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雷鳴 8

 02, 2010 22:44
「可愛い人だ……」
 北大路から見ても忍は、初めて会った男と簡単に関係を持つようなタイプには到底見えなかった。
「疲れてゆっくり眠ればいいよ」
 どこまでも優しい北大路に忍は身を預けた。

 ベッドに横たえられた忍の……着たばかりの衣服を北大路は慣れた手つきで脱がしていく。
 体を這う舌や指に忍はあっという間に追い詰められてしまう。
「感じやすいんだね」
 そう言われ忍は、恥ずかしさに身を捩るが、その唇が乳首に吸い付いた時に忍の口から小さな喘ぎが零れてしまった。
「ここいいの?」
 そんな事を聞き、また吸い上げながらも舌先で転がすのも北大路は忘れてはいなかった。

「あぁぁ……っ」
 北大路の唇は乳首から離れる事はないのに、その手は忍の中心に伸びた。そこはもう先走りの蜜を零し、しとどに濡れていた。
「浅井さん……忍……可愛い」
「恥ずかしい……」
 忍は直ぐにでも爆ぜてしまいそうな自分が本当に恥ずかしかった。男なら判るその感覚を悟った北大路が囁いた。
「いいよ、イきたければ……一度出しておいた方が後が楽だから出しなよ」
 そう言いながらその手の動きを早めた。

「だめっ!そんなに早く……動かしたら……本当にイっちゃう……」
 だが抵抗も空しく、半年ぶりの人肌に忍は簡単にイかされてしまった。
「あぁぁぁ……」
 何故だか悲しくて涙が零れてしまう。
 いや本当はその理由はとっくに判っていたのだ……もう引き返せないと。

 最後の一滴まで絞り出され忍は喘ぎながらも、夕べ自分で得られなかった解放感に漂っていた。
「キスしていい?」
 北大路は忍の顔を覗き込んで聞いてきた。一瞬躊躇った後……忍は頷いた。
 
 その忍の躊躇いを見て「好きな人いるんだ?」と北大路は聞いた。つつーっと忍の頬を涙が零れるとそれを優しく吸い取る唇がある。
「……もう忘れた方がいいんだ」
「俺が忘れさせてあげる」
 そう言い北大路の唇が重なろうとした瞬間に玄関のドアが乱暴に叩かれた。

 忍の体が強張り小さく震える。
「誰か訪ねて来る予定だった?」
「新聞の勧誘かもしれない……無視していいよ」
 だがドアを叩く音は止みそうになく、ドアノブまでガチャガチャと回され、北大路が立ち上がった。
「俺が出てきていい?」
 不安な顔のまま忍が頷くと北大路はズボンだけ身に着けた格好のまま、玄関に向かおうとした。

 ドンドンという激しい音と共に「忍っ、いるんだろう!!」という声が聞こえ、北大路は足を止め忍を振り返った。一番聞きたくて、一番聞きたくなかった彬の怒ったような声に忍の震えが大きくなった。


 玄関近くまで行った北大路が振り向き「どうする?」と聞いた。忍は覚悟を決めて頷いた。
 ガチャッとロックを外し扉を開けた北大路の前に彬が立ち塞がった。少し身構えた北大路を悲しい目で一瞥し、彬はベッドの忍の所まで詰め寄った。
 肌掛けを掛けてはいるが、その下は全裸の忍は体を隠すように座っていた。だが彬は乱暴にその布団を剥がし、怒りとも軽蔑とも判らぬ視線を忍に投げた。

「何やってんだよ?何で男なんか引っ張り込んでんだよっ!?」
「あ……彬にはもう関係ないから……」
 忍は剥がされた布団を手繰り寄せ体を隠しながらそう言った。

「何で元の世界に戻ってくれないんだよ……」
「元の世界?彬は僕に女性と付き合って女性を抱けって言うの?」
「ああそうだ!」

 彬の勝手な言い分に忍は怒りを露わにして叫んだ。
「誰が……誰がこっちに引っ張り込んだんだよ!?それに、今更戻れる訳ないじゃん……」
 忍は自分が女性を抱くなんて想像もした事も無かったし、自信を持って無理だと言えた。元々自分の嗜好がこうだったのか、それとも彬の影響なのか今となっては判らないが、元に戻れない事だけは確かだと思った。

