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再)僕の背に口付けを 9

 28, 2011 00:00
ガチャッ―――その音と共に玄関の扉が乱暴に開けられた。
「あっ」「あっ!」驚いて同時に声が上がった。そして無表情の光輝が黙って部屋に入って来た。だがそこに千尋の姿を認めた途端顔が緩み「起きていたのか?」と嬉しそうな声を発した。

「あ、おはようございます」
千尋は昨日の今日で真正面から顔を見るのが恥ずかしい。
仁はカップを落としてしまわないように、両手でがっしりと握ってその様子を呆然と見ていた。
(何なんだよ?このふたりの雰囲気……)大事な人らしいとは思っていたが、それがどういう意味の大事なのか、仁は全く判っていなかった。

「これ」そう言って光輝に差し出された包紙に見覚えがあった。
「あ……これ?」
「雅さんが好きだっただろう?」渡された包みは伯父が大好きな和菓子屋の物だった。
「開けていいですか?」
「ああ、お供えしてやれ」
千尋が開けると、中には綺麗な艶のきんつばが入っていた。
「も、もしかしてこれ?」ここ数年『貰ったから』と言って雅が出してくれていた物だ。

千尋もこれが好きで、千尋はお茶で、雅は日本酒で頂いていた。
「ありがとうございます……」雅を思い出し少し涙ぐむ千尋を優しい目の光輝が見つめている。
「あっ!皿を」仁が正座したまま声を出した。
「仁!お前いたのか?」光輝は仁の存在を全く気づかなかったようだ。
「そんな所に座って何をしている」急に光輝の声がトーンダウンした。
「あっいや……珈琲を頂いていました」必死に立ち上がろうとするが、足が痺れて上手く立てない。

「ちっ、使えない奴だな」光輝がキッチンに行こうとするから「僕が」と千尋が立ち上がろうとしたが「お前は座っておけ」と、又その声は甘くなる。
(まだ体が辛いだろう?)と言われているようで、千尋は自分の頬が熱くなってしまい戸惑った。

「あの……日本酒なんか無いですよね?」千尋が遠慮がちに尋ねた。
「おい仁、事務所行って持って来い!」
「は、はいっ!」這うように仁が玄関に向かった。
「いえ、わざわざいいですから」千尋が慌てて断るが「大丈夫だ、俺の事務所はこの部屋の前だ」そう千尋に優しく言ってから「おい仁!十分は戻って来るな!」と付け足す。
「はいっ!判りましたっ!」仁の開放されたような元気な声が返って来た。

このマンションには組事務所とは違う光輝が個人で興している会社があるという。組とは関係なく光輝のサイドビジネスの仕事場らしい。

「さて……」光輝が口元を緩め千尋に近づいて来た。
ふぁっと体が泳ぐ。「あっ……」光輝が千尋の体を軽々と抱き上げた。
「もう歩けるから……」

昨夜食事する前に抱き上げられ耳元で「まるで初夜を終えた花嫁みたいだな」と揶揄された事を思い出し、又顔が熱くなる。仏壇の前に連れて行かれると思った千尋が降ろされた場所は、ベッドの上だった。
「ちょ……ちょっと何?」まさか仁が直ぐ戻って来るのに、何しようと言うのだ?

「十分もある」その十分で何をしようと?
「ちょ……」抵抗するが光輝に抑え込まれ、直ぐに唇を奪われてしまう。
「んん……ふぁ……」「んん」「はぁ……っ」息継ぎの合間に漏れる声が次第に甘く自分の鼓膜に響いてくる。

昨夜用意されていたのは、普通のパジャマだった。そのパジャマのズボンのゴムを潜って光輝の手が千尋の下半身に伸びて来た。
「やっ!何を?」キスだけで半ば熱を持った自分の体が恥ずかしいし、それを手で触れられるのはもっと恥ずかしい。
「やめっ!」光輝の手をどかそうとするが敵わない。パジャマが下着と一緒に太股の途中まで下げられた。
「やあっ」抗う両手は頭の上でひとつに捕まれ、パジャマの上は胸が見える位置まで捲られた。

