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【それぞれのクリスマス】過去からの贈り物

 26, 2010 23:49
随分と予定が狂ってしまいました。
時間を少し戻して読んで頂ければ嬉しいです。
実はこの展開は、この話しを書き始めた頃に予定していたのですが
言葉で表現するのが難しくて・・・納得いくようには書けませんでした。

すみません先に言い訳を・・・^^;






麗はマンションのベランダから東京の街を眺めていた。
「こんなに暖かいクリスマスって初めてだ・・・」
「今年は特別だ・・・」煙草をふかしながら杉浦も東京の夜景を眺めている。

「札幌が恋しいか?」少し寂しそうな横顔を見て杉浦が聞いてきた。
「ううん・・・」ゆっくり首を横に振る麗は言葉を続けた。
「僕の帰る場所はもうあそこには無いから、ここが僕の帰る場所だ」
想い出の詰まった家も、今は面影も残ってはいない。
形のある物は全部失くしてしまっていた街には帰りたくはなかった。
あの街は麗の全てを奪い、心の中の想い出さえ踏みにじられたような気がしていた。

「杉浦さん、僕が小さい頃から聞かされていたおとぎ話教えてあげましょうか?」
今まで寂しそうだった麗の瞳が少し輝いたようで、杉浦は続きを促した。
「僕は本当は生まれてこなかったのかもしれないんです。」
「どういう意味だ?・・・風が少し冷たくなったきた、部屋に入ろう」
そう言って杉浦は麗の肩を抱くように部屋に入り、ソファに座らせる。

「ちょっと待ってて」
そう言い杉浦はキッチンで麗の為に温かいココアを作って持って来てくれた。
「ありがとうございます」ココアを受け取りながら、杉浦といい粕谷といい自分を子供扱いしていると失笑しそうだったが・・・杉浦は自分を抱いたのだ・・
「どうした顔が赤いぞ?風邪でも引いたんじゃないのか?」
杉浦の大きな手が麗の額におかれ、慌てて大丈夫と言って身を捩った。

「僕が初めて杉浦さんと会ったあの公園覚えていますか?」
「ああ、忘れられるはずが無いだろう」
あの時杉浦は何かに導かれるように麗の前に立ったのだ。
「実はあの公園で妊娠中の母は酷く具合が悪くなったそうです・・・
北海道では珍しく暑い夏の日に・・意識を失いそうになったそうなんです」

「19年前の夏?」
「麗の誕生日は・・・8月24日だったな・・」
19年前の夏杉浦は小学6年だ、そういえば自分もその夏札幌に旅行に行っていた事を思い出した。
あの夏だけではない、杉浦は北海道が好きで毎年夏休みの最後に北海道に行っていたのだ。
そして6年の夏杉浦は自分も妊婦を病院に連れて行った経験があった。
だがそれがあの公園だったかは杉浦も記憶が曖昧だった。
まだ慣れない北海道で右も左も判らなかったのだ。

「母が具合が悪くなって助けを呼ぼうにも周りには誰も居なかったそうです。でも一人の高校生くらいの男の子が声を掛けてくれて、そして救急車を呼んでくれたそうです。
病院にも付き添って、でもとても危ない状態だったのですが、緊急帝王切開で僕は無事生まれたそうです。もう少し遅かったら母子共に無事だったか判らないと医師に言われたそうです。」

淡々と語り続ける麗の横で杉浦の顔が強張ってくる。

「そして手術が終わり僕を初めて抱いた人はその助けてくれた人らしいです、急な事で父も間に合わなかったそうです」最後の一言は麗もおかしそうに笑っていた。
「その高校生くらいの人もびっくりしたでしょうね」と。

「母は自分がそんな目に合ったから、困っている人がいたら手を差し伸べてあげなさいね、って口癖のように僕に言っていました。人の親切で救われた命なのだからと・・・」

突然杉浦が立ち上がり、自分の部屋の机の引き出しを掻き回している。
「杉浦さん?」
「ちょっと待て」
杉浦は何段目かの引き出しの奥からひとつの箱を取り出し、そして今度はその中を漁り出した。
「あった!」
自分が母の思い出話しをしているのに、杉浦は何をやっているのだろう?と思っていた。

