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ラストダンスは貴方と 20

 21, 2011 00:12
やっと満足した彰人が離れたのは、もう直ぐ正午という頃だった。
玲も指先すら動かせない体をベッドに横たえていた。
「開店の準備があるから俺は出かけるけど、玲はゆっくり寝ていて。夜には美味い物でも食いに行こう」
名残惜しそうに玲の背中にキスをしてから、彰人はシャワーブースに消えた。


―――どうして4年もの間自分は彰人を忘れていられたのだろうか?
まだ細かい事まで完全に思い出したわけではないが、この体は明らかに彰人を覚えていた。重なる肌がとても心地良いのに、まだどこかで不安が残っていた。


白いガウン姿の彰人が戻って来た。その姿を見て玲は何故か鼻の奥がつんと痛くなる。
「彰人、来て……」
「どうした?」
タオルで髪をがしゃがしゃと乱暴に拭きながら彰人がベッドの端に腰掛けた。

「彰人……行かないで。寂しい」
驚いた顔を見せた彰人が玲の髪を優しく梳きながら、直ぐ戻るからと子供に言ってきかすようにあやした。
「うん、ごめん」
「まだ頭が混乱しているのか?ゆっくり寝ておけ」
「うん……」


遠くでドアの閉まる音を聞いてから、玲は再び目を閉じた。体はとても疲労していたが、神経が昂ぶっていてなかなか寝つけなかった。
やっと微睡んだ頃、ベッドサイドの携帯が鳴り玲は眉根を寄せながら、携帯を取り上げた。

「あ……」
出かけている彰人からかと思っていたが、液晶画面には久しぶりに見る名前が表示されていた。
「ひさ……く、久美ちゃん?」
「玲、元気してた?」
玲にそう聞く久美の声は酷く沈んでいる。その声を聞いて玲の心がずんと音を立てたような気がした。


「久美ちゃん、どうかした?」
「ううん、久しぶりに玲の声が聞きたかったから……」
「久美ちゃん、あのさ……俺店は辞めたんだ」
「えっ?何かあった?」
「店を移るかもしれない……ホストクラブじゃないけどさ」

心ばかりではなく、完全に女になった久美が心配そうに色々聞いて来た。久美は玲が心を許せるたった一人の兄弟のような者だった。
「俺の方は大丈夫だけど、久美ちゃん何かあったんじゃないの?彼氏と上手くいっている?」


「うん……上手くいっているよ」

だけど、久美の声はとても幸せそうには聞こえない。
「久美ちゃん、これから俺と会わない?俺も久美ちゃんに話す事が沢山あるんだ……」
玲は彰人との事、義父との事を久美に全て話そうと思っていた。誰かに話して『玲は悪くないよ、気にする事はない』と言って欲しかったのかもしれない。


「……ごめん玲。今は玲の顔を見られない……見たくない」
「久美ちゃん……」
顔を見たくないのなら、何故電話などしてきたのだろうかと玲は不安になった。
「久美ちゃん、今何処?直ぐ行くから会おうよ」
「玲、あいつには気を付けて……じゃあ……声が聞けて嬉しかった」

「久美ちゃん、待って!切らないでっ。あいつって誰だよ?!」
―――ツーツーツー
玲の焦った声をあざ笑うかのように、電話の不通の機械音が耳に残った。玲が慌てて電話を掛け直しても久美がその電話に出る事は無かった。

ずっと玲の心に圧し掛かっていた重石が重力を増した。がんがんと何かが激しい警鐘を鳴らす。
「久美ちゃ……久志兄ちゃん!」
体中から熱い血が無くなり、指も頬も一気に冷たくなった震える体を、玲は自分で抱きしめていた。


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危険地帯突入する? yes

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COMMENT - 1

-  2011, 10. 21 [Fri] 10:25

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