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鳴海君と僕 1

 27, 2011 01:48
■食後にちょっと横になっていて、目が覚めたら完全に日付が変わっていました。
すみません、通常更新はこれから準備します。
取り急ぎ、最近一人称の練習で書いた物ですが、時間稼ぎの為にアップします^^;■






 僕はぼんやりと前に座る同級生の背中を見ていた。
広い男の背中が、窮屈そうに並んで座っている。
その中のひとつの背中が揺れ立ち上り、僕の方に近づいて来るのを目の端に入れても、なおぼんやりしていた。
「おい、委員長」僕の柔らかい頬を指でつんと突いて声を掛ける声は、いつもこの時間になると聞こえてくる声だった。

「購買行ったら俺のジュースも買って来て」そう言いながら僕の机の上に100円硬貨を置く。
「はぁ……僕は君のお母さんでも、弟でも無いんですよ。たまには自分で買いに行ったらどうですか?」これも毎日繰り返される会話だ。
「いいじゃん、ついでだろ?じゃ買ったら屋上に持って来て」そう言うと自分は弁当を持って、さっさと教室を出て行ってしまう。机の上に置かれた100玉を見て溜め息を落してから、それをズボンのポケットに仕舞う。

 僕も鞄から弁当を取り出し、それを片手に購買に足を向けた。常に成績トップの僕を使いっ走りにする奴などこのクラスにはいない。あいつだけだ。
僕が委員長をしている理由は多分ふたつ。トップの成績と大人しい性格。自分の事で忙しいクラスメイトは僕ならごねないで委員長を黙ってやるだろうという考えの元に推薦する。

 人付き合いが苦手な僕には友達も少なかった。大人しいというか、とっつきにくい性格のせいだろうと自分を冷静に分析してしまう。付き合いが苦手というか面倒だった。この年頃の男子の話題など興味はない。塾の話や女の話や、女性タレントの話と話題が知れている。そんな話の中に混じる事などバカバカしいと思っていた。

 僕の初恋は、小学3年の時。クラスメイトの青木君だった。そして中学で離れるまでその思いは続いた。中学に入ると今度は違う子を好きになる。その子の名前は伊藤君。そう僕が好きになるのは今まで全部男子なのだ。
僕は中学生の時に、そんな自分を分析し自分が男色家である事を認めた。だがそれを他人に話すつもりもばらすつもりも無い。

 高校に入学して、他の中学から来た鳴海君を見た時に僕の胸が早鐘を打った。体はまるで電気ショックを受けたように痺れている。
 1年の頃から180㎝は越えているだろう体格と、モデルのような顔立ち。だけど体格と同様態度が大きいのが玉に傷。それでも陽気な鳴海君は誰からも好かれクラスの人気者だった。だが生憎とこの学校は男子校、共学に行ったらモテて仕方ないだろうと思うが、共学に行かないでくれた事は僕にとって、とてもラッキーな事だった。
だって自分は男女共学なんて考えた事のない世界だったから。そのために少々ランクを落として家から通学しやすいこの学校を選んだのだから……。

 僕が購買で自分用のコーヒーと鳴海君のイチゴのジュースのパックを買った。
弁当とパックの飲み物を2つ抱え屋上に行った。
「どうして友達と一緒に弁当食べないのですか?」弁当も広げずに寝転んでいた鳴海君にイチゴジュースを渡しながら聞いてみた。
「俺だって一人になりたい時間ってのがあるんだよ」
不機嫌そうに鳴海君はそう言うが、それならどうして僕と一緒に毎日のように弁当を食べるのかが分からない。

 屋上でふたり並んで弁当を食べているからといっても、話が盛り上がる訳ではなかった。お互いに黙々と箸を動かすだけだった。
「美味いなぁ、やっぱブリッ☆パックはイチゴだな」ピンクのパッケージを愛しそうに眺めながら、これもまた毎日聞かされる台詞だ。
「女みたい」ぼそっと僕が呟くと「残念ながら俺は男だ」と呟き返された。

