2ntブログ

スポンサーサイト

 --, -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

再)僕の背に口付けを 8

 27, 2011 02:25
光輝がベッドに近寄っても千尋は起きる気配は無かった。そっと髪を撫でながら「無茶をさせたな……」と労わる。光輝は汗と精液で汚れた千尋の体を拭いた。そして、そろりと後孔に指を入れて自分の吐き出した物を掻き出す。
「んん……」意識を無くしていても、違和感を覚えるのか小さく千尋が呻いた。

まさか自分がこんな事をする日が訪れるなんて夢にも思っていなかった。全ての処理が終わってベッドの端に腰を降ろし、目を閉じている千尋の顔を見つめる。眠る姿にさえ口元が緩む。
「千尋……愛している」光輝は千尋の乱れる肢体を思い出すだけで体が震えるような気分だった。誰かにこんなに執着する日が来るとは思いもしなかった。
「いい子で寝ていろよ」そっと頬に口付けしてシャワーを浴びに行った。

一度病院に顔を出して来ると言う虎太郎を見送ってソファに凭れ掛かった。昨夜から殆ど寝ていない、流石に疲れた。光輝は米神を押さえ目を閉じた。
暫くして千尋は薄暗い部屋のベッドの中で目を覚ました。少しの間身じろぎもしないで、今日の出来事を反芻していた。起き上がろうとして、体の節々の痛さと、だるさ、そして後ろの部分に熱を感じた。

全部覚えている……自分が何をされたか、何をしたか……自分が元の世界には完全に戻れない事が判っていた。軋む体を奮い立たせてベッドの傍にある衣服を身に着けた。

(帰ろう、あの家に……)
自分の為に用意したと言われたマンションだが、自分が暮らしたいのは古くても自分が育ったあの家だ。体を引き摺るようにドアに近づきそっと開けた。そこにはソファに凭れたまま目を閉じている光輝がいた。
(疲れた顔だ……そういえば豊川のおじさんはどうなったのだろう?)
このまま黙って帰ろうと思っていた千尋だったが、光輝の疲れた顔を見ると何故か胸が痛んだ。

千尋は光輝から少し離れた所にそっと腰掛けた。すると寝ていたと思っていた光輝が体を倒し、千尋の膝に頭を乗せてきた。
「あっ」身構える千尋に向かって「少しだけ、このままいてくれないか?」と強気の光輝らしくない弱々しい言葉を吐いた。光輝は千尋に背を向け、膝を抱きかかえその腿を枕にして横たわった。

暫くすると安心したような光輝の寝息が聞こえる。
(寝ちゃった……)
この男とした……と思いながらも意外と冷静な自分に驚いている。千尋は光輝の顔を覗き込むように光輝の凛々しい眉をなぞった。そして鼻筋をなぞり、唇に……指で触れた。

突然その唇が薄く開き「千尋……」と呼ばれた。
「は、はい……」千尋は驚いて指を離す。
「体は大丈夫か?」
「まだ……」
「痛むか?」何処が痛むのかと聞かれなくても、何を言いたいのか判る千尋の顔は真っ赤になった。
「はい……」
「そうか……今度は優しくしてやるからな」目を閉じたままの光輝の声はとても穏やかな声だった。

今度、と言われ千尋の膝がビクンと動いた。
「ん?嫌か?俺とSEXするのはもう嫌か?」
(僕はこの男と、男同士のSEXをしたんだ……)千尋は改めて自分のした事を知らされた気がした。

「嫌か?」今度は向きを替え千尋の顔を下から見上げ、もう一度問うて来た。真っ直ぐな目に千尋は視線を外した。
「俺を見て答えろよ」
千尋は否定など出来ない程に乱れて喘いだ自分を覚えている……
「い、いや……じゃな……い」その言葉に光輝ががばっと体を起こして、千尋に触れるだけのキスをした。その顔は今で見た事の無いほどのとても嬉しそうな笑顔だった。

「い、いつも……そんな顔してればいいのに……」
「こんな顔でこの稼業が勤まるか、お前の前だけだ」
光輝の殺し文句に少し気分が良くなった自分に気づいた。光輝は口元を緩めた千尋にまた唇を重ねた。絡めとるような口付けに千尋の体が慄く。
「大丈夫だ……今日はもう何もしないから」これ以上したら本当に千尋の体を壊しかねない。光輝は千尋の体を労わって堪え、突然立ち上がり千尋を横抱きにした。

「ちょ、ちょっと!何?」ただ驚いて抵抗するが「うっ……」力を入れると体が痛い。「ほら、いいから大人しくしておけ」千尋を抱き上げた光輝は奥の部屋へと千尋を連れて行った。器用に千尋を抱いたまま片手で襖を開ける。
「あっ!」千尋が驚きの声を上げた。そんな千尋をそっと降ろし座らせる。

