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「駄目だ、慶吾が怒る」
先日までは自分でやらないか?などと聞いてきた徹の言葉とは思えなかった。
「どうして?それにこの前だって先生は何も言わなかった」
言わなかったどころじゃない、徹に言われて手だけ参加しているのだ。
「この前と今回じゃ状況が違う」
立夏は、どうして徹が頑なに拒否するのか全く分からなかった。
「先生には内緒にする」
慶吾はこの状況で立夏がそんなバイトをすると言い出したら、その原因を追究するだろう。そうなるとドレスの弁償の話になってしまい、きっと余計に叱られてしまいそうだった。
女子じゃないんだから、裸の写真を撮られてもあまり影響はないと、立夏は考えていた。
「減る物じゃないし……」
立夏の口からは珍しくいまどきの若者風の言葉が零れてしまった。
先日は、ドレスの撮影の流れでなし崩しっぽい撮影だったので、立夏の中にも警戒心は全く芽生えていなかったのだ。
「立夏、これ見ろ」
徹は乱雑な机の上からがさがさっと探し当てた雑誌を、立夏に投げて寄越した。
「うっ……」
その雑誌の表紙からして立夏の想像を超えていた。
筋肉剥き出しの男性が表紙の雑誌だった。
「俺の友達が編集部にいる。今度写真撮るんだったらマジそこに売りつけるぞ」
徹が脅すように立夏に言って来た。
「マジって?」
じゃあ先日の撮影は何だったのだろう?自分は2万円もの金を既に受け取っているのだ。
「これは海外のだ」
そう言って徹がもう1冊の雑誌を寄越した。それは表紙を見ただけで嗜好が分かるような物だった。立夏は無意識のうちに頁をぱらぱらと捲った。
そしてあまりの衝撃に体から力が抜け、腰を落した。その落した先は先日立夏が痴態を見せた徹のベッドの上だとは立夏は気づいていないようだ。
「無防備だな……街でいいバイトがあるなんて声掛けられても付いて行くんじゃないぞ」
「え……あっ」
言われて思い出した事があった。去年バイトに行っていた駅近くで、2度ほど声を掛けられた事があった。運悪く(当時はそう思っていた)本当にバイトに遅刻しそうで立夏は呼び止められて一度は立ち止まったが、急いでいるのでと言って話を聞く事は出来なかった。
立夏の表情を見てとった徹が深く溜め息を吐いた。
「全く、簡単に騙されるんじゃないぞ」
徹の声は、揶揄するよりも安堵の色を含んでいた気がしたが、立夏はそんな徹をきっと睨んで聞いた。
「じゃあ、この前撮った写真は何?」
「あれは……趣味と実益?」
「はあ?何それ……」
「いいんだ、俺が撮る分には安心して撮られていろ」
何か勝手な言い分に立夏は納得できないでいた。
「趣味って誰の?」
「お、俺のだ。綺麗な被写体には食指が動く。撮ってみたいと思うんだ」
「じゃあ実益って?」
「そ、それは……お前の写真を撮ってくれって依頼があったからだ」
「誰から?」
「企業秘密だ」
「何かそれって変じゃない?」
「変じゃない」
全くもって納得などいかないし、徹の言っている事はぶれぶれだ。
何時の間にか徹が立夏の目の前に立ち、立夏を見下ろすような体勢になっていた。
立夏は、渡された外国の雑誌を見てはいないが、まだ手に持っていた。その雑誌を立夏に持たせたまま徹が捲り始めた。
ある頁で手を止めた徹が、立夏に諭すように言う。
「こんな写真を撮ってもいいのか?」
徹が開いた頁には、ひとりの男が背後から犬の交尾のように重なっている写真だった。
ひと目見て立夏は眉を寄せた。だがほんの少しだけ体の奥に疼くものを感じたが、その感覚を即座に否定して雑誌を閉じた。
でも口から飛び出した言葉は、立夏自身も思いもよらなかった言葉だった。
「こんなの一人じゃ撮れない」
自分の言葉が、自分の声となり鼓膜に響いて立夏は驚いた。
「あ……そういう意味じゃなくて……」
慌てて訂正したが、徹の口端が厭らしく上がった。
「へえ?根っこは否定しないんだ?」
「あ、え、あの……」
徹が言う根っことはきっと男性同士の繋がりの事を言っているんだと思えた。
立夏は一番最初に否定する所を間違えたと、自分でも徹に言われるまで気づかなかったのだ。
狼狽える立夏の至近距離に徹の男らしく精悍な顔があった。
息がかかる程の位置にある徹の唇が、立夏の柔らかい唇を掠めた。
キスされるような気配はしていたけど、まさか本当にされるとは思わなかった立夏は、目を開けたまま徹のスローモーションのような動きをただ見ていた。
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◇すみません日曜日、月曜日は地方に行きますので、更新は難しいと思います◇