千尋は中心を見られないようにと、太股を擦り合わせるように捩っている。何もかもが中途半端な体勢である。太股で止まるゴムの感触も、捲られたシャツが首元に絡まる感触も……そして何より中途半端に勃ち上がった自分自身も……

ふと光輝の動きが止まった。光輝の熱い眼差しを体全部で感じてしまう。
「見るなっ……」唇を噛んで目を逸らすように千尋は反対側を向いた。
「千尋……」名を呼ぶ光輝の声が掠れている。
「やだっ」見られていて尚萎えない自分の体が恨めしい。
(目茶目茶に苛めたい、啼かせたい、善がらせたい……)光輝の中の嗜虐心が大きく育って来た。

「千尋、キスだけでこうなったのか?」
「ちがっ……わない……」千尋は自分でも判らなかった。
何故こんなに自分が感じてしまうのか、自分の自由にならない体を持て余してしまう。

「参ったな……」そう呟くような声が聞こえたと思ったら、千尋を押さえ込んでいた力が抜けた。そして「そろそろ仁が戻って来る」そう言うと千尋に背中を向け部屋を出て行ってしまった。
千尋は呆然としながら、自分でパジャマの乱れを直した。だが一度熱を帯びた体は簡単には鎮まらない。部屋から出て行けずに、そのままベッドに横たわり目を瞑った。

(呆れた?)この淫蕩な体に呆れたのかもしれない……
そう思う事は自分が何かを期待していたのだと気づいた。自分の熱に手が伸びそうになり、千尋はそんな自分に驚いた。自分でした事が無いわけでは無かった。だが、今それをしたら余計に惨めになりそうで、その手を伸ばすのを途中で止めた。

体を鎮めるべく目を瞑る。思い出されるのは、何故か昨日の出来事ばかりだ。鎮めるどころか、逆に自分の体が熱くなってしまう。千尋はそれを振り払うように頭を振り、体をうつ伏せに替えた。熱い芯が自分の体重とベッドの間に窮屈に押されている。「あぁ」その感触に声が漏れ、慌てて顔を枕に沈めた。

その頃事務所のソファに深く腰を降ろした光輝が虎太郎に向かって「なあ、初めての後ってどのぐらい間を空けた方がいいのか?」と聞いていた。
あまりに真面目な顔で聞いてくるので、虎太郎は煙草に咽て涙ぐんだ。

「お前本気で聞いているのか?」
「こんな事冗談で聞けると思うのか?」それに聞ける相手など虎太郎しかいない。
「何故そんな事を聞く?」
「千尋の傍に居ると、触れたくて堪らなくなる……触れたら自分を抑え切れない」

豊川組二代目の長男で今は若頭という地位にある男の台詞とは思えない。やりたい盛りはとっくに過ぎてはいるが、光輝だってまだ二十八歳、全盛期と言っても過言では無い。
「まぁ一週間位は我慢するんだな」
「一週間……」溜息混じりで光輝が繰り返す。
「そう落ち込むな、突っ込まなくても他に方法はあるだろう?」
「他って何だよ」
「手とか口とか、別に特別な事と考えなくてもいいだろう?今まで散々女とやっただろ?」
千尋の口で?……光輝は想像して固唾を呑み込んだ。

「若……社長!」仁は、ここでは若頭と呼ぶなと言われていたのを思い出し、言い直した。
「仁、騒々しい何だ?」
「これ届けて来ていいですか?」仁は大事そうに日本酒の一升瓶を抱えていた。
「ああそうしてやれ、それとあいつが起きていたら、夕方出かけるから用意しておくように伝えてくれ」
「はいっ」
威勢よく出て行こうとする仁を「ちょっと待て」と呼び止めた。
「仁お前やけに嬉しそうだなぁ?」光輝に睨まれ身を竦めながら「いえ……あ、あの人綺麗だからやっぱ会うの嬉しいっす」光輝はそんな素直な仁にさえヤキモチを焼いてしまう。

「やっぱり俺が行く、それ寄越せ」仁が大事に抱えていた一升瓶を取り上げると、仁の肩が残念そうに落ちた。
「仁、今夜は晩飯部屋で食うから、用意任せたぞ」その言葉に仁の顔がぱっと輝いた。
「はいっ!あの……あの人は何が好きなんでしょうか?」
「肉より魚だな」何となく千尋のイメージは魚だった。だが食欲旺盛な年頃でもある……暫く真面目な顔で考えていた光輝が「やっぱ、肉も魚も両方用意しろ」と言う。
「はいっ!」仁は、腕の見せ所だと張り切って返事をした。

