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75%の恋(観潮楼参加SS)

 24, 2010 01:53
2010-aki-sigo.jpg
イラストの版権及び著作権はSSshigo屋しご様に属しますので、
無断転写等はお控えくださいませ。




「空が高いなぁ・・・」
「うん、天高く馬・・・馬・・・あれ?馬・・・お腹空いて来た」
じっと空を見上げている千夜(せんや)の腹の上で視線を上げる事なくそんな事を言っている
真純(ますみ)の体に腕を回した。
「全く、数学以外はからっきしだな・・」呆れたように千夜が言う。
そしてその数学が問題なのだ・・・
「留学決めたのか?」千夜の問いかけに
「行かないよ僕・・・」と真純は意図も簡単に答える。
「どうして?せっかく、その何とか賞ってのを狙えるチャンスなんだろう?」
「フィールズ賞?」
馬肥ゆる秋が言えなかったくせに、フィールズ賞の名はすらっと出てくる辺りが流石だと妙な所で感心してしまう。

「千夜は僕が留学しても寂しくない?」指で千夜のシャツのボタンを弄りながら真純が拗ねたように聞いてきた。
「お・・俺は別に・・真純が好きな事に没頭できるチャンスを掴めるのなら応援する」
神に誓って本心かと?問われたらNOだったけど、それでも千夜は応援すると言い切った。

「そう・・・僕は寂しいよ」その口調が本当に寂しそうで、千夜は胸がチクンと痛む。
昔からそうだった・・真純は心を隠す事をしなかった。
「俺だって寂しいさ、だけど仕方ないだろ?!」
俺に行くなと止める権利など何も無いんだから・・
親友の未来ある旅立ちを温かく見守るしかないんだから、と自身に言い聞かす。

「僕さぁ・・あっちに行って外人にレイプとかされたらどうしよう?」
突拍子も無い事を言い出した真純に向かって
「そんな危険な所に行かなきゃいいだろっ」と突っぱねる。
「じゃあさぁ・・同室の男に寝てる間に襲われたらどうする?」
アメリカに行ったらルームシェアする事になるだろう。
「どうしてさっきから対象が男なんだ?金髪美人に言い寄られるとかは思いつかないのか?」
千夜は呆れるを通り越して妙な怒りさえ覚えてきそうだった。
それは、一瞬でも男と抱き合っている真純を想像してしまった自分への怒りだったのかもしれない。

「千夜の体って温かいね」ぎゅっとしがみ付く真純の体も温かった。
「話を逸らすなよ」真純の冗談のような言葉に答えを求めてしまう千夜だった。
「う~んどうしてだろう?じゃ千夜は僕が女性を抱いているのを想像出来る?」
「・・・そ・そりゃ・・・無理だ、俺だって経験ないし」
半ばやけくそのような答えだった。
「でしょう?じゃ僕が男に組み敷かれているのを想像出来る?」

それは千夜にとってハードルの高い想像だった。
だけど、脳裏に閃光のように流れた映像は真純に圧し掛かる自分の姿だ。
「そんな想像出来る訳ないだろっ!」
その想像を打ち消すように厳しい口調で否定の言葉を吐いた。

その瞬間にびくっと真純の肩が震えたのが判った。
千夜の口調に驚いたのか、体の強張りが肌を伝って千夜の胸に響いた。
「・・・そうだよね、想像出来ないね」
自嘲気味に真純が呟いた。

「そうだ、想像出来ない・・・」千夜は同じ言葉をもう一度吐いて目を瞑った。
真っ赤に色づく紅葉の残像の中、真純の白い裸体が浮かぶ。
それは夏に一緒にプールに行った時に見た映像だった。
そしてその白い裸体に、真純よりももっと白い腕や、そして黒い腕が伸びて来る。
数人の男が真純の体に纏わり付き、そして絡まる。
真純の顔を確認すると、苦痛では無く穏やかで淫蕩な顔をしていたように見えた。

