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太陽が見えない 3(観潮楼参加SS)

 22, 2011 03:04
「馨どうした?何か心此処にあらずって感じだったぞ」
「あ・・うん大丈夫」ゆるっと笑った馨に太陽は一瞬魅入られ、そんな自分を瞬時に否定した。
「やっぱお前は合コン向かない、参加するな」
さっきとは全く反対の事を言う太陽を訝しげな顔で馨は見た。

「僕は機会があれば行くよ、太陽に決められる事じゃないから」
何だか腹立たしくなって馨は素っ気無く太陽の言葉に逆らった。
「酒に弱いくせに、行っても詰まらないだろう?」
「少しは強くなったし、素敵な出会いがあるかもしれないじゃない?」
売り言葉に買い言葉みたいな会話は二人揃って上司に呼ばれた事で終わりを告げた。

「お前らも入社してもう直ぐ1年だ、そろそろ旅程表作ってみるか?」
「えっ!本当ですか?是非やらせて下さい」
「ああ、やってみろ。二人で協力すれば何とかなるだろう?
まずは北海道3泊4日だ」上司の言葉に太陽が口を尖らせた
「ええっ?国内ですか?」
「太陽!」慌てて馨は太陽の背広の裾を引いて言葉を遮った。
「課長、僕たちにやらせて下さい」
馨の言葉に上司は頷き、そして太陽を見て「お前はやる気あるのか?」と聞いた。
「はいっ!喜んでっ!」
「ばか、どっかの居酒屋じゃないんだぞ。」
課長は呆れたように言うが、顔は怒ってはいなかった。
普段から明るくて元気の良い太陽は、上司にも同僚にも好かれていた。

席に着くと「3泊4日かぁ・・・」文句を言いながらも太陽は早速資料を集め始めた。
「馨、お前北海道に行った事ある?」
「うん、あるよ小学生の頃家族で雪祭りを見に行った」
「ふ~ん、俺行った事ないんだよなぁ・・・」
「行ったからって、僕だって小学生だもん、大した事覚えてなんかいないよ」
そう言う馨に向かって、太陽が嬉しそうな顔で聞いてきた。
「なぁ、今度週末利用して行かないか?北海道」
「え・・太陽と僕の二人で?」
「行こうぜ、やっぱ現地見ないと旅程表も作れないしな、俺らの初ツアーだよ?
良い企画にしようぜ」

「う・・うん」『太陽と二人で旅行・・・』内心馨は嬉しくて飛び上がりたい気分だった。
高校大学と、数人で小旅行には何度か行った事があったが、二人だけで旅行なんてした事は無かった。
嬉しくて、顔が自然と綻んでくる。

「おーーい、そこのお二人さん、企画は夏のだからな、今行っても状況違うからな」
太陽の声が大きいせいで、課長の耳にも入ったようだ。
「いいんですよ、夏でも秋でも。あの大地に足を踏み入れる事に意義があるんですから」
『良かった・・』
課長の言葉に太陽が旅行を止めるというのでは?
と内心がっかりしていたが、決行するみたいだ、自然と口元が緩んでしまう。

「馨よかったな、お前の好きなカニいっぱい喰わしてやるぞ」
子供にするように、馨の顔を覗きこみながらその手は馨の髪をくちゃくちゃに撫で回している。

「おーい、お前ら婚前旅行か?」一人の先輩が野次を飛ばした。
ドキッとしたのは馨だけのようだ、太陽を見ると
「いいでしょう?婚前旅行」と冗談を返していた。
旅行を旅行として意識しているのは馨だけで、太陽には単なる視察にすぎない訳だ・・・
寂しい気持ちを馨も冗談で紛らせた「先輩、そんな事言ったらお土産買って来ませんからね」
と軽く睨むように先輩に顔を向けた。

そんな馨を見て「おい、太陽俺が代わってやるよ、俺も馨ちゃんと旅行して、
一緒に温泉入りたい」本気なのか冗談なのか判らないふざけた事を言っている。
「何で馨が先輩と旅行して一緒に風呂入らなければならないんですか?」
太陽も冗談のように返していたが、その目を見て馨は、はっとした。
太陽の目が笑ってはいなかったからだ。

「馨はねぇ、いつか可愛い嫁さん貰って、幸せな家庭を築くんですよ。先輩なんかの手垢が付いたら大変だ」
「ははは・・お前は馨ちゃんの親父か?」
そう笑いながら先輩は、資料を抱えて部屋を出て行った。

『手垢・・・』太陽の言葉に胸がズキズキ痛むようだった。

あの時の滝沢洋介という男とは、あの時以来会ってない。
貰った名刺は、部屋に帰ってからビリビリに破いて捨てた。
お互いの意思で大人同士がSEXをした、ただそれだけの事なのだ、と自分に言い聞かせるようにその記憶も感触も馨は封印した。
一生この封印を解く日が来なければいいと願い、そして2年過ぎても変わる事は無かった。

「おーい、長浜、沖本午後から保険やが来るから、お前たちが打ち合わせしろ」
課長にそう言われ、二人で頷いた。
「何だか俺らも少しづつは成長してるんだな」
秋が過ぎた頃から、色々な事を任されるようになり太陽も上機嫌だった。
楽しそうに働く太陽を見てると、こっちまで嬉しくなる。
自然と馨の口元も緩んでしまう。


昼前に掛かってきた電話に梃子摺った馨は遅い昼食を摂ったあと、小会議室に向かった。
もう保険担当の人は来てるだろうか?
そう思いながら急ぎ足で、会議室の扉を開けた。