驚いた視線の先には……
「……伯父さん……、」千尋は無意識に口を押さえていた。そして驚いた瞳からは涙が溢れ出た。
「伯父さん……」
部屋には黒檀だろうか、とても立派な仏壇が置いてあった。きちんと花が活けられ、そして彫雅の写真が飾られていた。
「何時の間に……この写真?……」

千尋は仕事中の雅をあまり知らなかった。勿論自分が彫ってもらっている時に時々顔を上げて覗き見はしたが、こんな厳しい顔の彫雅は知らなかった。

「これは俺が持っているたった一枚の写真だ。最初の時に拝み倒して撮らせてもらった、撮ったのは虎太郎だがな」
「後はお前が雅さんの位牌を持って来ればいい」
「位牌……」
「ここはお前が住む為に用意したと言っただろう」
「でも、あの家は……」

「残して置きたいんだろう?お前が望むならそうすればいい、だがお前があの古い家に独りで住むのは駄目だ」
「どうして、あの家に住んでは駄目なの?」
「あそこでは俺がお前を守りきれない」
「僕は守られる立場じゃない!」千尋が声を荒げた。
「お前は自分の価値をまだ判っていないんだ……」
「僕の価値?」千尋にはどういう意味だか全く理解出来なかった。

(こんな僕に何の価値がある?)千尋はそう聞きたかった。
「お前の体は蝶を誘う花の蜜のようだ」その言葉は千尋を酷く傷付けた。
「……僕は誰も誘ってなんかいないっ!」

千尋は高校大学と、何人かの男に「誘っているの?」と肩を掴まれた事があった。そしてその言葉はいつも千尋を傷付けていた。
「お前はそういう気が無くても、お前に誘われたいから、そういう風に思い言う奴が出て来る」
「僕は誘ってなんかない……」壊れた玩具のように千尋は小さな呟きを繰り返した。
「千尋、お前は誰よりも魅力的だ、きっと多くの者がお前を欲しがる、誰にもお前を抱かせたくない」そう言われ千尋は、さっき虎太郎に指を挿れられた感触が蘇り体を強張らせた。

「此処で暮すよな?」言い含めるように光輝が念を押した。
千尋は力なく黙って頷いた。
「明日、身の回りの物で必要なのを取りに行こう」生活用品は全て揃えてあった、後は千尋個人の物と彫雅の位牌だけで良かったのだ。


「食事の用意が出来ました」ドアの外から声が掛かり、千尋が驚いて光輝にしがみ付いた。
「おう、虎太郎悪いな」
まだ怯える千尋に「大丈夫だ、あいつは俺が一番信頼している男だ、お前も気を楽に付き合え」と言った。
そう言われても、自分の体に指まで挿れて来た男に簡単に笑顔にはなれなかった。

「ほら飯食おう」そう言って、来た時と同じように千尋を横抱きにする。
「大丈夫、人がいるから……」恥ずかしいと言えない。
「俺は尻を庇って恐る恐る歩いている方が恥ずかしいと思うが?」と揶揄され、千尋はそれもそうだと考え直した。そして千尋は黙って光輝に腕を差し出した。
そんな千尋に口元を緩め、光輝が抱き抱え千尋の耳元でそっと囁いた。その言葉を聞いた千尋が耳まで赤くして俯いた。
そして千尋は赤い顔のまま食卓の椅子にそっと降ろされる。

翌日千尋はひとりベッドの上で目覚めた。昨夜は食事の後風呂に入り、そして疲れた体はあっという間に睡魔に襲われ深い眠りに就いた。部屋を見渡しても誰も居ない、そっとベッドを降り部屋を出た。
広いリビングにも光輝の姿も虎太郎の姿も見えない。すると奥の仏壇が置いてある部屋でガタッと物音がした。迷った挙句恐る恐る部屋に近づき、襖に手を掛けようとした途端開いた。
「!」千尋は驚いてその場に立ち尽くした。

「あっ!……おはようございます」
千尋と同じ年頃の青年が千尋に人懐っこい顔で挨拶をしてきた。
「お、おはようございます……」千尋も挨拶を返す。
「すみません、起こしてしまいましたか?」バツの悪そうな顔でその青年が謝るので「いえ……それより何を?」と聞いてみた。

「あーすみません、俺、花係の仁、関口仁です。宜しくお願いしまっす」そう言ってペコリと頭を下げられ「花係?」まるで小学校の係りみたいな言葉に、千尋が訝しげに聞くと「はいっ、ここの仏壇の花を毎日取り替えるように、若頭に言われているんですっ」
「毎日?」
「はいっ」その関口という青年は誇らしげな顔で返事をする。

仏壇の花は毎日取り替えなくても、日持ちがする花が多いのにと千尋は思った。
「関口さん?そんな毎日は取り替えなくても日持ちする種類だから大丈夫ですから」
「あーやっぱり?どうりで何時来ても全然枯れてないんだ」
「もしかして、毎日取り替えてくれたの?」
「はいっ、十日前から」
十日も前から光輝は……それが妙に嬉しかった。