「真純っ!」かっと目を見開き名前を呼ぶと千夜の心情とだいぶ温度差のある声で
「なぁに~?」と返って来た。
「い・いや・・・何でも無い・・」
「そう?でも千夜の心臓バクバクしてるよ?エロイ事でも考えてた?」
揶揄するような真純の言葉にバクバクしていた心臓が今度は跳ね体も熱くなってしまった。
「な~んだ図星?」くすくすと笑いながら真純は脚まで絡めて来た。

「くっ付き過ぎだ」
「いいじゃん、もしかしたらもう直ぐ会えなくなるかもしれないし・・・」
そうだ、真純が留学したら何年も会えなくなるんだ。
もしかしたら、真純がそのフィールズ賞とかの勉強で忙しくなって、
そして有名になって俺の事など忘れてしまうかもしれない・・・
そんな感傷に浸っている千夜の腰にあつい熱を感じた。

「?・・・真純、何熱くしてるんだよ、当たってるって」
「あっ判った?いいじゃん・・・こうしてると気持ちいいんだから」
天才と呼ばれる輩は下半身も天才的に自由なのか?
とひとり突っ込みを入れながら黙って真純の好きにさせておいた。

「ねぇ千夜・・・ちょっと腰動かしてもいい?」
「ふざけんなっ!」
そんな事をされたらこっちの方が変になってしまう。
「えぇっ、いいじゃんよぉー」
不満気に零しながら、真純がより深く脚を絡めて来たために真純の熱も強く感じられる程密着して来た。

「あぁー気持ちいい~」
真純の言葉は体と裏腹に例えば背伸びをして気持ちいい時のような穏やかなものだった。
千夜は自分だけが真純に振り回されているような気がしていた。
真純の熱はもう完全に自分にも感染しているのに、素知らぬ顔で平静を装っているしかなかった。

「ってか、何で真純勃ってんの?」
自分の事を棚に上げて千夜はその感染源に問い掛けた。
「う~ん?気持ちいいから?」可愛く言われたが
「て、どっちが先なんだよ?気持ちいいから勃起したのか、勃起したから気持ちいいのか?」
言っている千夜すら訳が判らなくなりそうだった。

「そういうお年頃だからっ」
拗ねるような真純の言葉に含み笑いをしながら、真純を抱き締める腕に力を入れた。
「で、千夜はどうして?」
「くっ・・・ばれてた?」軽くかわしたつもりだったけど、
自分の声が掠れてしまっていた事に内心舌打ちしたい気分だった。
「俺もそういう年頃なんだよ」真純の真似をして若さのせいにした。

「そうだよね、僕達はまだ若い・・・これからの人生の方が長いんだよね・・」
何かを諦めたような真純の口調が気になるが、千夜はその言葉に頷いた。
「ねえ僕の事好き?」
「どういう意味で?」
「う・・・ん、友達としてとか、人としてとか?」
自分の胸の上で首を傾げる様子が見なくても千夜には判った。
「好きだよ」友達として人としてと聞かれたらそれはYESでしか無かった。

「やったぁ50%GET!」
「何だそれ?随分単純な数字だなぁ・・」呆れる千夜に
「そうだよ、好きか嫌いかしか無いでしょ?」
その中間が無い事が数学の天才らしいというか・・・

突然真純が体勢を変えて千夜の上に覆いかぶさるようにしてきた。
腕で体を支えながら、至近距離で千夜の瞳を覗き込んだ。
「じゃもうひとつ、男でも愛せる?」
真純の熱い吐息が掛かり、一瞬頭がくらりとした。
瞬きもせずにじっと千夜の瞳を見下ろす真純の瞳とぶつかる。
「愛せるって・・・そういう意味でか?」
男同士で愛し合うって事はさっき自分がちらっと想像した通りなのだろう。
千夜の問いかけに黙って真純が頷いた。

どのくらい見詰め合っていたのだろうか?
多分自分の体を支えている真純の腕が限界に近づく間そうしていたような気がする。
逸らさない真純の瞳の中に色づいた紅葉が映し出されるのをただ綺麗だと思って見ていた。
千夜は頷きながら「愛せる」とぽつりと呟いた。

