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天使が啼いた夜(修正版)3

 01, 2010 00:00
2時50分櫻井紫苑はDOMOTOの受付に居た。
「すみません、3時に約束している櫻井と申しますが・・・」
受付嬢は社交的な微笑みを浮かべて
「少々お待ち下さいませ」と丁寧に答えてくれた。

「櫻井様ですね?伺っております。20階にも受付が御座いますので
そちらの方へお願い致します。」
そう言って左手のエレベーターを案内してくれた。

礼を延べてエレベーターに向かう紫苑の背中を頬を染めて見送る受付嬢に
「どうしたの顔赤いよ?」と慣れ知った深田が声を掛けてきた。
「あっ深田さん、お疲れ様です・・・だって凄い素敵な方なんですもの。
見惚れても仕方ないと思いません?」
「で?彼は何処へ?」
「うふふ・・・20階よ」
それが何を意味してるかは鈍い深田にでも判る。
20階には社長室と秘書課と役員室しかない。
平社員ではまず足を踏み入れる事が無い階だったのだ。

「なんだぁやっぱり雲の上の人だったのかぁ」
と意気消沈する深田に向かって、
「えーっ?深田さんって男の人が好きだったんですかぁ?」
と興味深々で言われるまで、自分が一目惚れしてしまったのが
同性だった事に気が付かないでいた。

次の来客に向かって営業スマイルを向けてる受付嬢に
言い返す事を諦めて、エレベーターに向かって歩き出した。


一方20階の社長室では、秘書の浅田が「もうそろそろですね?」と
ワクワクした面持ちで櫻井の訪問を待っていた。
多分今回の面接を社長である堂本よりも待ちわびていたのだ。
そろそろ自分の左腕を育ててみたいと。
勿論秘書課には優れた人材は居たが、自分が直接育てたいと思う程の者は居なかった。

「何か随分楽しそうじゃない?浅田?」
「だってあの山口が紫切ったんだよ、どんな素敵な女子学生が来るか期待大だよ」
「そう、その上俺が1週間で落ちるとまで言いやがった。」
「バカラのワイングラスだっけ?」
「ああ」
忌々しそうに煙草を揉み消しながら、堂本は窓の外の街を眺めていた。

その時秘書課の受付から「櫻井紫苑様がお出でです」と内線が入った。
「通して」

間をおいてコンコンとドアがノックされる。
「入りなさい」

「失礼します」とすーっとドアを開けて入って来たのは
美人の女子学生ではなく、超が付く程美麗な男子学生であった。

浅田は想像していなかった男子学生という事よりも
その立ち姿の美しさに思わず見惚れてしまった。
見た目だけじゃなくて、育ちも良いのだろう。

「秘書室長の浅田です。」
「櫻井紫苑です、宜しくお願い致します」
学生課からの推薦状と履歴書を持って来ましたか?」
はいと返事をして書類を手渡しながら、紫苑は内心
『倉庫の整理や検品だって聞いてたのに、もしかして間違えて来てしまった?』
黙って履歴書に目を通している浅田に向かい
「もしかして間違えて来てしまいましたか?倉庫の仕事だって聞いてたんですけど・・・」
どう見てもこの立派なビルと、その最上階に位置する社長室と倉庫が結びつかない。

「イヤ間違ってはいない」
といきなり窓の方から低音の声が響いてきた。
緊張していた紫苑は窓際に人が居たことすら気づいていなかったのだ。
ビクッと体がソファから飛び上がりそうになってしまった。

浅田はくすっと失笑しながら、
「あぁ紹介が遅れましたが、彼がここ株式会社DOMOTOの社長の堂本紫龍です」
紫苑はすくっと立ち上がり「T大学3年の櫻井紫苑です。宜しくお願い致します」
と綺麗な姿勢でお辞儀をした。

堂本は浅田から渡された履歴書の住所欄を見た時に少し眉を動かしたが
そこには触れず、「一人暮らし?家族は?」
「はい、1年前までは祖母と暮らしていましたが、今は一人です。両親は他界しました」

「そう・・・・大学は何か勘違いしたかな?倉庫の仕事は今間に合ってる。」
それを聞くとがくっと肩を落として「そうですか・・・・」と残念そうに呟く。
「ここでの書類整理のバイトならあるが?やるか?」
「えっ?はい、やらせて下さい」
『良かったぁ、倉庫整理も書類整理も同じような事だよなぁ』と紫苑は胸を撫で下ろした。

「ところで良い時計をしているね?」堂本の問いかけに
「はい、祖母が二十歳のお祝いに長く持てる物をとプレゼントしてくれた時計です」
右手でそっと時計を抱くように答えた紫苑の瞳は何故か寂しそうだった。
「その時計が幾ら位するか知ってる?」
「えっ?じ・じゅうまんはします?」自信なげに答える紫苑に向かい
「そうだな、とにかく大切にした方がいい、私は席を外すからあとは秘書の浅田に聞いて」

