拓海が苦しさに手を伸ばすたびに、その手を握られる。どこに目が付いているのだろうかと思うほどに瀬田の手のひらは優しく温かい。
「凌牙……もう……」
拓海の体は指や唇で弄られているが、肝心の瀬田とはまだ繋がっていなかった。拓海の言葉を聞いた瀬田が、ゆっくりと熱い楔を打ち込んで来る。
全てを収めきった瀬田が、苦笑しながら拓海に囁いた。
「拓海、もう少し早く強請ってくれないと、俺も辛い」
挿入のきつさに眉根を寄せたままの拓海が、その言葉に微笑んだ。欲しがってくれて嬉しいと伝えるべきか考えたが、そんな事は照れが先に立って言えそうになかった。
馴染むまでじっとしている瀬田の、胸元のチェーンが微かに揺れていた。同じヘッドのペンダントが拓海の胸の上でも輝いている。
「凌牙……もう動いて」
囁いた拓海の唇に軽いキスを落としてから、瀬田はゆっくりと腰を揺らし始めた。
「あぁ……」
繋がっている箇所だけではなく、体のすべての細胞が熱く蠢いているようだった。
「あ……っだめっ」
瀬田が前立腺を狙って攻め始める。拓海にとってそこは弱すぎる場所で、不安にさせる場所でもあった。体と心がバラバラになってしまう。快感が大きすぎて怖くなるのだ。
「凌牙……そこは……だめ」
「拓海、何も考えなくていい。感じるだけ感じればいいんだ」
「あぁ……」
「もう俺無しでは生きられない体になればいい……」
言われなくても、もうとっくにそうなっているのに、瀬田も同じような不安を抱いているのだろうか。
抱かれながらも時々不安になるのは、瀬田を愛しすぎているせいだろうか。それとも過去のせいなのだろうか。
出会いも別れも知っているからなのだろうか……
「拓海、死ぬまでお前を離さないから覚悟しておけよ。いや……俺が死ぬ時にはお前も連れて行く」
「凌牙……嬉しい……」
父も、母も自分を置いて死んで行った。瀬田は連れて行くと言う。
拓海はその言葉が嬉しくて目頭がツンと熱くなった。
佐久間の裁判の後だからだろうか、自分がセンチになっているような気がする。でも零れた涙を留める事は出来そうになかった。
「凌牙、好きだ。だから今の言葉を忘れないで」
「ああ、果てまで拓海と一緒だ」
拓海の零す涙を舐めとったあと、瀬田の激しい抽送が始まった。拓海は背中に回した手に力を籠め何度も愛を囁く。いつもよりも甘えてくる拓海が愛しくて瀬田の動きも止まらない。
吐精を繰り返し拓海が意識を手放したのは、もう夕刻だった。
そんな拓海の乱れた髪を指で撫で付けながら、瀬田は同じ男の拓海をどうしてこんなに好きなのだろうと思っていた。何の発展もない繋がりだ。それでも拓海がいい、拓海じゃないと駄目だ。
多分自分はもう女は抱けないだろうとまで瀬田は思っていた。
もし、何かの間違いがありそれを拓海が知っても、きっと拓海は、怒る事はしないだろう。だがきっと隠れて拓海は泣く。笑顔を見せながら一人のベッドで泣くだろう。
「拓海、お前だけを愛している」
意識のない拓海の頬を指でつんと突きながらも愛を囁いた。そんな自分が何だか恥ずかしくなって、瀬田はバスルームへと向かった。
「凌牙……愛してる」
瀬田の背中に向かって、拓海の唇が微かに動いていたのを瀬田は知らない。
そして拓海は、再び深く幸せな眠りについた。
◇後編はかなり短い話になりました。
エチだけのハピエンです^^;
最後まで読んで下さってありがとうございました!
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