「これだ、麗」杉浦の目が何故か少し潤んでいるように見えたのは見間違いだろうか?
「何ですか・・・・あっ!」
杉浦の手の平にはキラキラ光るビーズで出来た雪の結晶のようなキーホルダーがあった。
手芸の好きな母も同じような物を作っていたのを思い出した。

「これは、俺が19年前に病院に付き添って行った時、手術室に入る前にその妊婦さんに預かった物だ、お守りだけど持っては手術受けられないからって・・・」
「えっ、だって19年前ってまだ12歳でしょう?」
麗の母を助けたのが杉浦である筈がない・・・麗は心の中で否定した。

「そして家族が来るまでと待っていたら、父親が来る前に手術が終わり俺が呼ばれた・・
若い看護婦が身内と勘違いしたらしい。
『若いパパですねぇ』と生まれたばかりの赤ん坊を抱かされた・・・
ま、俺はしょっちゅう高校生に間違えられる程デカかったし、ませていたからな」と
流石に杉浦も照れたように笑った。

「そんな・・・まさか?」

「19年前の8月24日、札幌の中央病院、19時21分に生まれた赤ん坊を俺は最初にこの腕に抱いた、綺麗な赤ん坊だった・・」
その場所も時間も麗の記憶するものと全て一致する。

「麗・・・預かった物を返すよ、遅くなったな」
そう言うと杉浦は麗の手の平にキラキラ光る雪の結晶をそっと乗せた。
「あぁっ・・・母さん」麗は手の平を握り締め堪えきれずに嗚咽を洩らす。

2月の寒い夜、麗を公園で見かけた時に麗を包んでいた灯りは、
きっと母の魂だったのかもしれない。
ベンチから立ち去らなかった麗と、その麗に惹かれるように声を掛けた杉浦。
二人の出逢いは再びの偶然なのか、それとも運命なのか・・・

「麗、ひとりで泣くなよ」
杉浦の言葉に麗はこくんと頷きそしてその腕の中に運命を預けるように体を預けた。
近づく杉浦の唇に自らの唇をそっと重ねていった麗だった。


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遅くなりましたが、予定していた【それぞれのクリスマス】を5本・・何とか書く事が出来ました。
多くの方に読んで頂き、拍手やポチ、そしてコメント有難う御座いました。
(これからコメントのお返事させていただきます、遅くなりましてすみません)

ブログ小説を書き始めてから、初めてのクリスマス・・・
あ、もう過ぎてしまいましたが^^:

番外という形で書けて、私も楽しかったです(産みの苦しみは少々ありましたが)
年内まだ更新あると思いますので、ご挨拶はまた改めて・・・

【それぞれのクリスマス】最後までお付き合い下さり、ありがとうございました!

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COMMENT - 16

ちこ  2010, 12. 27 [Mon] 00:25

Kikyouさまに泣かされた~(T_T)びえ~ん(;_;)麗ちゃんのお母さんの愛によって導かれた公園で再び出会った二人はやはり神様が半分こにしたひとつの魂だったんですね~そういう訳だったのね~でも杉浦さん、小学生のくせに老けすぎ(笑)若すぎるパパ(//∀//)あっ、でも私も中学生の時父と腕を組んで商店街を歩いていたら愛人だと思われていたっけ・・・←老けすぎだろっ!ようやくクリスマス企画終わりましたね~お疲れさまでした!素敵なお話のプレゼントありがとうございましたm(__)m楽しいクリスマスが過ごせました゜+。(*′∇`)。+゜

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NK  2010, 12. 27 [Mon] 00:46

最後の一文が。。。

本編の最後の一文がずっと引っかかっていました。
きっと、いつか明かされるだろうと待っていたのです。

家族写真が一枚だけで、思い出の品が何もない麗くんには
お母さまのお手製のキーホールダーは何よりのプレゼントですね。
嬉しかったでしょうね。

逆境を健気に独りで頑張った麗くんと「この世の果てで」の拓海くんは
私の中では重なります。
清貧だった二人は多くを望みません。
その二人が最愛の人に巡り合い、幸せであることが嬉しいです。