浅田は畏まりました、と頭を下げながら堂本を見送ると
「さて、櫻井君、今後の話をしましょうか?」
と紫苑に向き直った。


浅田と櫻井が社長室で話しを詰めてる頃
堂本は同じフロアの応接室で山口に電話掛けていた。
「おい!男だとは言わなかっただろう!」
「女とも言わなかったけど?」
「じゃ何で俺が1週間で落ちるんだよ?」
「おや?好みじゃなかったですか?」
「そういう問題じゃない!」
「櫻井綺麗だろ?何回綺麗って思った?
思った回数が多ければ多い程・・・・わかる?
じゃ、1週間後楽しみにしてるよ」とあっさりと電話を切られてしまった。

全く腹立たしい・・・・そりゃ白くて長い指、形の良い爪見て綺麗だと思ったさ。
頬のラインも良かったなぁ、寂しげな目元も・・・きりっとした口元も・・・・
短い時間しか一緒に居なかったのに、いくつ綺麗さを上げるつもりなんだよ?
やばい、山口の策に陥ってしまう。
カフェで珈琲でも飲んでこよう堂本は気分を変えるべくカフェに向かった。

2階のカフェは自分の珈琲好きが高じてオープンしたような店だから頻繁に足を運んでいる。
一般席の奥にきっちりVIPルームも作ってある。
勿論一般には使用されない堂本だけの専用シートである。

カフェに入ると、「冷たいのを、それと店長を呼んで」と言いながら奥へと消える。
ノックの後「失礼します」とアイスコーヒーを運んできた店長に向かい
「客足はどうだ?」
「そうですね、最近暑くなってきてますし、
冷たい飲み物を求めるお客様も多くなりましたし
夏の賞与も出てる企業も多いですので、結構繁盛しております」
「そうか、まぁ頑張ってくれ」

「そういえば、今日の午後に凄い美青年客があって、近くの席のお客様がこぞって『お替り』を申されてたそうですよ」
楽しそうに報告する店長に向かって堂本は
「もしかして黒のポロシャツ?」と聞いてみた。

「えっ?流石社長、もう情報が入ってきましたか?珈琲を運んだ菊池君なんか
後で鼻血出してましたよ、白い項が官能的だとか何とか言って」
それを聞て『俺は項なんて見ていない!』何故か不機嫌になってしまう堂本だった。


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COMMENT - 9

-  2010, 10. 20 [Wed] 00:57

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-  2010, 10. 20 [Wed] 01:11

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kikyou  2010, 10. 20 [Wed] 01:25

鍵コメ NKさま

こんばんは。

読んで下さってありがとうございます。
あ・・・誤字もありがとうございます。

麗・・・アンケでは3本が並んでいる状態で、ちょっとびっくりでした。
追い上げが凄いんです。
悩みます、私も・・本当は全部したいです。

でも見直ししてもまだ間違ってる私^^;

J庭まで10日となったので、画像を変えてみました
(番宣みたい?・笑)

コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 10. 20 [Wed] 01:31

鍵コメ miさま

こんばんは。

あらら・・タイミングがいいのか悪いのか?(笑)

紫苑は最初の子なので、やっぱ一番可愛いですね。
おっとり天然ちゃんで、書きやすいので紫苑関係だけで120話超えてるかと・・

テンプレも素敵でしょう^^;
ふぁっとした雰囲気が紫苑そのものです。
庭に合わせて、プロフ画像も入れ替えてみました♪


スパム・・禁止ワード無いんだけどなぁ
そういえば私も先日それで返信できなかったんだ・・
ちょっと確認します(色々お手数おかけしました)

コメントありがとうございました。

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-  2012, 09. 15 [Sat] 15:10

承認待ちコメント

このコメントは管理者の承認待ちです

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たまき  2015, 12. 23 [Wed] 17:01

すごくすてきです。

こんにちは!
鉄線の「さくらみち」も大好きです。何度も読みました。
こちらのページを知ることができて本当にうれしいです。

「天使の啼いた夜」の第一部の4話以降もぜひ読ませて下さい。
どうぞよろしくお願いします^:^
お待ちしています^^

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kikyou  2015, 12. 28 [Mon] 02:46

たまき様

こんばんは。

お知らせありがとうございました。
四話以降をまだ加筆していなくて、そのままになっていました。
その上忘れていました……スミマセン
少しずつ、アップしますのでお待ち下さいね。

コメントありがとうございました。

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たまき  2015, 12. 28 [Mon] 18:01

うれしいです^^

kikyouさま
ありがとうございます。
つづきが読めてとてもうれしいです^^
よい年の瀬をお迎えくださいませ。

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kikyou  2015, 12. 30 [Wed] 06:05

たまき様

おはようございます。

少しずつですが……
加筆修正が多すぎて、自分でもビックリしているんです。

今日から正月休みになりました。
家事……やる事が沢山あるのに、PCの前にいます(笑)

たまき様も良いお年をお迎えください。
コメントありがとうございました。

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