「あーさっぱりした」瀬名がズボンだけ履いて髪をわしゃわしゃと乱暴に拭きながら戻って来た。
遥はペットボトルを持ったままぼうっとしていた。
「何やってんの?俺もう寝るよ、おやすみ」そう言うとあっさりと瀬名は寝室に入ってしまった。
『そんなぁ~瀬名ぁ~』心の叫びだけで遥はボトルを持ったままゆっくり立ち上り、自分も寝室に向かった。瀬名が買ったマンションの寝室は一番広い部屋を使っているので、キングサイスのベッドが置いてあっても圧迫感は無かった。
瀬名は壁際に躰を寄せるようにベッドに横になっていた。
「せなぁ……もう寝たの?」
「…………」
「せなぁ……僕、明日休みなんだけど……」
何気なく遥が誘うけど瀬名は躰の向きを変えようとはしなかった。
「……僕も寝よう」遥は瀬名を起す事を諦めてベッドに潜り込み瀬名に背中を向けて横になった。
『ちっ諦め早いっ』寝たふりをしていた瀬名は声に出さずに舌打ちした。
そう思っている時に遥の躰がごそごそと動き出した。
『ちょ・ちょっと何やってんだよ?』
遥の動きは明らかに何かをしている動きだった。
「はぁん……りょうさ……ん」
「えっ!!」自分ではない名前に瀬名が鋭い反応を見せた。
「ちょっと何?」
「ほら、やっぱり狸根入りだった」瀬名の慌てように可笑しそうに遥は笑い出した。
「誰、りょうって?」
「あの喫茶店のマスターの名前~」
「ふ・ふざけんなっ!」
不機嫌な瀬名にお構いなしに遥が瀬名の躰に跨った。
「あのね、彼氏の嫌がる事を教えてもらったんだ」
「ったく……ろくでもないマスターだな」
「だって退屈だったんだもん……」
「ふ~ん?もういいよ、俺も悪かったし。ところで続きは?」
「えっ?何の続き?」
「さっき一人でやってたよね?その続き」
「あ・あれは冗談で……」
慌てる遥を下から見上げ瀬名は口角を上げた。
「俺の嫌がる事をしたんだから、それくらいはしてもらわないと……」
「う・うん」遥は瀬名のこの顔に非常に弱かった。
だが遥はひとりでやるなんて、まどろっこしい事は出来たら避けたかった。
久しぶりにベッドの中でゆっくり出来るのだ、瀬名にいっぱい甘えたかった。
「瀬名、ふたりで気持ち良くなろう?」
「ふっ……遥にはかなわないよ、今日は本当にごめんな」
「うん、僕もゴメン、大人気なかったよ……」
自分がしっかり者の大人だと思っている所が瀬名から見たらやはり可愛いのだ。
「また……今度は一緒にあの店に行こうな、遥あんな感じの店好きだろ?」
瀬名は仕事仲間と初めて『pendulum』に行った時に、必ず遥を連れて来てやろうと思ったくらいあの店は遥の好みだった。見た目はハーフみたいな遥だけど母親の影響か和の物を好む。
『pendulum』は和というには少し違うが、古いよき時代が上手く合体され趣のある雰囲気を醸し出していた。
「本当に?嬉しい……(マスター素敵だった)」
「本当だよ、それに……もし仕事仲間と会っても今度はちゃんと一緒に住んでるって紹介するよ」と少し照れたように瀬名は言った。
「うん。ありがとう……そんなことより瀬名……しよう?」
簡単に「そんなこと」と言い捨ててしまう所がやはり遥らしい。
遥は本当はもう我慢できない程に躰に熱が篭ってしまっていた。
「何したい?」遥の潤んだ目を見れば判るけど、やっぱりちゃんと言わせたいと思うのも又男心。
「あん、瀬名の意地悪……せなとエッチしたい……せなは?」
「俺も遥とエッチしたい」
そう言ってニッと笑う瀬名の顔に遥は見惚れながらパジャマのズボンを下ろした。
「ズボンからとは……随分と待たせちゃった?」
瀬名は呆れたように言いながら部屋の照明を間接照明だけに切り替え、遥に唇をそっと重ねて行った。
<おわり>
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すみません前話が長くて、こっちが短くなってしまいました。
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