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海に舞う花

 14, 2011 19:51
「どうだ?研修はきつくないか?」
「全然!楽しいです」
こんな会話がここ2週間繰り返されていた。
4月1日に入社式を済ませた拓海は毎日の研修に張り切って出勤していた。
「俺はあなたの部下である事が凄く楽しくて幸せなんです」
そう嬉しそうな顔で言われれば瀬田とて口元が緩むというものだ。
「あんまり張り切り過ぎて体調を崩すなよ」
「はい」拓海は自分が生きている幸せを噛み締めていた。

「何だか俺は会社に嫉妬しそうだ……」
「そんな……自分の会社でしょう?」
「お疲れのところ申し訳ないが?これから数時間俺だけの為に時間を割いてはくれないか?」
「そんな言い方しなくても……」
研修に差し支えると悪いと言って瀬田はここ2週間拓海に迫るような事はしなかった。


「あぁっ……激し過ぎ……凌牙」なかなか呼べなかった名前も回数を重ねるうちにベッドの中では言えるようになった。
「これでも遠慮しているんだ……」だが抱き壊してしまうのではないか?と時々不安になる程に瀬田は拓海に溺れていた。愛を測る秤があれば絶対自分の方が重いと自信を持って言える程拓海が愛しくて仕方なかった。
本当は研修後も人事に委ねないで自分の元に置いておきたかった。だがそれは拓海の為にもならないし、拓海もそういう事を望んではいなかった。

自分の目の届かない所で他の男から視姦されやしないか、誘惑されやしないかと心配は尽きなかった。そんな事を秘書に零すと「呆れてものが言えない」などと言われてしまう始末だ。
「拓海……浮気したら殺すぞ」
入社式の日から拓海の指にプラチナの指輪は嵌っていなかった。それはプラチナの細いチェーンに通され拓海の首に掛けられていた。瀬田の指輪も同様に胸元に輝いている。

「浮気?それは俺の台詞です……あなたが他の人にこんな事をしたら……俺は消えます」
殺すと言う瀬田に対して拓海はここからいなくなると言った。
それは思いの違いが言わせるのでは無く立場の違いが言わせているのだろうと瀬田は思い「大丈夫だ俺はお前を裏切ったりはしない」と囁いた。
「俺だって……」拗ねたような拓海の孔がぎゅっと瀬田を締め付けた。
「うっ……拓海、そんなに締めたらもたないから……」
瀬田のそんな台詞に感じてしまい拓海の先端からは先走りの露が零れ幹を伝った。

「厭らしいな……拓海の体……」
「あなただけだ、俺を抱くのも感じさせるのも」
「はぁっ、全くそんな殺し文句どこで覚えてくるのか……」
溜息を吐きながらも瀬田は腰を打ちつけた。
「あぁっ、はっはぁっ……」
瀬田は一度だけ研修中に拓海の顔を垣間見た事があった。
凛とした横顔が真剣な眼差しで講師の言葉を聞いていた。あんな近寄りがたい雰囲気の拓海が自分の下で喘いでいる事が不思議に思うほど会社での顔とベッドでの顔は違った。

「拓海、俺だけに見せてくれよ達く時の顔は……」
「あ・当たり前です。でも本当はあなたに見られるのも恥ずかしい」
「駄目だな今日はじっくり間近で見せてもらうよ」そう言うと瀬田は拓海を引き起こし対面座位の体勢に変えた。

「あうっ……はぁぁぁっ」
瀬田の膝に跨る事でより深く繋がり拓海にとってそれは苦痛ではなく完全に快感だった。
突き上げられ落される繰り返しは拓海の理性も何もかもを愉悦に塗り替えてしまう。
「あぁぁぁ……っ、だめ……もっ」
「拓海、愛してる」瀬田の熱い言葉に拓海は体を震わせる。
口付けを交わしながら瀬田に扱かれながら拓海は達した。

「拓海……」瀬田の甘い声を聞いているだけで幸せだと拓海は心から感じていた。それは囁く瀬田とて同じ事だ。
「明日車で少し出かけようか?桜が満開だ」今年の桜は通年よりも少し遅く咲いた。花見などという大袈裟な事はしないが、のんびり桜の木の下で時を過ごすのも一興だ。
「俺桜好きです」まだ艶めかしさの抜けない顔で拓海は返した。


