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萌ゆる季節の中で 後編

 30, 2011 21:46
「…………」紫龍はハンドルを握りながらサイドミラーで後ろに続く車をちらっと眺めては溜め息を吐く、それを目的地に到着するまで繰り返していた。

マンションの駐車場で紫龍の車を眺めた後「店のトラックで送ります」と言い出した三郎に紫苑は小躍りして「お願いします」などと言ってしまった。
「僕は三郎さんの車に乗って後ろを着いて行くね」と子供のように目を輝かす紫苑は、初めて乗った軽トラックに興奮していたようだった。

『そ・そのうち軽トラック買うって言いださないよな?』ちょと不安になってしまう紫龍の運転するジャガーXJはゆっくりとしたスピードで実家の門の前で停車した。
まず荷物を下す為に軽トラックを庭に誘導し、紫龍も駐車場に車を停めた。

それからは三郎の独壇場だった。腕捲りをし段取りを話す三郎に紫苑も、そして動けない母親までも楽しそうに頷きながら聞いていた。
「それにしても、家の庭にビニールハウスだなんて……」一般では見かけない情景に三郎も少し興奮した面持ちで話していた。
「私と紫苑ちゃんの趣味なの!」

そう言うママさんと呼ばれている人物を眺めながら、三郎は内心『どういう関係だろう?』と首を傾げていた。
家の門に掛けてあった立派な『堂本』という表札。
紫苑紫龍と呼び合う大人の男二人……名前だけ聞けば兄弟のような名前だ。だがこの二人から滲み出る気配はそれとは違う気がする。

「後は僕に任せて、ママさんは縁側でゆっくりしていて下さい」と言いながら紫苑が手を引いて縁側まで付いて行った。
「俺も手伝うよ?」
「そんな三郎さん、お店があるんだし。それにここまで送ってもらって本当に感謝していますから」
「店は大丈夫だよ、電話1本入れておけばどうにでもなる。まぁ今後もうちを利用してくれれば俺の立場的には有難いが……」にやっと笑う三郎に紫苑は大きく頷いて「本当にいいんですか?ありがとうございます!勿論三郎さんの店以外は利用しませんよ」とまるで飛び掛からんばかりの勢いで紫苑は答えた。

紫苑は内心園芸に詳しい三郎から色々教わりたいと思っていたのだ。
「ちょっと店に電話入れるよ」という三郎に頷いてから、紫苑は縁側のママさんの所に駆け寄り「三郎さんが手伝ってくれるって」と報告をした。
「本当に!?助かるわぁ、じゃ私はトキさんと一緒に何か美味しい物を作りましょうね」と嬉しそうに言った。
「駄目ですよ、ママさんは足動かしたら、トキさんにお任せして下さいね」

「紫苑、あの彼に我儘を言ったんじゃないよな?彼だって勤務時間だろう?」と紫龍が横から口を出して来た。
「三郎さん今店に連絡の電話を入れているんだよ」
「社員なのか?それともアルバイト?」そんな勝手な事をして許されるのかと紫龍も少し心配になって聞いた。

「あのね、あのチェーン店のオーナーが三郎さんのお父様で、店長が長男の一郎さんで。次男の次郎さんは違う店舗の店長さん。三郎さんは両方の店舗を行ったり来たりしてるの」
「一郎に次郎に三郎……」紫龍はその名前を呟くように繰り返した。

「要するに自由が利く立場って事か?」
「そうです。だから心配しないでね」そう言うと紫苑はハウスに向かって駆けて行った。

「ワハハ、違う心配をしているんだろう?」豪快に父親に笑われ紫龍は苦虫を噛み潰したような顔になった。
実際紫龍から見ても三郎は見た目の精悍さとは違い繊細で爽やかな雰囲気の青年だった。

その頃ハウスの中で土を弄りながら三郎が「ここは紫苑君の実家?」と聞いていた。
「う……ん?正確には紫龍の実家」
「でも紫苑君も堂本だよね?でもさっきの人は紫龍さんのお母さん?」
「そう、紫龍の両親だよ……」

「ごめん、何か余計な事聞いたかな?」これ以上立ち入ってはならないと三郎は自分にストップを掛け紫苑に謝罪した。
「さぁこれ植えて行くかな?」と話題を変えて立ち上った。

「あのね、紫龍は僕のパートナーで両親は僕の義理の両親になるんだ」

何でも無い事のように紫苑はそう言って三郎に続き苗を手にした。
「そう……」三郎もそれだけ返事をすると上手に植えるコツを伝授しながら、ふたり作業を続けた。
途中マンションのベランダでパセリや青紫蘇を育てたいと言う紫苑に今度プランターに色々セットして持って来ると言う約束をしながらも、だんだんと土の色を緑色に変えて行った。




一方縁側で父親と囲碁を打ちながら紫龍はハウスの二人が気になって集中出来ないでいた。
「そんなに気になるんなら、一緒に手伝えばいいだろう?」と言われ「いいんだよ、俺がいると紫苑も気を使うから」と答える。
「そうか……一応お前も考えているんだな」
そんな会話の中ハウスの様子を見に行っていた母親が足を庇いながら戻って来た。
「もう終わったみたい、紫苑ちゃんにお風呂に入ってもらわなくっちゃ」と呟きながら家の中に入っていった。