杉浦さんは愛情に溢れていますが、俺様な態度は相変わらずのよう
ですので、小悪魔のような麗くんに翻弄される姿を見てみたい
気がします。
でも、麗くんは小悪魔にはなれないでしょうね。。

お忙しい中、すてきなクリスマスプレゼントを沢山ありがとうございました。
年末年始の忙しさを、この嬉しい気分で乗り切れる気がします。

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-  2010, 12. 27 [Mon] 02:21

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-  2010, 12. 27 [Mon] 08:53

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梨沙  2010, 12. 27 [Mon] 11:08

涙が…

この話も 私が好きな話で 最後の1文はどういうことなのだろう?と思ってましたが 謎が今回解けました まさしく クリスマスプレゼントです 麗にっとて杉浦は生まれたときから結ばれるべき相手であり お母さんが ずっと見守っていてくれたんですね(*^.^*) 最後にこのお話で本当に心温まるクリスマス企画でしたキャッ(^^*))((*^^)キャッ
kikyouさん お疲れ様&有難うございます 素晴らしいお話を!!

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かや  2010, 12. 27 [Mon] 14:47

泣きすぎました~

まさに、クリスマスの奇跡!ですね~(☆☆)
二人は運命の恋人同士だった。おおお!
良かったねえ、生まれてきて!
幸せになって欲しいです(;_;)

乃榎さまのイラストもステキでした。
もう、全部、結局泣かされて~。゚(/д\)゚。
私にとっては、kikyouさまとの出会いも奇跡です。
お話の虜になって通い出した頃には、まさか、
自分がブログ始めたり、ご本人さまにお会いしたり、
クリスマス企画にお誘いして頂けるなんて夢にも思いませんでした!
神様ありがとう~!
来年はちゃんと良い子にしますから次もよろしく(人 *) ←

kikyouさま、企画お疲れ様でした!
素晴らしいプレゼントをたくさんありがとうございました!

追伸。
遅くなりましたが、写真の件でお知らせ記事をあげました。記事中で、リンクさせて頂きました。よろしくお願い致します~m(_ _)m

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kikyou  2010, 12. 27 [Mon] 17:46

ちこさま

こんばんは。

麗と杉浦の本当の出逢いは、この本編を書いている頃から考えていました。
なかなか形にする事が出来ずに、今回やっと二人の運命を書くことが出来て安心^^

中学生で父の愛人!(笑)
それはそれで美味しいかも?です。
もし私に息子がいたら、逆パターンを楽しみたいもんです。

こちらこそ、全部読んで下さってありがとうございました。

皆様の声が次の作品への威力になります。

コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 12. 27 [Mon] 17:58

NKさま

こんばんは。

本編の最後とやっと結びつける事が出来ました。
考えてみれば長い間放置してましたねぇ。
この作品に関しては、続編を書くつもりで本編に少しづつ練りこんでいたのですが
やっとです(笑)

雪の結晶のキーホルダーは母の形見になってしまいましたが
それを大事に杉浦が持っていてくれた(あ、ちょと探しましたが^^)
北の大地の謎も全てここに解きほぐされたようです。

ずっとずっと幸せに暮らせると思います。

拓海と麗、逆境にも負けないで懸命に生きてきた。
愛する人からの褒美ですね、これは。

5作品、遅くなりましたが読んで下さり感謝です。
コメントも嬉しいです、ありがとうございました。

まだまだこれからも書いて行きます!(#^.^#)

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kikyou  2010, 12. 27 [Mon] 18:01

Re: ここに繋がるのかぁ・・・

鍵コメさま~

そうです、ここに繋がります(笑)
ロマンチストkikyou全開?(爆)

早い時期に仕込んでいたのに、今頃やっと形になりました。
これで麗にも本当の幸せが訪れたような気がします。

読んで下さり、コメントもありがとうございました!^^

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kikyou  2010, 12. 27 [Mon] 18:12

鍵コメ 8さま

こんばんは。

そうだったんですよ!(笑)

やっと繋げる事が出来ました。
随分と間があいてしまってたのですが、何とか^^;

スワロフスキーうちにもまだ沢山あります。
綺麗ですよねぇ。
スワロで作られた雪の結晶、きっと凄く綺麗だと思います。
麗良かったね、って感じです。

これからも杉浦と麗の素敵なカップルを応援して下さいネ、
コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 12. 27 [Mon] 18:21

