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雷鳴 6

 02, 2010 22:39
「先輩……ここは?」
「俺の部屋だ、辛かったな、でももう大丈夫だ。それに……」
「はい……ありがとうございます。先輩がここに運んでくれたんですか?」

 忍は夕べの事は途中まで鮮明に覚えていたが、後半意識が朦朧として、現実か夢か判らなかった。強制的に玩具で体を拡げられ、辱められ何度も吐精した気がする。
 北村の顔を見て、一瞬夢だったのかとも思ったが、布団の中で少し腰を動かすだけで、体が軋み後ろに違和感と痛みを覚えた。

「俺と彬でここまで連れて来た……」
 何故か奥歯に物が挟まったような言い方をする北村をベッドの中から見上げた。
「……それで彬は?」
「彬からの伝言がある」
「はい……」
「『悪かったな、もう解放してやるよ』って。」

 忍はその伝言を目を閉じて黙って聞いていた。閉じた睫毛が震え、きらきらと光る真珠の粒が忍の眦(まなじり)から零れる。

「忍……?それは嬉し涙なのか、それとも?」
 あんな酷い人身御供のような事をしていた彬から解放されて、忍は喜んでいるのだろうか?
いや違う、忍の瞳は哀しみに覆われているように北村には映った。

 だが忍は北村の問いには答えようとせずに、ただ静かに涙するだけだった。
そんな忍の頭を撫でながら声を掛けた。
「もう少し寝てろ、もう何も考えずに」
 北村はそれ以外に掛ける言葉が見つからなかった。こんな付き合いでも彬と忍には5年の歴史がある、一言では言い尽くせない思いもあるだろう、と思った。

「先輩……僕……彬から離れちゃダメなんです……」
「な……なに言って?自分がどれだけ酷い目にあったかまだ判らないのか?」
「……うっ……」
「あのまま板野の部屋から正気で出られると思ってたのか?あいつはまともじゃないって、彬だって判ってたんだろ?そんな所に忍を行かせるなんて、俺には許せない」
「……うっ……先輩、ごめんなさい……」

 自分も彬から忍を身請けした事がある立場だ、彬の事も板野の事も責める資格は無いのかもしれないとは思いながらも、彬と忍が別れる事を望み、出来る事ならば自分が忍を愛する事を許して欲しかった。

「先輩……彬は悪くない……全部……僕と僕の叔母さんが……」
「はあ?どうしてそこにお前の叔母さんが出て来るんだよ?」
 北村は忍の言いたい事が理解できずに苛立った。そしてまだ彬の事を庇う忍にも腹が立った。

「僕は小さい頃、若くて綺麗な叔母さんが大好きだった……その叔母さんに彼氏が出来て、僕の事も凄く可愛がってくれたんだ。僕の両親は忙しい人だったから、学校から帰ると毎日叔母さんの部屋に行って遊んでもらった。
食事に行ったり、休日には遊園地にも連れて行ってもらった」

「叔母さんよりも少し年上だったオジサンは凄く優しくて、僕も大好きだったんだ。結婚するのかな?って思っていたんだけど、いつの間にか叔母さんは、その人と別れて僕が中学生になった頃に、違う人と結婚した……」

「だから、忍の叔母さんと何が関係あるんだ?忍……まだ疲れてるんだよ、もう少し寝ろよ」と北村は優しく髪を撫でるが、忍はまた言葉を続けた。

「僕がね……そのオジサンに可愛がられて楽しく過ごしていた時に……オジサンの本当の息子は死にかけていた。
食べる物も無い家でずっとひとり放置されてたんだって……。あと1日そのままだったら、死んでたって」

「僕がオジサンと楽しく遊園地で遊んでた時に、その子供は……どんなに寂しかっただろうね?先輩どう思う?」

 北村は、言葉を繋ぎながらも話す忍が不思議だった。
「忍……?」
「その子供が彬なんだよ」
「!」
 淡々と喋る忍の言葉に北村は絶句した。何という皮肉な運命がこの二人にはあったのだろうと。

「その事を彬は?」
「知らないと思う、僕も色々なパズルが合わさったのは大学に入学した頃だったから……」
「だ、だからと言って忍が気に病む事じゃないだろう?大人の問題だし」
「違うよ、大人の問題でも死にかけたのは子供の彬だったんだよ?」

「でも……彬の事は彬の両親がきちんとすべきだったんだろう?」
「そうだね、でも彬は母親にも捨てられ、父親にも捨てられた……そして彬は愛される事を知らないで育った……だから僕が愛してあげるんだ」

「そんな愛、同情か錯覚だと思わないか?」
「うん……そうかもしれない……でも先輩、それでも僕は彬の事が好きなんだ」
「あんなことをされてもか?」
「うん……彬だから、彬だったから」

