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1周年記念 「彼方から・・・」4

 15, 2011 00:00
「隆弘お前が運転しろよ」
普段はハンドルすら触らせてくれない兄が秀人の肩を抱くように後部座席に座らせながら、そう言った。
「ええっ・・俺が運転するの?」
「そうだ、わざわざ迎えに来たんだから、運転くらいしろよ」
そこまで言われれば隆弘も文句は言えない。

「兼にぃ・・ごめんね」秀人がすまなそうに言うと
「大丈夫だよ、もう具合は悪くないか?俺に凭れ掛かって・・」
秀人には言葉使いも態度も違う兄にはすっかり慣れてしまった隆弘だったが
「ちっ、随分と秀人には優しいよなぁ・・」などと憎まれ口を叩いてしまう。
「おい隆弘、気をつけて運転しろよ」
「へーい」

「隆弘・・ごめんね、せっかく買い物に来たのに・・」
「秀人・・・気にするなよ、買い物よりもお前の方が大事だよぉ」
兄弟揃って秀人に骨抜きにされてる・・兄の兼介も弟の隆弘も心の中でそう思い肩を竦めた。

「それにしても、そんなに風貌の悪い奴だったのか?秀人がこんなに怯えるなんて・・
よくそんな奴にお前も着いて行ったなぁ」
呆れたように言う兼介に向かって「悪い人じゃないよ・・」
と言い返したが、隆弘も何か喉に刺さっているような気がして、あまり強気の事は言えなかった。

「兄貴、最近よく見るあの口紅のポスター知らない?」
「口紅の?あの男のモデルがやってるやつか?」
「そう、そのモデルのRenって人が助けてくれた・・・」
「へ・・ぇ・・・」男にしておくには勿体無いくらいの美形だったのを兼介も思い出した。
そして改めて秀人の顔を覗きこむようにして
「そうか、秀人はああいう顔嫌いか・・そうかそうか」
兄の兼介もはっきりした顔立ちはしていたが、もっと青年らしいというか、男らしい精悍な顔をしていた。

だから秀人がああいう美形を好みでないと知ると、満面の笑みを浮かべ秀人の髪を梳くように撫でていた。
バックミラーでその様子をちらっと見ながら隆弘は内心舌打ちをしたい気分だった。
兄が、秀人を特別な目で見ているのは知っていた。
その特別が、弟みたいな気持ちなのか、それとももっと異質のものなのかは今の隆弘では判断出来なかった。



その頃、皆が帰った部屋でレンは、窓辺に凭れぼうっとしていた。


1986年9月

秀人よりも4年先にRenこと小野田蓮は神奈川に生まれた。
そしてアメリカで日本料理の店を出す両親と共に渡米したのが5歳の時。
当初忙しい両親に代わり蓮の遊び相手は母が与える書物だけだった。
母が与えた絵本や児童書はあっという間にボロボロになり、
蓮はもっともっとと本を強請り、学校に上がる頃には児童書では満足を得られない程に知識をつけていた。

そして10歳の頃に蓮は、自分が二重人格ではないか?
という恐ろしい悩みを抱えていたのだった。
そんな自分の事を知るためにも蓮は勉強に力を入れていった。
それ以降は医学書を読み漁り、若い脳はそれをどんどんと吸収していった。
そして飛び級を重ね、16歳で大学に通いだしても蓮の悩みは無くならなかった。

だが当時の蓮はその悩みと上手に付き合っていた事も確かだった。
ジキルとハイドみたいに正反対の二重人格ではなく、同じ力が倍になるような・・
そんな感じだったからだ。
そして時々頭を過ぎる映像・・・

蓮の運命の日は17歳の時に訪れた。


当時父の開いた「日本料理 小野田」は地元だけではなく、遠方からも客が訪れるほどに有名になり、店舗数も目が届くぎりぎりの5店舗に増やされ、事業も順調に進んでいた。
そして「小野田」に訪れる常連客の息子に言い寄られ、蓮は時々外で会うようになっていたのだ。

自分の性癖を疑問に思ったのは14歳の頃。
周りにいるグラマラスな女子よりも、華奢な男子に目が行ってしまう。
飛び級のおかげで、蓮の周りにいる女子は蓮よりも年上だったから、割り切った付き合いも出来た。
初めて女性とベッドを共にしたのは15歳の夏。
だが蓮はその行為に何の感動も愛情も持てなかった。

そして17歳の時に常連客の息子マイケルに対して初めて愛しさみたいな気持ちを感じた。
マイケルは自分よりも1歳年下で普通にハイスクールに通う少年だった。
1歳下だが、早くに自覚していたマイケルはその時には既に数人と交渉をもっていたから、
リードされながらも初めて男の体に己を埋めた。

「Ren・・Ren・・・AH!OH!・・Ren」
マイケルの喘ぎ声を聞きながら蓮も激しく腰を打ち付け続けた。
女性を抱いた時よりも遥に自分が感じている事を蓮は知り、
今まで漠然としていた自分の性癖を認めた。

