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再)僕の背に口付けを 6

 25, 2011 00:01
 千尋は小学生一年の頃から伯父に育てられた。その頃から、千尋の遊び場は伯父の仕事場だった。子供の頃千尋は客が帰った後、片付けを手伝ったり、散らばった写真や下絵を見たりして育った。

「伯父さん、僕これが好き」千尋が手にしたのは、一枚の昇り竜の絵だった。
「又竜か……好きだなお前は」呆れるように答える伯父の眼鏡の奥の目がいつも笑っていた。

「ねえ竜はまだ?」小学生の頃から聞き続けていた言葉は中学の頃まで続いた。だがその答えは何時までたっても「まだだ」だった。

 千尋が高校生になった頃は、もうその質問はしなくなった。それは丁度自分の性癖に疑問を持ち出した頃でもあった。

 千尋の中でも、竜の絵は待ちに待った物だった。それが今、自分を抱いた……そしてその背に唇を付けているのは自分だ。背中に千尋の唇を感じた光輝は、動かずじっと待っていた。だが暫くすると、背中から聞こえて来たのは千尋の小さな寝息だった。
「……千尋?」千尋の身体を片手で支えながら、そっと向きを替えると安心したような、あどけない顔の千尋が眠っていた。

 まだ昼前だ、睡眠不足で寝ているのでは無いだろう。気丈に振舞っていても、初めて男を受け入れたのだ、その心と身体の負担は想像以上に大きいのだろう。千尋をそっと横たえると、光輝は湯を張るために浴室に向かった。

 蛇口を開くと勢い良く湯が出る。そしてその掌をじっと見つめた。
(俺はこの手に千尋を抱いた)今頃になって武者震いのように身体が奮えて来た。

「光輝……」と呼び達った千尋の顔を思い浮かべる。2週間の間寝る為にだけ千尋の家に通ったようなものだった。時間があると自分が千尋の意思を無視して力づくで抱いてしまいそうだったから、外で時間と体力を消耗させ千尋の家に通っていた。

 その間にこのマンションを用意させ、何時でも千尋を連れて来られるように準備をしていた。光輝とて急ぐつもりだった訳ではない。今回親父である組長が刺されたのが光輝の行動を早めてしまったのだ。

 組長を刺したのは、逆恨みのただのチンピラだった。実はそれがこの世界では一番怖い事だった。何かの抗争や揉め事があれば用心もするし、上の命令を無視して動く事はしない。身に覚えも無い逆恨みでは突然の事で用心のしようも無かった。

 このマンション自体が光輝の持ち物だったし、縄張りの中でもあった。千尋をあまり自分の近くに置くのも良くないが、目の届かない所にも置きたくなかった。構成員でも無い千尋にそういう手が伸びるとは思わないが、違う意味で目を惹いてしまう……千尋はそういう空気と容姿を持っていたのだ。

 さっきまで近くで聞こえていた湯を張る音がしなくなった。光輝はベッドへ行き、眠る千尋を抱き上げた。その時千尋の瞼が開いた。
「あっ……何?……降ろせ」
「大人しくしろ、風呂だ。どうせ自分では歩けないだろう」
「うっ……」抗おうとして、千尋は身体の中に鈍い痛みと異物感を感じた。横抱きにされ風呂場へ連れて行かれる間、千尋はずっと唇を噛んでいる。

「痛むか?」そう優しく聞かれて、思わず顔をそらした。
「恥ずかしい……」裸のまま抱き上げられ抵抗できない自分が、千尋はとても恥ずかしかった。そんな千尋に口角を上げ「これからもっと恥ずかしい事をするんだ諦めろ」と光輝が言い、千尋の目が大きく開かれた

「やだっ……降ろして」
「大人しくしていろ」降ろされたのは湯が張られた湯船の中だった。特注なのか?大人の男ふたりで入っても余裕の湯船だ。それなのに光輝は千尋を後ろから抱きかかえるように浸かっている。

「もう少し離れて……当る」前を向いたまま俯き千尋が呟くように言った。一度吐精したぐらいでは、光輝の性器は萎えてはいなかった。というか、千尋を前にして萎える筈もなかった。

「もう一度、此処でお前を抱くから」耳元で囁かれ千尋の心臓がドクンと跳ねた。
(もう一度……抱かれる……)異物感の残る体が疼く……その疼きに自分の性癖を完全に自覚した。

