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お菓子な気持ち 1

 03, 2011 00:34
新作ではありませんが、通常更新いたします。3万文字弱の話なので10話程度になると思います。

滞っている話は、もう少しお待ち下さいませっ!すみません!






 比嘉貴明(ひが たかあき)はここ羽田空港の国際線ロビーで一人の男を待っていた。
今日アメリカから新社長の京橋真琴(きょうばし まこと)が戻って来る予定だった。なかなか姿を現さない新社長に苛々しながらも宮仕えの身では、勝手な行動を取るわけにもいかない。

 真琴の父親である京橋聡介が病で倒れ、急遽社長代理として真琴がアメリカから呼び戻されたのだ。若干二十四歳でMBAを取得しているやり手らしかった。
 らしかったというのは、比嘉はまだ京橋真琴とは面識が一度もなかったからだ。真琴は五年前大学二年の時に、アメリカに留学し、そのまま居座ったそうだ。
 比嘉が二十五歳の若さでヘッドハンティングされ今の会社に入ったのが、今から四年前、真琴とはすれ違いであった。

 ふと比嘉は誰かの熱い視線を感じてその視線の先を見た。まだ高校生くらいの少年が、比嘉をずっと見ていた。
「何か私の顔に付いていますか?」
皮肉を込めて比嘉がその少年に向かって言う。
「もしかして。京橋建設の比嘉さんですか?」
「そうですが……どちら様でしょうか?」
 比嘉はこんな子供に知り合いはいなかった。もしかしたら会社の誰かの息子かもしれないと思ったが、一度会った人間の顔は、比嘉は決して忘れない。

「どちら様でしょうか?」比嘉がその少年に向かって再び聞いた。
「あああ良かったぁ、迎えが来ているって聞いていたのに、なかなか現れないから、僕どうしようかと思っていました」
ほっとした顔でその少年は笑顔を見せる。
「あなたは……?」
「申し遅れました、僕京橋真琴です」比嘉に向かってにっこり微笑む顔を見て、比嘉は頭を抱えたくなった。
「ちょっと待って下さいよ、確かに私は京橋真琴様をお迎えに参りました。ですが私が待っているのは高校生のあなたではなく、二十四歳の京橋様です」

「じゃ僕で間違いないね」再び可愛い笑みを比嘉に見せる。
「パスポートを見せて頂けますか?」
「あんまり疑り深いと嫌われるよ」
比嘉を揶揄するように言うと素直に比嘉の前にパスポートを差し出した。

「本当に二十四歳だったのですね……」
 日本人が見てもこんなに若く見えるのだから、アメリカではさぞ幼く見られた事だろうと比嘉は思った。
「よくそれでアメリカで通用しましたね?」
そんな言葉がつい口から飛び出してしまった。上司になる人間に言う言葉ではないと、瞬時に思ったが、真琴はイヤな顔も見せずに笑った。
「う~んと、今年で二十回くらいかな?」
「えっ何がですか?」突然の主語のない発言に比嘉が戸惑った。
「日本で言えば補導ってやつ?」

 今年と言ってもまだ三か月しか経過していない、その間に二十回!呆れて物も言えない比嘉に向かって真琴は、お腹が空いたと言う。
「あぁそれは失礼致しました。何処かでお食事をしましょう」
「うん、回転寿司にしてね」
真琴に可愛くお強請りされてしまう。
「お寿司ですか、畏まりました」
「回転するやつじゃないと駄目だよ、止まっているのは面倒だから」
「回転寿司ですか……」
比嘉のデータの中に回転寿司屋は入ってはいなかった。

 考えている比嘉に向かって「車走らせていたら、何処かにあるよ、3件目に見つけた処にしよう」などとお気楽な事を真琴は言った。

「今日はホテルに泊まるから、赤坂のホテルに向かって走らせてね」
「ご自宅にはお帰りにならないのですか?」
「うん、時差ボケをホテルでゆっくり直すから」
「社長が病院でお待ちかと思いますが?」
「大丈夫どうせ仮病でしょう?」
「…………」流石の比嘉も否定も肯定も出来ずに言葉に詰まった。
表向きは病気だが、実際今回は可愛い息子を呼び戻し、自分の後継者に育てるのが社長の目的であった。

「早く行こうよ」緊張感の全く見られない少年もとい、青年は相変わらずニコニコ微笑みながら比嘉を急かした。

「あ、パパには3日間比嘉さんを借りるって言ってあるから、比嘉さんも一緒にホテルに泊まってね」
 この息子にしてあの社長だ……比嘉は社長に進言しても却下されるのは想定出来たので、溜息を吐きながらも「畏まりました」と言う以外に無かった。

途中3件目の回転寿司屋に入り、比嘉は真琴と一緒に回る寿司を初めて食べた。安い価格で手早く食べられる回転寿司も悪くはないと、何故か思えてしまい、比嘉は内心苦笑していた。
 
ホテルまでの道のりで、静かになった後部座席を振り向くと真琴はもうとっくに夢の中ですぅすぅと軽い寝息を立てていた。

比嘉はホテルに到着すると真琴をおこし、ロビーに座らせチェックインを済ませた。最低限の荷物は事前に送っていたらしくて、部屋に運び込まれているそうだ。比嘉はそれを真琴に伝えると、また嬉しそうな顔を見せる。

真琴の予約していた部屋は客室最上階のスィートルームだった。最初から比嘉も宿泊させるつもりだったのだろうか?などと思いながらも念のために言ってみた。
「私は別に部屋を取りますので」
「どうして?ここ広いんだからここに泊まればいいでしょう?」
そう言われる気がしていた……
「畏まりました」
「う~ん、何だか固いなぁ比嘉さんて」
「一応真琴様は私の上司ですので」と言うと「一応ねぇ」と皮肉を言われ、二十四歳という年齢を知らしめられた。
「失礼致しました」
「許してあげるから、後で僕のお願い聞いてね」
「私に出来る事でしたら何なりと」
「本当に?嬉しい。僕シャワー浴びて来るね」
そう言うと真琴はさっさとバスルームに消えてしまった。

 その間に比嘉は会社に電話して打ち合わせをし、変わった事は無いかを確認していた。まさか三日もホテルに缶詰めになるとは思ってもいなかったが、社長が入院している今殆どが電話で片付く仕事ではあった。

「あ~気持ち良かったぁ、比嘉さんも入ってくれば?」
そう言って現れた真琴は、とても一言では言い表せないような、とても素敵な?パジャマ姿で現れた。ピンク地にお菓子の柄がプリントされたパジャマはとても成人男性が好んで着るような物ではなかった。もし自分の彼女がこんな柄のパジャマを着ていたら、男は萎えてしまうだろうと思った。

 生憎比嘉はゲイであった。だがいくら相手が男といえ、こんなお子ちゃまには食指も動きそうもない。二十四歳と聞いた時多少期待したが、そんな期待は今となっては遥か彼方に飛んでしまっている。





◇雷鳴5を更新しました。すみません、雷鳴は記事上げするのをすっかり忘れていました。10話完結までは忘れずに上げて行きたいと思っています。
カテゴリーか携帯用目次からお入り下さい。
念のためにここにもリンク貼っておきますね。雷鳴5(凌辱あります。ご注意)



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お菓子な気持ち 2

 04, 2011 00:00
「これ可愛いでしょう?部下に買いに行かせたらこれ買って来てくれたの」
 茫然と見ている比嘉に向かって真琴は嬉しそうな顔を見せた。
「はぁその場で買い替えなかった真琴さんも凄いですが、これを買って来た部下も凄いですね」
「でしょう?トムってセンスあるんだよねぇ」
 取り方によっては皮肉にもなる言葉を受けた真琴は、至極ご満悦のようだった。

「私は着替えも持って来ていませんので、一度部屋に支度に戻ろうと思っております」
「ええっ?帰るの?僕のお願いは?」
「二時間くらいで戻りますので、その時でも宜しければ」
「二時間か……じゃ寝て待っているから、なるべく早く帰って来てね」
「はい、畏まりました」
 頭を下げながら、比嘉は今夜会う予定だったセフレと会えない事を少し残念に思った。

 特定の相手を作らない比嘉は、仕事の合間を見てバーに行き、そこで気の合う相手を見つけ性処理をしていた。恋人が欲しくない訳ではないが、社長秘書というのは結構ハードな仕事であったし、時間も不規則である。
 なかなか思うように会えないと不満も募るし喧嘩も絶えなくなる。だから比嘉は気楽に付き合えるセフレが何人かいた。みんな同じような忙しい連中で、お互いの都合が合えば、お互いを利用する、そんな大人の付き合いをしていた。

 比嘉はこのホテルから車で二十分程離れたマンションに一人暮らしをしていた。3日分の着替えを用意しながら、電話を掛け今夜会えなくなった事を伝えると、相手もあっさりと頷く。比嘉が都合悪ければ他の男を見つけるだけの事なのだ。
 そんな付き合いを寂しいと思わない訳では無いが、煩わしさと天秤にかければ、一人の方が楽という答えが導き出されるのだ。

 着替えをバッグに詰めながら、これからの三日間を思うと渋い顔になってしまう。子供か大人か判らない真琴だが、自分の上司だという事だけは事実だ。バッグを閉めながら比嘉はまたひとつ溜息を吐いた。


 比嘉がホテルの部屋に戻ると真琴はキングサイズのベッドの中ですやすやと寝息を立てていた。だがサイドテーブルの上に大きな紙が置いてあり、そこにはマジックで『戻ったら寝ていても絶対起してね』と書いてあった。
 寝ている所を起こさせてまで何を強請るつもりなのだと、比嘉は思いながらも真琴の横で声を掛けた。

「真琴さん、戻りました。起きますか?」と。
「あ……うん起きる、起して」と甘えたようにベッドから手だけを真琴は出した。
 比嘉はその手を引き体を起こしてやった。だが真琴はそのまま比嘉に体を預けたまま自分の意思で起き出そうとはしなかった。

「眠いのなら、もう一度眠りますか?」と聞くと「出して」と真琴がまたもや主語のない言葉を吐いた。
「どこに何を出せばいいのですか?」
「僕溜まっちゃったから、僕の精子を外に出して」
「…………えっ?」
 何か聞き違えたのかと比嘉は固まったが、気を取り直してもう一度聞いてみたが、返ってきた答えは同じだった。

