玲の体を優しく、激しく抱きながら彰人は心の底にまだ納得いかないものを感じていた。玲は繊細な子だったが、玩具でいたぶられただけで心を壊してしまい、記憶を部分的に失くしてしまうほど弱くは無いと思っていた。まだ玲も気づいていない何かがあるのかもしれない……
だけどこれ以上無理に思い出す必要は無い。自分と愛し合っていた事だけを思い出してくれれば良かったのだ、それ以外に玲を傷つけるものなど要らない。
彰人は空白の４年間を埋めるようにきつく抱き締める。
玲は不安を払拭するように抱きつく。今はそれでいいと彰人は一人納得していた。
そして玲も何か大事な事を忘れているような気がしていた。だがそれが思い出せない。拭えない不安は抱かれている間もずっと続いていた。
「玲……？」
そんな玲の名前を優しく呼ぶ彰人に微笑み返す。
「玲動くよ」
彰人に黙って頷き、今まで忘れていた快感を貪るように抱きついた。自分が体も心も許す唯一の場所を取り戻したように玲は抱きついた。
次に玲が目を覚ましたのは、彰人の腕の中だった。彰人の寝顔を見て安心して再び目を閉じる。一抹の不安は拭え切れないでいたが、安心する温もりだった。
「大丈夫か？」
ゆっくりとした声が頭の上から降りて来る。玲は黙って頷き体勢を変えようとしなかった。今はまだこの温もりから抜け出たく無かった。
（温かい……）自分が本当にゲイだったんだと知らしめられた営みだった。生粋のゲイなのかは分からない……違うような気がする。この街で多くの男に出逢ったが食指を動かされる事は無かった。きっと彰人限定だったのだろうと思う。
「まさか自分の息子がゲイだったとは驚いたよ」
「お、俺はゲイじゃない……」弱弱しく答える自分がいた。
「そうか？じゃあ無理に開花させられたのか？悪い教師だな……」
にやにやと義父は玲に厭らしい顔を見せながら、それでも玲の体を弄る事は止めていない。
「教師じゃない！」玲は義父の口から出てきた言葉に強烈に反論をみせた。
彰人の身分を知られる訳にはいかないのだ、彰人の将来を潰しかねない発言に顔から血の気が引いてしまう。
「あの男と別れるんだな。俺の玩具でいればいいんだ」義父の酷い言葉に玲は小さく震えた。このままだと今後も自分は義父の玩具にされてしまいそうで怖かった。だけどそれ以上に彰人の事がバレるのが怖い。
「教え子に手を出すような教師は要らないだろう？ましてゲイだなんて……教育委員会に連絡したら終わりだな」こういう言葉を機嫌よく吐く義父を殴り倒したかった。結果など見えているけど、それでも彰人を守る為に義父の頭の中から彰人の記憶を抹消してしまいたい。
「まあ玲があの男と別れるって言えば、俺は黙っているがな……」卑怯な駆け引きに返す言葉など無かった。
「さあ、２度と会わないって誓うんだな」
今、彰人は教職に就いている訳では無かった、本人が言っていたように夜の街で働いているが、その資格は本人曰く保険だそうだ、水物の仕事では将来どうなるか分からないと玲も思っていた。彰人が寝る間も惜しんで手に入れた資格が剥奪される事は、絶対にしてはならない事なのだ。
彰人の手で開発された体は、義父の手指や唇と忌まわしい玩具で塗り替えられようとしていた。快感を憶えた体は、解放を求めてしまう。若い玲が耐えられる事ではなかった。
義父に肉体的に追い詰められ、その合間に精神的に追い詰められる。
そして義父は自分がしている行為は棚に上げて、未成年に手を出したエロ教師と言い続ける。どれを取っても彰人の分が悪い。
自分のせいで、彰人の将来に傷を付けたく無かった。
吐き出す寸前で堰き止められる苦しさに、玲は苦しんだ。そして何度もそれを繰り返されると、もうイク事だけしか考えられなくなる。
追い詰められた精神と肉体は、義父に誘導され別れる事を誓う。
吐精と引き換えに別れる事を選んだ自分を玲は嫌悪した。
彰人の将来の為なのか、自分の一時の欲望の為なのか……
玲は、彰人を切り離す事で自分の中から彰人の記憶を消してしまった。
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◆間が空いてしまったのに、短めです。ごめんなさい。
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