2ntブログ

スポンサーサイト

 --, -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

愛しい人へ 32(終)

 20, 2010 15:24
ぐっすりと寝た気がした・・・・時間を確認するとまだ朝の5時・・・
覚醒しきれない頭で、周りを見回すと、目の前に厚い胸板の杉浦が寝ていた。
「あっ・・」昨夜の情事を思い出し、一人顔を赤らめてしまう。

ベッドから抜け出そうとしたが、体を動かすと腰が気だるく体に違和感があった。
麗の気配で目が覚めてしまったのか杉浦が
「麗・・まだ寝てろ」と麗の腕を引き寄せた。
「すみません・・・起こしてしまいましたか?」

「体は大丈夫か?」杉浦の問いかけに頬を染めながら
「・・はい・・でも・・」
「でも?」
「何か、まだ・・・何か挟まっているような感じがして・・・」

麗のその言葉に杉浦の雄が刺激を受けてピクと震える。
「ちっ大人しく寝かせてやろうと思ったのに、煽るな」
「えっ?どうし・・んん・・・」
言葉を言い終わらないうちに杉浦の唇で塞がれた。

長い時間を掛けて口腔を蹂躙される。
「ふぁぁ・・」やっと呼吸が出来たと思ったのに・・・
「何が挟まってるって?」と揶揄する言葉にたじろぐ。
「あっ」麗は無意識に変な事を言った事に気づいて
「いえ・・何でもないです・・・」と訂正するが杉浦には通用するはずも無かった。

「ほら?何がだ?言ってみろ」絶対麗に言わせたい。
「だ・だから・・・あれが・・・ここに・・・」
麗も自分が何を言っているのか自分で理解出来ていない。
杉浦に顔を覗き込まれ、真っ赤になりながら顔を逸らした。

「ほら、早く」と杉浦に次の言葉を急かされる・・・
杉浦が引く筈が無いのは麗にも判ったから、小さな声で
「す・・杉浦さんの・・あ・あれが・・僕のなか・・に・・あぁ・・」
それ以上は恥ずかしくてどうしても言えない。
麗はベッドに顔を擦り付けて見られないように隠した。

そんな麗を杉浦があっという間に裸に剥いていく。
その時初めて自分が何時の間にかパジャマを着せられていた事に麗は気づいた。
「やっだめっ・・」
「ダメか?俺はお前が欲しい」
そうはっきり言葉に出されたら麗はこれ以上駄目とは言えなくなる。
杉浦の「欲しい」と言う言葉に麗の体も疼いてくる。

「・・貴方は意地悪だ・・・」麗が拗ねるように呟いた。
「そうだ、俺は意地悪だ」
杉浦はそう言いながら、麗の胸の尖りを摘んでいる。
「あっ・・・」たったそれだけの事なのに、麗の背中を戦慄が走る。

「あっ・・もう・・貴方の好きにして下さい・・」


2時間の時が流れた。
「言うんじゃなかった・・・好きにして、なんて・・・」
麗が疲れた声で愚痴る。
だが「風呂入るぞ」と人の話を聞かない何時もの杉浦が居た。

杉浦はひとり風呂の準備をして、麗を呼びに来た。
「ほら、頭洗ってやるから、一緒に入るぞ」
「後で入るからいいです・・・」
本当は歩けないのだけど、それを言うのは恥ずかしい。

「何言ってるんだ?」杉浦はいきなり麗を横抱きに抱え浴室へと連れて行った。
「あっ・・・」
今まで何度も杉浦とは一緒に風呂に入った事はあったが
体を繋いでから入るのは余計恥ずかしい気分だった。

明るい浴室で麗は自分の胸の上辺りに赤い痣が付いているのに気づいた。
もう伯母に付けられた痣はとっくに消えていた筈なのに・・・
そんな麗に気づき、その痣に指を這わせ
「これは夕べ俺が付けた」静かに杉浦が言った。

麗はその痣を指で触れ、愛しそうに撫でている。
同じ痣でも、これは幸せの証だ・・・
しんみりしている麗に向かい
「悪い、嫌だったか?」杉浦は自分の軽率な行動を悔いるように尋ねた。

顔を上げた麗は潤んだ瞳を杉浦に向け首を横に振る。
「・・嬉しい・・・体中に付けてもいいくらい嬉しい」
「そっか」そんな麗を優しい目で見詰め頬を撫でる。

「ヤバイ!さ、頭洗うからこっち来い」
これ以上麗に触れていたら、自分は獣になりそうな気がした。
自分の欲情ばかりを麗にぶつけられない。
受け入れる側の負担も考えなくては・・・と自分を叱咤する。