「ほらっ」と財布から万札を三枚抜き取って仁に渡すと
「あ、あの……何日分用意すれば?」
「別に今夜の分だけでも、何日分でも構わないさ、とにかく旨くて精の付くもん食わせろ」と言い捨てた。
千尋は少し痩せている……もう少し肉を付けないと体力が持たない。そう考え、そして何の体力だ?と一人で突っ込みを入れている光輝だった。

「精の付くもんねぇ」仁が出た後に虎太郎が揶揄するように口にした。光輝は内心を見透かされたようで慌てて「煩い!ちょっと行って来る」と一升瓶を片手に意気揚々と事務所を後にした。
そっと千尋の部屋を開けると、シャワーの音が聞こえる。
鍵も締めないで無用心だな……そう呟きながら、浴室の千尋に声掛けた。
「風呂か?」
「……」
「おい、聞こえないのか?」光輝の手が扉に掛かった時、中から「入って来ないで下さい」と突き放すような声がした。

入るなと言われて大人しく引き下がる男なら厳しい世界で昇ってはいない。光輝はむっとした顔でドアをバンと開けた。キュッと蛇口を閉めた千尋が少し不機嫌そうな顔を向けた。

浴室に熱気が全く無かった。

「お前……」そう言って千尋の肩に手を掛けると体が冷たい。
「はあ?何で水なんか浴びているんだ?湯の使い方知らないのか?」
「知っています……」抑揚の無い声に光輝が苛立つ。
光輝の前を横切り、千尋はタオルで体を隠した。白い背中と小振りの尻だけが見える。男の背中や尻など組の奴等で充分見慣れているはずだった。どうしてこの体にだけ自分が反応してしまうのか光輝にも判らない。

『まだいるの?』そういう視線を投げられ光輝の中で何かが弾けた。ぐいっと千尋の体を掴みパウダールームの化粧台に押し付けた。
「何?止めて下さい」バスタオル一枚の無防備な姿の千尋は怯えるように言った。
光輝はそんな千尋の顎を掴み、上を向かせた。きっと唇を噛んだ千尋がもう一度「止めて下さい」と言った瞬間に千尋の唇を光輝は塞いだ。

「ん……やめっ……」光輝の胸を両手で叩いた時に、最後の砦のように握り締めていたタオルが足元に落ちた。

持て余した熱を冷たいシャワーでやっと消したのに……
燻っていた火種にこの男は又火を点けようというのか?熱い口付けを受けながら、千尋はぼーっとする頭でそう思った。
「はぁ……」千尋から漏れる声は溜息なのか、喘ぎなのかそれは本人にも分からなかった。

千尋はパウダールームの化粧台に押し付けられ、そして唇は塞がれ、光輝の手が千尋の性器に伸びる。
「やっ、やめっ……」千尋の抵抗は直ぐに又熱い唇で塞がれてしまう。光輝の手はさわさわと千尋の性器を撫で付けるように触っている。
「あ……っ」冷ました筈の熱がぶり返して来て千尋は呻いた。

光輝が千尋の瞳を見つめ、ふっと口角を意味ありげに上げた。そしてその次に光輝が取った行動に千尋は悲鳴のような声を上げた。
「いやーっ!」
その行為は以前……ずっと前、高校生の時に一度だけ関係を持った稲葉がくれた雑誌に載っていた。それを見た時には、読者を煽るためのヤラセで、撮影の為だ、とくらいにしか千尋は思っていなかった。

だが千尋の前にしゃがんだ光輝が咥えているのは千尋の性器だった。
「やっ!やだぁ……やめてってばっ!」驚きと恥ずかしさで、千尋はどうしていいのか全く判らなかった。ただ判っているのは、咥えられている自分の性器、あっという間に形を変えて来ているという事実だけだった。

「あぁ……お願い……やめて」あまりの羞恥に千尋の瞳からは涙が零れている。千尋の願いが叶ったのか、光輝が顔を上げた。
「千尋……俺はお前が好きで堪らない」光輝はそう言うと又同じ行為を繰り返した。

『惚れた』とは前に言われた事はあった。だけど「好き」と言われたのは初めてだ……
どうしてこんな状況でそんな言葉を吐くのだろう?

