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SS 『pendulum』 3杯目

 01, 2011 02:43
「おーい瀬名もう今日上がり~?」そう声を掛けてきたのは同じモデル事務所の斗南聖夜(となみせいや)だった。
「はい、もう上がりです、お疲れ様でした」
瀬名は先輩にあたる斗南に挨拶をして事務所を出ようとすると、そこにもう一人の仲間の東條慧(とうじょうけい)まで「じゃ一緒に飲みに行こうよ」と声を掛けてきた。

「いや、俺酒は……ちょっと珈琲でも飲んで帰ります」と酒の誘いを断った。
「つれないねぇ瀬名は、じゃ俺らもまだ時間早いから珈琲飲んでから行こうか?」
斗南の言葉に瀬名は内心舌打ちをしていた。
金曜日の今日は遥と外で待ち合わせをして食事して帰る予定だったのだ。

瀬名の仕事が何時に終わるか分からなかったから、事務所近くの喫茶店で待ち合わせをしていたのだ。時間的にはもう着いている筈だった。
「いや、俺に気を使わないで、どんどん飲みに行っちゃって下さいよ」と言うと
「あ、もしかして女と待ち合わせか?どんな女か見てやろうじゃないか?」と、慧まで言う始末だ。
「女なんかじゃないですから、ちょっとあそこの珈琲気にいってて、疲れた体を癒そうかな?って思っているんですよ」と冗談ともとれる言い方で瀬名は返した。

「ふーん、女と待ち合わせじゃなければいいじゃん、俺らが着いて行っても」
最近瀬名の様子を怪しいと睨んでいる二人は引きそうもなかったから、瀬名も諦めて「じゃ行きましょうか?」などと答えてしまった。

去年事務所の近くにオープンした『pendulum』という美味い珈琲を飲ませてくれる店はモデル仲間でも評判は良かった。脱サラした二人の男性が始めた店らしいが結構馴染みの客が付いているようだった。


その頃、遥は一足先に『pendulum』に着いて、一番端っこのテーブル席で珈琲を飲んでいた。
瀬名から何時になるか分からないと言われていた遥はひとりのんびりと珈琲を味わっていたのだった。そして遥がカップ半分程珈琲を飲んだ頃店の入り口が賑やかになって振り向いた。
「せ……な」腰を浮かせそうになった遥だったが、瀬名に2人の連れがいる事に気づき声を掛けられるまで座って待っていようと思った。
遥は店員に『待ち合わせです』と言って4人掛けの席に案内してもらったのだったが、3人の客が座る席が今は空いていなかった。

だから遥は瀬名が自分の席に来るものだとばかり思って待っていた。

「空いてないですねぇ、店替えます?」などと聞こえるのは瀬名の声だった。
その声を聞いて遥が顔を上げると、瀬名の連れと目が合った。
『みんなモデルなのかな?格好いい……でも瀬名が一番格好いい』そんな事を思ってしまったから、自然と顔が綻んでしまう。

「な、あの席に相席頼んでくれない?」店員に誰かがそう聞いていた。
「悪いですよ、そんな……」慌てたような瀬名の声に自分を紹介する意思が無い事に気づいた遥は立ち上り「僕、カウンター席に移ります」と自分から声を掛けた。
その店員もカウンターの中にいるマスターも申し訳無さそうな顔をして遥に頭を下げてくれた。

「ごめんねぇ、君もし良かったら一緒の席にいてくれてもいいよ?」
「これも何かの縁だしね」と二人の男はそれぞれに軽口を叩くが肝心の瀬名は何も言わない。
「いえ、僕カウンターに移りますから、どうぞ座って下さい」と二人の男に向かって微笑み掛けた。

結局瀬名たち3人がテーブル席に座り、遥は少し寂しい気持ちでカウンターに移った。
「申し訳ないですね、お詫びにもう1杯サービスしますから、それ飲み終わったら声かけて下さいね」とまだ若いが感じのいいマスターがそんな事を言ってくれた。
「いえ……ありがとうございます」一応社会人の遥は礼儀正しい面も世間では見せているのだ。
それからそのマスターはひとりの遥に気を使って色々声を掛けてくれた。
少し落ち込んでいた遥もマスターの優しさに元気を取り戻し、楽しく会話が弾んでいた。

そんな遥の後ろ姿を3人の男たちは違う視線でちらちらと見ていた事など、遥は気づくはずもなかった。
「なぁあの子可愛いな」
斗南が瀬名と東條にそう囁いていた。
「斗南さん、ちゃんと恋人いるじゃないですか、つまみ食いばっかりしていたらヤバイですよ」と東條がそんな斗南をたしなめた。
「いや、俺最近上手くいってないんだよ、ああいう子だったらあっちの具合も良さそうだし……」
「斗南さん、相手は男ですよ。そんな目で見たら失礼ですよ」耐えきれなくなって瀬名がそう口を挿んだ。斗南は仲間うちではすっかりカミングアウトしていたが瀬名はまだ秘密にしていた。斗南はバリタチ、遥と知り合いだなんて言える筈もなかったが、言わなくても危ない方向に話が流れそうで、それを阻止しようと頭を痛めていた。

「いや、あの子はきっと素質あるか、もしくはネコちゃんだな」
流石に男をそういう目で見る事には斗南は長けている。
この業界にはゲイは多いがその中でも斗南は『俺は狙った子は絶対落とす』と豪語するくらいのモテ男だった。
まぁ見た目もモデル稼業をしているくらいだ、悪くはない。いやあまり認めたくは無いが斗南に狙われて落ちなかった男は今まで居なかった、という噂は聞いていた。

そんな瀬名の心配をよそに斗南は「あの子ハーフかな?高校生くらい?」などと未だに遥の後姿を見ながら言っていた。
『ハーフでも高校生でもありませんからっ』と言いたい気分だが今更だ。
瀬名は自分の保身のせいで遥を危険な目に合わせそうで、男としてかなり凹んでしまっていた。

『それにしても、あのマスターと随分仲良くしてるじゃないか』などと自分の事は棚に置いて遥を攻めている瀬名だった。

<次回へ続きます>

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すみません、「彼方から」は本日中に上げるつもりです。
コメントありがとうござますo(*'▽'*)/☆゚’
申し訳ないですが、お返事少し遅れてしまいます。
(いつもスミマセン('A`))
続きに困った私はとりあえずアホっこちゃんに逃げてしまいました^^;

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COMMENT - 2

jun  2011, 04. 01 [Fri] 05:20

お早うございます。
久しぶりの瀬名と遥ですね。
斗南に目つけられた遥はどうなるんでしょうか?
瀬名、恋人だって宣言してしまえばよいのに。
続き楽しみです。

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kikyou  2011, 04. 03 [Sun] 22:39

junさま

こんばんは。

ちょっと煮詰まって逃避で書いてしまいました。
その逃避が首を絞めなければいいんですが(笑)

ちょっと寒かったり暖かかったりなので、体調に気を付けて下さいね。

いつもコメントありがとうございますo(*'▽'*)/☆゚’

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