「早く…もう一杯なの、急な帰国で忙しかったから、僕暫く出してもらっていないの」
「いつも誰かに出してもらっているのですか?」
「うん、最近は部下のトムだよ」と何でもない事のように真琴は言う。
 トム……この派手なパジャマを買って来た人物だ。

「どうやって出しましょう?」諦めたように比嘉が聞く。
「比嘉さんのやりやすい手段でいいよ、でもお尻は弄らないでね、こう見えても僕処女だから」
 比嘉は真琴の言葉にくらくらと眩暈がしてきた。

「今更……処女ですか?」
「そうだよ、だって好きな人にあげたいじゃん?」
「まぁそんなものでしょうね」

「それより早く~」
 そう言ってお菓子柄のパジャマのズボンを真琴は自分から下した。見た目と同じ年よりも若い可愛いらしいペニスに比嘉は真琴に気づかれないように失笑した。
「手でよろしいですか?」
「お口~って言ったらしてくれるの?」
「出来ない訳ではありませんが……」
「じゃ両方でしてっ」
 言葉に興奮しているのだろうか?言いながらも真琴のペニスが元気に勃ち上がってきた。

「はぁ……ん早く……」
 度重なる催促に比嘉は諦めて、ベッドの横に跪いた。
 比嘉が真琴のペニスを手に握り、数回扱くと更にそれは固さを増し、先走りの露を溢れさせている。
「随分と溜まってるようですね?」
「うう……ん、あぁん……気持ちいい」
 その声に比嘉は何だか本当に子どもに悪戯しているような気分になってしまった。

 比嘉は今まで自分の周りに居ないタイプの見た目と、奔放な雰囲気に飲まれ、つい真琴のペニスを咥えてしまった。
「やぁ……ん」そう喘ぎながら真琴は腰を押し付けて来る。
 ちろひろと舐めたり、吸ったりしながらも手で双球を弄る事も比嘉は忘れなかった。
「あぁぁん、上手ぅ~僕出してもいい?」
 まだ口に含んで1分くらいしか経ってはいないが、真琴は射精を訴えてきた。早く達ってくれた方が比嘉は楽だと思ったが、少し意地悪な気分になり含んだペニスを外した。

「いや~ん、だめっもっと、もう少しだったのにぃ」
 拗ねる真琴に向かって「男でしたらもう少し長持ちさせないと駄目ですよ」と教えた。
「じゃあと1分我慢する」素直な真琴のペニスを比嘉は再び口腔に収めた。


 頑張って2分もたせた真琴がとうとう比嘉の口の中で吐精した。
「あぁ……っ、気持ちいいっ比嘉さん上手――」
 比嘉は一瞬躊躇ったのち真琴の吐き出した精液を飲み干した。
「えっ?あっ?どうしてゴム使わなかったの?」
「そんな余裕はなかったですし、用意もしていませんので」
 まさか比嘉はこんなお願いが待っているとは想像もしていなかった。

「凄い……生だったから、あんなに気持ち良かったんだ……」
「いつもはスキンを使うのですか?」
「勿論、いくら部下でも生ではしてくれないよ」
「では、次からは私もスキンを使いましょう」
 比嘉の言葉に真琴の目が輝いたのを見て、比嘉は内心舌打ちしてしまった。まさか次の約束までを自分からしてしまうとは失態であった。

「本当に、次も比嘉さんがしてくれるの?嬉しいなぁ」
「ま・まぁ……でも早くそういうお相手を見つけて下さいよ、私だって忙しい身なのですから」
 ホテルに篭る3日間は仕方ないが、それ以降は御免こうむりたい、自分にも自分の性生活があるのだ。
「でも、比嘉さんが男もイケル人で良かった」
「わ・私は……今回は仕方ないと思いまして……男が好きと言うわけではありません」

 比嘉はここで自分がゲイだとバレることは非常に具合が悪かった。
 今後何もかも自分が処理するようになるのを避けるために否定しなければならないのだ、だが言い終わり真琴を見るともう軽く寝息をたて夢の中の住人になっていた。

 比嘉は大きなため息を吐いてから自分もシャワーを浴び、真琴の隣のベッドに滑り込んだ。
「ふぅ……疲れた」
空港に迎えに行ったり荷物を取りに行ったり、揚句の果てには上司の性処理までしたのだ、疲れない訳がなかった。そんな事を考えながら比嘉もいつしか深い眠りに落ちて行ってしまった。


 明け方比嘉は下半身に違和感を感じて目が覚めた。
「ま・真琴さん!」
「あぁおはよう比嘉さん」
「おはようって、何をしているのですか?」
「何って?見れば判るでしょう?お礼だよ」
 そう言うと真琴はまた比嘉の布団の中に潜ってしまった。


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雷鳴6

お菓子な気持ち 3

 05, 2011 00:00
「うっ、真琴さん止めて下さい」
「どうして?比嘉さんのここはちゃんと反応しているみたいだけど?」
「それは……男なら仕方ない事です。」
「じゃあ問題ないでしょう?もう邪魔しないでよね」

「うっ……」
 比嘉は真琴の巧みな舌使いにこれ以上抵抗する事を止めた。どうせ自分もあと何回かは真琴の処理をしなくてはならない身だ、一度くらいはやってもらっても罰は当たらないだろうと開き直った。

 それにしても真琴の上手さにかなりの経験を感じた。
「真琴さん、上手いですね」
 だが真琴は返事はせずに、その代わりに比嘉のペニスの先をちゅーっと吸い上げた。
「あうっ」
 昨日セフレを会い損なったって事は比嘉も溜まっているという事だ。こんな巧みな舌使いをされたら、そう長く持ちそうにない。
 だが昨夜真琴に早いと言った手前、早々に達してしまう訳には行かなかった。

 自分でも双球がせり上がり、もうビクビクと射精の準備をしているのが分かった。
「真琴さん……もう……」
 だが真琴は相変わらず潜ったままで、舌も手も離そうとしなかった。
 比嘉はこのまま真琴の口の中に吐き出す事だけは避けたかった。
「うっあぁっ!もう出るから……真琴さん……」

 結局比嘉は真琴の口淫の上手さに負けて、昨夜のお返しのように真琴の口腔に吐精してしまった。
「あぁやっぱり生っていいね」
 全てを飲み干した真琴が、満足そうな顔をして布団の中から這い出て来た。
「真琴さん……あなたって方は、いったい何を考えているのですか?」
 吐精してしまった手前あまり強い事は言えないが、それでも比嘉は言わずにはいられなかった。
「ええ?気持ち良かったでしょう?だったら文句言わないで」
 ピシャリと真琴に言いくるめられ比嘉もこれ以上は言葉を呑み込んだ。

「それに時差ボケがまだ治らないから、早く目覚めて退屈だったんだもん」
「退屈だからって言って人のナニを咥えるんですか!?」
「うふふふ……比嘉さんのって大きいね、顎痛くなっちゃった」
「無理してあんな事なんかするからですよ」
「比嘉ぁ~ねぇ、本当にあんなのがアナルに入るのかな?」
「人間の躰なんて融通利くように出来ているものです」
「ふーん?比嘉は挿れる側?」
「勿論です。あ…………」
 つい真琴のテンポのいい会話に答えなくてもいい事まで答えてしまって、比嘉は内心舌打ちをした。そしていつの間にか「比嘉」と呼び捨てされている事さえも気づかない比嘉であった。

 比嘉が何か言おうとするのを遮るように真琴は空腹を訴えた。比嘉も話をぶり返すのもどうかと思ったので、真琴の食べたい物を聞きルームサービスを頼んだ。真琴のペースに乗せられてばかりで全く普段の自分が出せない比嘉は、気持ちを切り替えるべくシャワーを浴びにベッドを降りた。

「比嘉、僕もシャワー」
「ではお先にどうぞ、私はシャワーブースの方を使いますので。お湯を溜めますか?」
 バスタブの付いている方を真琴に使わせ、自分はシャワーのみで済まそうと比嘉は考えたが「一緒に入って背中流してくれないの?」などと子供みたいな事を言われてしまい、又頭を抱えたくなった。

「トムにも背中流してもらっていたのですか?」
「そうだよ」
 そう言ってにっこり微笑む真琴を見て、本当に処女かと疑いの目を向けてしまった。
 だが勘がいいのか真琴は「僕は処女だよ」と比嘉の心を読んだように答えた。


 結局比嘉は今同じ浴室で真琴の背中を流している。
(どうして俺がこんな事まで……)と思わない訳ではないが、真っ白な肌理の細かい肌に触れるのは正直気持ちが良かった。
「トムというのは白人ですか?」
「そうだよ、23歳で僕よりも1歳年下だ。でもいつでも僕の事を子供扱いしてたけどね」
 日本人は実年齢よりもだいぶ若く見られる上に、同じ日本人から見てもこんなに幼いのだから白人から見たら真琴などは中学生の域だろうと比嘉は納得した。
「で、トムもゲイですか?」
「うん、ちゃんと恋人いるよ」
 恋人のいる男に背中を洗わせたり、フェラさせたりしていたのか!と内心驚いていると「僕に触れた後って恋人と燃えるんだって」と言ってのけた真琴に(それは中途半端な奉仕のせいじゃ?)などと突っ込まないでおいた。

「脚を洗いますから立って下さい」比嘉に言われ真琴は素直に立ち上がった。
 真琴の白い小振りの尻たぶをくるくる円を描くように洗い、太腿の内側に手を滑らせた。
「不安定ですので、もう少し脚を開いてもらえますか?」
「う・うん……」
 また真琴は素直に歩幅を拡げるが、少し様子が変だった。比嘉は内腿から膝裏脹脛とスポンジを滑らせ真琴の前に回った。前に回ると真琴の中心が半分ほど勃ち上がっていた。

「おやまだ足りませんでしたか?」
「だって……比嘉の洗い方が厭らしいんだもん……」
「いかがしましょう?」
 半分諦めたように比嘉が聞くと「舐めて……」と真琴が腰を突き出した。
(やっぱり……)

 今更拒むのも時間の無駄のような気がして、比嘉はぱくっと真琴のペニスを咥えた。
「あぁぁん……」
 待ち構えていたような真琴のペニスは、直ぐに硬さを持ち始め先走りの蜜をしたためた。
 比嘉は泡の付いた手で、真琴の双球を揉み解すと小さく呻いた真琴の手が比嘉の肩を掴んだ。比嘉はちょっとした悪戯心を起し、その手をつっと奥に滑らせた。