「すみません、遅くなりました。」
そう言って、太陽の隣に立ち、担当の保険会社の男の顔を見た。

一瞬眩暈がして、机の端を掴んだ。
「おい、大丈夫か馨?」
心配そうに尋ねる太陽の顔が見れない。

「明和生命の滝沢です」
「お・・沖本馨です・・・」
「あの頃と部署が少し変わりましたので、新しい名刺です」
その言葉に馨の顔から血の気が引いていく。

「え?馨・・・知り合い?」
「以前にちょっと・・・」馨の代わりに答えたのは滝沢だった。




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すみません、間があいてしまって・・・・

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COMMENT - 12

魔法使いちこ  2011, 01. 22 [Sat] 04:07

えいっ(^O^)/゜゜☆゜゜。。☆kikyouさまの「ゴッドハンド」高速仕様にかえちゃいましたけどいかがでしょうか~?!
二人はまだカップルではなかったんですね~しかもあの時のオトコが出現!馨くん、可哀想に(T_T)二度と会うことはないと思っていた相手なのに・・・
いかにも知り合いですぅ~な対応の彼は二人の起爆剤になるのかならないのか(笑)
太陽くんは馨くんのこと気になってしかたがないって感じがするんですが・・・続きを楽しみにしています(^^)v~kikyouさまには後で超高速仕様の魔法を追加で(笑)
サービスしておきますぜ、ひひひっΨ(`∀´#)

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tukiyo  2011, 01. 22 [Sat] 08:49

前回は萌え過ぎで貧血を起してしまいました。
またまたなんかニマニマな展開~~~。
楽しみです。

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jun  2011, 01. 22 [Sat] 10:43

一夜のお遊びで終わるつもりだった馨君の前に現れた滝沢さん。
太陽とはまだ片思いのままなんですか?
宋とするとますます持つ手他関係になりそうですね。

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びび  2011, 01. 22 [Sat] 11:34

二人はまだカプではなかったんですね。
馨の片思いではなさそうなのに、じれったいぞ‼

一度きりのつもりの彼が現れて、馨くんビックリです。
きっと彼は馨くんの片思いの相手に気付くでしょうが、意地悪しちゃうのかな?
ちょっとワクワクするけど、ほどほどにお願いします。

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けいったん  2011, 01. 22 [Sat] 20:06

爆弾投下ーー!

滝沢の登場は 馨にとっては あの過去を 思い出させるもの

一夜限りの割りに 妙に 滝沢が 馴れ馴れしい態度では?
バレて欲しいのか、意味深な態度に隠された理由が あるはず...

馨、太陽 そして 滝沢と三人の言動と心の動きに これから 目が離せないわッ!
\_( ゚ロ゚)ここ重要!...byebye☆

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kikyou  2011, 01. 23 [Sun] 00:07

魔法使いちこさま

こんばんは。

ちこさんの魔法が掛かったのは良いんですが、違う指にかかったらしくて^^;


さぁ、馨の目の前に会いたくない男が出現しました。
あぁどうしよう?
とうろたえるのは馨だけではありません。私もです(ーー;)

毎回自分で自分の首を絞めてしまっています。
魔法でどうにかして欲しいです~


コメントありがとうございました。

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kikyou  2011, 01. 23 [Sun] 00:09

tukiyo さま

こんばんは。

ここに出してきてしまいました・・・関係のあった男を。

どうしてこうややこしくなるのでしょうか?

でも、太陽と旅行!
もう寝込みを襲ってしまえ馨!って感じですね。

コメントありがとうございました。

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kikyou  2011, 01. 23 [Sun] 00:14

junさま

こんばんは^^

まだ太陽には何も打ち明けられないでいます。

とっとと打ち明ければ・・・でも相手がノンケだと腰が引けてしまいますよね。

さて、どうなるか?
どうしましょう?という所なんですが(笑)

コメント沢山ありがとうございました(#^.^#)

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kikyou  2011, 01. 23 [Sun] 00:15

びびさま

こんばんは。

そうなんです、いまだに告白出来ないんですよね。

モタモタしている間に古傷が目の前に!

ちょっとワクワクするけど、ほどほどに?(笑)

はい!了解です(●^o^●)

コメントありがとうございました。

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kikyou  2011, 01. 23 [Sun] 00:18

けいったんさま 爆弾投下ーー!

\_( ゚ロ゚)ここ重要!

可愛い絵文字だぁ

こんばんは。

たった1度だけの過ち?それとも戯れ?

やっぱ馨にしてみれば過ちですね。
でも滝沢にしたら、戯れかもしれません。


馨どうしましょう?!
(まだ他力本願で何とかしようとしている私です^^;)

コメントありがとうございました。


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kai  2011, 01. 23 [Sun] 02:18

久しぶりのコメントお邪魔します。

友人を好きになる切ない胸の裡と
その切なさに堪え切れなくてひと夜の出会いに逃げ場を求めてしまった馨の気持ちがよく描かれていて胸が苦しいほどです。

けれど、二度と会うことはないと思っていた一夜限りの人と再会してしまう何んて・・・それも太陽と一緒の場で。
この出会いが運命を変えることになりそうで続きが楽しみです。

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kikyou  2011, 01. 23 [Sun] 23:02

kai さま

こんばんは、ご無沙汰しております。

お元気だったでしょうか?^^

友人を好きになるって、やっぱ辛いですよね。
傍にいるだけに、辛い事も多いのかもしれません。

早く告白させてあげたいのですが・・・・

一夜限りの男、滝沢の出現に馨は不安に苛まれながらも、滝沢の部屋に着いて行きました。

さて・・・・どうしましょう?
相変わらずの作者です、スミマセン^^;


インフルエンザ流行っているみたいなので、気をつけて下さいね。

コメントありがとうございました。

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