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再)僕の背に口付けを 7

 26, 2011 00:42
虎太郎が見せ付けるようにゆっくりシャツを脱ぎ捨てた。
(虎だ……虎が吼えている……)千尋の目が背中の刺青に釘付けになった。
「余裕だな、私の体に見惚れているのか?」
千尋はその言葉に我に返り、そしてこれから何が行なわれようとしているのか知った。

「いやだ……出て行け」
「ああ、終わったら出て行くよ」男が口角を上げ薄ら笑いで答えた。そしてベルトのバックルをガチャガチャ鳴らせながら、ベッドに近づく。
「やだ、いやだ……やめろっ!」
するっと抜かれたベルトが床に落ち、鈍い音を立てた。

「大丈夫だ、私は光輝と違い男もイケル口だからな、善くしてやるよ」
3代目候補の若頭の光輝を捕まえ呼び捨てにするこの虎太郎という男は何者なのだろう?
千尋の歯がガチガチを小さな音を立て始めた。
(やだ、怖い……いやだ)

虎太郎は千尋の包まるシーツを乱暴に剥がした。そして千尋に跨り抗う千尋の両手を絡げ、頭の上で押さえつけた。千尋は黒い大きな瞳に涙を溜め、それでも虎太郎を睨みつけもう一度「止めろっ!」と呻いた。

虎太郎の手が千尋の体を弄るように撫で回している。白く吸い付くような肌が抵抗のせいで桃色に染まっていた。その桃色の肌の上に輝くように艶々と薄い色の粒がある。虎太郎はその小さな粒を爪で軽く引掻くように弾いた。
「いやぁ……っ」
そんな千尋の反応に虎太郎は内心(参ったな……早い事終わらせないと、こっちの身が持たない)と頭を抱えた。

虎太郎がサイドテーブルのローションの容器を手に取ると、千尋の体が一層強張るのがよく判る。虎太郎はゆっくり、千尋に見せ付けるようにローションンの中身を掌に垂らし、擦り合わせるように馴染ませた。
「やめっ、やめて……やだ……」
それでも虎太郎の指は恐怖で慄く千尋の小さな蕾を探り当てた。
「!」
虎太郎は強張る千尋の片足を肩に担ぐ。千尋はゆるゆると入り口を撫でるように動く指に体が強張り、身体は小刻みに震えている。
(やだ、来る……挿って来る……)身を捩るが、がっつり抑えられた体は微動だにしなかった。

ぷつっと虎太郎の中指が挿入された。
「ああぁ――っ!やだぁ……」
躊躇うように入り口で動きを止めた指が覚悟を決めたように、千尋の狭い内壁を這うように奥へ奥へと押し進んだ。

千尋は自分の息が止まるかと思った。指とは比べ物にならない太い物を一度ならず二度も受け入れた身体なのに……なのにどうしてこの感覚?
―――心も身体もとても苦しい。

その時虎太郎の指がくいっと中で曲げられた。
「やあーっ!いやだっ!触るな……そこを触るなっ」拒絶する体に無理強いされる快感は心が千切れるように痛い。留めを刺すように、虎太郎はもう一度そこを強く押した。
「あああ―――やだ―っ!こうきぃーっ!!助けて……」
瞳に溜まっていた涙が一挙に溢れ出した。
「あぁ……こうき……おねがい……たすけて……」

千尋の悲痛な叫びにこの部屋の時が一瞬止まった。

隣の部屋の椅子で腕組みをし、じっと目を瞑っていた光輝がかっと目を見開いた。同時に千尋の内壁を這っていた指がそっと抜かれた。千尋自身も今自分が誰の名を呼び、助けを請うたか心は覚えていないが耳が覚えていた。