「やぁぁん、だめぇそこは……」
「ここも洗わないと駄目でしょう?」
 一度口からペニスを引き抜き比嘉はそう説明した。
「あぁぁん」
 慣れない行為に気持ち悪いのかいいのか?真琴は逃げるように腰を振った。

 真琴はこんな生活をしていたが本当にアナルは誰にも触らせた事は無かった。初めて感じるぬるぬるした指の感触に躰が粟立ち身震いがした。
(き・きもちいい……)
比嘉の指が蕾の縁までも洗うように撫で回している。
「あぁぁっ、あん、あぁん」
 その感触に真琴の口からは甘い喘ぎしか出て来なかった。

 そんな感触の中、ぷつっと比嘉の指が孔の中に突き刺さった。
「いやぁーん、駄目ってば、指入れたら駄目だよぉ」
「洗っているだけです、静かに」
 だってトムとかここまで洗ってくれた事は無いと言いたかったが、何故か気持ち良くて真琴は口を噤んで比嘉のやりたいようにやらせていた。

 黙っていると比嘉の長い指が奥まで挿入された。
「そ・そんな奥まで……洗うの?」
「勿論です、そんな事当たり前です」
 比嘉はアナルに関しての知識をあまり真琴が持っていない事に気づき付け込んだ。真琴は自分が何か聞く度に比嘉の口からペニスが出されるので、それが中途半端でもう何も言わないでおこうと思った。


 比嘉の指が中を掻き回す度に「あん」という声が漏れてしまい、真琴は浴室に響く自分の声にまた感じてしまっていた。とにかく比嘉の指の動きが気持ち良くて、真琴のペニスからは先走りの蜜がどくどくと溢れてしまうようで、流石の真琴も少々恥ずかしくなった。

 そんな時比嘉の指がある箇所を強く押して来て、真琴は体をビクンと震わせ慄いた。
「いやぁ……何?」
「別に私は中を綺麗にしているだけですが、いかがされましたか?」
 比嘉の言葉に真琴はそこが気持ちいいとも言い出せなくて、また黙った。

「比嘉ぁ、もう達きたい」
 真琴の言葉に比嘉は口の動きを早め、孔に埋めた指で前立腺を刺激し続けた。
「あぁぁぁあ……いい、比嘉ぁ……いいよぉ」
 真琴は悦びの涙を零しながら吐精した。

 びくんびくんと体を震わせながら吐き出した精を比嘉は、昨夜のように飲み干してくれたが、孔に入れた指が抜かれる事は無く、達く前からずっと同じ所を刺激されていた。
「あぁぁぁん、もっ、抜いて……」
「いや抜きたいんですが、真琴さんが締め付けるから抜けないんです」
 普段では言わないような嘘を吐くと、真琴は困ったような顔で「やん、また感じて来たよぉ」と悶えている。
 当たり前だ、そうなるように比嘉は前立腺を攻めているのだからと心の中でほくそ笑んだ。

「困りましたねぇ……ではもう1本指を増やして中を拡げたらこの指も抜けるかもしれません」などと平気で言ってみた。
「あぁん……じゃそうして」
 その言葉に比嘉は真琴の腰を抱えるようにして、2本目の指を蕾に当てた。ソープの滑りは2本目の指もゆっくりと呑み込んで行った。

「あぁん……ひがぁ……もう抜ける?」
「まだですね」
 2本入るのに1本が抜けない事など無いのに真琴が気づかないのが可笑しくて、比嘉は調子に乗って「もう1本入れてみましょうか?」などと言ってみた。
「あぁぁん、もう無理ぃ壊れちゃう……」
「そうですか?」ととぼけながら比嘉は真琴の前立腺をまた攻め立てた。
「やぁぁぁぁぁ――っ変になるぅ――」
 一度達った真琴のペニスがまた天を向いてしまっていた。

「そろそろルームサービスが来る頃ですね。あ、抜けました」
 比嘉は今まで真琴に振り回された復讐をしたかのように、にっこり微笑んだ。
「良かったですね抜けて。さぁもう出ましょう」
 唖然とする真琴をよそにシャワーの湯をかけ洗い流してから浴室の扉を開けた。
 一人取り残された真琴は泣きそうな顔で出て行く比嘉の背中を見送った。

 それから10分ほどして真琴が浴室から出て来た時には、比嘉はしっかりとワイシャツを着てテーブルの上に届けられた朝食を機嫌良く並べている最中だった。


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雷鳴7 雷鳴8

「珈琲たいむ」更新しました(゚∀゚)


お菓子な気持ち 4

 06, 2011 00:00
 明日から出勤するという夜まで真琴は比嘉にフェラを強請った。
 比嘉はきっちりと真琴を達かせてくれるが、真琴の中には何故か物足りないという気持ちがあった。だがそれを比嘉に告げるつもりは無い。あの風呂場でのように後ろを弄られたら堪ったもんじゃないと思いながらも、あの気持ち良さを忘れられないでいるのも確かなのだ。

 ホテルに篭った3日の間真琴は、ノートパソコンと携帯電話を離さなかった。お菓子柄のパジャマを着ている時とは別人のような顔で色々と指示をしていた。急に辞めて来たアメリカの会社からひっきりなしに電話が掛かってくるのだ。

 そして翌朝、比嘉は初めて真琴のスーツ姿を見た。一瞬見惚れた。
「……真琴さん」
「どうせ七五三って言いたいんでしょう?」
「えっ、あ……まぁ……」

 本人は童顔を気にして拗ねたような事を言っている、比嘉も見るまではそう予想していたのだ。だが目の前に現れたのは中世ヨーロッパの貴公子を思わせるような姿の真琴だった。
 持って生まれた気品は幼く見える真琴を高貴なものに塗り替えていた。

 身長だって比嘉と並ぶと小柄に見えるが172・3㎝だろうか?決して小柄という訳ではないのだ。そして何よりも微笑む口元に妙な色気がある。
(新宿には足を向けないように言っておこう)比嘉は内心そんな事を考えていた、こんな真琴が二丁目なんかに行ったら無事では済まないだろう。
 本人が望まない関係も強いられるかもしれない、真琴には早く相手を見つけろと言っておきながら比嘉はその機会を絶とうとしていた。

「今日の予定は?」
 真琴の口から上に立つ者らしい言葉が出てきた。
「はい、9時から役員会議で、真琴さんのお披露目をします。会議は2時間程ですので終わったら昼食を摂り、午後からは社長の面会に病院に行ってもらいます」
「役員会議に2時間も?」
 すべすべの眉間に皺を寄せ真琴が聞いて来た。

「はい、これが資料です」
 比嘉が今日の役員会議の資料を渡すと、真琴はぱらぱらと捲り目を通す。
「こんな内容なら40分で充分。会議が終わったら午前中に病院に顔を出して、午後からは主要取引先を5件回ります」
「ですが、急に言われても相手の都合もありますので」と比嘉が口を挿むと「別に相手の責任者が同席する必要はありません、社員の顔を見れば上に立つ者の顔も自ずと見えてくるものです」
「はい、畏まりました」比嘉も真琴の指示に秘書の顔に切り替えた。


 結局真琴は、手ぐすねを引いて待っていた役員達をぐうの音も出ない程にやり込め、揚句の果てには「名ばかりの役員はここには必要ありません、皆さんの仕事ぶりは調べさせて頂きますのでご理解下さい」とさらりと言い捨て会議室を後にした。

 その足で父親の入院している病院に見舞いに行き、先に院長を訪ね病状を把握してから病室に向かった。真琴の無駄のない動きを比嘉は感心して見ていた。
「会社の経営に乗り出そうと思いますので、父さんも病院でのんびりするのは止めて下さい。ついでに健康診断してもらうように院長に話をしておきましたから、逃げないできちんと検査を受けてから退院して下さいよ。まったく今まで検査もせずにただ入院していただなんて、本当に他の患者さんに迷惑な話です」

 父親までもやり込め、その後真琴は取引先を回り夕方5時過ぎにはホテルに戻った。
 スーツを脱ぎ捨てネクタイを外すと「あぁぁ疲れたぁ、比嘉ぁお風呂に連れて行ってぇ」と比嘉の良く知る顔に戻る。
 スーツ姿とは全くの別人である今の真琴に溜息を吐きながら、比嘉はバスタブに湯を張った。
「私は自宅に戻ります、朝8時に迎えに上がります」
 比嘉がそう言うと瞳を潤ませながら、一緒に風呂に入らないのかと聞いて来る。

「私はこれから知人と会う予定がありますので」
 比嘉が冷たく突き放すと、知人に興味を持った真琴がしつこく男か女か、恋人か友達か?などと聞いて来る。
「恋人でも普通の友達でもありません、単なるセフレです」
「セフレ……?」
 青年期をアメリカで過ごしている真琴には聞いた事の無い言葉だった。
「sex friendの事です」
 比嘉の突き放した態度など全く気にならないように、真琴は驚き今度は男か女か聞いて来た。どっちと答えても面倒そうだったので比嘉は諦めて「男です」と言い捨てた。
 だが真琴はそこで引き下がらず一層興味を持ったように「見学させて!」などと、とんでも無い事を提案してきた。

「見学?」
「うん、男同志のsexを見てみたい」
「見たければそういうDVDでも用意しますが?」
 比嘉は、まさか人が見ている前で男を抱くつもりもそんな趣味もなかった。
「いやだ、比嘉のsexが見たい」

 我儘な子供みたいにお強請りをする真琴に閉口してしまう。
「ねぇ、そのセフレさんに聞いてみてよ」などと言われ即座に却下した。
 今夜会う予定のミチルなら喜んで「カモーン」と言いそうなタイプだったから、そんな事は間違っても聞ける訳がない。

「じゃあいいや、僕お風呂に入るからもう帰っていいよ」
 掌を返したように真琴はそう言うと浴室に向かった。
「では失礼します」
 肩すかしを食らったような気分で比嘉は、ホテルの部屋を後にして自宅に向かった。



 今比嘉の目の前に一糸纏わぬ姿で真琴が横たわっていた。

 何故こんな事になったかと言うと……
 一度は真琴と別れ自分のマンションに戻って風呂に入り、出かけようとした矢先に真琴からの電話を受けた。イヤな予感がしたが大事な用件かもしれない、と思うと電話に出ない訳にもいかなかった。

「比嘉ぁ……もうだめっ……」
 真琴はそれだけ言うと電話を切り、比嘉が掛け直しても電話に出る事は無かった。内心舌打ちしながらも放置しておく事も出来ずに比嘉はホテルに戻った。


