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彼方から 32

 22, 2011 23:59
「知っている方ですか?」尋ねる仙波に「少しな……」と言葉を濁した。
仲間の体に隠れて向こうからは覗き込まない限り姿は見えない。
自然と聞き耳をたてるような感じだが3人で仕事について語り合っていて色っぽい話題は上がっていなかった。

「あいつらに1杯出してやってくれ」
意を決したように言うオーナーに少々訝しげな顔をしたが仙波は従業員の顔に戻り
「オーナーからと言っても?かしこまりました」頷いた顔を確認してから離れた。

それぞれ飲んでいるカクテルと同じ物を作り「あちらの……ここのオーナーからです」と前に置いた。
一瞬3人が驚き顔を見合わせてから一斉に端に座っている男に視線を投げた。
「すみません、ご馳走になります」仲間の声に蓮も軽く会釈をして改めてその顔を見た。
「あっ!……」
「何だ蓮知ってるのか?」
「あ・ああ」蓮はオーナー?と内心驚きながらも自分と知っての事だと判断し「ちょっと挨拶してくる」と耳打ちして席を離れた。

「こんばんは……まさかこの店のオーナーだったとは……」
「ま、道楽でやっている店だ」
「隣いいですか?」
「どうぞ」

蓮は兼介の隣のツールに腰を下ろした。だが次の言葉が出て来ない。
「どうだ?秀人と上手くいっているのか?」
「……はい」
秀人と兼介が恋人同士だった訳ではないが、後から割り込んだような気分で蓮もどう対応していいか判らなかった。
「あいつを泣かすような事があったら……」
「大丈夫です、泣かせるような事はしません」
「そうか……それでいつまでモデルなんてヤクザな仕事をしているつもりなのか?」
その言葉に蓮は兼介が自分の経歴をきっちり調べ上げている事を勘づいた。

「今の契約が終わったら製薬会社に入ります」
モデルをしている今でも数社からのオファーは来ている。
勿論アメリカの企業からも良い条件を出されているが、蓮は日本の企業でと決めていた。

「あの……秀人との事認めてくれるんですか?」
「それは秀人が決める事だ……それとも俺が認めないと言えば別れるのか?」
「いえ俺たちはもう何があっても別れるつもりはありませんから、貴方も秀人の事を放っておいて下さい、ではご馳走様でした」
釘を刺されたような気分で兼介は面白くはなかったが「あ、最後にひとつ聞くが俺と何処かで会った事あるか?」
「……いえ」一瞬蓮の顔色が変わったような気がしたが、兼介が調べ上げた蓮の経歴に自分との接点は何も無い事は勿論分かっていた。

蓮が仲間の所に戻ると仙波が近寄ってきた。
「どういう知り合いなんですか?」従業員にしては突っ込んだ質問だが仙波は違う立場で気になり聞いてみた。
「秀人の彼氏さ……」投げ捨てるように言う兼介の顔を驚いた目で仙波は「……そうですか」とだけ返した。
自分が拙い事を聞いてしまって少々気分が落ち込んでしまった。
「あいつに惚れるなよ」
「な・何言ってるんですか?」
「さぁ俺は帰るかな?」
「真っ直ぐですか?」
「ああ」

兼介の即答に仙波は少し寂しい顔を見せたが「おやすみなさい」と引き下がった。
自分が兼介を引き留められる立場ではない事はよく分かっている。
兼介を見送りカウンターの中に入ると、じっと自分を見ていた蓮と目が合った。

「彼とは長いの?」
仙波はその質問の意味をどう受け止めていいのか迷った。
仙波の躊躇いに蓮は二人の関係を決定的なものと確信した。


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