「……こうきぃ」

自分の言葉に呆然としている千尋の視界に光輝が入って来た。
「呼んだか?」その声はさっきの冷たい声とは違い労わるような優しい声だった。
「あぁ」と千尋はその首元に縋るように抱きついた。光輝の手が愛しそうに千尋の髪を撫でる。千尋の震えと涙が止まるまで、光輝はずっと髪を撫でていた。

どの位経ったのだろう?
「ウウン!」ワザとらしい咳払いと共にさっきの男、虎太郎が入って来た。自然と千尋の体が強張るが、そんな千尋の背中を優しく撫でながら「紹介するよ」耳元で光輝の囁く声がした。
千尋が改めてその男を見ると、もうきっちりとネクタイを締めスーツを着ていた。その立ち姿からは、先ほどの虎吼の面影など微塵も感じられなかった。
「補佐の矢野虎太郎(ヤノコタロウ)だ、俺の右腕だ」
「初めまして千尋さん、今日はあなたを抱けなくて残念でしたがね」虎太郎のその言葉に千尋がまた体をビクンと震わせる。

「てめぇ虎太郎、千尋が怯えるような事言うな」
「は?言い出したのは貴方の方ですよ」呆れた顔で虎太郎が言い返す。
「俺は賭けに勝ったんだ」

「賭け?」千尋が訝しい目で問うて来た。

「千尋さん、貴方が光輝に助けを求めるかどうかの賭けをしたのですよ」虎太郎が説明する。
「貴方が光輝の名前を呼んだ時点でこの賭けは終了です」
「ぼ、僕が呼ばなかったら?」
「ええ、私はあなたに喜んで突っ込んでいましたよ」にっこり笑って答える虎太郎を見て背筋が凍った。

この男ならやるだろう、そう言う目をしている。光輝だって、約束を反故にする事などしない、男が廃る。光輝にしろ、これは五分五分の賭けだった。だが信じていた必ず自分の名を呼ばれると。しかし、どの時点で呼ばれるかは判らなかった……

(指一本か……)光輝にとってそれは当の千尋よりも苦痛だった筈だ。その間光輝は、隣の部屋で全身を耳にして手に汗を握り聞き耳を立てていたのだ。こんな勝負は一生したく無いと心では思っていた。

「……賭け」呟くと同時に千尋の右手が舞った。バシッと言う音を響かせ光輝の顔が一瞬ぶれた。
「お前に殴られるのは二度目だな……」口角を上げて揶揄するように、そして嬉しそうに光輝が言った。

「酷い……僕は貴方の玩具じゃない」
「じゃ何故俺の名を呼んだ、俺に助けを請うた?男なら誰でも良かったんだろう?」
「それは……」千尋本人さえ何故光輝の名を呼んだのか判らなかった。

「判らないなら判らせてやろう」
光輝は両手で包み込むように千尋の顔を押さえ込み、その唇に自分の唇を寄せて行った。
「やめろ……んん」千尋は抗うがその言葉は光輝の口腔に飲み込まれてしまう。

傍らに居た虎太郎がそっと離れるが、部屋を出る事は無かった。
『もし俺が千尋を抱き始めても最後まで傍に居ろ、目を離すな』と先に光輝にそう命令されていたのだ。虎太郎は光輝が何を考えているのかまだ理解できなかった。しかし、そう言った時の光輝の目は以前にも見たことがある、それは何か覚悟を決めた時の目だった。

一度目は新宿でフラフラしていた虎太郎の面倒をみてくれ、と組長である父親に頭を下げた時。
二度目は、光輝が若頭になった時に、組長に向かって「虎太郎を自分付けにしてくれ」と頼んだ時。

そしてこれが三度目……たかが男を抱くだけの為にそんな目をした?否、光輝はそういう奴では無い。
光輝がこういう目をする時は誰かの運命が変わる時だ。千尋に舌を絡めながら、虎太郎の存在を確認するかのように光輝が視線を投げて来た。千尋の様子は背を向けているから判らないが、虎太郎がまだ居る事に気づいてはいないだろう。

