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天使が啼いた夜 堂本紫苑~3~

 07, 2010 00:00
深田は会長夫人に近寄った。
「はじめまして、統括の深田です」
「あら、こんにちはお若いのに統括?」
「あ、はい宜しくお願いします」
機嫌の良い会長夫人に深田は言葉を選びながらも聞いてみた。

「あの・・理解あるんですね・・その社長と櫻井・・いえ紫苑の事に」
男同士の付き合いに眉を顰めるどころか、応援している紫龍の母親だったから。
「あの二人は、生まれた時から縁があったのよ、
紫苑ちゃんの名前も紫龍の紫を使ってるほどにね」
そう言って、紫苑の母親と自分たちの関係を説明してくれた。

「紫苑ちゃんが男でも女でもそういう運命にあったと思うわ」
「そうですね・・女性の紫苑も捨てがたいですが、あの二人は違和感がないですね」
深田の言葉に頷きながら「あなたは広海の良い人ね」と断言された。

「え・・あ?バレてましたか・・俺は広海と付き合ってます」
真っ直ぐ夫人の目を見て答える深田に優しい眼差しを向け
「広海が最近変わったのは貴方のお陰なのね」
「いえ・・俺っていうか、元々は紫苑のお陰なんですが・・」
「広海も何かあったみたいで・・・ずっと荒れてたけど、良い子になったわ」

広海が荒れてた理由までは知らないみたいだが、変わった事は気付いていたみたいだ。
「はい、明るくていい奴です」
「深田さんも広海と生涯を共にしたいと思ってるのかしら?」
「はい」即答に夫人は頷いた。

「そう、別に籍を同じにしなくても、気持ち次第よ」
「・・・・俺はまだ親に打ち明ける勇気が無いんです」
「普通はそうよ、気に病む事はないわよ」
自分達は紫苑を気に入って、紫苑の育った環境も家族も知っていたから
受け入れやすかったし、受け入れる事に何の違和感も嫌悪感も無かった。
深田は、そう言う夫人からずっと視線を外せなかった。

「焦る事は無いわよ、本当に縁のある相手なら必ずその時は来るわ」
「ありがとうございます。そうですよね」
会長夫人の言葉に深田は癒される気がした。
このまま広海とずるずると長く付き合う事に少し不安を持っていた深田は
その言葉のままに時を待とうと思った。

「深田さん、食べてますか?」
そう言って紫苑が近づいて来た。
「ああ、凄いご馳走だな、呼んでくれてありがとう」
そう言いながら、深田は背広の内ポケットから包みを取り出した。

「これ、俺と広海からの就職祝い」
「えっ?深田さんと広海さんから?そんな・・気を使わないで下さい」
そう言いながらも紫苑の顔は嬉しそうに綻んでいた。
「そんな遠慮するような高価な物じゃないから」
深田と紫苑の様子を見て広海が近寄って来た。
「そうだよ、僕達からのお祝いの品だから遠慮なく受け取ってよ」

「ありがとうございます、開けていいですか?」
紫苑が丁寧にその包装を解いていった。
「ああ、万年筆だ!」
紫苑が手にしたのは万年筆で有名なM社の製品だった。
「ああ嬉しい・・・欲しかったんですこんなのが、でも高くて手が出なくて・・」
相変わらず自分の持ち物に関しては、贅沢をしない紫苑だった。

今にも頬摺りをしそうな勢いで万年筆を愛でていた。
「あ、名前が刻んである・・・堂本紫苑・・」
本当は深田と広海にとって少々痛い金額ではあったが、
こんなに紫苑が喜んでくれるのなら安いもんだと二人心の中で思った。

「どうしたんだ?」なかなか二人っきりになれない紫龍が様子を伺いに来た。
「紫龍・・見てこれ!深田さんと広海さんからの就職祝い」
紫龍は喜ぶ紫苑の顔を見れば、その万年筆をどんなに気に入ったか判る。
「良かったな、大事にしろよ」そう言いながら紫苑の頭を撫でている。
そして深田と広海に向き直り
「二人とも、ありがとう!」
その姿はまるで父親のようだ・・・
深田と広海は多分同じ事を考えてるな、
とお互いの心中を察して目で言葉を交わして微笑んでいた。

