生まれて初めて咥える―――
何事にも動じないような瀬田が、自分に無防備な姿を晒してくれる事が嬉しかった。
愛おしいような感情が拓海に芽生えた。
瀬田の大きな手が拓海の頭に置かれた。そっと撫でられ拓海は深く呑み込む。
反射的に瀬田の手に力が加わるが、はっとしたように又力が抜かれた。
拓海は自分では上手に出来ているとは思わないが、それでも瀬田の反応を見れば喜んでいてくれるのが分かった。
「拓海……」
優しく名前を呼ばれ拓海は、手を休めずに視線だけを瀬田に向けた。
そこには拓海が初めて見る、余裕のない瀬田の顔があった。
その表情を見て拓海は反って余裕が出て、瀬田の達く顔を見てみたいと思った。
一度口を離し「俺で達って……」と煽ってみる。
「ば、馬鹿野郎……」瀬田は言葉では抗うが、躰は素直に反応を見せた。
拓海は、ふふと微笑み瀬田を達かそうとその楔に舌を這わせた。
「おい……拓海よせ」瀬田が拓海の肩を引き上げようとするが、拓海は黙って頭を振った。
(絶対顔を見てやる)だからと言って何かが変わるわけでは無いが、そうすれば少しは瀬田に近づけるような気がした。
何時の間にこんなに好きになったんだろう?
拓海は今自分がしている行為に恥ずかしさも、嫌悪も感じない自分を素直に受け入れていた。
ただ無心に瀬田を追い上げる拓海に瀬田は、これ以上抗う事を止め素直になった。
「拓海、達っていいか?」
瀬田の言葉に拓海はこくんと頷いた。
拓海とてこの行為に慣れているわけではないので、一生懸命に奉仕し瀬田を追い詰めた。
そしてその瞬間拓海は瀬田の全てを受け入れた。
(あ……っ)
本来の目的を忘れてしまった拓海は、肩を落とす。
そんな拓海を引き上げ「大丈夫か?悪かったな……」と瀬田が詫びて来た。
「ち……違う、顔を見ようと思っていたのに、忘れた」
ふっと鼻で笑われて拓海は再び肩を落としてしまう。
そして思い出したように「飲んだのか?」と聞いて来た瀬田に、黙って頷いた。
すると瀬田はベッドサイドにあったミネラルウォーターを拓海に手渡し「無理するな」と言った。
「別に無理していない、俺だって……あなたに喜んでもらいたいから」
言った途端に瀬田の胸に抱き寄せられた。
「拓海、お前が悦べば俺は嬉しいんだ」
「そんなの……知っている」
この広い胸はどんな時の拓海でも、優しく包んでくれてきたのだ。知らない筈がない。
「そろそろ抱きたいんだが?いつリードしてくれるんだ?」
「う……」
ここから先のリードなんか考えもしなかった。
「どうすれば?」戸惑う拓海を見て瀬田が口角を上げた。
「上になって?」
「む・無理……」
「じゃあ、一言だけ言ってもらおうかな?」
「な、何て?」
「挿れて……ってお強請りしてもらおうかな?」
瀬田は完全に拓海で遊んでいるみたいだった。
拓海は今まで言葉で強請った事もない、その必要はないほどに瀬田は拓海をいつも追い詰めていたから……
一度達した瀬田は余裕そうだったが、拓海はまだ一度も放出していない。
この状況で放置されっぱなしは、少々きついものがあった。
だが、簡単に言える言葉でもない。拓海は赤い顔をして言葉に詰まってしまった。
「拓海?」催促するように瀬田が拓海の名前を読んだ。
「甘やかせたい、って言ったくせに……」
拓海は苦し紛れに、本当はどうでも良かった事で誤魔化した。
「……ごめん、拓海」凄く辛そうな声で瀬田が言い、拓海をぎゅっと抱きしめてきた。
ちょっと意地悪のつもりで言った言葉が、瀬田を傷つけてしまった事に気づいた拓海は慌てた。
「あ、俺こそ……冗談だから」
「いや、俺が悪かった。俺はもう拓海に一点の染みも傷も作りたくなかったのに……」
「凌牙……」拓海は久しぶりに名前を呼んでみた。
名前を呼ばれ、その唇が落ちて来る。
改めてベッドの上で何度もキスをされれば、拓海の躰も簡単に反応してしまう。
なかなか先に進もうとしない瀬田に痺れを切らした拓海が言葉を発した。
「凌牙……挿れて」
拓海の言葉を聞いて、瀬田がにやっと笑ったのを目の端に捕えて、拓海は(やられた……)と思った。
急にしおらしくなって、拓海に詫びたのも全てこの言葉を言わせる為の、伏線だったのだと気づいた時には、もう遅かった。
圧し掛かる瀬田に全てを委ねる。
心も躰も、人生も―――
瀬田の優しい視線に気づけば、拓海も口元が緩んでしまう。
「凌牙、好きだ。早く……欲しい」
満足そうに頷いた瀬田が、静かに拓海を貫く。
「はぁ……っ」焦らされた躰は、それだけで甘く蕩けてしまう。
「拓海、愛しているよ」
「俺も、だから……」貪欲になるのは、心なのか躰なのか拓海も分からなかった。
ただ自分が求める人がいなくならないように、その躰にしがみ付き脚を絡めた。
そして、繋がったまま再び落ちて来る瀬田の唇を、貪るように受け止めた。
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何だか世間で言う「誘い受け」とちょっと違う気がします……
今後の課題って事で、頑張ります。
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多分単独記事で上げると思いますので、その時は宜しくお願い致します。
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