そしてエクスタシーを口にするマイケルの蠢きに合わせるように、
自分の全てを吐き出す時に蓮の脳裏には、今まで断片的にしか見えなかった記憶の映像が走馬灯のように流れた。





『いやっ・・逝かないで・・・お願い・・逝かないで』
横たわる自分に縋りつく男がいる。
溢れる涙を拭いもせずに、縋り付き、そして手を握り締めてくれている。
『ひとりにしないで・・・私も一緒に・・・』

『大丈夫・・・いつどこに生まれ変わっても必ず・・・
必ず迎えに行くから・・・泣かないで・・・・ちゃんと最後まで生き抜いて』
『あぁぁ・・・お別れなのですか?必ず私を待ってて下さいね・・・』
『ああ待ってるよ・・ゆっくりでいいから・・・必ず待ってる・・』
ぽたぽたと男の流す涙の熱さを今の蓮も感じるような気がした。
それほどに、その涙は熱かった。


そして横たわった記憶の中の自分は最後の力を振り絞るように囁いた。








『愛してるよ・・・・秀麗』と。


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COMMENT - 15

けいったん  2011, 02. 15 [Tue] 00:54

キャァーヽ(´▽`*)ノ バンザイ

kikyou様、 I LOVE YOU ❤ (*'ε`*)チゥ

輪廻転生物語ですね♪
「秀麗」ちゃ~ん登場!!Σ(o>艸<o)
・・・ってことは レンは・・・ですね~☆彡ニヤリ_φ(≖ω≖。)♪

素晴らしいー展開だぁーー゚+。゚感謝★☆(´∀`人)☆★感激゚。+゚...(^0^)ゞbyebye☆

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ちこ  2011, 02. 15 [Tue] 07:29

お~~~~~っ(*^□^*)
生まれ変わってるぅ~~!
名前から誰なのか・・・ふふふっ(笑)
でも、過去の記憶は悲しい記憶ですよね?
あの後、二人になにか起こったんでしょうか!
気になっていたお兄ちゃんも〇様ですね~(笑)←わけもなく、伏せてみる!
これは、ますますおもしろくなってきたじょ(≧▼≦)楽しみにしています(^^)v

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NK  2011, 02. 15 [Tue] 08:04

一つ目の驚き

うえの皆さまと同じように名前の頭文字でムフッ♪とにやけました。

クリスマスもバレンタインもない世界の華麗な二人ですよね。
私の好きな喫茶店にもおみえになれない。

kikyouさまのお話のタイトルにいつも心惹かれるのですが、
「彼方から…」も気になってました。
本当に遠いところから、、、ちょっと疑問が解消されたかも。

今度も二人はまた結ばれるのかな。

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サフラン  2011, 02. 15 [Tue] 12:11

投石しないでね~(笑)

チョイ鬼畜OKの正統派攻め様スキーの私が好きなのは当然、兼光!←敢えて、伏せ字にしませんよ(笑)。「紅蓮会」の皆様は、ホントは受けタンスキーでしょ。
私は「琥珀の君」の母ですから、愚息と正反対の殿方が大好物~(笑)。兼光も兼介もどストライク~。でも、紅蓮会の皆様は違うのよね~。
なんだ、隆弘は狂言回しか(笑)。

というわけで、仕切り直しに「男子メーカー」をしましたよ~(笑)。

柳沼秀人(竹の子男子)←色々、解釈出来る(笑)。

小野田蓮(博学男子)←おっ、当たってる!!…実は、琥珀の君は大層なインテリ~。天下の…、以下自粛(笑)。

堀内兼介(常夏男子)←いつもご苦労様~。ワイハでも行って、骨休めしてね♪

堀内隆弘(微笑み男子)←主役になれないけど、メーカーでは良い結果ジャン(笑)。

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びび  2011, 02. 15 [Tue] 12:20

そうだったのか(;゜0゜)''

そういえば、バナーが秀麗ちゃんの時点でなぜ気づかなかったんだろうか!
(>人<;)ヤラレター!
察しの良い方はきっとお分かりだったのでしょうね…。

この2人は何度生まれ変わろうとも出会い、愛し合う運命なのね♡
でも、秀人は何をあんなに怖れて寂しいんだろう?思い出すのに何かの鍵が掛かってる?
Renくんは秀人をどうやって見つけたの?
まだまだミステリアスですね~(*^_^*)

ところで、○様の名前が兄弟のどっちか失念していたので箱庭に飛んで確認してきて、なるほどね~とほくそ笑んでしまいました。確かにお兄さんはキーマンですね♪( ´▽`)
でも、ちょっとだけのつもりで覗いたのに、またハマって危うく戻れなくなりそうに…。危ない危ない(-_-;)

ワクワクしますねo(^▽^)o
続き楽しみにしてます。

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tukiyo  2011, 02. 15 [Tue] 17:22

にゃんとぉぉぉ~~!