「でももう終わりだね?彬は彬の意思で僕から離れて行ったんでしょう?」
「……」
「それに、僕が傍にいたら彬を駄目にしちゃうね……」

 疲れた体と心で長く喋ったせいか、忍はそこまで話すと静かに横になった。







「あぁっ……」

 明日は北村の卒業式だ、この二か月忍を支えてくれたのは北村だった。彬とはあの日以来一度も会っていない、連絡もとれない状態だし、大学に顔を出しているかさえ忍には分からなかった。
 学部が違い相手が意識して避ければ簡単に会う事などは出来なかったのだ。その間、忍の世話をやき精神的に支えてくれた北村に今忍は抱かれている。

「やぁぁ……」
 北村は忍の弱い所を知っているから、そこを集中して攻めていた。
「せんぱい……だめだ、変になる……」
「忍、忍……何もかも忘れて狂っていいよ」
 このまま身も心も北村に預けられたらどんなに楽になれるのだろう……


 3本の指を呑み込んだ忍の孔は最初こそ緊張で固かったけど、北村の丁寧な愛撫でもう違和感なく受け入れていた。
「あ―ぁん」
 北村の指が中の感じやすい箇所を強く擦っている。
「凄い締まる……」
 腕ほどある太さの玩具は入れられずに済んだが、それでもかなりのサイズの玩具を挿入された孔が元に戻るのだろうか?という不安も今はもう消えていた。中でバラバラと動く3本の指はもう苦痛よりも愉悦しか与えなかった。
「せんぱい……挿れていいよ」

 北村もこれが最後だと薄々感じていた。この二か月何度も忍に付き合おうと言ったが、忍は首を横に振るばかりだった。そんな忍が自分から身を差し出してきたのだ。

 多分忍自身の意思で彬以外の男と繋がるのは初めてだろうと北村は思った。
「挿れるよ、いいな?」
 忍の後孔に宛がわれた北村のペニスはもうこれ以上ないくらいに太く硬く熱く脈打っていた、そんな北村を忍は体いっぱいで感じている。

 ぐりっと挿入してくる異物に一瞬体は強張るが、北村にやんわりとペニスを握られ気を逸らされる。
「忍……凄くいい。熱くて直ぐにイきそうだ」
 北村は忍を煽るような言葉を吐きながら全てを埋めきった。
「あぁぁ……」
 動きを止めた北村に対しての安堵の吐息か、愉悦の吐息か北村は判らなかった。だが忍の中が良過ぎて北村もこれ以上じっとしているのは、苦痛に近かった。

「忍、これが最後なのか?それとも始まりなのか?」
「せ……んぱ……んん……」
 忍も久しぶりの繋がりに感じているのか、言葉にならない喘ぎを漏らす。
「せんぱい……今まであ、り、がとう、でも……ごめんなさい」
「忍……」
 予想通りの忍の言葉に打ちひしがれるが、北村は微笑んだ。

「俺は、これから先誰かと付き合う事があっても、忍の事は忘れないよ」
「先輩……僕も先輩のこと、忘れない……」
「動いていいか?」
 北村の言葉にこくんと頷き、忍は足を北村の腰に絡めた。
「忍……」
 忍がこんな積極的な姿勢を見せるのは初めてで、それがなお最後だと北村に知らしめた。逸る気持ちを抑えて、北村はゆっくりと味わうように忍の中で抽挿を繰り返した。

「先輩……はぁ……っ」
 肉壁が絡み付いてきて、忍が感じているのがよく分かる。忍は絡めた足に力を込め、北村のペニスを奥深く咥えようとしていた。
「奥がいいの?」
 北村が聞くと黙ってこくっと頷く忍の最奥を目指して腰を振った。
「あぁぁぁ……せんぱ……気持ちいい」
「そうか、もっと感じてくれよ……」
 最後だからという言葉を北村は呑み込んだ。


 忍の体はここにあっても、心はここに無い事は知っている。
「はっはっ」と北村の動きに合わせるように忍が喘ぎともつかない息を吐く。ここまで来ると二人の間に会話など無かった、肉のぶつかる音とそこから聞こえる卑猥な水音だけで充分だった。

 北村の激しい動きに耐えかねて忍がイってもいいかと聞いてきた。
「いいよ、全て吐き出して……」
 北村の言葉の意味を忍は分かってくれるのだろうか?そう思いながらも、もう北村も留まる事は出来ない状況に追い込まれていた。
「一緒にイこうか?」
 せめて最後くらい一緒に昇りつめたい。


「先輩、今までありがとう」
 最後の言葉を吐いて忍が部屋を出て行ったのは、それから1時間過ぎた頃だった。もう二度と関係を持つ事はないだろうと北村も忍も思っていた。


 最初から最後まで二人の間には彬がいたのだ。
(彬の……ばか……)
 北村のマンションの帰り道、忍は心の中で何度も呟いた。



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