「はぁーっ良かった、これで75%GET!」
腕が疲れたのか、再び千夜の胸に寄りかかるように寝そべる。
「・・・次の質問は無いのか?」千夜がその先を促す。
「無い!」きっぱりと言い切る真純に驚きの視線を投げた。
そんな千夜に微笑みながら「僕、アメリカに行って来るよ」
その言葉は潔かったが、声は寂しさを隠せないでいた。

「真純・・・・」
「だから、5年・・5年後に最後の質問をしていい?」
「ああ・・・」
若い二人の5年後なんて想像も出来なかった。
環境も変わるだろう、そして人としても男としても変わるだろう・・
それでも5年後の約束をふたりで交わした。






そしてそれから4年8ヵ月後、フィールズ賞最有力候補として真純の名前が世界に知れ渡った。
日本のメディアからのインタビューで「頭の中を覗いてみたいですね」と言われ
「僕の頭の中は75%恋で出来てます」
と数学者らしからぬ答えで皆を驚かせた。

千夜と真純が会う機会に恵まれたのはそれから3日後の事だった。
5年会わない間に千夜は一回り大きくなったような気がした。
想像以上の千夜の男っぷりに真純は改めて胸がドキドキしてきた。
メールでのやり取りはあったものの、直接会うのは本当に4年8ヶ月ぶりだったのだ。

「真純、おめでとう」少し照れたように言う癖は同じだと思いながら
「まだだよ、決まった訳じゃない・・」と答える。
「・・・・・・・」
「・・・・・・・」
お互いに次の言葉が出て来ない。
真純の中には、今黙っていれば75%を失う事も無いという計算があった。
そして千夜は優秀過ぎる真純に戸惑いを隠せなかった。

長い沈黙を破ったのは千夜の方だった。
「真純・・俺に質問はもう無いのか?」
真純が聞かないのならそれでも良いと思っていた。
アメリカで恋人が出来たかもしれない・・・
質問の事など忘れているかもしれない。
だがあのインタビューの言葉が自分へのメッセージだとすれば・・

「いい?質問してもいい?」
「ああいいよ・・・」
「ぼ・・僕の事を好き?残りの25%の意味で・・」

ずっと・・5年の間、聞きたかった言葉を口にした。
やっと言葉にした途端ぐらっと体が傾いた。
気がつけば千夜の腕の中にすっぽり抱き締められている。
千夜は安心したように、そして少し揶揄するように真純の耳元で囁いた。


「100%GETおめでとう・・」と。






※このお話はフィクションで御座います(*^_^*)
 フィールズ賞が簡単に取れるものでは無い事は判っていますので^^;

BL観潮楼秋企画に参加させてもらいました。
お借りしたイラストはSSshigo屋しご様の「埋もれる」です。

深い秋を感じさせるこのイラストは幻想的でもあり、官能的でもあります。
先に書かれたブロガー様方の純文学のような素敵なお話には及びませんが、
私らしく書かせてもらったと思っております。

イラストのイメージを壊さないか心配ですが、楽しんで読んで頂けたら嬉しいです。

最後に今回素敵なイラストを貸してくださったしご様に感謝です。
ありがとうございました(#^.^#)



kikaku-aki.jpg




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COMMENT - 12

澪  2010, 11. 24 [Wed] 01:12

面白い設定ですね~♪
こういう感じの展開好きです☆
探り合いながらも、答えは出ていそうなのに肝心な一言まではすぐには言わない…みたいな( ´艸`)ムププ
可愛くもあり、真っ直ぐな真純くんが.。゚+.(゚ー゚)。+.゚ イイ!!