 その言葉に心臓がドキンと音を立てる。まさか僕の気持ちを知っているんじゃないかと疑ってしまうような台詞を鳴海君は時々言うから、少々不安になってしまうが、それには動じないように「そうだね、何処からみてもムサイ男ですね」と言い返す。多分今日の会話はこれだけだろう、と内心思いながら僕もストローでコーヒーを吸う。

「なぁそれ美味い?」
「え……?」まさか会話が続くとは思わなかったので、驚いた声が出てしまった。
「へっ俺、隙のない委員長の不意打ちした?」さも嬉しそうな顔をして鳴海君がそう言って笑った。
「別に……ちょっとぼんやりしていたから、驚いただけです。美味しいです」と最後に聞かれた事の答えを付け足した。
「一口頂戴」僕が返事をする前にパックを持った手ごと鳴海君に持って行かれた。
「あっ、汚いですよ」僕の口を付けたストローに鳴海君が吸い付く姿を見て、顔が熱くなってしまった。

「なんだ、甘いじゃん。委員長が大人のふりして飲んでいるから、もっと苦いのかと思っていた」
「当たり前です、これ珈琲牛乳みたいなものだし……購買で上等な珈琲なんて売っているわけないでしょう?」顔の火照りを隠すために、わざと素っ気ない言い方をした。

 自由になった手で、何でもないふりをして同じストローを口に含んだ。その時に飲んだコーヒーは、いつもよりも少し甘かった気がする。

 そして僕たちは、毎日同じ事を繰り返しながら3年生になった。季節ごとに座る場所も変わる、夏休み前の暑い時期は丁度陽が当たらない裏の場所へと移動する。この場所は煙草を吸い出した鳴海君には、良い場所だった。人目に付かない日陰の壁に二人で凭れ掛かっていた。
「未成年者の喫煙は法律違反です」鳴海君が煙草を取り出す度に僕は注意をする。
「相変わらずお堅いな……だけど俺はもう成人も同じさ、やる事もやってるしな」
「やる事って何ですか?」僕が最初に頭に浮かんだのは、選挙だったが直ぐに流石にそれこそ未成年には選挙権が送られて来ない事を知っているので否定した。
「セックスだよ」勘の悪い僕を笑うように鳴海君は、そう言った。同じセの付く言葉でもその意味はだいぶ違う事に失笑してしまう。

 それを僕の余裕と思ったのか慌てたように鳴海君が、僕の腕を取って顔を覗き込んだ。
「委員長……セックスした事あるのか?」
「し、失礼な……」
 そんな事をするはずが無いという言葉は恥ずかしくて呑み込んだが、鳴海君は僕の腕を乱暴に振り払うとすくっと立ち上って、煙草を足で踏み消して階段に通じる扉を乱暴に閉めて出て行った。
一体何が鳴海君の気に障ったか分からなかったが、鳴海君が捨てて行った吸い殻を放置するわけにもいかずに、僕は鳴海君を追いかける事をせずに吸い殻を拾い、自分が飲んだコーヒーパックを開きその中に吸い殻を捨てた。

「ふう……、鳴海君セックスしているんだ……」
 3年になって以前に増して格好良くなった鳴海君を、近所の女子高生が見逃すはずが無かった。いつも誰かに告白されたり、呼び出されたりしている。
それを横目で見ながら通り過ぎた事も数えきれなかった。
僕は自慢じゃないが、高校生になって一度も告白などされた事がなかった。告白されても受ける事など出来ないが、少しでも鳴海君に近づきたいと思った。
きっと、1年からずっと一緒に昼飯を食べている事を周りの男子は不思議に思っているだろう。何よりも自分が一番そう思っている。どうして鳴海君は毎日僕と一緒にお昼を過ごすのだろうと。