 部屋に入ると真琴は既にベッドの中に入っていたのだ。
「いかがされました?」
「比嘉があんな事言うから……僕ネットで検索して見ていたら……」
「見ていたら?」
 その先は真琴の様子を見れば、聞かなくても判ったが聞かせてもらおうじゃないか!という思いで言葉を続けた。前回に引き続き今回も比嘉はデートし損なったのだ、それくらいの権利はあると思った。

「あんなの見たら……一度自分で出しただけじゃ治まらなくて……」
「分かりました……」
 比嘉は溜息を吐きながらそう言った。比嘉の言葉を聞いて真琴の顔がぱっと輝いた。昼間のスーツ姿とは全くの別人だ。もしかしたら別人かもしれない?などと比嘉らしからぬ事を思い「真琴さんは双子ではありませんよね?」とつい聞いてしまった。
「ええっ?双子だったら苦労しないよ……」
 その苦労しない意味は聞かないでおこう、と比嘉はまたも溜息を吐いた。

「真琴さん、中途半端だから満足感を得られないのですよ、この際きちんとSexされたら如何ですか?」
「ええっ?僕が挿れられちゃうの?」
「ま、そういう事になりますね……」
 比嘉は真琴が挿れる側のSexなど想像もつかなかった。

「誰が挿れてくれるの?比嘉がしてくれる?」
「初めては好きな人と、と決めておられたんじゃないのですか?」
「だって今特に好きな人いないし……比嘉だったらいいよ」
 
「比嘉は僕とエッチ出来る?」
「…………さあどうでしょう?真琴さん次第ですね」
 比嘉は本当はすっかりその気になっていたが、ここで簡単に真琴の言う事を聞いてしまう事に抵抗を感じていた。言う事が何でも通ると思われたら今後困るのは比嘉の方なのだ。

「僕次第って?」
「真琴さんが私をその気にさせる事が出来たら」
 比嘉の言葉に真琴は掛けていた毛布を捲った。
「これじゃダメ?」
 可愛らしい顔でベッドの中から比嘉を見上げるその躰は一糸纏っていなかったのだ。

「何でもう勃っているのですか?」
 完全とはいえないが、真琴のそれはもう半分ほど力を付けていたのだ。
「……だって、比嘉の顔みていたら……その、条件反射みたいな……」
「条件反射って……」
 言われてみれば、毎日真琴の望み通りに吐精させていたのは自分だ。だからと言って人をエロビデオみたいに言わないで欲しい……

 比嘉はもう一度真琴の裸体に視線を這わせた。比嘉本人は気づかなかったが『舐めるような視線』というのはこういう視線だと誰かが見たら思うだろう。
 24歳という若い肌は肌理細かくまるでパールのように光り輝いていた。

「そ・そんなに見るから……躰が熱くなって来た」
 実際真琴の白い肌が薄紅色に染まりつつあった。
「それで誘っているつもりですか?」
「う……ん、じゃあこれでいい?」
 と真琴は大胆にも仰向けになったまま、少し開いた両膝を立てた。

 ここまでされて据え膳喰わぬも男の恥……
「真琴さんローションとか持ってますか?」
 生憎比嘉はローションまで持ち歩く趣味はなかった。
「うん、あるよ……トムに餞別にもらったのが、そこの豹柄のポーチに入っている」
 真琴の視線の先を見ると色鮮やかなショキングピンクの豹柄のポーチがあった。
「開けてもいいですか?」
 比嘉は断ってからポーチを開けて見て驚いた。

「何で……こんなに沢山?」
「何だか色で微妙に成分が違うんだって……」
 ポーチの中には5本のローションが入っていた。5本というか5色……
「白が普通ので、赤いのが熱くなるんだって……ラベンダー色が癒し効果?青いのはすっとするらしい。で……紫のが……淫乱になるんだって……」

「媚薬入りってところでしょうかね?初めてという事ですから、これにしますか……」
「ぼ・僕……淫乱になっちゃうの?」
(いやもう充分に淫乱ですから……)比嘉は心の中だけで毒づいてから紫のボトルを手にした。

「あぁ……ん、何だか見られているだけで僕……気持ちいいかも?」
 真琴はそう言うと完全に勃ち上がった自分のペニスに手を伸ばそうたした。
「誘っている以上勝手に達ったら駄目ですよ?」
「あぁ……ん、だめなの?」
 比嘉の言葉に真琴は拗ねたような顔をして伸ばした手を引っ込めた。

 この日が性に開放的だった真琴が初めて我慢した記念すべき日となった。



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雷鳴9 ラスト1話前です。

お菓子な気持ち 5

 07, 2011 00:00
「ひがぁ……」
 この情けない顔からは、昼間の凛々しさは全く想像出来ない。古狸共を黙らせ、社長にまで指示した青年が今ベッドの中で、比嘉の指に翻弄され震えている。
 まさにギャップ萌えというのだろうか?などと少々意識を違う所に飛ばしていたら、「ひゃっ!ああーん」と言う嬌声に現実に引き戻された。どうやら中の良い所を掠めたらしい。

「ここ気持ちいいですか?」
「比嘉って慣れてるんだね……」(……意外としっかり観察している)
「このくらいは常識として持ち合わせております」と苦しい言い訳をする。
「フェ……フェラも上手だし、本当は比嘉も真正のゲイなんじゃないの?」
 生意気な真琴の前立腺を今度は意思を持って強く擦ってやった。

「やぁあーーん」四つん這いになった背中が弓を引くように撓った。
「少しは集中して下さい」叱責するように言うと珍しく「……はい」と小さな返事が返って来た。
 真琴の小振りの尻が小刻みに震えている。
「もしかして怖いんですか?」
 意外な発見をした気分で比嘉は真琴の顔を覗き込んだ。

「当たり前じゃん、僕……お尻に指なんて挿れられるのって初めてなんだよ」
「本当に初めてだったんですね……」
「酷い……僕嘘吐かないもん」
「いや……その機会が全く無かったはずは無いと思っていましたからね」

「だから、好きな人じゃないとイヤだって言った」
 少し怒ったような声で真琴が言うので「じゃやっぱり止めましょうか?」と比嘉は挿入した指を抜こうとした。やはりロストバージンは好きな男とやらせてやりたいと仏心を出してしまった。

「イヤ止めないで……抜かないで、比嘉の事好きだから」
「会って間もないのに?」
 結局引き抜かなかった指を中でゆっくり動かしながら比嘉が聞く。
「僕は、ずっと前から比嘉の事知っていたんだもん」
「え……っ?」
「比嘉の事ヘッドハンティングしたのは、僕だもん」


「だって……?」
 流石の比嘉も時間軸が直ぐに頭に入って来なかった。
「僕がアメリカに行く前に比嘉を見染めたの、あぁぁ……」

 当時比嘉は突然のヘッドハンティングが異業種だった事に少し首を捻ったが、社長秘書という仕事にはあまり影響が無い事と、条件の良さに惹かれたのだ。
 信じられないような条件は履行され続け、比嘉は現在何の不満も無かった。

 最近不満があったとしたら、この社長代理の子守り……というか性欲処理だった。まぁ元々ゲイの自分には苦行では無い事は確かだったが。
 だがもし自分が抱かれる側だったら即座に辞表を書いていたに違いない。幸か不幸か、真琴は精神年齢を除けばストライクに近い部類だった。

「もしかして私は貴方の手の平で踊らされていたのでしょうか?」
 比嘉はすこぶる機嫌の悪い声でそう聞いたが、真琴の中から指を抜く事はしなかった。この締まり具合は後を引く。
「違う……そんなつもりは無いよ。ただ……」
「ただ?続きは?」
 媚薬の入ったローションと、時々擦られる前立腺からの刺激で真琴の体はとろとろに蕩けていた。

 いくら初めてとはいえ、ここまで刺激を与えられたらもっと強い刺激を真琴の体は待ちわびているだろう、と思いながらも比嘉はそれ以上の刺激を与えようとはしなかった。

「ひがぁ……」
 遠慮がちに真琴が腰を動かしている。それは何を意味するかなど比嘉には分かりきっていたが真琴の言葉を待った。
「僕が……アメリカに行っている間に……あぁぁ……」
 途中で真琴は息継ぎのように甘い吐息を漏らしてから言葉を続けた。
「僕が日本にいない間に……比嘉を誰かに取られないようにって思って……はぁっ」

(全て計画通りって事か……)
 比嘉は内心怒りを感じながらも、真琴の事を何故か憎めなかった。
「もしかして社長の入院騒動も?」
「う・うん……」
「はぁっ……」比嘉は大きなため息を吐いた。

 ふっと比嘉は考えた、真琴がアメリカで危ない事をしていても貞操を守って来れた事を……
「もしかしてトムって?」
「うん……僕のボディガード」
 これ程性欲の強い体を持って、何事も無かった理由も納得出来た。
 真琴のような少年に見える金持ちがボディガードも付けずに生活をするのは危険だ。そこまで見抜けなかった自分の愚かさに苦笑しながら最後の質問をした。

「それは私とこうなりたい為だけで?」と。
「……そうだよぉ、僕は比嘉にこうして欲しかったんだよ、ずっと……初めて比嘉を見た時から」
 中途半端に与えられた刺激がもどかしくて堪らないような声で真琴が答えた。その答えを聞いて比嘉はゆっくり指を引き抜いた。

「比嘉……お・怒ったの?」
 今にも泣き出しそうな顔で真琴が聞いて来た。
「真琴さん」
「うん……」
「覚悟して下さいよ」
「ん?」ぽろっと真琴の頬を涙が伝った。

「これから私は貴方を抱きますから、覚悟して」
(参った、降参だ)比嘉はニヒルな笑顔を真琴に向けてから、ゆっくりと着ている服を脱ぎ出した。


 真琴は蕩けるような目で比嘉の一挙一動を見つめていた。
「比嘉ぁ色っぽい……」
 そんな真琴に返事をする事も無く、比嘉はっゆっくりと衣服を剥いで行く。最後の1枚に指を掛けた時に、流石に真琴は顔を逸らすだろうと思ってちらっと見ると一層目を輝かせていた。

「はぁ……貴方には恥じらいってものは無いのですか?」溜息混じりに聞いても「早くぅ全部脱いで」と強請るだけだった。
 今までの行為と真琴の熱い視線で多少高揚している下半身を晒すのも、少々躊躇いはあったものの、ここで自分が恥じらうのも逆にどうよ?と思い一気に脱ぎ捨てた。