こんな展開が私を待っていたとはっ!
そ、双眼鏡、どこいったーーー。
カ、カメラ~~さげさげ~~。

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梨沙  2011, 02. 15 [Tue] 22:09

\(・o・)/ワア!

まさかの展開です(*_*)
輪廻転生のお話だったんですね… 蓮さんは思い出されたんですね(^.^)
でも 秀人の怯え方は… 一体あの後何があったんでしょうね!?(;´Д`A ``` 幸せな日々を送れなかったんですかね?(T_T) 前世での人々が大いに絡み合っていくんだと思うんですが… 現世でこそ幸せをと願わずにはいられません

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kikyou  2011, 02. 15 [Tue] 23:56

けいったんさま キャァーヽ(´▽`*)ノ バンザイ

きゃーっチュ貰ったぁ(笑)

やっと種明かしが出来て、そして喜んでもらえてほっとしています。

どうしても書きたかった番外です。
でも時代物はもうキツイので(難しい^^;)

これから、どう展開するか待ってて下されば嬉しいです!

コメントありがとうございました。

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kikyou  2011, 02. 16 [Wed] 00:04

ちこさま

こんばんは。

はい、やっとネタバレですね(*^_^*)

私にしては登場人物多めです。
さて、どうまとめて行きましょうか?
(いつも他人事です・・)

これからも、無い知恵を絞って、書いていきます。

楽しみにして下さって、感謝です!

コメントありがとうございました。

Edit | Reply | 

kikyou  2011, 02. 16 [Wed] 00:12

NKさま 一つ目の驚き

こんばんは。

謎も解決?^^

やっと種明かし出来てほっとしています。

どうしても番外として書くには、あのままでは難しかったので
「じゃこっちにお出で」と連れてきてしまいました^^

今後の二人・・・・基本ハピエンです(*^_^*)
(デモチョットイジメルカモ(笑))

コメントありがとうございました。

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kikyou  2011, 02. 16 [Wed] 00:25

サフランさま  投石しないでね~(笑)

こんばんは。

攻めたん好きーでしたか。
あ、兼光結構人気だったんですよ^^;

愚息なんて、おっしゃらないでぇ(*^_^*)
もう絶対可愛いに決まってるんだからぁ
本当にいつも羨ましく思っています。
あとは娘に期待するしかありません(可愛い子を捕まえて来てって(笑))


「男子メーカー」!

面白いですねぇ。
秀人・・あぁやっぱり竹の子のように剥かれてしまうのねぇ(>_<)
蓮!何だか設定通りって感じで、これも当たり!

兼介!これも何となく当たってる。
隆弘!あぁ、何があっても秀人の傍で微笑んでいてほしい~

楽しい結果ありがとうございます。(#^.^#)

コメントいつもありがとうございます。

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kikyou  2011, 02. 16 [Wed] 00:29

びびさま そうだったのか(;゜0゜)''

こんばんは。

ちょっと騙せて私嬉しいです(*^_^*)
意外と皆さん、驚かれていました。
エヘヘ、ちょっとSな書き手なもので・・・^^;

でもまだ謎が完全に解けたわけではないので、今後も見守って下さい。

おお、箱庭まで出張して下さって・・ありがとうございました。
そして遭難?(笑)

でも楽しんでもらっているようで、私も嬉しいです。

いつも楽しいコメントありがとうございます(^v^)

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kikyou  2011, 02. 16 [Wed] 00:31

tukiyoさま  にゃんとぉぉぉ~~!

こんばんは。

あああ・・・双眼鏡は何処に片付けてしまわれましたか?
押入れ?箪笥?

また活躍する日が来るとは・・・(笑)

実は私も早く種明かしがしたかった^^;
普段あまり書かない状況説明や設定・・今回はやっぱ必要だったので
書いてしまってましたが、ちょっとイラッとしてました(笑)

今後も楽しみにしてもらえたら嬉しいです♪

コメントありがとうございました。

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kikyou  2011, 02. 16 [Wed] 00:34

梨沙さま \(・o・)/ワア!

こんばんは。

ハイ輪廻転生・・好きです。
以前前世占いってのが流行った時にやってもらったら
「中世ヨーロッパのジプシー」と言われました(笑)

でもジプシーってあたりが当たってるかもです^^;

秀麗と紅蓮・・幸せでしたよ。
でもその幸せを手放す時は必然的に訪れるので・・

ま、その辺は、また近いうちに^^

コメントありがとうございました(#^.^#)

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kikyou  2011, 02. 16 [Wed] 00:37

拍手コメ ☆さま

こんばんは。

すみません、手抜きして最近はこちらのコメント欄でのお返事です。

「こうきたか!」というお言葉・・嬉しいです。
読み手様の予想を裏切る快感!
(あ、ロクなもんじゃないですね^^;)
でもそれも書き手の醍醐味(#^.^#)

何だか嬉しいです♪

コメントいつもありがとうございます。嬉しいです。

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