「何か疲れちゃった……」ずっと思い続けている鳴海君に告白すら出来ないのだ。そんな事をしたらもう、この場所で鳴海君と昼休みを過ごす事など二度とないだろう。そう思うと口喧しい委員長でいた方がいいと思う。
「疲れちゃった……」もう一度呟いて、眼鏡を外し床に置いた。裸眼でも通用するけど高校に入学した時に兄に言われ眼鏡を掛けるようになった。
「眼鏡を掛けた方が賢く見えるぞ」と兄に言われ、何となくそのままになっていた。兄が選んでくれたフレームはお洒落でも何でも無い、黒縁の地味な物だった。

 そして僕は生まれて初めて5時限目の授業をさぼった。
体がだるくて、たまにはいいか?とつい自分に甘くなったのは、きっと鳴海君があんな去り方をしたせいだと自分を慰める。

 眠るつもりは無かったが、眠っていたらしい……だが目覚めたのは同じ場所では無かった。
(ここは?)体には薄い布団が掛けられ、身じろぐと聞き慣れない声が掛けられた。
「目が覚めた?」
「あの……僕はどうしてここに?」
「ちょっと熱があるみたいだね、屋上で倒れていたのを君のクラスメイトが大騒ぎで連れて来たんだよ」
「クラスメイト?」
「『大変だ、救急車呼んでくれ』って」
「……それはご迷惑をお掛けしました」誰だか分からないけど、僕はただ寝ていただけなのだけど、と思っていると保険医の手が僕の額にそっと触れた。
「う……ん?まだ少し熱っぽいね、もう少しで6限目も終わるから今日はもう帰った方がいい」自覚症状は無かったが、あのだるさは発熱だったのかといつもと違う自分を納得した。

「それにしても驚いたよ」と保険医が思い出し笑いをしている。
「え……?」何が可笑しいのかと僕は首を傾げた。
「いやぁ、君を担ぎ込んだ……えっと鳴海君だったっけ?あの格好いい子」
「な、鳴海君が……」そう言えばあんな屋上の死角に寝ている僕を気づくのは、鳴海君しかいないかもしれないと、改めて思った。
「鳴海君がどうかしましたか?」内心ドキドキしていたが、冷静を装って保険医に聞いてみた。
「君は熱で赤い顔をしているのに、彼の方は真っ青で今にも君が死にそうに騒いでいたからね」そう言うと僕に近づいて揶揄するように、僕の顔を覗き込んだ。
「眼鏡が無いと印象が違うね」保険医の指が僕の頬に触れた。


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COMMENT - 4

ちこ  2011, 07. 27 [Wed] 07:29

委員長~~~~っ(m'□'m)好きだっ(//∀//)エヘッこの甘やかな響きがっ
お兄ちゃんも綺麗な弟を持っちゃうと気を遣いますなぁ、いいお兄ちゃんだ(≧▼≦)
保健室の先生~( ̄□ ̄;)!!危険だ、危険だ~!
早朝エロ同盟久しぶりに出張って参りましたら、あら、大変な事態ですよ~(//∀//)エヘッ←緊急性が感じられない顔文字(笑)
kikyouさま~先日はチャットにお邪魔いたしまして、楽しかったです(m'□'m)また、来ま~す←えっ、来なくていい( ̄□ ̄;)!!ガーン

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梨沙  2011, 07. 27 [Wed] 13:23

(*゚-゚)ニコッ(*゚ー゚)ニヤッ(*゚ー+゚)キラッ

久しぶりの短編!!V(○⌒∇⌒○) ルンルン
1人称という所で今までと違った感じが~ 鳴海くんとの関係がどうなるのか?o(^^o)(o^^)oワクワクです
眼鏡をはずすと美少年(⌒~⌒)ニンマリ

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-  2011, 07. 27 [Wed] 16:59

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-  2011, 07. 27 [Wed] 23:39

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