梨沙さま

こんばんは。

ラブラブの方はリクエストに答えられたかと思いますが
エロエロの方は今回はあまり・・・(笑)

麗の母を介して出会うべくして出会った二人だと・・
そして母の太鼓判付きなのでは?とも思います。

杉浦と一緒ならば幸せになれると思っています。

読んで下さり本当にありがとうございました。

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kikyou  2010, 12. 27 [Mon] 18:26

かやさま

こんばんは。

今回は私の願いを快く聞いて下さって本当にありがとうございました。
おかげさまで私も楽しんで書く事が出来ました。

私との出逢いが奇跡!(笑)
でも私も、今年ブログデビューして色々な方とお友達になり
そしてリアルでも多くの方と会う事が出来ました。
人と人との縁と結びつき・・
楽しいですネ。

まして同じ趣味の仲間と語り合う時間は、いくらあったも足りないくらいです。
こちらこそ、素敵な出逢いに感謝です。

これからもまた宜しくお願い致しますネ。

記事リンク、おお!ありがとうございます。

流石にPCの前に座っている時間が多くて、家の中が・・・・
頑張ります、もう年末ですもんね。

でもまだ年内更新するつもりです~

コメントありがとうございました。\(^o^)/

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此花咲耶  2010, 12. 28 [Tue] 17:40

kikyouさま

個人的に1番泣いてしまったのが、この作品でした。
悲しいことも多かったし、麗くんには、いまだに日常でも癒えていない傷の深さを感じますけど、本人の知らない所で、運命の出会いが有ったんですね。
生まれたときに既に神さまに祝福されていた過去。今と繋がった時、まるですぐそばで現場に立ち会ったかのような不思議な気がしました。
美しいお話は、清らかな聖夜にこそ相応しいです。あまねく地上の人々に愛が届きますように。
此花もこんな清浄なお話を書けるようにがんばろうと思います(`・ω・´) ピンクのぞうさん封印っ!←それしかないのに封印した後どうするんだ・・・?
素敵なお話をありがとうございました。この出会いに感謝します。

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kikyou  2010, 12. 29 [Wed] 13:20

此花さま 

こんにちは。

書いてて一番難しかったのがこれなんです。
気持ちと腕がついて行かなくて、表現の難しさ・・・
上手く伝わるだろうか?と不安でしたが、
此花さんのコメントで少し安心しました(#^.^#)

全部読んで下さって、ありがとうございます。
読まれて初めて作品が生きてくると思っています。
1人でも多くの方が楽しみ、そして時には涙するような・・・
来年もそんな感じで書ければいいなぁって思っています。

今年はお互いに良い年でしたネ。
多くの方とお知り合いになれて、本当に楽しかったです。

また改めてご挨拶に伺いますが、ここでも一言!

沢山読んで下さり、嬉しいお言葉本当にありがとうございました!

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紫猫  2010, 12. 30 [Thu] 22:19

おおっ繋がった!!∑( ̄Д ̄)
このお話は結構こんがらがっていて私のくそみたいな小さな脳みそでは分からない事もあったのですが、今回のお話で繋がりました!考えたりする事が好きな自分はとても面白かったですよ!
奇跡のようですよね、私にはお話がキラキラ輝いてるように見えます!

そしてクリスマスお疲れ様でした!(*ΦωΦ)ノ
ゆっくり休憩をとってくださいねw
素敵なお話をたくさん、ありがとうございました!!(´∀`)

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kikyou  2010, 12. 31 [Fri] 23:06

紫猫 さま

こんばんは。

繋がりましたか!良かった^^

実は私もこの話は一度書いて、このeternityに移すまで一度も読み返した事が無かったんです。
自分でもちょっと触れられたくない過去のような・・
自分でもやっぱ難しかったんだと思います。

そしてあまりにも拙い文章で恥ずかしいという二重苦(笑)

でも、少しづつ書いている時に種を蒔いていたので、刈り取らなければ・・・

今回の企画を書くのに一番難しかったのも、この話です^^;
でも繋がったと言ってもらえて、本当に安心し、嬉しかったです。

読んで下さってありがとうございました。

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