結局瀬田の激しさに拓海は翻弄され続け、起きて軽い朝食とも昼食ともつかない食事を済ませ、車に乗り込んだのはもう昼をだいぶ過ぎてからの時間だった。

瀬田が車を止めた場所は都内でも桜の名所で有名な千鳥ヶ淵だ。
「凄い!」拓海はもう感嘆の声しかでない。
「綺麗だな……」
満開を少し過ぎた桜の花びらが舞い散る中二人はしばし立ち竦み桜に見惚れていた。

はらはらと名残惜しそうに大地に帰る花びらに、花の命の儚さを見た気がして口に出すと「だがまた来年も花は必ず咲く」と瀬田は力強く言った。
川面に浮かぶ花びらは海にも辿り着くのだろうか?
海に散った魂も桜の美しさに触れる事が出来るのだろうか?
そうであって欲しいと心から願った。

言いたい事は沢山あったけど拓海は黙って空を見上げた。
「来年も来るか?」瀬田の言葉に拓海は「はい一緒に……」と答えシャツの上から胸元の指輪の形を指でなぞりながら瀬田に向き直った。
「連れて来てくれてありがとう」
「よし、写真を撮ろう」瀬田は通りすがりの人に頼んで桜の木を背景に写してもらった。


後日その写真は二人の暮らす部屋に大きく引き伸ばされ飾られていた。
その写真を見るたびに拓海は頬が緩む。
そんな拓海を見て瀬田の頬はもっと緩んでいる事を拓海は知らなかった。


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幸せな顔は人にも幸せを連れて来てくれる……
辛かった拓海にも春は訪れたのだ。

早く本当の春が来ますように…………


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COMMENT - 4

kikyou  2011, 04. 14 [Thu] 20:16

最終話に拍手下さった方へ

こんばんは。
先日はありがとうございました。
そうか、携帯からは太字見れないんですね!?
頭にインプットしましたぁ、ありがとうございます。

久々に最後の方を読み返し、クリスマスまで読んでしまいました(゚∀゚)。
そして自分で拓海に萌え~ってなっている作者です(笑)
また何かありましたらコメント下されば嬉しいです。

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NK  2011, 04. 16 [Sat] 08:01

堪能

kikyouさん色のほのぼのストーリーを堪能しました。
ありがとうございます。
やさしい気持ちになりました。

プライドが高い一筋縄ではいかない受けくんが好みのはずが、
ここに来ると健気な受けくんにキュンときます。
拓海くんは大好きな麗くんと重なるところがあって、幸せが続くよう
に心から願うばかり。
多分、気持ちは子の幸せを願う母になってしまうのですね。
そして、俺様の瀬田さんの独占欲をクスっと笑ってしまいます。

桜前線は北上中、きっと東北のみなさんの気持ちを温かくしてくれますよね。

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kikyou  2011, 04. 16 [Sat] 23:12

NKさま   堪能

こんばんは。

嬉しいです(*^_^*)
伝えたい事を感じてもらえて、マジ嬉しいです。

あまり直接的な言葉(記事)を何度も使うのも厭らしい気がしたので
間接的なメッセージにしました。

良かった……


強気受けちゃんがお好みですかぁ?(゚∀゚)
一度は書いてみたいですが、私の場合はだんだんと変わってくるんですよね……
色々なタイプの受けちゃんを書けるようになりたいですネ。

是非今度挑戦してみます!

コメントありがとうございました。

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ヒダカ  2011, 05. 14 [Sat] 20:54

お久しぶりです。
以前に、この二人のリクさせていただきました。
また読ませていただいて嬉しいです。
しばらくパソから、遠ざかっていました。
今年は、イロイロと物思う春でしたよね。
それで最近復活して、こちらにもお邪魔しました。
そしたら、瀬田さんと拓海君のお話がUPされていたので、嬉しく読んでいたら、なんと更新日が私の誕生日だったのです。
ただ、それだけなのですが、しみじみと嬉しく思ったのでコメントさせていただきました。
kikyouさま ありがとうございました。

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