「ああん……」自分でもビックリするような声が出て、慌てて口を両手で塞いだ。光輝の舌先が鈴口を突付いたのだ。その喘ぎ声に気を良くしたのか、光輝の口淫が激しくなる。手と舌と唇、全てを使って千尋の悦楽を引き出そうとしているようだった。

「ああ……っ……ああぁ……」
舌が裏筋を舐め上げ、そして又全部を口に含まれる。
「やぁ……ぁぁ」光輝の口腔の激しさに千尋は艶かしく悶えた。ちゅーっと先端を吸われ、千尋は仰け反った。
「あぁ……やっ、あぁ……」慣れない行為にこれ以上耐えられそうになかった。
千尋が抗うように体を捩った時……鏡の中の自分と目が合った。化粧台の広いカウンターを囲むような形で鏡が付いている。千尋の目に映ったのは、淫蕩な目をして悶える自分だった。
「やあぁっ……」
その時押し付けられていた体が持ち上げられ台の上に腰掛させられた。

座る事で体が安定し、そして脚を大きく広げられた。眩しい程の灯りの中、光輝の前に全てを曝け出される。
「やだっ!降ろせ……降ろせっ……あぁぁ」光輝の手が内腿を撫で、そして唇が太股の付け根に吸い付く。

「ああぁ……っ」光輝の触れる場所、唇が付けられる場所全てに感じてしまう。
「やあ――っ!」光輝の舌先が昨夜受け入れたばかりの蕾に触れた。ぞくっとする感触に千尋の全身が戦慄いた。
「だめっ、やめ……そんなとこっ……」
光輝の舌は執拗に蕾の襞を解すように舐めている。
「あぁ……っ」ぞくぞくっとする感覚は悪寒ばかりではなかった。拡げられた脚が疲労の為なのかガクガク震えてきた。

「一回達っとくか?」千尋に聞いているのか、それともこの先の行動を示しているのか?千尋の体を化粧台から降ろし、そして台に手を付かせた。頭を上げると自分の顔が正面に来る……
「やだっ……見たくない……」抗う背中を光輝の唇が這ってくる。
「どうして?良く見ておけ……自分の達く時の顔を」

「やだ……やだ……っ」千尋は目をぎゅっと瞑り、イヤイヤと頭を振っている。後ろから抱きかかえられ、右手が千尋の乳首をぎゅっと摘み、左手で性器を扱かれる。
「いたっ……ぁ」痛いだけじゃない感覚が直ぐに訪れ喘ぐ。
「あぁぁ……もっ……」
「達きたいか?なら目を開けろ」耳元で低く囁かれる。
「やっ……」こんな自分の顔など見たくない。

「開けなきゃ、今すぐ突っ込むぞ」
「やっ……」流石にそれは無理だ、壊れる……。恐る恐る千尋は目を開き鏡の中の自分を見た。
そんな千尋の背後で光輝が、満足そうに見つめていた。

千尋が目を開けたのを確認すると、光輝の手の動きが早くなった。千尋を高みへ追い込む為の動きに変わってきた。
「ああぁぁ……あっ……もっ」千尋の啼く声に光輝も煽られる。鈴口にぐいっと強い刺激を与えて、胸の粒にもかりっと爪を立てる。
「やあ――っ、もうだめっ……あぁ……こうきぃ……いくっ……」
ビクンビクンと四肢を痙攣させ、千尋が爆ぜた。仰け反る背中の菩薩に口付けを落とすと「ぁぁ」と震える声がまた漏れる。

鏡の中の自分が涙で潤んで見えない。体を支える力が入らず千尋はそのまま床に座り込んだ。
「腰が抜けたか?」と揶揄する光輝を睨みつける。
「挑戦的な目だな、一週間待ってやろうと思ったが、無理だな」肩を竦めたかと思うとその肩に千尋が担がれた。今の千尋は抵抗する元気も無かった。


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愛おしそうに千尋の肩に口付けるこの光輝が大好きです^^

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