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SS 『pendulum』 2杯目(前編)

 25, 2011 18:42
ここ『pendulum』は午後12時に開店すると、食後の旨い珈琲を求めて来る客で賑わってた。
そして2時を過ぎる頃に最初のピークは過ぎ、暫くは落ち着いた時間を過ごせる。
次のピークの夕方までに遅い昼食を客がいなければ二人並んで、いたら交代で摂る事にしていた。

今日は諒が作ってくれた椎茸やシメジが入った和風スパゲティだった。
「美味しい・・・」
「だろう?」諒は廉也の嬉しそうな顔見たさに鍋を振っているようなものだった。
廉也の優しい笑顔は自分の活力だと思っている。
「ここでも軽食出す?」
実際、経営を考えると飲み物だけよりも、簡単な食事があった方が店としても
そして客も喜んでくれるはずだと廉也は思っていた。
何度か諒に提案したものの、いつもはぐらかされてしまって結果が出ない。

「う・・・ん」今日も煮え切らない諒の返事に
「その方が売り上げも伸びるよ」
「そうだが・・・そうなると廉也と二人で店を切り盛りして行くのは無理だと思う」
「売り上げが伸びたら、一人くらいアルバイト雇えばいいんじゃない?」
「・・・そしたらお前と二人だけで、こういう時間を過ごせなくなる」

「えっ?・・・・もしかしてそれが軽食を出さない事の理由?」
「そうだが?何か変か?」
「・・・・・」
諒のことだから、もっと自分の淹れる珈琲に拘りがあっての事なのかと思っていた。
「アハハハッ・・・・諒おかしい」笑い出す廉也に諒はちっと小さく舌打ちした。

「笑うな・・」
「だって・・僕の方が絶対諒の事凄く好きだと思ってたのに・・」
「ふん・・まだまだ甘いな、俺の思いなんかお前には計り知れないよ」
廉也は何だか凄い告白を聞いてしまった気がして頬を染めた。
「諒・・・」
客が居ないことをいい事に廉也の瞳が妖しく光って諒の唇を求めた。

カランコローン・・・・だが唇が重なる寸前にドアベルの音にはっと我に返った。

漆黒の髪に黒い瞳・・・廉也はいらっしゃいませ、と声を掛けながらも初めて見る青年に少し見惚れた。
「待ち合わせなんです、後でもう一人来ますから」
店内に客が誰も居ないのを気にしてか、一瞬腰が引けたような青年に廉也は「どうぞ」と
窓際の外が良く見える席に案内した。

「ブレンドお願いします」
「かしこまりました」
短い会話が交わされ廉也はカウンターの中の諒に「ブレンド1つ」と伝える。
「ん」諒がこういう短く素っ気無い返事をする時って結構緊張している時だと、1年一緒にこの仕事をしている廉也は分かったが、あえてそこには触れないでいた。

香り高い珈琲を席に運ぶと「ありがとうございます」と青年は軽く頭を下げた。
『うん、見た目だけじゃなくて感じもいい』
内心そう思いながら「ごゆっくり」と廉也は席を離れた。
5分ほどした頃だろうか?珈琲カップを口に運んでいた青年が窓の外を見てその口元を緩めた。
その様子に待ち合わせの相手が来たらしい事を察して水の用意をした。

カランコローンと何時もと変わらぬベルの音を聞きながら、廉也は水の入ったコップをトレンチに乗せて席に向かいながら「いらっしゃいませ」といつもと同じように声を掛けた。
『あ・・っ』
オールバックに撫で付けた髪と鋭い目つき・・・
スーツを着ているが、どう見たって普通のサラリーマンには見えない相手がこの青年の連れなのか?見慣れない組み合わせに内心驚きを隠せない。

「いらっ」「遅いよ」
廉也がコップをテーブルに置こうとしたのと同時に青年の口からキツイ言葉が飛び出した。
びくんと廉也の指先がぶれてしまった。
「あっ!」「あっ!」
廉也の置こうとしたコップは見事に倒れその中身全部がそのスーツを着た男のズボンにかかってしまった。
3人とも一瞬固まる。

「す・すみませんっ!」お客に水を掛けてしまうなんて、今までこんな初歩的なミスはした事が無かった廉也は慌てて頭を下げた。
「ちっ」と小さな舌打ちが聞こえ廉也の顔からは血の気が引いていくのが自分で分かった。
カウンターの中から諒が慌てて乾いたタオルを片手に駆け寄った。
「申し訳御座いません、お客さま」

「ぷっ!あはははははっ」
前の席に座っていた青年が堪えきれずに笑い声を立てた。
廉也はその笑い声に和むどころか、今まで以上に顔が冷たくなって来た。
「ぷっ、水も滴るいい男って言いたいけど、場所がそこじゃねぇ・・」
『あぁ・・・そんな煽るような事を言わないで欲しい・・』

渡された乾いたタオルでその男は水の掛かった場所を拭いているが、もう布地に染込んだ水分は簡単には取れはしない。
「何か着替えを・・・」そういう諒を青年が手で制した。
おもむろに携帯電話を開きどこかに掛けている。

「あぁ仁君?トランクに光輝の予備のスーツ入っているから持って来てくれる?
うん・・そう・・紺のストライプのがいいな、下着と靴下も忘れないでね。そう一式急いでね」
急いでという割りには、その物言いはのんびりとしたものだった。



「あの、着替え出来る所ありますか?」青年の問いかけに
「あ、裏に狭いですが・・私たちが着替える小さい・・物置みたいな所ですけど」
「じゃ、ちょっとお借りできます?直ぐに着替えが届くと思いますから」
「こっちです」と案内する廉也の後を未だに可笑しそうな顔の青年と渋い顔の男が着いて来る。
「ありがとう」中を見回して青年な楽しそうな表情になり、男の顔は更に渋くなった。

