2ntブログ

スポンサーサイト

 --, -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

彼方から 34

 25, 2011 00:00
蓮は秀人が辛い過去を思い出さないように出来る限り優しく抱いた。
この腕の中で震えながら切ない吐息を漏らす秀人を愛しみながら、秀人の心も体も開ききるのを待ってから繋がった。
「ぁぁ……蓮」
「秀人好きだよ」
この世に天国と地獄があるのなら、今まで地獄をたくさん見て来た秀人には現世では天国だけを見せてやりたかった。

受け入れる事に慣れない秀人が蓮にしがみ付いてくる、その体を抱き留めながら耳元でずっと愛を囁く蓮に安心したように全てを投げ出してくれる秀人……
もうこの腕から離さないと何度でも誓う。

何度も吐精し、蓮の迸りを受け止めた体をベッドに横たえると、うつ伏せになって「恥ずかしい……」と枕に顔を埋めた。
「どうして?」揶揄するように言うと「恥ずかしいものは恥ずかしい……」と駄々を捏ねる子供のような事を言う秀人を見ると自然と口元も緩んでしまう。

「顔を見せて……秀人の顔が見たい」
と蓮もわざと甘えたように言うと、秀人が耳を染めたまま顔を上げた。
達く時の顔も見ているのに……その色香に蓮は眩暈がしそうだった。
薄紅に染まる頬にキスをひとつ落してから「風呂の用意してくるね」と蓮はベッドを降りた。
その言葉に一瞬秀人は不安な顔を隠さない。
そんな秀人の頭をぐちゃっと撫でてから、蓮は浴室に向かった。
未だに離れる事を不安に思う秀人の心の傷は時間を掛けるしか方法は無いのだろうか?


それから3か月程平穏な日々が続いた。

「何だ、今日も蓮君のマンションに行くのか?」
父親の低い声に秀人は「うん……」と申し訳無さそうに頷いた。
「あまり迷惑掛けないようにしろよ」と父に言われている最中に奥から紙袋を下げた母親がやって来た。
「はい、これ蓮さんと一緒に食べてね。レンジで温めれば大丈夫だから」と持たされたのは母が得意とするビーフシチューだった。
「うん、ありがとう。じゃ行ってくるね」
そう言って元気よく出て行く後ろ姿を見送りながら、秀人の母は「まるで恋人にでも会いに行くみたいね。楽しそうで……」と声に出してから奥へと姿を消した。

「恋人か……」秀人の父は溜息混じりの言葉を吐いた。
自分の勘が当たっていれば……秀人と蓮は恋人同士の関係にある……と父は思っていた。
最愛の息子のあの目は恋する目だと気づいたのは、最初の頃だった。
そして蓮と会って帰って来る度に秀人から漂う男の色香に少々咽る気がしていた。医師として同性愛を否定するつもりは無い。
だが父としては、少々困惑は隠せなかった。

「一度話をしてみるか……」と独りごちる。
今まで何の手も掛からなかった秀人がここで爆弾を投下してくれるとは考えもしなかった……いや爆弾はずっと秀人の胸の中にあったのかもしれない。
小さい頃から少し変わった子供だった。そして時々遠くに意識を飛ばしている事も……

だから妻が秀人を離したがらなかったのだ。本当なら受験に有利な私立の小学校に通わせても良かった。秀人本人は経済的な理由だと思っているようだったが、母親が目の届く所から離したくは無いと自分に訴えた。「あの子が何処かに行ってしまいそうで不安なの」と。
そして秀人は家から歩いて通える地元の学区行の小中学校に通う事になったのだ。

幸いに秀人は優秀な成績で高校に進み希望の学部の大学に現在通っている。
本当に何の不満もない息子だった。
今まで我儘も言った事もない息子の唯一の我儘が、もし蓮と付き合いたいという言葉でも許してやるかもしれない、と首をゴキゴキ鳴らしながら、もう姿など全く見えない秀人の後姿を目で探していた。


にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
キャッ秀麗!ポチっと押して下されば嬉しいです


FC2のランキングにも参加中です^^

関連記事

COMMENT - 4

NK  2011, 04. 25 [Mon] 12:11

秀人くんと蓮さんは順調に恋人同士となりましたね。
どこからも横槍は入らないようだし一安心。
と思ったら、
秀人のところでお家騒動ですか?!

Edit | Reply | 

ちこ  2011, 04. 25 [Mon] 19:38

ものすご~く理解のあるパパ。
娘に変な虫が付いちゃイカン~Σ( ̄□ ̄;)じゃなくて息子に綺麗な蝶々が止まってるヾ(=^▽^=)ノキャッな、状況に平静でいられる・・・素晴らしいパパ。
蓮との関係はどうなるのでしょうか~?

Edit | Reply | 

kikyou  2011, 04. 26 [Tue] 00:54

NKさま

こんばんは。

今回は珍しく家族を出していますからね。
ちょっと触れておかないとヤバイかな?って感じです。

考えてみれば今までの受けちゃん達はとても寂しい家庭環境でした。
多分その辺が私が本領を発揮できない所かもしれません。

やっぱ不幸な受けちゃんを優しい攻めちゃんが……ってパターンが好きですねぇ私。

でも、もう少しお付き合いくださいねー。

コメントいつもありがとうございますo(*'▽'*)/☆゚’

Edit | Reply | 

kikyou  2011, 04. 26 [Tue] 01:05

ちこさま

こんばんは。

秀人パパは町の赤ひげ先生ですからねぇ、小さな事には拘りません(笑)
(小さな事かは分かりませんが^^;)

でも秀人ママもきっと、可愛い秀人を嫁に盗られるくらいなら
息子が二人になった方がいいと思いそうです。

これから終盤に向けて頑張りますー。

コメントいつもありがとうございますo(*'▽'*)/☆゚’

Edit | Reply | 

WHAT'S NEW?