深田たちが仕事に戻った後も暫く会食は続いたが
流石に3時を過ぎると相田夫婦も会長夫婦も予定が入っていると
名残惜しそうな顔をして帰って行った。

「この荷物・・・」紫苑が困ったような顔で紫龍を見た。
相田夫妻からの贈り物であるスーツが入っているだろう箱が5箱もある。
それ以外にネクタイやワイシャツも山ほどあった。
紫苑には判らないだろうが、その総額は100万を超えているだろうと
思いながら紫龍も溜息を吐いた。
「彩子さん凄い張り切りようだな・・」
「・・はい、こんなにしてもらって僕は本当に幸せ者です」
紫苑は10歳で亡くなった彩子の息子を思うと切なくなった。

「紫苑・・」紫龍の手が優しく肩に置かれた。
何も言わずともお互いの気持ちが判る二人だった。
「紫龍・・・」肩に置かれた手をそっと握った。

「あー!折角の所お邪魔しますが?この荷物は社長の車に運べば宜しいんですか?」
こんな所で熱い視線を絡ませ合ってもらったら
困ると言わんばかりに浅田が声を掛けてきた。
「あ、すみません・・僕運びます」
そう言って立ち上がった紫苑に向かって浅田は
「誰かに運ばせますから、堂本君はいいですよ」
ここへは相田夫妻の運転手が二度ほど行き来して運び入れた。

流石秘書室長という立場か紫苑を「堂本君」と呼ぶ切り替えは早かった。
「いえ自分で運びますから、今日は時間もありますし」
自分で頂いた物を他の人に運んでもらうのは申し訳ない。
「社長車の鍵貸して下さい」
堂本君と呼ばれた事で紫苑の頭もここが会社だと切り替えが出来た。

そんな紫苑に頼もしいような寂しいような思いで車の鍵を渡した。
「社長は仕事が待ってます、ここの片付けは堂本君にお願いして構いませんか?」
「はい勿論です!」
「じゃ紫苑、夕方には俺も終わるから、ゆっくり片付けろ」
そう言い残して紫苑の部屋を出て、自分の机に座りながら

「浅田、お前ちょっと紫苑に厳しくないか?」
「社長が甘過ぎるんです」
きっぱりと言い返され反論できない紫龍だった。
浅田は紫苑を自分の後釜となる立派な秘書に育て上げたかった。
社会人としての自覚を持って欲しかった。
だがその自覚は紫苑本人よりも、この堂本紫龍という男に持たせるべきたとも思っていた。


そして3ヶ月の研修が終わる頃には、
その浅田の思惑も、紫龍の楽しみも全部泡となって消える事態が起きたのだった。





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COMMENT - 16

-  2010, 11. 07 [Sun] 00:49

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けいったん  2010, 11. 07 [Sun] 02:01

早いっす、もう トラブル発生!

なんだぁー、何が 起きたんだぁーー!!
紫苑は 秘書室で 紫龍の傍で お仕事って ことじゃなくなったの?

紫苑、君は どの課で 働くつもり?紫龍が 拗ねるぞぉ~
スネオ化した 紫龍て ウザそう(ー3ーii)ゞbyebye☆

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-  2010, 11. 07 [Sun] 02:07

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purple  2010, 11. 07 [Sun] 05:14

深田きゅ~ん、久しぶり。
忘れがちですが、深田くん出世頭なんだよね……

バナーのなすび復活。何か嬉しいですわ!!

Edit | Reply | 

jun  2010, 11. 07 [Sun] 05:26

お早うごIます。
楽しい入社式後の会合でしたね。
でも・・・
話は早い。最後は3ヵ月後、エッ。
どうなるんでしょうか?

Edit | Reply | 

-  2010, 11. 07 [Sun] 07:23

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紫猫  2010, 11. 07 [Sun] 15:00

早速トラブルですか!
何が起こったの?何が起こったのぉ?!
とっても気になります!!