「…………。」
「どうした?」
「俺も風呂入るかな……」独り言のように呟いて立ち上り奥へと消えて行く息子の姿を呆れた顔で父は見送った。

そこに紫苑と三郎が満足した顔で戻って来た。
「おお、大変だったな、ご苦労様」と父は労いの声を掛けてやった。
「パパさん、あれ紫龍は?」
「あ、煙草でも買いに行ったじゃないかな?」
「そうですか。三郎さん先にお風呂入って下さいね」
「いや、俺は……そこまで」と埃と汗で汚れた顔で遠慮した。

「入って汗流してって下さいよ。着替えなら紫龍の新しいのがあるだろ?紫苑君」
「はいっ、沢山あります。だからお風呂使って下さい三郎さん」
「い・いいんですか?何か俺図々しい……」
「そんな事言わないで、こっちです」まだ遠慮する三郎の手を引いて紫苑は案内しに行った。
縁側に残された父がひとりにやっと笑った事など誰も知らない。

去年も紫苑を交えて賑やかな苗植えをして、夏には美味しい野菜を食べた。
今年はもっと美味しい野菜が食卓に上がるだろうと、紫龍の父は陽が長くなった夕方の景色を眺めながら幸せな時に感謝していた。


その5分後に、風呂場で遭遇した二人の男が固まってしまっていた事など、台所で楽しく食卓の用意をしている紫苑は予想もしていなかった。


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何だかBLでも無いただの雑文になってしまいました、スミマセン^^;
三人兄弟の末っ子三郎。
美味しい立ち位置ですよね?そのうちまた登場してもらいますね。



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COMMENT - 6

ちこ  2011, 05. 01 [Sun] 07:30

ホームセンター従業員三郎さん恐るべし(≧▼≦)
紫龍さんには最強最悪のライバルかも・・・
しかも、紫龍パパさんのイタズラ心から風呂で鉢合わせ(笑)
まさか!!というか、当然紫龍さんは臨戦態勢で紫苑ちゃんを待っていたのではっ(笑)
ジャガーXPに似合うカッコいい紫龍さんのカッコいいお話プリーズです(笑)
待っています(*^□^*)

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けいったん  2011, 05. 01 [Sun] 11:31

紫苑より... 紫龍より...
”ホームセンター3兄弟”が、気になって しかたがないー!(o´ェ`o)ゞエヘヘ

三郎くん、いい味だしてたよ~(*ノ≧▽≦)ノ~~~~『すき』☆☆☆...byebye☆

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kikyou  2011, 05. 04 [Wed] 00:03

ちこさま

こんばんは。

三郎!ちょっと美味しいキャラ登場です。
私もホームセンターに行くと隅々まで見て歩くタイプなんです。
「何か面白いのないかなぁ?」って。

きっと紫苑もそういうタイプかも?です。

紫龍……本当に毎回毎回、格好いい紫龍にしようと思っているんですよ?
でもねぇ、どうしてもそうならない。
何かコツがあるのかな?なんて思ってしまいます。

次こそは!って毎回言ってるようですが、次こそは
格好いい紫龍を書きたいです。

コメントありがとうございました*:.。☆..。.(´∀`人)

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kikyou  2011, 05. 04 [Wed] 00:46

けいったんさま

こんばんは。


ホームセンター3兄弟(゚∀゚)

ぽんと出て来たキャラだけど良い伏線になりそうです。

ホームセンター好きな私にとっては、羨ましい設定ですよ^^
身近にこんな萌えがいればいいのに!って思うし。

そのうち再登場しそうです三郎。

でも格好いい紫龍を書くって言っちゃったし……
(え?いつも言ってる?(笑))

今度こそは、格好いい紫龍書くぞ!
でも私の脳内では、もう三枚目紫龍が定着してて・・・

では、いつもコメントありがとうございます!ヽ(゚∀゚)ノ



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-  2011, 05. 10 [Tue] 14:24

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kikyou  2011, 05. 15 [Sun] 04:48

鍵コメ ☆さま

こんばんは。

読んで下さってありがとうございます(*^_^*)

今度こそは、格好いい紫龍を!と思って書き始めるのですが
どうも上手くいかない……

格好いい紫龍にする為には、紫苑がピンチに……という可能性もあるし。
でも、最近は紫龍はもうこのままのキャラでいいかな?
などと考えたりもしています(笑)
どう転んでも、紫苑の前では色々な欲が優先されてしまい
三枚目キャラになっているようなんです。

ホームセンター3兄弟も、何気に良いキャラになるかもしれません。
そしてお茶目なパパさん(゚∀゚)
きっと風呂場で、二人の目が点になった事は間違いありませんよね(笑)

私の中の嗜虐心が大きくなった時に、今度は書いてみます。
そしたら、格好いい紫龍が見られるかもしれません(笑)


コメントのお返事遅くなりましたが、ありがとうございました(*^_^*)

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