「あぁ比嘉の……」
 人の寝起きを襲い咥えた事もある真琴なのに、初めて見るような顔で声を詰まらせていた。
「欲しいですか?これが」
 焦らすような比嘉の言葉に真琴は固唾を飲んでからこくんと頷いた。
「ずっと欲しかった」
 珍しく素直……いやいつも本音しか言わないのだ真琴は。
 それが長い間自分を騙していたか、と違う意味で感心もしてしまう。

 比嘉は真琴の足の間に膝立ちし「いつからですか?いつからそんな厭らしい目で私の事を見ていたのですか?」と聞いてみた。
「ジムのプールで初めて比嘉を見た時から」
「会員制のあのジムですか?」
 比嘉は体力作りの為に当時の会社の近くにあったジムに通っていた事があった。考えてみたらあのジムは社長の自宅からは近い、当時大学生だった真琴も通っていても不思議な事ではなかった。

「私と会いましたか?あそこで」
 そう聞きながら比嘉は当時の記憶を思い起こしてみた。
 記憶の良さには自信はある―――100倍速くらいで巻き戻した記憶の中に一人の中学生が出て来た。

 比嘉が泳いでいると近くで水遊びをしていた…………ように思えた。
「あの中学生でしたか?」
「酷い……大学生だったのに」
「あ、失礼」
 考えてみると24歳の今でも高校生に見える真琴なのだ、大学生当時が中学生に見えても全くおかしくは無い筈だ。

 比嘉は、その少年の視線が時々自分の下半身に注がれていたのは覚えていた。
「あの頃からそういう意味で見ていたんですか?此処を」
 比嘉は自分の一物に手を添えて真琴を揶揄した。
「ねぇもう昔話はいいから、早く……」
 媚薬の混ざったローションは、真琴を萎えさせる事なく効果を発揮しているようだ。




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雷鳴10 完結です◇

珈琲タイム更新しました。

お菓子な気持ち 6

 08, 2011 00:00
 比嘉は真琴の腰の下にクッションを押し込み、自分で膝裏を抱えるように指示した。言われるがまま真琴がその体勢に変える。
「あぁぁ……」
「どうしました?恥ずかしいですか?」
「違う……凄い興奮する!この格好」
 やはり普通とは感覚がずれている真琴に溜息を落しながらも、その姿に見惚れたりもしてしまう。

「丸見えですよ真琴さん」
「ダメ……比嘉見ないで」珍しく恥じらうのかと思いきや
「見られているだけで僕イキそう……」何と快感に素直な体なのだろうと比嘉は口角を上げた。

「比嘉……早く挿れて」
 もう我慢できないという顔で、真琴は強請るが流石に初めての真琴を、指2本でしか解していないまま貫くわけにはいかなかった。
「もう少し解しますから」
 比嘉は再びローションで指を濡らし真琴の孔に突き刺した。
「あぁ……ん、もうイっちゃう」
「先に一度出しておきますか?」
 簡単に頷くだろうと思われた真琴が必死に顔を横に振った。
「……初めてだから比嘉と一緒にイク」
 駄々っ子のようだが、真琴の目には強い意志があった。

(か・可愛い……)
 大人同士の付き合いに慣れている比嘉にとって、真琴の一途さは新鮮で且つ何か嬉しかった。この真琴が自分を受け入れた瞬間に見せる顔を早く見たいと比嘉は、らしくもなく甘い顔になった。
 性急に指を3本に増やし解す。もうパンパンに膨れ上がった真琴のペニスが可哀想で可愛かった。
 これで充分だろうと指を抜き「真琴さん挿れますよ?本当にいいんですね?」と最後の確認をとった。

「もっ早く……比嘉のその大っきいペニス挿れて……」
「では」
 一声かけてから比嘉は自分の切っ先をローションで潤う蕾に宛がった。ぐっと腰に力を籠め、未通の孔に侵入を試みた。性能の良いローションに助けられ、比嘉のペニスが真琴の熱をまとった。
 その瞬間真琴の顔が苦痛に歪むのを認めながらも、半分程体を進めた。

「はぁ…………っ」
 止めていた息を苦しくなって真琴が大きく吐いた。その隙に比嘉の腰は更に進み、真琴の腰を持った手を引き寄せながら、ゆっくりと全てを埋め尽くした。
「真琴さん、大丈夫ですか?痛くないですか?」
「…………」
「真琴さん?」

 痛みのせいか、興奮のあまりか判らないが真琴は既に意識を手放していた。まだ馴染んでいない体は動かす事も出来ずに比嘉は真琴の中で静かにしているしかなかった。

「真琴さん、真琴さん?」
 比嘉の呼びかけにやっと覚醒した真琴に大丈夫ですか?ともう一度声を掛ける。
「僕……あんまり嬉しくて気絶しちゃったみたい」
 比嘉の想像しなかった答えが返ってきた。


(今、俺は世界一ニヤケタ顔をしているだろう……)比嘉は心の中でそう失笑した。



「動きますよ……」比嘉の言葉に真琴は体を強張らせた。
「そんなに力を入れたら痛いですよ?」
「だっだって……」
 心と体が別物だと真琴は言いたかったが、それさえも声に出せない程に緊張していた。真琴の緊張を他所に比嘉が腰を引いた。

「!」
「だから……力を抜いて下さい」
「ご・ごめんなさい」
「怒っているわけでは無いのですよ?真琴さんもツライでしょう?」
「ううん……気持ちいい」
 真琴の言葉にふっと口角を上げた比嘉が「そんな嘘はあなたには似合いませんよ」と窘めた。

「うう……ごめんなさい、嘘言いました。いた―――い!」
 涙目でそう叫ぶ真琴の唇を啄ばんだ。きょとんとした目で真琴の動きが止まり、体から少し力が抜けたのを感じて比嘉が引いた腰を押し付けた。
「あうっ……」
 入口は引き裂かれるような痛みを感じているが、中はというとそんな痛みはなかった。
 今の比嘉の動きで擦られ、それが少し気持ちいいと感じてしまっている。

「比嘉ぁ……お願い、そっとして」
 比嘉は真琴の望み通りにゆっくりと抽挿を始めた。ローションの滑りが抽挿を手助けしてくれている。何度か繰り返しているうちに、比嘉の形に真琴の胎内が馴染み纏わり付いてくるようだった。
「真琴さん、いいですよ……」
 比嘉の息も少し上がっているようで真琴はその声に興奮してしまう。

「あぁん……」
 媚薬が体に浸透してきたのだろうか、奥が疼くような気分になってきた。真琴は自分で腰を揺らし、比嘉のペニスを奥まで誘い込もうとしていた。
「やはりあなたは貪欲な方が似合っていますね。これが欲しいんですね」
 そう言うと比嘉は一気に再奥を目指して腰を打ちつけた。

「いやぁーっ」
 真琴は比嘉と繋がった喜びと、体から湧き上がる快感で嬌声を上げる。
「ここはどうですか?」と比嘉に擦られた瞬間に真琴の体が跳ねた。
「いやっダメッ!出ちゃうからダメぇー」
 そんな真琴を楽しむように、比嘉はそこに重点を置いて攻め上げた。

「比嘉っ、一緒に……」
 プライドの高い比嘉は、本来ならば真琴のペースで自分も達く事は望まなかったが、一緒に達く事に拘っている真琴の願いを一度くらいは叶えてやろうと思った。
(ん?一度くらいは……?)その思考自体が今後があるという事なのだと比嘉は気づいた。

 吐精寸前まで高められた真琴の体は綺麗だと思った……そしてその昂ぶりに比嘉は、手を伸ばし握り込み「一緒に達きますよ?」と声を掛けると、真琴の顔が綻んだ。

 真琴の白濁を手の平に受け止めながら、比嘉は真琴の中に一度目の精を放った。
 脱力し肩で息継ぎをしている真琴からは何の言葉も出ては来ない。

 粗い呼吸を繰り返す度に真琴の薄い胸板も上下し、その尖りが比嘉を誘うように主張している。指先を伸ばしそっと摘まむと真琴の体がビクンと震えた。指の腹で紙縒りを作るように擦り合わせると、真琴の潤んだ体がきゅんと比嘉のペニスを締め付けてくる。

 その真琴の反応につい比嘉の達ったばかりのペニスもツンと硬度を増した。
「はぁん……比嘉のまだ大きい……」
 それが苦情なのか悦びなのか、推し量れない比嘉は摘まんでいた尖りを引っ張り上げた。
「あうっ……」
 その刺激に反応する真琴のペニスを見れば、悪戯心が芽生えベッドに転がっていた紫のローションを真琴の胸に塗り付けた。

 滑りの良くなった指先は摘まんだり転がしたりと自由自在に動き回る。
「あぁん……気持ちいいぃ……」
 その喘ぎに調子付いた比嘉はすっかり勃ち上がった真琴のペニスにもローションを垂らし塗り込めるように弄り扱き始めた。
 真琴の中で、もう比嘉のペニスもMAX状態に回復していた。

「貴方の体は何処も彼処も感じやすく出来ていますね」
「あぁん……比嘉だって……僕に感じてるくせにぃ……はぁっ」
 否定できない悔しさに比嘉は真琴の体を弄っていた指を全て離し、腰を引き切っ先だけを中に留めた。

「あん……比嘉いやだ……」
「ん?どうしましょう?」
「もっと……奥まで……比嘉の厭らしいの欲しい」
(厭らしいのって……)
 無意識に人を煽る真琴を焦らすように少しだけ腰を進めた。濡れた目の真琴が下から比嘉を見上げた。
(厭らしいのは貴方の方です)比嘉はそう思いながら、ねっとりとした真琴の胎内に呑み込まれて行った。

「あぁ…………っ」
 真琴がぎゅっとシーツを握り締めるのを目の端に入れながら比嘉は抽挿を始めた。


「比嘉……気持ちいい……」
 真琴は息を上げながらそう言って比嘉を煽る。
 本人が故意に煽っている訳では無いのだろうが、喘ぐような口元を見ると比嘉は自分の芯が熱を増すのが判った。

 男を抱く事には慣れていた……つもりだったが、どうも真琴に関してはそれが通用しないような気がしてきた。
もっと乱れ狂う真琴を見たかった、いい声で啼かせてみたかった……


