が怒っているのも理解できる。

(もしかして浮気現場を押さえられた?)
「先生、違うんです」
立夏は何とか言い訳をしようと顔を上げた。
実際浮気などとは違う気がする。だからと言ってさっき唇が重なったのは事実だし、まだ僅かに感触も残っている。「立夏は黙っていなさい。「徹俺は手を出すなって言ったよな?」
「だから…先生ごめんなさい。僕が変な事言ったから」
そうだ、自分が割のいいバイトをしたいと言ったばかりに…

そこで立夏はふと考えに息詰まった。どうしてバイトの話からキスに発展したのか分からない。

「徹さん、どうして僕にキスなんかしたんですか?」
「立夏が可愛くてキスしたかったからじゃ駄目なのか?」
「駄目に決まってるだろう」
「いてっ…」
徹の言葉が終わらないうちに慶吾が、徹の固そうな頭をペシッと音を立てて叩いた。
「ちっ…」そんな慶吾が立夏に向き直り胸に抱き寄せた。
「怖かったね立夏、こんな武骨な男に襲われて」

訳の分からない事は二度続いた。立夏がぼぅっとしている間に、慶吾の唇までもが立夏の唇に触れた。

(あぁ徹がキスした罰はキスなのかぁ…)立夏は漠然とそういう結論になった。

「ご馳走様」
慶吾が厭らしく自分の唇を舐め上げた。
「ふ、二人とも何やってるんですか!痴話喧嘩の当て馬になんかしないで下さい」
「当て馬?」慶吾が口の中で復唱し、徹は黙ってニヤニヤしていた。

「ふ~ん、それより慶吾帰って来るのが随分早いんじゃないか?」
徹に言われ

て立夏も昼飯には戻れないと言っていた慶吾の帰宅を訝しく思った。

「ああ、前野さんの事を立夏が気にしていたみたいだから…」
慶吾の言葉に立夏はまた慶吾の仕事の邪魔をしてしまったとうなだれた。




すみません、最近萌え枯渇しているみたいですね。補給の旅に出た方がいいのかな?とちょっと悩み中



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