天使の箱庭＜eternity＞

「いい？目を閉じて頭の中を空っぽにして・・・」
秀人は蓮の言う通りに目を閉じた、頭を空っぽにする努力もしてみた・・・
孔の中に挿入されている指が中でゆっくりと回転されているのが判った。
痛みよりも異物感の方が大きくて秀人は眉間に皺を寄せているが、蓮の優しい動きは少しづつ強張りを解いていくようだった。

「あぁぁ」知らず知らずのうちに甘い声が漏れてきてしまう。
空いている手で体を撫で回され、秀人の敏感になった皮膚はそれだけでも喘ぐ程の快感を与えられてしまう。
秀人はただ身体に与えられる感覚だけを素直に感じようと思っていた。
『僕は・・この後に訪れる悦楽を知っているような気がする・・』
蓮の指は鎖骨を撫でたり、胸の尖りを転がしたりと様々な動きをしている。

「あぁぁ・・・蓮」拡げられる孔が少しづつ疼いてきて、秀人は蓮の名を呼んだ。
「秀人・・力を抜いて・・」もう充分に受け入れられるのだろうか？
秀人は蓮が指を引き抜き体勢を整えるのを、そんなふうに見ていた。
「これから、秀人とひとつになる・・・」
秀人の喉がゴクンと音を立てた。
もう全てを受け入れようと・・・秀人も自分を知りたくて覚悟を決めた。

抜かれた指の代わりに熱の塊が宛がわれた。
秀人の孔が蓮によって最大限に拡げられ、先の太い部分が今埋められようとしていた。
「ああっ！」気持ちで受け入れようとしても、無意識に身体が拒絶するように強張ってしまう。
引き裂かれるような痛みの中、蓮の熱を体内に感じた。
「いやあっ・・熱い・・・怖い・・」
「秀人・・大丈夫だから、もう先が入ったから・・もう少し我慢して」
蓮の声もさっきまでの落ち着いた声ではなく、少し苦しげな、そして切なげな声だった。

「あぁぁぁ・・・」大きく拡げた脚の間の秘めやかな所の皮膚が破れそうな気がした。
「秀人・・力を抜いて、息を大きく吐いて・・・」
痛みと怖さの為に吸ってばかりいた息を思い出したように秀人は、はぁーっと吐き出した。
ぐいっと太くて長い熱が体内に埋められた。
「あああ・・っ・・・あっあっ・・」生理的な涙が零れ落ちる。

蓮が秀人の膝裏を抱え上げ残りの全てを秀人の中に埋めた。
「・・・秀人・・今・・やっとひとつになれた・・」
会って間もないのに『やっと』という言葉を使う蓮を訝しく思いもしたが、秀人はギチギチに埋められた楔が苦しくて返事も出来ないでいた。
「秀人・・ずっと・・ずっとこの日を俺は待っていたんだよ・・」
「・・・？」

馴染むのを待っているのだろうか、蓮の動きが止まり真上から秀人の顔を愛しい者を見るように見ていた。
「蓮・・？泣いているの？」
凛々しい蓮の瞳から秀人の頬に雫が零れ落ちた。
「ごめん秀人・・俺だけが嬉しがって・・・」
愛する人をひとり残し逝ってしまった魂が今蓮に宿っているようだった。
だが秀人は未だその想いには気付けず、蓮の涙を不思議な物を見るような感覚で見ていた。

蓮の濡れた唇が落ちてきて秀人の唇にそっと重なった。
１７歳の時に違う自分に出会ってからの７年、蓮も苦しんだ。
再び巡り逢えると信じて生きて来た。

長い口付けの後、蓮は「動くよ、大丈夫？」と優しく秀人に問い掛ける。
秀人は動くという意味も判らずに、ただ・・今の蓮には首を横に振る事は出来なかった。
身体の奥に収まっている楔がゆっくりと肉壁を擦りながら抜き差しされた。
「あぁぁっ・・あぁ・・」慣れない感覚に悲鳴とも喘ぎとも判らぬ声が漏れる。
快感などとは呼べないその行為に秀人は黙って堪えた。

肉が千切れる・・・心も千切れる・・・そんな感覚だった。

何度か抜き差しを繰り返した楔は、秀人の中の１点を攻めるように動き出した。
「あぁ・・っ！」急に身体を襲った感覚に自然と喘ぎ声が零れた。
「やっ・・そこ・・やっ」変な感じ・・でも気持ちいい・・・
秀人はいつの間にか自分の下腹が自分のペニスから零れ落ちた蜜で濡れているのを感じた。

蓮に貫かれ、自分の敏感な所が悦んでいる・・・
「あぁっ・・あん・・・あぁぁ・・蓮・・」
「秀人・・気持ちいい？」
触られてもいないペニスが蜜を零しているのに気持ち良くない筈もなかった。
「いやっ変・・僕の変・・」

「秀人、もっと感じて・・」そう言うと蓮は激しく腰を打ちつけてきた。
「あぁぁダメっ・・イっちゃうからっ・・」
「イっていいよ、何度でもイけるから」
秀人の腰を掴み直し、手前に引き付けると同時に打ち込む。
「やぁぁ・・はげしく・・しないでぇ・・」
秀人はだんだんと頭の中が真っ白になって来るようで怖かった。

さっき蓮にイかされた時とは感覚が全く違う。
「怖い！蓮・・助けて・・やぁぁぁっ！」
触れられていない秀人のペニスからはトロトロと甘い蜜が零れ続けている。
「いっやぁ――っ！」秀人は目の前で火花が弾けたような気がした。
そして初めての夜に秀人は後ろの感覚だけで絶頂を迎えた。

「いやっいやっ・・助けて・・・」未だ治まらない後孔の痙攣に恐怖すら覚えてしまう。
ビクビクと引き攣るように内腿の薄い肉までも震わせているのに、蓮は終わりを告げずに
「もっと感じて」と一層激しく腰を動かしだした。
「だめっ・・もう死んじゃう・・・」
激しい伸縮を繰り返す体内に蓮の熱い楔は衰えを知らないように打ち寄せる。
「あぁぁぁぁぁ、またイっちゃう・・蓮・・蓮・・・蓮！」

世の中にこんな激しく苦しい快楽があったのを秀人は知らなかった。
本当に自分の体が宇宙空間にでも投げ出されたような感覚だった。
ブラックホール・・・二度とは抜け出せない闇に身も心も堕ちていく・・
そんな感覚に秀人は悶え苦しんだ。

「まだダメだよ・・・まだ堕ちないで・・」蓮の言葉の意味すら判らない・・
蓮の手がようやく秀人のペニスに伸ばされた。
「だめ・・触ったらダメ・・・」力無く抗うのに蓮の手は容赦なく秀人を追い詰めた。
やっと与えられた刺激と、さっきから止まらない蠢きで秀人は本当にこのまま死んでしまうのではないか？と思っていた。
だけど心の何処かで、愛する人と繋がったまま死ねるのなら・・幸せだと思った。

『ひとりで見送りたくは無かった・・・置いて逝かないで・・一緒に・・・』
もう一人の自分が心の隅で泣いている。
「あぁぁ・・っ・・・蓮・・一緒に・・・」
「ああ・・一緒にいこう秀人・・」
殆ど朦朧とした意識の中、秀人は蓮の優しい言葉を聞いた。
「嬉しい・・一緒に・・・・蓮・・三・・郎・・さま・・・」
激しい快感に意識を飛ばしながらも、秀人はそう囁くように口にしたのだった。


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