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お菓子な気持ち 7

 17, 2011 00:39
初めて異物を受け入れた体はキツかったが、それでも比嘉を離すまいとねっとり絡み付いてくる。
「よくこんな体で今まで男無しで来られましたね?」
真琴の器量と地位を考えれば相手など選り取り見取りだろうと比嘉は思った。
だが蔑まされたとでも思ったのだろうか、真琴は口元を歪め一筋の涙を零した。
(しまった……)比嘉は真琴を傷つけてしまったと内心焦った。

ゆっくり根元まで咥え込ませ比嘉は真琴の腕を引いた。
「はぁっ……ぁぁ」
体勢が変わる事で真琴は最奥に比嘉の猛りを感じ甘い吐息を吐く。
比嘉の膝の上に跨る格好に真琴は戸惑いを隠せない。
「俺の首に腕を回して」耳元で囁く比嘉の言う通りに真琴は比嘉の体に抱きついた。

比嘉はそんな真琴を軽々と下から突き上げる。
「やぁぁぁっ……あん……深い」
ガチガチに硬くなった比嘉のペニスが真琴の内壁を擦りあげ最奥を突き上げる。
「比嘉ぁ……もう達っちゃう……気持ちいい……」
突き上げられる度に二人の体の間で真琴のペニスが揺れ擦られるが、そんな刺激はもどかしいだけだった。
もっと直接的な刺激が欲しくて、比嘉の首に回した腕を解き自分のペニスを握った。

「自分で扱いて見せて」
そんな真琴を見て口端を上げながら比嘉が煽った。
「はぁっ……あぁぁ……気持ちいい」
貪欲に快感を得ようと動く真琴の胸の尖りを比嘉は指で弾いた。
「あぁぁ……っ、そこいい……」
真琴は自分で弄った事はあったものの、そう感じる場所では無いと思っていたが、比嘉に弄られると信じられない程に気持ちが良かった。

「もう少し楽しませてもらいますよ」
そう言うと比嘉はペニスを握っている真琴の手を外させた。
「いやぁ……」あと少しという所で逸らされてしまい真琴は身悶えしながら比嘉の顔を見た。
目の前にずっと好きだった男がいる、そしてその男の欲情を今自分の体で受け入れている事実に真琴は眩暈がしそうだった。

「比嘉……嬉しい」

大学生の時にジムのプールで初めて見た時から気になり、行く度に目で探し追っていた。
最初は好みの容姿だっただけだったが、ジム仲間と雑談する顔や仕草に大人の男としての色気を感じ、どんどん惹かれていった。

比嘉は覚えていないみたいだったが、一度比嘉の前で足を滑らせ転びそうになった事があった。
背後から腕をとられ真琴の背中は比嘉の熱い胸板に支えられた。
「大丈夫ですか?」
その声に真琴は自分のペニスが熱を帯びたのを感じた。
(相手の全てを知らなくても好きになるんだ……)
「はい、大丈夫です。ありがとうございました」真琴はそれだけ言うと顔を見せるのも恥ずかしく、いや実際は固くなったペニスに気づかれるのが恥ずかしくて慌てて更衣室に駆け込んだ。

その事が決定的なきっかけとなり真琴は比嘉の事を調べさせた。
想像以上の比嘉の実績は社長である父親を説得するには充分だった。
ヘッドハンティング以外に真琴は別な工作もした。
それらに掛かった多額の費用は、真琴が留学しMBAを取得する事を交換条件として出されたのだ。だが真琴は比嘉を自分のものにする為に父親が出した全ての条件を飲み、そしてクリアした。

(4年も……)
「寂しかった……会いたかった……」
比嘉に貫かれながら過去を思い出していた真琴の口から、つとそんな言葉が漏れてしまった。
真琴の思考をある程度理解した比嘉が「どこがいいんですか?そんなに……」と呆れたような顔で聞いてきた。

「さあ?」改めて聞かれても何と答えていいのか真琴にも判らない。

「可愛くないですね」比嘉にそう言い返され真琴が唇を噛んだ瞬間にそれは熱い粘膜で覆われた。
(あ……っ)
それが比嘉の唇だと判った瞬間真琴の眦から再び、つーっと熱いものが零れた。



真琴は目を閉じて比嘉の唇に吸い付いた。
手で達かせてもらった、フェラもしてもらった、そして今比嘉の熱いペニスで貫かれていたがこんなキスされたのは初めてだった。真琴にはもう順番など関係なかった。

ただ吸い付く真琴の口腔に比嘉の舌が差し込まれ、驚いて逃げようとする真琴の舌にそれが絡み付く。
「はぅ……」歯列をなぞられると、そこから新たな快感が芽生え下半身に直結し、体中が疼いてくる。

「はぁ……っ、比嘉ぁ好き」
深いキスの合間に真琴はうわ言のように同じ言葉を繰り返していた。
真琴の声を聞く度に比嘉のペニスも、真琴の内壁を拡げるように嵩を増す。
「ぁぁぁおっきい……」
「貴方はどこまで私を煽れば気が済むのですか?」
比嘉の言葉に真琴は否定するように、力無く首を横に振って見せる。

比嘉は再び真琴を膝の上から下ろしベッドに貼り付けた。
下半身を密着させ、これ以上は無理という所まで真琴の中に埋めた。
「あぁぁぁ……っ、凄い……」
比嘉は大きく、そして激しく抽挿を始める。
「あっあっあっ……」揺れに合わせて真琴の甘い吐息が漏れ、比嘉の心を煽り続ける。

初めての真琴にこれ以上の負担は掛けられないと思っていたが、そんな思いさえ彼方に飛んでしまったように、比嘉は腰を打ちつけた。
真琴の張りつめたペニスを扱くとあっけなく吐精したが、比嘉の動きにそれが回復するのも早かった。
真琴の3度目の吐精に合わせて、比嘉も真琴の中に欲望の全てを放った。

脱力した体で荒い息を二人して整えている。
(ちょっとやり過ぎたか……)
比嘉は頭の中で明日のスケジュールを調整していた。
3度の射精とローションでべとべとの真琴の体を眺めていると、真琴と視線が絡まった。
何故か一瞬泣きそうな顔を見せた真琴が「大丈夫だよ、仕事は仕事だから……」と比嘉の脳内を察したように声を掛けて来た。

「取りあえず風呂に入りましょう。準備してきます」
そう言って立ち去った比嘉の後姿を真琴は黙って眺めていた。
遠くで湯を張る音がする。その音が子守唄のように聞こえ真琴の瞼は自然と下りていった。

次に目が覚めた時に真琴は、バスタブの中で比嘉に抱えられていた。
「ひ・比嘉?」
「大丈夫ですか?眠っていたようですがあのままという訳にはいきませんからね」
「あ、うん。ありがとう」
バスタブの中で比嘉の手の平が、真琴の体を優しく撫でるように這っている。
「中も掻き出しますよ?」
「ん?」真琴はその意味を直ぐには理解できなかった。

「あん!」
比嘉の指が蕾を撫でたと思ったら、ぷつっと中に挿入され真琴は驚いて声を上げた。
「ああ、中もぐちゅぐちゅですね」本来自分の吐き出した物のせいなのだが、さも真琴が悪いかのように比嘉はそう揶揄した。
比嘉は指で己の放った精を掻き出し、湯を白濁で汚した。

じっとして比嘉にされるがままの真琴のペニスが、ビクンと震えた。
声を出すまいと我慢している真琴が可愛くて、つい悪戯心を起してしまう。
それでも知らん顔で黙々と掻き出す作業を続けていた。
その状態のまま、何度も中の感じる箇所を擦り上げられた真琴は、たまったものではない。

「さぁこれで綺麗になりましたよ」
気づかぬ振りしてそういう比嘉の顔を、恨めしそうに真琴は見上げた。
「いかがされました?」
「比嘉ぁ……」
「はい?」
「……比嘉の当たっているよ、僕の腰に」
「う……」
「いいよ、比嘉がやりたければ、もう一度くらいしてやっても」

真琴の言葉に内心舌打ちをするように比嘉は、真琴をバスタブの外に立たせ縁に手を突かせた。そしてソープで滑りを付けたペニスを真琴の孔に押し当てた。
「後悔しても知りませんよ」そう通告してから、一気に貫いた。

「あぁ……っ」真琴は背をのけ反らせながら比嘉の物を受け入れた。
馴染むまでじっと動かない比嘉を背中に感じながら(もう比嘉は僕の体の虜だ)と真琴は思い、一方比嘉は(開発し甲斐のある体だ……)と考えていた事など互いは知らない。

結局二人が同じベッドで眠りについたのは、もう明け方に近い時間だった。
比嘉の体内時計は何時に寝ようが、思った時間に起きられるように長年の秘書生活で身に付けられていた。
比嘉は朝一度起き真琴のスケジュールを全て組み換え、今日1日をオフにしてからもう一度眠りに付いた。




お菓子な気持ち 8

 18, 2011 00:33
そして次に比嘉が目を覚ましたのは、10時。
隣でぐったり、いやぐっすりと眠っているはずの真琴の姿が見当たらない。
5分待っても戻って来ない真琴を浴室に探しに行っても居なかった。
クローゼットを開けると、スーツが1着見当たらない事に気づき、比嘉は慌てて身支度を整えた。

「いったいあの体で何処に?」
真琴の携帯に電話を掛けても、呼び出しはするが暫くすると留守電に切り替わる。
焦る心でネクタイを締め終えた時に、ドアが静かにノックされた。
「ルームサービスをお持ち致しました」
「はあ?頼んだ覚えはないが?」
「8時くらいにご連絡頂きまして、10時10分にお届けするようにとの事でした」
「……そう」

セッティングされる間比嘉はソファに腰を下ろし待っていた。
その朝食が2人分では無く、1人分である事に怒りすら覚える。
「くそっ……」
不機嫌な比嘉に一礼してボーイが退室した後、比嘉は一人苦い珈琲を口に含んで、今度は大きく溜め息を吐いた。


比嘉は広いスィートルームで、一人で食事をする事の味気無さを噛み締めながら、朝食を終えた。
そしてそのまま会社に向かった。
受付に顔を出し、社長代理の所在を確認した。
「社長代理は只今第一会議室で会議中で御座います」
どうして比嘉が知らないのか?などとはプロの受付嬢は尋ねては来ない事が、比嘉には救いだった。

全てが真琴の後手に回り、舌打ちをする思いで会議室に向かった。
真琴は比嘉が延期した予定を、全て元に戻したようだ。
比嘉が会議室の前まで行くと中から、課長部長クラスの社員がぞろぞろと出て来た。

