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俺様な姫と二人の侍 2

 21, 2011 01:41
『終わったら迎えに行くから待っていて…………』大地は心の中で復唱した……

 その日空が大学を出る仕度を始めたのは、もう7時を過ぎていた。帰りはグランドの方を抜けて帰った方が買い物の便がいいので「晩飯はどうしようか?」などと考えながら歩いていると薄暗いグランドから大勢の声が聞こえて来た。

 目を凝らして見ていると、ここを卒業してプロ野球へ進んだ男の顔が見えた。後輩の陣中見舞いにでも来たのだろう。空はその声の中に聞き慣れた海の声を聞いた。「海!!大地はどうした?」駆け寄って叫ぶと一瞬?て顔した海が青ざめる。

「ヤバイ先輩が来てくれて舞い上がって忘れていた」
「ふざけるんじゃないよ!」空は青ざめたまま携帯で大地の携帯に電話を掛けた。
「だめだ、出ない……」
 二人で大地の今日最後の講義があった教室へ急いだ。もう中は真っ暗だった。
「大地、大地!」と叫んでも返事はない……

「どうしよう?空……」
「情けない顔している暇あったら心当たり探せよ」諦めて教室を出ようとすると、遠くで「カタッ」と小さな音がした。「しっ……」目を凝らすと、教室の一番後ろの端に暗い影が見える。
「大地……」静かにと海を制して近づくと、そこには子供のように膝を抱えて丸まっている大地が居た。まるで捨てられた子供が泣きながら眠ってしまったような大地の顔を見て空たちは二人顔を見合わせて唇を噛んだ。

 俺たちは一番してはいけない事をしてしまった……

『終わったら迎えに行くから待っていて…………』そう言った大地の母親は大地を迎えに来る事は無かったからだ。眠っている大地を起こさないように、そっと背中に乗せる。
「まるで子供みたいだな……」
「寝ている大地可愛いな……」そう言いながら、暗くなった道を歩いた。
「なぁ空、なんでこんな可愛い大地を置いておばさん出ていっちゃったのかな?」
「さぁね……本人しか判らないよ」

 俺たち3人が小学校に上がる前だった。俺と空と母親の3人でスーパーに買い物に行くとスーパーの脇に大地がしゃがんでいた。
「あら、大地ちゃん何しているの?ママは?」俺らの母親が聞いた。
「お買い物……待っていてって、僕が犬と遊んでいたから……」

 その遊んでいたという犬はもう大地の傍には居なかった。
「いつから此処にいるの?」
「う―――ん?ずっと前から」
俺たちも買い物には付き合わず、外で待っているからと言うと母親は一人でスーパーに入っていった。俺らの親がスーパーの袋を下げて出てきても、大地の母親は出て来ない。
「あら?ママはまだ?」
「うん……」
「変ね、中では逢わなかったけど・・」
その後店内アナウンスしてもらっても大地の母親は来なかった。
「もう暗くなるから一度家に帰りましょう」そう言っても
「ママが待っててって」大地は頑として動こうとしなかった。
「じゃちょっとお宅に電話してみるわね」

 だが電話して戻って来た俺らの親は「帰ってないみたい」と不安げだった。
「大地一緒に帰ろう」
「やっ……」
 結局スーパーの辺りに1時間くらい居たけど状況は変わらない。そのうち、連絡を受け早めに帰宅した大地の父親が宥めて連れて帰った。

 その次の日離婚届が郵便で届いたそうだ。俺らはまだ子供だったから、深い事も詳しい事も判らなかったが大地の母親がその日以来家に居なくなった事だけは理解できた。それからの日々俺たち二人は大地から離れなかった。いつも3人一緒かどっちかが一緒だった。母親の居なくなった大地の世話を俺らの母親が買って出た。だから学校のある日は必ず帰ってから一緒に飯食って、風呂も一緒。

 体格の良い双子に比べて、見た目も華奢で女の子みたいな顔の大地を母親も「娘が出来たみたい」と喜んで世話していた。それでも男3人、喧嘩もしたし悪戯もやった。
負けず嫌いの大地は体格で敵わないと判っていても挑んで来る。そんな大地が可愛くて、俺も空も甘やかした。こいつが我儘になったのも俺らのせいなんだよなぁ……

「あれ中学の時だよな……」空が呟くように言った。以心伝心……こういう時一卵性双子は都合がいい。「ああ」
 中学2年の時、大地が1つ上の3年の男子に告白されたのだった。思春期の男子、異性の事が一番気になる年頃だ。それなのに、よりによって男に告白されてる大地を見て何となく二人焦ってしまったのだった。

「男が男を好きになってもアリってのをあの時知ったよ」
「俺もだ……大地を見る度にモヤモヤしていた訳が判って何かホッとした」
そしてこの双子は中学2年の時、自分が大地を好きだと言うのを自覚したのだった。

その時ふと海の頭の上から「お前ら、その頃から俺を変な目で見てたんだなぁ!」と突然大地の声がした。「あれ?何だ起きたのか……寝ていた方が可愛いのに」のんびりした声は海だ。

「ふざけんじゃない!俺が何時間待ったと思ってんだよ」と大地はオンブされたまま海の首に腕を回して締め付ける。
「あぁギブギブ……悪かったよ、ごめんな大地」
「空、腹減った!」
「はいはい、帰ったら海の分のプリン食べていいから」空はまるで母親のようだ。
「やりぃ!でも空の分もな」
「えー、俺は最初から迎えは無理って言っていたじゃないか」
「ふん、お前ら一心同体なんだろ?罰も一緒だ!」

「俺、空よりも姫と一心同体がいいんだけどなぁ・・」
「姫言うな!」そう言って大地は首に回した腕に更に力を加えた。
 

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COMMENT - 1

kikyou  2011, 04. 22 [Fri] 00:27

拍手コメ Sさま

こんばんは。

この3人好きと言って下さって嬉しいです^^
キュンな部分もありますが、私の話の中では結構明るい方かと……(笑)

サイトに移行の準備で加筆修正しています。
読んで下さってありがとうございました!

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