「うわぁ秘密基地みたいだね」
2・3畳程度の広さの部屋は狭いけどきちんと物が整頓して置かれていた。
軽食を扱わないこの店にはストックしておく物もあまりないが、それでもそれなりの物は置かれていた。
1畳ほどのスペースが諒と廉也が着替える場所らしい。

廉也が案内だけして部屋を出て行くと、
「随分楽しそうだな」と皮肉ともとれる言葉が男の口から出た。
「だって、光輝ってば鳩が豆鉄砲くらったみたいな顔してて・・・」
そんな光輝の顔など見たことのない千尋は思い出しても可笑しそうに笑った。
「ふん、本当に鉄砲玉が飛んできた方が驚かないさ」
光輝の言葉に千尋は光輝のネクタイを掴みぐいっと下から持ち上げるようにして睨んだ。




すみません、後編本日中に更新できるように頑張ります。
中途半端な所で切ってしまってます^^;
4000字程度は書き上げたのですが、まだ終わってないんです。

コメントのお返事も遅れております、後編を書き上げてからのお返事になります。
宜しくお願い致します。

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こちらは先日参加しました「観潮楼冬企画」の「この温もりを知ればいい」の番外になります。
設定が喫茶店なので、ふっと思いついたら不定期に上げて行きたいと思っています。

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COMMENT - 12

けいったん  2011, 01. 25 [Tue] 19:17

゚+。ヤッタァ★(o゚∀`从'∀゚o)★ヤッタァ。+゚

「pendulum」に お客様が 来店~~♪
第一号CPが 千尋と光輝だぁ!!ワァ──ヽ(〃v〃)ノ──イ!!

kikyou様、お忙しいのに ありがとう☆彡 すごっく 嬉しいで~す♪
P.S.このコメの 返事は いいですからねー(*^‿・)

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此花咲耶  2011, 01. 25 [Tue] 19:37

kikyouさま

。・゚゚ '゜(*/□\*) '゜゚゚・。わ~ん、うれし泣き~。
千尋く~ん!

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NK  2011, 01. 25 [Tue] 19:58

わくわく

午後ののんびりとしたお店に
剣呑なお方がいらっしゃいましたね(笑)
千尋くんのあしらいが結構好きです。
でも、でも、何かが引っかかっちゃったみたい。どうするのかな千尋くん。
わぁ~い、わぁ~続きも楽しみ。
kikyouさんありがとう!!

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びび  2011, 01. 25 [Tue] 20:47

。・゜・(ノД`)・゜・。

キャー‼これこれ~!喫茶店に集うイケメンたち~!

これが見たかったの~(=´∀`)人(´∀`=)
また色んな子たちに会えるのが楽しみです~p(^_^)q

廉也くん、怖い人に水かけて今頃ビクビクー?

私もこれのリコメ不要、もしくは一括リコメOKでーす。

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kai  2011, 01. 25 [Tue] 23:41

千尋ちゃんたちはどうしてるかなぁと思ってたんですよね
相変わらずみたいですね
でもちょっと千尋ちゃんが強くなってる

イケメンはイケメンを呼ぶ(類友?)カフェなんですね
ご近所だったら絶対日参するのに

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-  2011, 01. 25 [Tue] 23:58

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kikyou  2011, 01. 26 [Wed] 12:58

けいったんさま  ゚+。ヤッタァ★(o゚∀`从'∀゚o)★ヤッタァ。+゚

こんにちは。

早々のコメントありがとうございます^^

一番似合わない光輝を先にもって来ました(笑)

まだ頭の中だけですが、次は唯一のあほっ子キャラにしようかな?
なんて思ってます^^

いえいえ、遅くなってもお返事させて下さい、
喜んでもらえて、私も嬉しいんですから(^◇^)

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kikyou  2011, 01. 26 [Wed] 23:27

此花さま

こんばんは。

千尋でした(笑)
本当は、着替えながらちょっと悪い事させようかな?と思ったのだけど・・・

あまりにも節操が無いから止めました^^

コメントありがとうございました。

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kikyou  2011, 01. 26 [Wed] 23:30

NKさま

こんばんは。

剣呑な・・・^^;

先発隊は一番、ほんわかな雰囲気が似合わない二人です。

でもうちには、クリスマスも喫茶店もないカップルがいるんですよね・・・

時々、あの美麗な二人が恋しくなったりしています。

コメントありがとうございました。

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kikyou  2011, 01. 26 [Wed] 23:33

びびさま : 。・゜・(ノД`)・゜・。

こんばんは。

今までに、何カップル書いてきたんだろう?

企画ものもあるし・・・

全員出席したら、結構な量になりそうだぁ。
少しづつでも書いて行けたらいいなぁって思っています。

楽しんでもらえて、何よりです(^◇^)

コメントありがとうございました。

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kikyou  2011, 01. 26 [Wed] 23:35

kai さま

こんばんは。

そうです、千尋だんだんと地が出てきたというか、強くなってますネ(笑)

だからこそ光輝と付き合っていけるのかもしれない。

千尋の強さ、覚悟みたいなのは今までの話で書いてきましたけど
加筆修正しながら、もう一度千尋という子を分析して
千尋の話書きたいなぁ って思ってしまいます。

コメントいつもありがとうございます。

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kikyou  2011, 01. 26 [Wed] 23:38

鍵コメさま  わ~この設定オイシイ!!

こんばんは。

コメントありがとうございます(^.^)

そうか、他所の子も連れてこれるのか!
それも楽しそう♪

でも時間は掛かっても自分ちの子、全員だそうかな?
と思ってます。
SS分も含みたいから、結構な数になるかも?です。
1組を除いてですがね・・・・

コメントありがとうございました。

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