(やはり僕は……男に抱かれて悦ぶ側だったのだ……)
それが判って数年抱いていた疑問も謎も解け安堵する気持ちと、そんな自分を嫌悪する気持ちの両方が湧いて来た。

「あっ」項に熱を感じ驚きの声が零れた。
「身も心も俺を受け入れろ」光輝の声が哀願に聞こえたのは気のせいなのだろうか?光輝の掌が身体を這い回している。
「あぁぁ……」今は、今だけはこの悦楽に流されてみようか?千尋はそう思って瞼をそっと閉じた。

 光輝の手が千尋の白い肌を滑るように撫でる。
「素人のお前が何故刺青を入れようと思ったんだ?」
光輝は初めて千尋の身体を見た時から思っていた事を聞いた。

「伯父さんに観音菩薩を彫らせてやりたかった……伯父さんが初めて彫ったのが、これと同じ観音菩薩だったから……」
「!お前以外にも居るのか?」
「僕も逢った事は無い、今その人が何処で何をしているかも知らない」
「だから彫雅があんなに拘ったのか?」
「僕が……僕がいたから……僕を育ててくれたから……その人と……」
千尋は自分がいたせいで、伯父がその人と一緒になれなかったと思っていた。

 背中の菩薩が震えている―――

 光輝は震えながら涙を流す千尋を後ろからギュッと抱きしめた。
「お前のせいじゃないだろう?縁があれば必ず一緒になれた筈だ」
「うっ……」堪えていても千尋の口からは嗚咽が漏れてくる。

(雅さん、あんたは暗い過去までこいつに背負わせたのか?)

「千尋……」千尋の身体を抱いて自分の方を向かせた。
「見るな……」泣いている顔を見られたくなくて千尋は身を捩った。光輝は千尋の顎を持ち上げ、その唇を激しく吸った。

「うっ……やめ……」
力で光輝に適う筈も無い、光輝の舌が口腔に入り込み千尋の舌を追いつめる。歯列をなぞられ、舌を絡められ「あぁ」と息継ぎをする千尋から喘ぎ声が漏れてしまう。
光輝は角度を変え何度も唇を重ねた。
「あぁぁ」そうしているうちに、千尋の声に快楽の艶が加わった。
光輝の手が千尋の後孔にそっと触れる。
「やぁっ!」
「来い」光輝が千尋を湯船から引き上げる。
「やだ……」抗う千尋の身体を浴室の壁に押し付け、光輝の手はボディソープのポンプを押した。ソープの滑りを借りて、光輝の指が後孔に滑り込んでくる。
「あ……っ」まだ異物感が残る場所に又指が差し込まれて千尋は慄いた。
「やだっ……あぁ……」

 光輝の指が入り口を拡げるように回っている。
「ほら嫌がっても、ここは俺の指を咥えて放さない」
「やっ……あぁ」千尋の瞳からは生理的な涙が零れている。
「ほら、二本目……」

 そしてその二本の指は千尋の前立腺を刺激し始めた。
「ああぁぁ……そこ……やぁ……」自分が壊れる……心が壊れそうだった。優しく、そして強く押される千尋の中はもうヒクヒクと畝っている。執拗に前立腺を攻められ千尋は立っている事さえ出来なくなった。
「気持ち良いか?」光輝の目にも余裕の色は見えない。
「ああぁぁ……」千尋がもどかしく腰を揺らす。
「もっと……」千尋の目が妖しい色に染まった。
「挿れるぞ」光輝はこれでもか、と言う程に張り詰めた己自身を千尋の後孔に押し付けた。
「いやあぁ」求めてもまだ慣れない千尋の体が強張り抗う。
「くっ」光輝が千尋の肩を押し、そして腰を持ち上げた。

 肩を押された千尋には逃げ道が無かった。ぐぐーっと音を立てるように、光輝の猛りが押し入って来た。
「あああぁっ……」千尋の白い体が仰け反るが、それでも光輝は侵入する事を止めなかった。そしてその千尋の仰け反る白い咽に喰らい付いた。
「あぁぁぁぁ」
「ほら千尋、良く見ろ」そう言われ顔を横に向かせられた。そこには二人の絡まる姿が鏡に映し出されている。
「やあーっ!」
「良く見ろ!これが俺達だ、俺達は今一つに繋がっているんだ」そう言いながら光輝が腰をぐいっと打ち付けた。

「ああぁ……」そこには男を咥え込み善がっている自分が映っている。
「千尋、素直になれ、身体は受け入れ、そして悦んでいる」
千尋のモノももう限界なくらいに猛っていた。
「あぁ」そんな姿を見て観念したように千尋が涙を零した。