Edit | Reply | 

kai  2010, 11. 07 [Sun] 17:07

無事就職して
紫苑ちゃんを好きな人たちがお祝いしてくれて
紫龍のそばで働ける日が来るのね~
と幸せいっぱいに日々を迎えたと思ったら早くも暗雲が…!?
可愛い紫苑ちゃんに何が起こるのか知るのが怖いけど
怖いけど知りたい。。。。

Edit | Reply | 

kikyou  2010, 11. 07 [Sun] 23:53

鍵コメ Yさま

バナーの感想ありがとうございます(笑)

紫苑と紫龍の話のバナーはこれに決めています!

紫龍が最初に紫苑の手料理?を食べたのが茄子の浅漬け・・
茄子は良い仕事しますよぉ。
ちなみに私は素揚げが好きです^^

Edit | Reply | 

kikyou  2010, 11. 07 [Sun] 23:55

けいったんさま

> なんだぁー、何が 起きたんだぁーー!!
> 紫苑は 秘書室で 紫龍の傍で お仕事って ことじゃなくなったの?

鋭い!!
>
> 紫苑、君は どの課で 働くつもり?紫龍が 拗ねるぞぉ~
> スネオ化した 紫龍て ウザそう(ー3ーii)ゞbyebye☆

スネオ化・・・・(爆)
ウザそうに又も爆笑!

紫苑・・働き甲斐のある仕事を見つけてしまいました!


Edit | Reply | 

kikyou  2010, 11. 07 [Sun] 23:57

鍵コメ NKさま

目線が紫龍ママの方ですか?(笑)
書いてる本人がその目線ですので・・・^^

いや、他の話は結構攻め目線で書いたりしてるのですが
紫苑に限りママ目線だという事に私も気付きました(爆)

コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 11. 08 [Mon] 00:00

purple さま

こんばんは。返礼遅くなり申し訳ございません^^;

> 深田きゅ~ん、久しぶり。
> 忘れがちですが、深田くん出世頭なんだよね……

深田と広海・・本当に久しぶりですね。
仲良くやってますよ♪♪


>
> バナーのなすび復活。何か嬉しいですわ!!

やっぱこの二人にはこのバナーしかないでしょう(笑)
なすび縁結びみたいなもんです。
なんたって紫苑の茄子の浅漬け今でも大好物ですから^^

コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 11. 08 [Mon] 00:02

junさま

> お早うごIます。

今頃です、こんばんは。

> 楽しい入社式後の会合でしたね。
> でも・・・
> 話は早い。最後は3ヵ月後、エッ。
> どうなるんでしょうか?

最初は飛ばしますよ、番号は付いてますが、まだ序章みたいなもんですから。
本格的に紫苑が配属されてからが大筋です。
そろそろ18禁も入れようかな?
朝からは読まない方が・・・?(笑)

コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 11. 08 [Mon] 00:04

鍵コメ Cさま

けいったんさん面白い事言いますよね(笑)
スネオ化した紫龍・・・
あぁちょっと格好悪いかも(笑)

本当は格好いい設定なんだけど、ついつい3枚目になってしまうのはどうして?

コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 11. 08 [Mon] 00:06

紫猫 さま

> 早速トラブルですか!
> 何が起こったの?何が起こったのぉ?!
> とっても気になります!!

トラブルって程ではありませんが
紫龍の期待を裏切った事は確かですねぇ。
大変です!
夜が危険かもしれません(笑)

コメントありがとうございました。
(お返事遅くなりごめんなさい^^;)

Edit | Reply | 

kikyou  2010, 11. 08 [Mon] 00:09

kaiさま

こんばんは。

> 無事就職して
> 紫苑ちゃんを好きな人たちがお祝いしてくれて
> 紫龍のそばで働ける日が来るのね~
> と幸せいっぱいに日々を迎えたと思ったら早くも暗雲が…!?
> 可愛い紫苑ちゃんに何が起こるのか知るのが怖いけど
> 怖いけど知りたい。。。。

怖い事は起こりませんよ・・・多分。

でも紫苑をずっと見てきて下さったから
何か母目線で就職した紫苑を応援して下さってるような・・・^^
他でも書きましたが、紫苑に関しては私も母目線で書いてるような感じです。

最近紫苑の18禁がないから余計そうなのかな?なんて思ったりして^^

コメントいつもありがとうございます。


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