比嘉は一礼して、会議室に入る。
バラバラと解散するメンバーの、一番中央の奥に真琴の姿を認め歩み寄った。
「真琴さん……」
「おや比嘉、予定通りだね」
比嘉の朝食の時間を考えれば、この時間に会社に到着し、真琴の目の前に現れる時間など容易に予測つくのだろう。

「あなたって方は……体は大丈夫なのですか?」
「体?大丈夫じゃないよ、こうして座っていてもお尻が痛いよ」
「……じゃあどうして無理をなさるのですか?」
「だって、仕事とプライベートは別でしょう?」
「仕事とプライベート……そんな事を言う資格が貴方にありますか?」
比嘉に惚れたと言って社長に圧力をかけ、ヘッドハンティングした当の本人に言われたくないものだ。


「それより比嘉?」
「はい、何でしょう?」
「僕を社長室まで運んで行ってくれないか?」
「歩けないのですか?だから言っているのに……」
「此処までは大丈夫だったんだけどね、比嘉の顔を見たら何だか痛みが増して来たみたい」
「それは申し訳ございませんね」
まるで事務処理をするように言う真琴が、腹立たしくて比嘉もつい乱暴な口を利いてしまっていた。

「それに、まだ比嘉のが中に刺さっているようで……」
「う……それは重ね重ね失礼致しました」
「戻ろう」
真琴に急かされて、比嘉は真琴の体を抱き上げた。

「少し熱いですね、熱がありますね?」
真琴の体に触れるとその熱さに比嘉は、驚いた。
「うん、熱っぽい。夕べ比嘉が激しかったからね」
「貴方は私を煽っているのですか?」
「違うよ、事実を言っているだけだ」
ベッドの中での可愛さは微塵も感じられない物言いに、比嘉も返す言葉が無かった。

「午後からのスケジュールを調整致します」
そんな事を語りながら、社員の視線を背中に浴び比嘉は言い訳するように「ちょっと熱が……」と誤魔化す。
秘書課の女性社員が「お医者様をお呼び致しましょうか?」と声を掛けてきたが「大丈夫、それより1時までは、誰も通さないで」と真琴は指示し、下ろされたソファの上に深く腰掛けた。

「時間ありますから、薬を飲んで少し眠って下さい」
発熱もそうだが、睡眠も充分に摂れていないはずだった。
「ありがとう、そうさせてもらうよ」
今まで強気だった真琴も流石に辛いのか、そう言うと目を閉じた。

比嘉は真琴の背広を脱がせ、ネクタイも緩め抜き取ってやった。
ネクタイを外した途端に、真琴のスィッチが切り替わったように思えたのは気のせいなのか、いつもの幼い顔が現れた。

「はい、薬飲んで下さい」
「うん……」
真琴は手渡された薬を飲んだ後、何か言いたそうに比嘉の顔をじっと見つめた。
「いかがなさいましたか?」
「あのね……薬塗って」
やはりネクタイを外した途端に、比嘉の知っている真琴に戻ったようだ。

「さて、どこに塗れば宜しいでしょうか?」
比嘉は口角を上げて、判らない素振りでそう聞いた。
「比嘉が苛めた所……ちょっと熱い」
「苛めたつもりはありませんが?」
「じゃ?可愛がった所?」

「では、見せて下さい。今薬を用意しますので」
比嘉はそう言ってから、棚にある救急箱の中を探り、塗り薬を探した。
比嘉が真琴の所に戻ると、もうズボンも下着も脱いだ真琴がワイシャツ1枚の状態で、ソファに座っていた。
その姿は冷静に振る舞っていた比嘉を煽るには充分過ぎたが、ここで態度を変える事は比嘉の秘書としてのプライドが許さない。

「見せて下さい」あくまでも冷静に言葉にした。
比嘉の言葉に真琴は、ソファに顔を埋めるような体勢で腰を突き出した。
まだワイシャツの裾で、その白く小振りな尻は隠れている。
比嘉がそのシャツの裾を捲ると、重力に従ってシャツは背中半分まで滑り落ちた。

その姿は比嘉の嗜虐心を煽るには、お釣りが来るほど充分過ぎた。
「塗りにくいですね、両手で拡げてもらえますか?」
そう言いながら真琴の手を引いて、白い尻に導いた。

さっき会議室から何か小言でも喰らったのか、営業部長が渋い顔で出て来たのを思い出した。
ああいう輩がこの姿を見たら何と言うだろうか?
そう思うと、比嘉は可笑しくて仕方なかった。

(だが、こんな格好を見るのは俺だけで充分だ)
いや、誰にも見せたくないというのが本音だと、比嘉自身は判ってはいるのだが、それを素直に認めるのも癪に障るものもあった。

暫し、両手で尻を拡げている真琴の恥ずかしい姿に、見惚れていた。
「比嘉ぁ……まだぁ?」
真琴の湿った声に、比嘉は現実に引き戻され、塗り薬の蓋を指で摘まんで開けた。


比嘉はチューブから多めの軟膏を指に取り、剥き出しになった真琴の尻の肉に触れた。
そしてその狭間を覗き込むと、思った以上に赤味を帯び腫れていた。
「ああ、ちょっと痛そうですね、今軟膏を塗りますから力抜いて下さい」
そう言うと比嘉は、指に着けた軟膏を真琴の蕾の周りに塗り始めた。

「つっ……」
「少し我慢して下さいよ。指挿れますから」
「えっ?いやぁーん」ぷつっと差し込まれた指の刺激に真琴は甘い声を上げた。
「こんな場所で誘わないで下さいよ」
「さ・誘ってなんか……はうっ」
比嘉の丁寧過ぎる指の動きに、真琴の腰は自然と揺れてしまう。

比嘉は時間を掛けて、艶々とした蕾を作り上げた。
「さあ、これで良いでしょう」
そう言うと比嘉は社長室に隣接している洗面所で、手を綺麗に洗って来た。
だが、真琴はまださっきの状態のまま腰を上げている。

「真琴さん、ズボン履いて下さい」
「え、あ・ああ……」
「あと30分くらい寝られる筈です。時間になったら起しますので、眠って下さい」
比嘉はクローゼットからブランケットを持って来て、真琴の体に掛けてやった。

真琴の体の状態が今どうなっているのか判っている。
だが比嘉はそんな真琴を残し、社長室を出て行く。
「比嘉ぁ……」
少し甘えた声を出したが、性欲よりも睡眠欲が勝り、そのうち真琴の瞼は自然と下りていった。

お菓子な気持ち 9

 18, 2011 00:39
その頃比嘉は、秘書室に行き真琴の午後の予定を確認していた。
自分が変更した予定が最後の1件を除いては、元通りになっている。
「15時には退社出来そうですね」
ブツブツと独り言を言いながら、比嘉は最終調整をしていた。

あと30分で真琴を起し、午後1本だけ片づければ真琴の体は自由になる予定だった。
本当は熱のあるあの体で無理をして欲しくは無い。
だがそれを口に出すのは、何となく悔しいし、比嘉が言ってもネクタイを締めた真琴が聞くとは思えない。

念の為に女性秘書に声を掛けてから、比嘉も深く椅子に掛け目を瞑った。
だが目を瞑ると先ほどの真琴の恨めしげな顔が思い出され、自然と口元が緩んでしまう。

「比嘉さん……お時間です」
「ああ悪いですね、少し眠ってしまったようだ」
比嘉は起してくれた女性秘書に、社交的な笑みを見せてから社長室に戻った。
余程疲れたのか、真琴はまだ眠っている様子だ。
「ふっ……可愛い顔して眠っている」
昨夜の痴態は妄想だろうかと思う程に、あどけない顔で眠っている。

「真琴さん、時間です」
比嘉の声に重たそうに真琴の瞼が開いた。
「時間です」もう一度比嘉は呼び掛けた。
真琴に掛けていたケットを剥がすと、思った通りズボンも下着も着けていない。
比嘉はテキパキと真琴に身支度をさせ、最後にネクタイを締めさせた。
ぼんやりしていた真琴の顔がだんだんと、上司の顔に変わってくる。

そしてその日は、送るという比嘉に「用があるから、タクシー使うからいい」と言って真琴は一人帰った。
比嘉がその後、真琴の世話で残していた雑務に追われマンションに戻ったのは、夜も8時を過ぎた頃だった。
久しぶりに開放的な気分だった。
実際この所真琴の世話で自分の自由な時間がなかったのは確かだ。
だがこの自由な時間を少し寂しく思うのは……比嘉はそんな自分に溜め息を吐いてからシャワーを浴びに浴室に向かった。

明日は会社も休みだ、バーにでも飲みに行こうか?などと考えながらシャワーを浴び出て来ると丁度玄関のチャイムが鳴った。
柱の時計を見るとまだ8時半だが、この部屋に訪ねてくる人間は殆どいないはずだった。

比嘉はタオルを首に掛けたまま、インターフォンを取った。
見た事の無い男が画面に映っていた。こんな時間に何の勧誘か?と思いはしたが、その男の着ている服を見て不思議に思った。
レストランの白衣を着て立っている男は40代半ばくらいだろうか?