「お願い……達かせて……」千尋は涙を零しながらせがむ、達きたいと。その言葉を聞いて背中の竜が動き始めた。
「あっあっ……あぁぁ……」千尋は箍が外れたように艶かしい声で啼いている。光輝はより激しく腰を打ち付けながら、千尋の前を扱いた。
「あっ……あ、もうだめ……達く……」
「ああ、何度でも達けば良い」光輝はギリギリまで引き抜き、そして最奥を目指して打ち込んだ。

「ああっ達く……こう……き……いく……」
「くそっ」無意識か故意か、達く時に呼ぶ名前は……
そして千尋は身体を痙攣させながら達った。その震える内壁に耐えられずに光輝も後に続いた。
「ぁぁぁ……」千尋は小さく長い悲鳴のような喘ぎ声を最後に、意識を手放した。
 
 千尋は激しい咽の渇きで目が覚めた。
(ここは何処?)千尋は今自分が置かれている状況を直ぐには把握できなかった。身体を起こそうとして、腰に鈍い痛みと気だるさを感じ、又横になった。何も身に着けていない体を見下ろす。
(ああ……僕は……あの男とSEXしたんだ……)
自分の身体に残る余韻と後孔に残る痕跡がそれを教えてくれる。

「起きたのか?」バスローブを羽織っていたが肩口に刺青が見え隠れしている。
「……水」一言だけ告げ千尋はそっぽを向いた。その頬に冷たいペットボトルが付けられる。
「ほら……」光輝が千尋の背中に手を添え身体を起こしてやると、千尋はそのペットボトルの水をゴクゴクと咽を鳴らして飲んだ。

「身体、大丈夫か?」
「大丈夫な訳が無い……」千尋は歩ける自信も無かった。
「初めてにしては激しかったからな」揶揄するように言われ、顔が赤くなるのが判った。
「貴方は……慣れていた……」
「ああ……まあな」

「……そう」千尋は水のボトルをベッドサイドのテーブルに置くと又横になった。
(僕は何人かのうちの一人なのか……)光輝が他にも男を抱いていた……そう考えると自分が何故か惨めに思えて仕方なかった。

「服を……」そう思うともうこの男の前に裸体を晒していたくなかった。
「何故だ?服を着る必要は無いだろう」
「……?」
光輝は色の出てない体でも、その白く艶のある千尋の体を愛でていたかった。
「あれで終わりだと思うなよ」千尋は光輝の言葉に体が強張った。
「嫌だ!男が欲しいなら他にもいるだろう」
大勢いる慰み者の中のひとりになることは、千尋のプライドが許さなかった。

「じゃ何故お前は俺に抱かれた?」
「……自分を確かめたかっただけだ……」
「ほう、じゃ誰でも良かったんだな?」光輝の目が冷たく光った。
「……誰でも良かった」それに引き換え千尋の目は虚ろになる。
(そうだ、誰でも良かったんだ自分に引導を渡してくれるなら……誰でも)

「……そうか」そう呟くように言うと光輝は黙って部屋を出て行った。
(怒らせた?)千尋は自分でも何も判っていなかった。

 帰ろう……彫雅の匂いのするあの家へ……千尋はだるい体にムチ打つようにベッドから起き上がった。その時寝室の扉が開いた。
ふたつの影……「誰?」千尋は自分が何も身に着けていない事を思い出しシーツに包まった。
「誰でも良かったんだろう?お前を抱いてみたいという奴を連れて来た」
光輝の声は今までに聞いた事が無いほど冷たいものだった。

「……うそ、いやだ……いや」千尋は恐怖で体が震えている。
「いやだって言ってもお前は最後には悦ぶんだろう?」冷たく揶揄されるが、今はそれに応戦する余裕は千尋には無かった。
「へえ……この子か、綺麗な子だな」更に揶揄する違う男の声が耳に聞こえる。

「ま、ゆっくり可愛がってやれ」その男の肩をポンと叩いて光輝が部屋を出て行った。
「虎太郎だ、楽しませてもらうよ」そう言ってその男はネクタイを緩め、シャツのボタンに手を掛けた。黙っていれば、普通のサラリーマンのような風貌だ。だが眼鏡の奥に光る目は全てを見通しているような、厳しく冷たい目だった。


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愛おしそうに千尋の肩に口付けるこの光輝が大好きです^^
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