「あのぅ?こう……豊川さんは?」
「若頭っすか?病院に行かれました」
「ああそう……それで豊川の小父さんの容態はどうなんですか?」
「大丈夫っす、傷は浅かったですからっ」
「あぁ良かった……」そう微笑む千尋を横目で見ながらドキッとしてしまう仁だった。

「あ、あのぅ、起きられたら食事をするようにと、準備は出来ていますから」
「子供じゃ無いのだから、自分の事くらい出来るのに」直立不動の仁をちらっと見て呟く

(すげぇ男だよな?……こんな綺麗な男見たことない……)仁は心の中で呟いた。

「あ、あの……俺の事、仁って呼んで下さいっ、言う事を聞くように言われてますんで」
「ありがとう……でも多分大丈夫だから」
「いえ、そんな事を言われたら俺困ります、何でもいいから用事を言いつけて下さい」
「困ったね……じゃとりあえず朝食を食べようか?」
そう言った途端仁が嬉しそうな顔で「はいっ」と元気な返事をしてキッチンに駆け出して行った。

仁は千尋をちらっと見ては視線を逸らす。そして又見る……その事の繰り返しだった。
「関口さん?僕の顔に何か付いている?」
関口の直ぐ視線を逸らす見かたに千尋は少し気分が悪かった。
(この人は僕が光輝に抱かれたのを知っている?だから好奇心の目で見ている?)どうしてもそう考えてしまう。

「す、すみませんっ!」仁が深く頭を下げた。
「何か付いているか聞いているんだけど?」
「いえっ!何も付いていません、き、綺麗だなぁって思って、つい……」
「はあ?」思ってなかった答えに千尋の肩の力が抜けた。

「若頭に色々言われているもんで……」
「何を?」千尋の顔が少し強張る。
「綺麗だからって見惚れるな!何があっても体に触れるような事はするな、邪な気持ちで見るな、三秒以上見つめるな……えっとそれから……」

「もういいです」千尋は呆れてそれ以上は言葉が出なかった。
気を取り直すように「食事いいですか?」と先を促した。だが食卓に用意された食事は千尋ひとり分だった。
「関口さんの分は?」
「俺はもう済ませて来ましたからっ」
「……そう、ひとりで食べるのは寂しいから、飲み物だけでも一緒にどう?」雅を亡くしてからずっと一人の食事だった。そしてそれはとても味気のない寂しい食事だったのだ。

「あっ!もう一つ思い出しました、同席するなって」
「僕の言う事を聞くように言われていたのじゃないの?」揶揄するように仁をわざと睨んだ。
「あ、はいっ……でも……あ~どうすれば良いんだぁ?」
「じゃ珈琲だけでも一緒に、って事にしない?」千尋に見つめられて仁が真っ赤になりながらも「はい、頂きます」と返事するが、珈琲を片手にフローリングの床に正座している。

テーブルの椅子に腰掛けている千尋の斜め前辺りにカップを持って座る仁を呆れて見ると「すみません、これで勘弁して下さいっ」と情けない顔を見せた。

「そんなに若頭って怖いの?」同席を諦めた千尋が聞いた。
「怖いっす……でも憧れています」
「そう……」千尋はボイルされたウィンナーをホークで刺し口に入れた。ごくっ……仁が視線の先に捕らえ咽を鳴らした。
「あっ?やっぱりお腹空いているんじゃ?」
慌てた仁が手を振りながら「いえ、全然空いてないですからっ」と答える。
必死に言い訳する仁は(若頭~やばいっす……)若い仁から見たら、千尋の妖艶な美しさは男も女も無かった。いや男だから醸し出される妙な色香がある。

仁は若頭に「此処に住む青年の世話をするように」と連れて来られたのが十日前だった。しかし、その世話をする青年はなかなか来なかった。やっと今日から本格的な世話係りの始動だったが、詳しい事は何も聞かされてはいなかった、さっき千尋に告白したような注意事項。いや、注意というよりは脅迫に近いような物だった。

(この綺麗な人は若頭とどういう関係なんだろう?)
そう思ったが、何故かそれは聞いてはいけないような気がしていた。仁が豊川組に世話になってから二年余り、その間に若頭が誰かを囲うような事は一度も無かった。

だが自分が若頭に信用されているから、ここの部屋にいる事だけは確かだ。多分この人は若頭の大事な人……
いつの間にかまた仁はじっと千尋を見ていた。
(やばっ!三秒三秒……)仁はそう言いきかせ頭をブンブン振った。

そんな仁を呆れた顔で千尋は眺めていた。


  ☆ランキング参加中です☆
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村
愛おしそうに千尋の肩に口付けるこの光輝が大好きです^^

FC2のランキングも参加中です。
関連記事

COMMENT - 1

-  2011, 07. 27 [Wed] 07:21

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Edit | Reply | 

WHAT'S NEW?