 すっかり北大路の存在を忘れたような二人に向かって北大路が口を開いた。
「ねぇどっちが帰ればいいの?」
「帰ってくれないか?」その問いに答えたのは彬だった。
「俺は忍に聞いているんだけど?ねぇ、まだ1回くらいじゃ足りないでしょう?」
 明らかに彬を挑発しているような言葉に彬が北大路を振り返った。
「寝たのか?」
 だが北大路は肩を竦めただけで何も答えようとはしなかった。

「帰って!」
 突然の忍の声に二人振り向くと「帰って、彬!」と忍は繰り返した。
「忍……」
「僕たちは、もう終わったんでしょう?もうとっくに終わってるじゃない、なのにどうして?」
「そうだな……俺たちは始まってもいなかったんだったよ……」
「え……?」
「あの……あのレイプ事件を仕組んだのは俺だからな」
「彬……何言って……?」

「あの高校二年の時の、あれは俺が仕組んだって言っているんだ。お前を俺のものにする為に、弱みを握ったあいつ等を使ってお前を襲わせたんだ……」
「彬……どうして?」
「だから、俺のものにする為だと言っているだろう?」
「そんなの……普通に出会えば良かったじゃない?わざわざそんな事仕組まなくても……」
「判らなかったんだよ、どうやればいいのか判らなかったんだよっ!」

「酷い……」
 忍はあの日を境に今でも雷が鳴ると思い出し震える思いをしていた。
「僕たちは、罪悪感だけで付き合っていたの?」
「僕たち?」
 忍の言葉に彬は眉を顰めた。

「そうだよ……彬が……子供の頃親に見捨てられ死にそうになっていた時……彬のお父さんと一緒に遊んでいたのは僕だ……彬のお父さんの相手は僕の叔母だった」
「何だよそれ?」彬には寝耳に水だった。

「彬が食べる物も無い家でひとりで怯えていた時に、僕と叔母は美味しい物を食べて、遊園地にも行って……楽しかった……」
「いつ?いつから俺の事知っていた?」
「高校を卒業したあと……」
「だから……だから俺の無茶もお前は文句言わずに受け入れていたのかよっ?」
「そうだよ、僕は事実を知ってからいつも彬に対して罪悪感でいっぱいだった……でも、もうそれも終わりだ、もう僕は彬から解放されてもいいよね?」

「……そこに愛はあったのか?」
 人の愛し方が判らない彬が初めて『愛』を口にした。
「さあどうだろう?もう今となってはどうでもいいんじゃない?」
 愛があったと言えば彬は救われるのだろうか?だけど自分が傍にいると彬は駄目になる……

「彬、帰ってもう二度とここには来ないで」
 忍は最後の言葉で彬を突き放した。
 ―――彬は項垂れたまま、静かに部屋を出て行った。
 レイプが未遂に終わった忍と彬の傷を秤に掛けたら、彬の傷の方が大きいのは忍にもよく判っていた。

 彬の足音が遠ざかると、忍は堪えていた涙をボロボロと零し、頭から布団を被った。
 忍の傍に来た北大路がその背中を布団ごしにポンポンと叩いてくれている。
「馬鹿だなぁ……まだ好きって顔してるじゃん」
「うっうっ……ううっ」
 どのくらいそうしていただろうか?忍が布団から顔を出した時、北大路は優しい顔で忍を見ていた。

「ごめんね、変なことに巻き込んでしまって……」
「いいよ、これも何かの縁だし、それにフリーになったんなら俺立候補したいし」
「北大路君……」
「直ぐにとは言わないよ、気持ちが落ち着いてからでいいし」
「どうしてそんなに優しいの?」
「まあ、俺だって結構修羅場潜って来たし」と北大路は静かに微笑んだ。

「北大路君もてそうだもんね」少し落ち着いた忍もそう言って微笑んだ。
「その北大路君てのは止めてもらいたいけど……実は俺もアキラって言うんだよね」とバツの悪そうな顔で北大路が言った。
「改めて、俺は北大路旭って言うんだ、旭は旭川のアキラね」
「アキラ……」皮肉な名前に忍も苦笑してしまった。


「で、続きどうする?」


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COMMENT - 1

asamiy  2011, 12. 05 [Mon] 22:23

エロエロ万歳♪

kikyou様こんばんは♪
素敵なお話をありがとうございます!!
エロエロに挑戦!!とのことですが、
ほんっとに鬼畜でエロくてサイコーです♪
でもkikyouさんのお話は、ただエロいんじゃなくて
切なさがあるのがとっても好きです。
お忙しいとは思いますが、これからも楽しみにしています♪

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