光輝が千尋を対座になるように抱き上げ膝に座らせた。激しい口付けの合間に「いやっ……」と声が漏れるが、虎太郎にはその声が、さっき自分が抱こうとした時に聞いた声とは全然違う色だと直ぐに判った。多分光輝も判っている。判っていないのは、その甘い声を出している千尋本人だけのようだ。

虎太郎は寝室の扉に凭れ掛かったままで二人の様子を見学していた。光輝は千尋の胸に顔を埋めて小さな尖りを口に含んでいた。
「あぁぁ……」艶かしい千尋の声が響く。
「ここが良いのか?」
「やっ」
光輝が舌を使う水音が室内に木霊する。
「あぁぁ……っ」

(何時までこいつ等の痴態を眺めていなくてはならない?)内心舌打ちするが、光輝の命令は絶対だった。(もしかして光輝は俺に惚気たいのか?)そう思わせる程光輝の声も態度も甘かった。
若い頃は二人で、女を買って3Pもした程に光輝はやんちゃだった。その光輝が二週間前から突然変わった。彫師の家だと言う所に送り、そして朝迎えに行ったのは虎太郎だった。

若い衆には見せられない、という光輝の為に虎太郎が運転していたのだ。今までの光輝は、一度目で落ちる女は「軽い女は嫌いだ」と言い二度目が無い。そして二度目で落ちない女には、次に声を掛ける事はしなかった。そんな光輝が二週間何もせずに通ったというのが、この千尋だった。光輝にとっての二週間は一年にも匹敵するような時間だったのではないかと虎太郎は思っていた。

ただ『惚れた』としか聞かされていなかった虎太郎は、それがまさか男だとは思ってもいなかった。身持ちの固い女に惚れ、足しげく通っていたのかと思っていた。だが、今虎太郎の目の前で光輝が抱いているのは正真正銘の男だ。それは、さっき自分でも直に確かめた。
(そこいらの女より綺麗な肌だった……)
もし自分が光輝より早く出会っていたら、どうなっていたか判らない……そう思わせる程の美しい青年だった。

虎太郎は背広の胸ポケットから煙草の箱を取り出した。灰皿は?と周りを見回すが見当たらない。部屋を出る事で音を立て、千尋の気を削ぐのも躊躇われた。

「あぁ……」千尋の艶かしい声がさっきより高くなった。
(やっと挿れたか……)自分の行為はあっという間だが人の行為は時間を感じる。
「あぁぁ……あっ……あぁ」
(いい声で啼いているな……)虎太郎が部屋にいる事は知らないのだろう。

虎太郎はふっと視線を二人に戻した。「あっ」咥えかけていた煙草が指から滑り落ちた。下から突き上げられ喘いでいる千尋には届かなかっただろう小さな驚きの声は、光輝には届いたようだ、腰を使いながら視線を虎太郎に投げてきた。

『お前が見せたかったのはこれか?』虎太郎の視線が問いかける。
『一度きりだ、良く見ておけ』光輝の目はそう語っているようだった。

虎太郎の驚きを確認すると、光輝はゆっくりと体位を変えた。自身を一度引き抜き、そして千尋をうつ伏せにする。
「あぁぁ」千尋の声が小さく震えていた。
虎太郎は、再び後ろから千尋を貫こうとしている光輝を目の端に入れ扉に手を掛けた。
「あああぁぁ」扉をゆっくり閉める音はその声に掻き消されるだろう。

「千尋、お前の中もうトロトロだ……」
光輝の抽挿がゆっくりになった。入り口まで引き抜き、そして奥に押し込む。
「ああぁぁ……もう……」
「駄目だ……まだお前を感じていたい」その言葉に千尋の内壁がキュンと締まった。
「ああ……」
(このままでは狂ってしまう……この悦楽は地獄への入り口なのか?)ぼうっとする頭で千尋はそんな事を思った。