比嘉は全く予想もつかずに「どちら様でしょう?」と聞いた。
「遅くに申し訳ございません。私は隣の部屋のコックで御座います」
「隣と言うと……?」

比嘉がこのマンションを購入したのは2年前の事だった。
今の会社に移ってから2年目、ヘッドハンティングされた時の契約金や、過分な月々の給料や賞与を頭金にそこそこのマンションなら買えるだろうと探していた時に、社長が知り合いの不動産会社を紹介してくれた。

そこの担当者が、斡旋してくれたのが今住んでいるこのマンションだった。
新築だが一度人手に渡っているからと、破格の価格を提示された。
売主の老婦人は孫の為に買ったが都合が悪くなり、売却するとの事だったらしい。
売り急ぐと叩かれる場合もあるが、まだ未入居の部屋が半値近くまで下がるのは常識を逸脱していた。

比嘉は1週間待ってもらい、その間に調べられる事は全部調べた。
殺人?自殺?だが事件性も、その他のトラブルも何もない。
もしあったとしても比嘉もそこまで神経質では無いから、気にはならなかったかもしれないが、何よりもこの部屋の作りも立地条件も比嘉の求める理想を120%満たしてくれていた。
手放すには惜しい話である。

そして比嘉がこのマンションに住むようになってから2年。
その間に隣の住人と一度も会った事がなかった。
隣といっても、角部屋でマンションのパンフレットを見ると2億程する部屋で、リビングからはパノラマ状に東京の夜景が見渡せる部屋だった。

一度も会わない住人の事を、ここを担当した不動産会社の社員に聞いた事があった。
その時は他にも住居があって、今は管理の人間が出入りするだけで、無人だと言われた。
それを聞いて金持ちの税金対策か、などと思っていた。

「で、そのコックさんが何の御用でしょうか?」
インターフォンを通して比嘉が冷たい声で尋ねる。
「はい、もしお食事が未だでしたら、ご一緒に如何でしょう?と主人が申しております」
「食事?」
「はい、左様で御座います。今日からこちらに本格的に住居を移しましたので、そのご挨拶も述べたいとの事です」

比嘉は頭の中で色々な駆け引きをしていた。
そして瞬時にして答えを出した。
「判りました。ご招待ありがとうございます。とお伝え下さい」
「ありがとうございます。では9時にお越し願えますでしょうか?」
「では9時に伺わせて頂きます」

遅くまで仕事をしていた比嘉は勿論夕飯は食べ損ねているが、食事よりあの部屋の内装とその主に興味があった。
突然の招待と、9時という遅い時間に非常識さ感じるが、それより億ションと呼ばれる部屋を何年も放置出来る人物と、繋がりを持っていても損は無いだろう、という気持ちが強かった。

本来なら急な招待に手ぶらでも良さそうだが、比嘉はいざという時の為に日頃から年代物のワインを数本用意していた。
社長秘書をしていれば、いつ何があるか判らない。
実際何度かストックのワインが役に立ち、社長に感謝された事もあった。

今回は自分も飲む事になるかもしれないと考え、中でも一番好きなワインを抱え、9時2分に隣の部屋の前に立った。

お菓子な気持ち 10(完結)

 24, 2011 23:44
比嘉がドアの前に立つと、チャイムを押す前に中から鍵が開く音がして、ドアが開けられた。
「お待ちしておりました」
先ほどのコックではない初老の男が比嘉の前に立っている。
「この度はお招き頂き、ありがとうございます」
形式的な辞令を述べると「どうぞお入り下さい、ご主人様がお待ちで御座います」と恭しく頭を下げられた。

通されたのは、リビングではなく広いダイニングだった。
キッチンに近い場所にもテーブルが置かれていたが、手前の広いテーブルの上に豪華な料理が並べられていた。
普通の家ならこのダイニングだけで、一軒の家が入ってしまいそうな広さである。
並んでいるリビングからも、このダイニングからも東京の夜景が輝いて見える。
「素晴らしい部屋ですね……」
珍しく素直な感想が比嘉の口から零れた。だが、見回してもこの部屋の主の姿は見えない、先ほどのコックも見当たらなかった。

「私は、ここの執事の井上で御座います。ご主人様は只今入浴中で御座いますので、暫くお待ち下さいますか?」
人を招待しておいて、入浴中とはふざけていると思いながらも、比嘉は勧められた席に腰を下ろした。
一体この部屋の主は何者なのだろうか? 益々疑問が膨らんでくる。
比嘉は、持参したワインを大理石のテーブルの上に置く。食卓の上には、豪華な日本食が色彩豊かに、そして美味そうに並んでいる。コックの姿から洋食を想像していた比嘉は意外な気分でそれらを眺めていた。

「フランス料理は冷めますと味が落ちますので……」
比嘉の様子に執事が言い訳のような言葉を発した。この執事はなかなか侮れないらしい。
実際バターを多く使う料理は冷めたら不味い、その点和食の方が味は落ちにくいだろうと比嘉も想像できた。

そんな事を考えていると、背後に人の気配とボディシャンプーの匂いを感じた。
(やっとお出ましか……)
そう思いながら、振り返り比嘉が固まった。

「あ……」
「ようこそ」

そんな比嘉をからかうような視線を投げかける男を直視する。
「どうして……?」
「お腹空いたから、食べながら話そう?」
主が戻ったのを切欠に、執事が動き出し食卓のセッティングが全て整う。
「では、私はこれで失礼致します。比嘉様ごゆっくりとお過ごし下さい」
比嘉に向かい頭を下げ、そして主にも「では、ごゆるりと……」と言葉を残し部屋を出て行った。

「どういう事ですか?」
「こういう事」と言いにっこり笑う笑顔を、比嘉は張り倒したくなった。
「もしかして、私がこのマンションを破格の値で購入出来たのは?」
「知らない……」
流石に悪さがバレたと察したのか真琴は、比嘉の顔を見ようとはしなかった。
だが、比嘉にしてみれば悪さという範疇を超えていた。相場の半値で購入して喜んでいたマンションが……

「失礼します」比嘉が立ち上がろうとして椅子を引いた時に、真琴がぽろっと零した。
「ばか……比嘉の馬鹿」
「そうですね、私は馬鹿ですよ。何もかも貴方の思うままに動いて、さぞ面白かったでしょうね」
比嘉は金持ちの下らないゲームにでも付き合ったような気分だった。

「料理には罪はないよ、食べよう?」
真琴が小首を傾げて可愛く……いや小憎らしくそんな事を言って来た。
実際食卓の上の料理を無駄にするのに、比嘉も抵抗はあった。
比嘉は苦々しい顔で、立ち上りかけたその腰を又下した。

「いただきまーす」
「いただきます……」
流石にプロの料理人の作った料理は美味かった。
「美味しいね」
まるで、比嘉が怒っていないとでも思っているような言葉に、曖昧に頷いた。
「え?美味しくない?比嘉の好きな物ばかりの筈なのに……」
そう言えばそうだと比嘉は改めてテーブルの上を見回した。山うどの酢味噌和えなど普通並ばない。そして改めて少し気落ちした様子の真琴に向き直った。

「貴方は……。気まぐれで私の気持を弄ばないで下さい」
「弄ばれているんだ?比嘉」
言質を取ったと言わんばかりに真琴がニヤリとした。
「はぁ……大人をからかって何が楽しいのですか?大金まで掛けて……」
「何それ、マジで言っているの?」
急に真琴の顔が厳しくなった。

「伊達や酔狂で僕がこんな事をしたとでも思っている?」
「仕事から住居まで知らないうちに他人の手で操られていたのですよ。普通じゃない事は確かです」
「そうだよ、普通じゃない事は僕が一番分かっている。でも……それでも比嘉の全てを支配したかったんだ」
「支配ですか?」
比嘉は真琴のその言葉に完全に切れた。
「やはり貴方は私を弄んでいたようですね」
好きな料理を無駄にするのは勿体無いが、やはりこの席にはいられないと思い比嘉は再び立ち上がった。

「比嘉……」
とても悲しそうな目で、真琴が比嘉を見上げる。その顔に少し心がぐらついたが、人としての矜持がその手を取る事を止めた。
立ち上がった比嘉を真琴はまだ恨めしそうな顔で見ている。
「だって……本当は僕が比嘉を抱きたかった……」
「はい……?」
今聞いたのは空耳なのだろうか。とても信じられない言葉を聞いたような気がした。

「本当は……僕が比嘉の全てを支配して、この胸の中で微睡ませてやりたかった。でも比嘉はそれを望んでいない事を分かって。だから僕は比嘉に……」
「貴方は……貴方は私を抱こうとしていたのですか?」
「うん、僕の下でいっぱい感じさせて、僕も比嘉の中でいっぱい感じて。あぁ……」
想像したのか、真琴はうっとりとした表情を見せ始めた。
「ちょ、ちょっと待って下さいよ」
すっかり真琴のペースに引きずり込まれそうになって、比嘉は真琴を手で制止した。そして一度立ち上がった椅子に、再び深く腰を下ろし、頭を抱え込む。
真琴に抱かれる方は象像もしていなかった分ショックが大きい。全く真琴の思考には付いて行けない、脳みその中を一度覗いてみたいものだと思っても仕方ないだろう。

比嘉がつい我を忘れて思い悩んでいると、いつの間にか真琴が背後に来ていた。そして後ろから比嘉の体を抱きしめる。
「比嘉、怒ったの?もしかして金持ちの茶番だと思っている?」
「そう思われても仕方ないのではありませんか?貴方は少しおかしい」
「僕が何の努力もしないで比嘉を手に入れたとでも思っているの?」
「それは……」
「僕の父はああ見えても根っからの商売人だよ。無駄な投資はしない人だ」
それは比嘉も頷ける。父親の信用を勝ち取る為に真琴が努力した事も認めよう。だがそれでも言葉では言い表せない部分で納得できないのだ。

「僕はただ……比嘉が好きで、その為に使える全てを使った事が悪い事?僕に愛される資格はないの?」
「いや……愛に資格もなにも……」
「そう?じゃあ僕が比嘉の事をずっと好きでいいの?」
「駄目と言って聞くような人ですか、貴方は?」
「聞かないね」
真琴は、そう言って比嘉の体をぎゅっと抱きしめる。
「比嘉……今度抱いていい?」
「それは駄目です!」
比嘉はそれだけは即答で否定した。
「じゃあ僕をこれからも抱いてくれる?」
「まあ……それなら……」
「比嘉、好きだよ。比嘉は?」
「ふぅ……」
真琴の問いかけに比嘉は小さな吐息を漏らした。

「結局全てが真琴さんの筋書き通りですか……」
結局、真琴に言いくるめられたと比嘉は気づいた。普段着の少し可哀そうな頭の真琴も、ネクタイを締めたやり手の真琴もいつの間にか大切な人になっていた事に気づいた。何よりもこんなに自分を求めてくれた奴はいない。

比嘉は抱きしめていた真琴の腕をそっと解いて立ち上がった。その行動に真琴が不安な視線を向ける。
「真琴さん」
「はい……」
「私も貴方が好きですよ」
比嘉の言葉に真琴の顔が輝いた。
「本当に貴方って人は……こんな私のどこがそんなにいいのやら……」
「だって、好きなものは好きなんだもん」
「まったく……本当におかしな人ですね」
比嘉はそう言いながら真琴の顎を人差し指でそっと上げた。真っ直ぐ見つめてくる瞳には吸い込まれそうな艶が滲んでいた。

比嘉は、真琴の唇にそっと自分の唇を重ねる。真琴は比嘉にしがみつくように体を預けた。
美しい夜景をバックに、二人の新し夜がこれから始まろうとしていた。


                     <おわり>

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