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ラストダンスは貴方と 10

 26, 2011 00:00
 玲と連絡がとれなくなってから1年過ぎた頃、この街で玲を見かけた。
車だったアキトが停める場所を見つけている間に、その姿を見失い失望したが、玲がこの街にいるはずが無いと、見かけた姿を否定もしてみた。

 真面目な玲がこんな不夜城のような街にいるはずが無い……その姿はぶらっと遊びに来た服装ではなかったから余計にそう思った。だがアキトは万が一の事を考えて次の日から玲を探し始めた。携帯の差し支えない画像を知り合いに見せ、情報提供も求めたお陰で意外と簡単に玲らしい男を探し当てる事が出来た。

 オカマバーで裏方をしているらしいという言葉に再び玲じゃないと思った。玲を見つけたいと思う気持ちと、この街にはいて欲しくないという気持ちに挟まれ、アキトも珍しくイラついていた。店が終わる頃に気づかれないように、裏口で見張った。
 数名のニューハーフに囲まれて、玲が裏口から出て来た。その姿形はアキトが知る玲に間違いないと思った。だがアキトはやっと探せた玲に声を掛ける事はせずに、その場を足早に去った。いや去ろうとした時に、その中の一人に見つかり声を掛けられてしまったのだ。
「夢苑のアキトー」目立たない格好をしていても、アキトはこの街には馴染過ぎていた。その声に玲と一緒にいた数人が振り返り、アキトに寄って来た。
だが玲だけは、興味ないようにその場所から足を動かそうとはしない。

「どうしたのぉこんな所で、たまには店に来てぇ」アキトを取り囲むように、しっかり営業をする辺りは水商売の人間たちだと妙な所に関心したが、当の玲は全くアキトに興味を示さずに早く帰りたさそうな顔を見せている。

「あんな可愛い子いつ入ったの?」アキトは一人に営業スマイルを見せながら聞いてみた。
「ああ、レイちゃん?ここだけの秘密だけど、あの子は久美ちゃんのいい人だから」
「え……?」
 久美とはどいつだとアキトが顔を見回すと、それらしいニューハーフにぷいと視線を外された。
「レイ帰ろうか」とアキトから逃げるように玲の手を引いて、足早に去ってしまった。

 とにかく玲の様子が少し分かった事をよしとして、アキトは「じゃ俺も。お疲れ様」と集団に声を掛けてから背を向け歩き出した。
内心の動揺を見破られる前に、この場から去らないととんでもない事になりそうだった。


「あの人誰?」玲はアパートに向かいながら、久美に聞いていた。
「ああ、夢苑のナンバーワンよ」
「夢苑?」当時の玲には馴染の無い名前だった。
「うん、この街で一番のホストクラブ、そしてそこのナンバーワンのアキトという男よ」
「ふーん」


 アキトは自分の部屋に戻りあれは確かに玲だったと思った。だけど自分を見ての反応は全く思ってもいない態度で、間違いかと戸惑っていた。
「玲……」少しの間、アキトらしくなく頭を抱え目を瞑った。久美というニューハーフと付き合っている事も全く像像も出来ない。一緒に住んでいるのだろうか?と狼狽えてしまう自分に失笑する程に、アキトは揺さぶられていた。

 それから時間を掛けて玲の事を調べさせた。何度か偶然を装って玲の前を通るが全く気付いてもらえない。この街一番の自分が空気のように扱われている。だが誰に無視されても本当は何でもない、玲さえ自分に気づいてくれればいいと願っても、肝心の玲はアキトに微塵の注意も払っていなかった。

 そして一番気になったのは、久美という存在だった。それも調べた。玲と幼馴染だと調査結果が届いた時には、少しだけ安堵の吐息を吐いた。一緒に住んでいる以上何か関係があるのか。もし関係あったのならそれは、同性としての関係なのか異性としての関係なのか……アキトの心が休まる事はあまり無かった。

 欲望に任せてどの女を抱いてもアキトが満たされる事は無かった。自分が一番欲しいものを手に入れられないもどかしさの中、月日は流れて行った。
アキトはずっと計画していた事を早く実現させたくて、懸命に働きナンバーワンの座もキープしていた。充分な資金を貯蓄しやっと自分の店を持てる。一度はこの街を去ろうかとも思ったが、玲の存在がアキトの足をこの街に留めた。

 そして1週間前、玲の前に改めて姿を現し、周りを固めた。

 愛しい存在が、今同じベッドの中で静かに寝息をたてている。めちゃめちゃに抱き壊したい気持ちを抑えて、アキトは堪えていた。自分がこんなに玲を好きな事を玲は何も分かっていない。それが辛いが、玲が女を抱けない体になってしまっていた事を違う意味安堵していた。
だから自分も耐えられると……もう玲以外を抱きたいとは思わない。この禁欲生活がいつまで続くか、いつ自分が獣になって玲に手を出してしまうか不安にならない筈が無い。

「彰人ぉ……もっと」可愛く強請る玲の声を早く聞きたい。16歳の玲は淫らに乱れ彰人を誘っていた。そういう体にしたのは自分だ、だが今の玲からは全く性的な匂いは感じられなかった。どちらかといえば、それを避けている、怖がっているという感じだった。
だが、本人や周りが言っているように本当に不能になったのだろうか?まだアキト自身でそれを確認はしていない。
眠る玲のそこに手を伸ばそうとしたが、アキトは理性を総動員させ自分の手を抑えた。


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-  2011, 07. 26 [Tue] 12:03

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