「お願い……もう……」光輝は返事の代わりに腰を撃ち付ける。
「あああっ……」
「そんなに達きたいか?」やっと解放される?その言葉に千尋がコクコクと頷いた。頷く度に涙がポタポタ零れ落ちる。

光輝がそんな千尋の背中に口付けをする。そして先走りの蜜でトロトロになっている千尋の昂りを握り込んだ。
「ああぁ……」千尋はただ握られただけでも達きそうだった。

「千尋……俺のものになるか?」
「……」
「じゃ誰でもいいのか?」
「違う……ぁ」
「俺以外の他の誰かにこんな事をされてもいいのか?」そう言うと、光輝は千尋の猛りをひと抜きした。
「ああぁ……ひ、ひきょうだ……」
「ああ、卑怯でも何でもいい、お前を俺のものに出来たら何でもする」

光輝はもう一度、己を浅い部分まで引き抜いた。
「これが欲しくは無いのか?」
「あぁぁ」こんな事をされても疼いてしまう体が恨めしい。
「千尋、俺が欲しいと言えよ」光輝は浅い部分から動こうとはしない。

「ああ……光輝が欲しい……光輝だけがいい……」
「俺も……俺も千尋だけだ、お前だけがいればいい」光輝の声が掠れていた。その掠れた声に千尋の胸がキュンと締め付けられるようだった。

光輝の腰と手の動きが激しくなった。
「ああ……もっ……達くっ、はぁ……こうき……いっしょに……」
「ああ、ずっと一緒だ」そして千尋が爆ぜた後、光輝の長い戦いが終わった。

光輝が寝室を後にリビングに行くと虎太郎が紫煙をくゆらせていた。
「あの子は?」
「寝ている」
「失神している、の間違いじゃないのか?」虎太郎が口角を上げて揶揄するように光輝に言った。
光輝が返事をせずに、煙草を咥えると虎太郎が黙ってライターで火を点けた。
「俺にどうしろと?」
「俺だけでは守り切れない時が来るかもしれない。俺だって人間だ、いつ何があるか判らないからな」
「もしもの時はお前に替わってあの子を守れと?」
「まあそんな所だ……」
「そんなに惚れたのか?」
「ああ……手に入れた傍から失う事を恐れている……」
それは光輝にしては随分と弱気な言葉だった。

光輝と知り合ったのは光輝がまだ十五歳で、虎太郎が十七歳の時だった。それ以来少年から青年、そして今に至るまでずっと見て来たが気弱なこんな光輝を見るのは初めてだった。今では組での立場こそは光輝が上だったが、弟のように可愛がって来た。

虎太郎は自分が今人並みの、いやそれ以上の生活が出来るのは全部光輝のお陰だと思っている。光輝との出会いがなければ、自分は野垂れ死にしたか、あるいはどこかの組のチンンピラだ。
高校もまともに行けなかった……
そんな虎太郎に大検の試験、そして大学まで出してくれたのは光輝の父親でもある組長だ。それも全部光輝の口添えのお陰だった。だが虎太郎は恩がある以上に光輝という男が気に入っていた。光輝の為ならば、いつでも盾になれるだろうと思う。

その光輝が惚れた千尋という儚げな青年。
「……何人が知っている?」
「俺と親父を含め十人、そして十一人目がお前だ」
「十人か……欲しがる奴が出てきたら拙いな……」
「ああ」それが一番心配だと言わんばかりに光輝が頷いた。

「お前、後の処理は済んだのか?」と思い出したように虎太郎は言った。
「いや……これから綺麗にしてやる」そう言って光輝は洗面所に向かう。蒸したタオルを何枚か持って来て光輝は寝室に向かった。
「お前に出来るか?手伝おうか?」と虎太郎は揶揄するように尋ねた。
「いや、自分で出来る、誰にも触れさせたくない……」
そんな光輝に肩を竦めて、虎太郎は又煙草に火を点けた。


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