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先日までは自分でやらないか?などと聞いてきた徹の言葉とは思えなかった。
「どうして?それにこの前だって先生は何も言わなかった」
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立夏は、どうして徹が頑なに拒否するのか全く分からなかった。
「先生には内緒にする」
慶吾はこの状況で立夏がそんなバイトをすると言い出したら、その原因を追究するだろう。そうなるとドレスの弁償の話になってしまい、きっと余計に叱られてしまいそうだった。
女子じゃないんだから、裸の写真を撮られてもあまり影響はないと、立夏は考えていた。
「減る物じゃないし……」
立夏の口からは珍しくいまどきの若者風の言葉が零れてしまった。
先日は、ドレスの撮影の流れでなし崩しっぽい撮影だったので、立夏の中にも警戒心は全く芽生えていなかったのだ。
「立夏、これ見ろ」
徹は乱雑な机の上からがさがさっと探し当てた雑誌を、立夏に投げて寄越した。
「うっ……」
その雑誌の表紙からして立夏の想像を超えていた。
筋肉剥き出しの男性が表紙の雑誌だった。
「俺の友達が編集部にいる。今度写真撮るんだったらマジそこに売りつけるぞ」
徹が脅すように立夏に言って来た。
「マジって?」
じゃあ先日の撮影は何だったのだろう?自分は2万円もの金を既に受け取っているのだ。
「これは海外のだ」
そう言って徹がもう1冊の雑誌を寄越した。それは表紙を見ただけで嗜好が分かるような物だった。立夏は無意識のうちに頁をぱらぱらと捲った。
そしてあまりの衝撃に体から力が抜け、腰を落した。その落した先は先日立夏が痴態を見せた徹のベッドの上だとは立夏は気づいていないようだ。
「無防備だな……街でいいバイトがあるなんて声掛けられても付いて行くんじゃないぞ」
「え……あっ」
言われて思い出した事があった。去年バイトに行っていた駅近くで、2度ほど声を掛けられた事があった。運悪く(当時はそう思っていた)本当にバイトに遅刻しそうで立夏は呼び止められて一度は立ち止まったが、急いでいるのでと言って話を聞く事は出来なかった。
立夏の表情を見てとった徹が深く溜め息を吐いた。
「全く、簡単に騙されるんじゃないぞ」
徹の声は、揶揄するよりも安堵の色を含んでいた気がしたが、立夏はそんな徹をきっと睨んで聞いた。
「じゃあ、この前撮った写真は何?」
「あれは……趣味と実益?」
「はあ?何それ……」
「いいんだ、俺が撮る分には安心して撮られていろ」
何か勝手な言い分に立夏は納得できないでいた。
「趣味って誰の?」
「お、俺のだ。綺麗な被写体には食指が動く。撮ってみたいと思うんだ」
「じゃあ実益って?」
「そ、それは……お前の写真を撮ってくれって依頼があったからだ」
「誰から?」
「企業秘密だ」
「何かそれって変じゃない?」
「変じゃない」
全くもって納得などいかないし、徹の言っている事はぶれぶれだ。
何時の間にか徹が立夏の目の前に立ち、立夏を見下ろすような体勢になっていた。
立夏は、渡された外国の雑誌を見てはいないが、まだ手に持っていた。その雑誌を立夏に持たせたまま徹が捲り始めた。
ある頁で手を止めた徹が、立夏に諭すように言う。
「こんな写真を撮ってもいいのか?」
徹が開いた頁には、ひとりの男が背後から犬の交尾のように重なっている写真だった。
ひと目見て立夏は眉を寄せた。だがほんの少しだけ体の奥に疼くものを感じたが、その感覚を即座に否定して雑誌を閉じた。
でも口から飛び出した言葉は、立夏自身も思いもよらなかった言葉だった。
「こんなの一人じゃ撮れない」
自分の言葉が、自分の声となり鼓膜に響いて立夏は驚いた。
「あ……そういう意味じゃなくて……」
慌てて訂正したが、徹の口端が厭らしく上がった。
「へえ?根っこは否定しないんだ?」
「あ、え、あの……」
徹が言う根っことはきっと男性同士の繋がりの事を言っているんだと思えた。
立夏は一番最初に否定する所を間違えたと、自分でも徹に言われるまで気づかなかったのだ。
狼狽える立夏の至近距離に徹の男らしく精悍な顔があった。
息がかかる程の位置にある徹の唇が、立夏の柔らかい唇を掠めた。
キスされるような気配はしていたけど、まさか本当にされるとは思わなかった立夏は、目を開けたまま徹のスローモーションのような動きをただ見ていた。
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