2ntブログ

スポンサーサイト

 --, -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

ラストダンスは貴方と 13

 29, 2011 01:12
 もしアキトの言う事が全て真実ならば、自分は男とsexをしている。女性を見ても何の刺激も受けなかったのは自分がゲイだからなのか?などと考えてしまう。だがクラブで着替える同僚の裸を見ても何も感じなかった。
 自分の嗜好が分からない……
だけど、それを見極める方法がひとつだけあるのを玲は知っていた。
その言葉を口から出したら自分はどうなる?もっと壊れるのではないか……
玲は激しい喉の渇きを感じた。
そしてやっと掠れた声が出た。

「俺を抱いてみてくれよ……」
「玲?」玲はアキトの喉がゆっくりと上下したのを見た。
そして今度はアキトが迷う番だった。
今玲を抱いてしまい、封印した過去を玲が思い出したりしたら……結果として良い方向に向かわないのではないか?
アキトの頭の中は、そんな思いがぐるぐる回っていた。

「玲……」
「俺が本当に一度でも……男を受け入れた事があるんなら、何か思い出せるかもしれないから」
「思い出したいのか?」
「こ、怖いから……思い出さなくても思い出しても怖いから。それならいっその事すっきりと思い出した方がいいんじゃないかって思って……」
「無理をする必要はない」
「今更、俺の事抱けないって言うのか?やっぱり嘘だったのかよ?」

 勇気を持って出した言葉をアキトに受け入れてもらえずに、玲はイラついた声を出した。
「違う……もし……取り返しのつかない事になったら……お前以上に俺も怖い」
「お互い男だよな?簡単な思いでsexした訳じゃないよな?だったら抱けよ」
玲は、この新しい店の天井に埋め込まれたルビーも、自分が持っていたであろうサファイアの指輪もアキトの思いが詰まっているのなら、それを感じてみたいと思い始めていた。
 どうせ女相手には役に立たない自分の体だ、今更男に抱かれようがどうでも良いという考えも少しはあったかもしれない。

「本気で言っているのか?」
「何度も言わせるなよ」
その間が1分なのか、10分なのか玲は止まった時の中、何も考えられなくなっていた。
「部屋に戻ろう」
アキトの覚悟を決めた言葉を受け、玲は黙って頷いた。


 外はまだ明るい午後、アキトのベッドの上に緊張した面持ちで玲が座っていた。
「シャワー使うか?」バスローブ姿のアキトを見ると何故かほっとしてしまう玲は、返事をせずに立ち上った。
「ほら、お前の」と同じデザインの多分アキトよりも1サイズ小さいであろうバスローブを渡された。
(こんな物まで用意していたんだ……)ありがとうと受け取りながら、そう思った。

 久美や、以前勤めていた店の関係で男同士のsexについては、他の奴よりは知識として少し知っている。聞きたくなくても自然と耳に入り、最初は義父の事と合わせ嫌悪していたが、そのうちに慣らされてしまった。

 だからといってシャワーを浴びながら自分が、その為にどう準備をすればいいのかは分からない。
さっきは思い余って口にしたものの、少しずつ後悔し始めてしまい、自分を追い立てるように体を洗った。見た目で分かる程に心臓が震えている。
 シャワーを浴びて出ると、さっき自分が置いたバスローブがあった。それを見て玲は覚悟を決めた。

 寝室に行く頃にはもう震えていた心臓の音が自分の耳でも聞こえる程だった。
「おいで、玲……」
ベッドの上でアキトが手を差し伸べた。
―――この手を自分は取る。

「大丈夫か?」アキトの声が今までで聞いた中で一番優しい。
「準備出来なかった……」
玲の言葉にアキトが驚いた顔を見せた。
「準備しようとしたのか?玲には出来ない、いつも俺が全部していたから」
頭も体も覚えていなかった筈だけど、その過去の事実に玲は顔が強張った。自分はいったいアキトとどんなsexをしていたのだろうかと、急に不安になる。

「心配するなよ、玲はただ気持ち良くなればいいんだから」
玲に気を使って言っているのは分かるが、前に見せられた携帯画像の自分の濡れた瞳を思い出し、強張った顔が更に強張る。

「怖いか?俺は怖い」アキトが偽りのない言葉を吐いた。
「俺も怖い……」玲の言葉に小さく頷いたアキトがその手を引いた。
ベッドの上にゆっくりと横たわる。
(こんなこと大した事では無い)玲は自分に呪文を掛けた。
 アキトの唇がゆっくり下りて来て、玲の少しふっくらとした唇と重なった。
優しく唇を吸われると、不思議な事に玲の震えが小さくなり、やがて止まった。
この感触を体が覚えていたのだろうかと、深まる口付けの中、玲はぼんやりと思った。

 玲は天井をじっと見た。まだ昼間だけどカーテンが閉められ部屋の中は暗い。目の前に小さな星空が広がっている。その景色にまた一つ玲の不安が消えていった。

 アキトの唇が玲の感じる箇所を攻めているのだろうが、玲の体はまだ反応を示さなかった。
胸の尖りを吸われた時に反射的に声は漏れたが、気持ちいいとは思わなかった。嫌悪感が無いだけがマシだった。

 だが、その唇が下に降りて行くに従って玲の体がまた震えだす。あの忌まわしい記憶と現在が混同して来るようだった。だが玲はあの夜の記憶さえ自分自身で今は疑っていた。自分に都合の良い所だけ覚えていたのではないだろうか?本当は、もっと違う事実があったのではないだろうか?

 本当なら、アキトを好きだったという記憶だけでいい。それ以外の記憶は要らない……
「あ……っ」アキトの手が、まだ何ら主張をしない玲に触れた。
そして温かい粘膜に包まれた。
「いやだーっ!」悲鳴に近い声が玲の口から零れた。


ランキングに参加しています。面白かったと思われたらポチっとお願いします^^。
にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村ありがとうございました!

FC2のランキングも参加中です。


関連記事

COMMENT - 0

WHAT'S NEW?