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みたま  2010, 11. 24 [Wed] 01:25

真純くんが賞を獲った時のコメントにグッときましたー!
なるほど!それで75%の恋なのですね。
5年もの間、互いを想っていたのだなぁ…と温かい気持ちになりました。
きっと2人は5年前のあの日の会話をずーっと大切に来たのでしょうね。
真純君は可愛いし、千夜くんはオトコマエでしたねー!
ごちそうさまでした♪

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kikyou  2010, 11. 24 [Wed] 01:48

澪さま

こんばんは。

良かった・・面白い設定だったでしょうか?

いや~新着画像は上がったものの、新着記事に反映されずに・・・
そして零時予約の天使が上がったもので、
誰にも気付かれなかったらどうしよう?と思っていました^^;
(って心配する所はそこかいっ、と一人突っ込みで・・)

本当はもっと天然ちゃんにする予定だったのですが
何だか頭の良い子になってしまいました(笑)

コメントありがとうございました。嬉しいです!

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kikyou  2010, 11. 24 [Wed] 01:52

みたまさま

こんばんは。

数字に強いキャラに被せてタイトルを決めました。
ちょっと気に入ってます(#^.^#)

数字で割り切りながら、割り切れない思いと共に過ごした5年間
きっとこれから素敵な日々が送れるのでは?と思っています。

目力のあるイラスト・・やっぱオトコマエな千夜も好き。
そしてふぁふぁって感じの真純も好きです(*^_^*)
読んで下さってありがとうございます。

コメントも嬉しいです♪♪

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-  2010, 11. 24 [Wed] 06:10

管理人のみ閲覧できます

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柚子季 杏  2010, 11. 24 [Wed] 16:09

コメントはお久しぶりです~^^
若い二人の恋。良いですね~。
1枚のイラストも、書き手様が違うと本当に様々な表現がなされて、すごいなぁ。
どのお話にもぴたっとはまる気がしちゃう♪
75%だった恋が、100%になるまでの約5年。
若さだけでは走れなかった気持ちにも、折り合いが付いて、会えなかった時間の分だけ、より想いが深まったのでしょうね。
緑の葉が赤く深く色付いていくような素敵なお話、ありがとうございました♪

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紫猫  2010, 11. 24 [Wed] 19:11

面白いですね!数学と恋を合わせたお話…
途中でなるほど~~!題名の意味はそういうことか~!!
と納得していました。
最後に千夜が言った
「100%GETおめでとう・・」
かっこよすぎます!
25%を5年間で作り上げた
きっとその5年間に二人とも色々考えていたのでしょうね。
楽しく読ませていただきました!ありがとうございました~!

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kikyou  2010, 11. 24 [Wed] 21:17

鍵コメ Yさま

0%ですか!(笑)

こんばんは。食いつきがここか?って所から始まりました。

でも、考えると自分何%だろう?
や・やっぱ0?・・・いや10位?

妄想だったら100だぞ!(爆)

コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 11. 24 [Wed] 21:51

柚子季さま

こんばんは。

こちらこそ読み逃げですみません^^;

あのイラスト凄い素敵ですよね。
それに7777なんて素敵(@^^)/~~~


1枚の絵の威力って凄いですよね。
それぞれの持ち味で、色々なキャラが生まれてくる。
あぁ私もそんな絵を描けたら・・・
本当に羨ましいですよね。

しごさんの幻想的なイラスト・・・あの紅葉の中で開いた瞳が印象的でしたよね。
かなり強烈な印象で私の頭にも残像として残っています。

読んで下ってありがとうございました。

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kikyou  2010, 11. 24 [Wed] 21:57

紫猫 さま

こんばんは。(こちらにもありがとうございます^^)

途中でなるほど~って思って下さってありがとうございます。
今回は話を半分ほど書いたところで、タイトルが決まり。
そしてそのタイトルから、あの告白が生まれました(*^_^*)

長かったはずの5年ですが、まだまだ若い二人v-238
楽しく過ごしてくれるはずです。

コメントいつもありがとうございます。

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-  2010, 11. 25 [Thu] 00:51

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kikyou  2010, 11. 25 [Thu] 17:02

鍵コメ n さま

こんばんは。
コメントありがとうございます。

メールフォームよりメール入れますねぇ(*^。^*)

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