シャンプーが終わり、一緒に浴槽に浸かりながら
「麗、今日は動けないだろ?1日ゆっくりしておけ、明日からバイト復帰だ」
「・・はい」
「10月の宅建の試験に合格しろ、そしたら正社員にする」
「!」
「それと来年大学受験しろ」
「えっ!大学?」
「そうだ、優秀だっただろ?勿体無いから大学行っておけ」

「・・・大学・・」自分では諦めていた。
「何か勉強したいのは無いのか?」
麗は杉浦不動産でバイトするようになってから、建築の方にも興味を持っていた。
言おうか迷っている麗に「ん?」と催促するように杉浦は見詰める。
「け・・建築に興味が・・」

その言葉を聞いた杉浦は嬉しそうに
「そうか!良し、建築学部のある所を狙おう」
一人で勝手に盛り上がる杉浦に
「でも・・・」と言いかけるが麗の言葉など聞いていないふうで
「うん、一級建築士を目指せ!」と杉浦は一人盛り上がっている。

杉浦は自分の仕事に関係ある事に興味を持った麗に大いに満足して
「明日からバイトはもう行かなくていい」などと言う。
「え?」
「宅建と大学受験、忙しいぞ」
「でも・・僕は」言いかけた麗の唇を塞ぐ。

「麗、今年と大学の4年は俺に甘えろ、人生は長いんだ
それが終わってから、少しづつ俺を助けてくれ、いいな?」
その条件は麗にだけ都合が良いように思えて
「でも・・・それじゃ・・」

「麗、お前俺と別れる気か?」
突然とんでもない事を言われビックリして見上げると
「そんな気ないだろ?勿論俺も無い!」
杉浦は何を言おうとしているのか?

「先を考えろ、まだまだ長いんだ
たった5年だ、勉強しながら好きな事してくれ、
青春が無かったお前に夢も見させてやりたい
若さを謳歌して欲しいんだ・・・・あっ浮気は絶対駄目だからな」
と念を押され麗の口元が緩む

「浮気なんて・・・・僕は貴方だけだ」濡れた瞳に笑みを湛えながら答えると
「俺もだ」杉浦の目も笑っている。

「これからの人生、泣くも笑うもお前と一緒だからな、覚悟しておけよ」
「はい・・・何かプロポーズみたい」揶揄するように笑う麗に
「馬鹿、プロポーズだよ」と杉浦が甘く睨む。

麗の目から涙が溢れる・・・
「あ、風呂場でプロポーズなんてムード無いな、今の取消し」
突然麗が杉浦の首に抱きつ付いて来た。
「やだ、取消ししないで、此処でいい、此処がいい・・・」

杉浦は麗を剥がし、その唇に深く口付けを落とす。
「麗、お前は俺に愛される為に生まれてきたんだ・・・」
何故か杉浦はそう感じた。
麗は黙ってコクコクと頷きながら杉浦の手を取り指を絡める。

「愛してる」お互いの口から同時に出る言葉に失笑しながら深く唇を重ねる二人だった。


そして麗がこの世に生まれて来た時に、
一番最初に抱いたのは杉浦だった事をこの時の二人はまだ知らなかった・・・




にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村




「愛しい人へ」完結です。
「天使の箱庭」からの転載ですが、最後までお読み頂きありがとうございました。
クリスマス企画としての番外を予定しております^^

コメントのお返事遅くなるかもしれませんが、最終話ですので、今回は開けてあります。

関連記事

COMMENT - 5

ちこ  2010, 12. 20 [Mon] 17:01

定められた運命に沿って出会うべくして出会い結ばれた二人って感じですよね~゜+。(*′∇`)。+゜人が生まれてくるときに神様が一つの魂を二つに分けて地上に送りだすのだと、そして人は魂の半分を探してひとつに戻ろうとしやがて愛する人に巡り合うのだと、ロマンチックですよね~杉浦さんと麗ちゃんは互いの半分に出会えてよかったです(^O^)

Edit | Reply | 

NK  2010, 12. 20 [Mon] 17:51

やっぱり好き

kikyouさんのお話は、どれも最後は温かく優しい気持ちにさせてくれますが、
私はやっぱりこれが一番好きなのです。
何度読んでも冬空の下のキャンドルの灯りの温かさを感じるのです。
寒ーいところでの小さな炎の温かさ。暖炉でホカホカ暖まるのとは違う
切ないような温かさ。うまく言えないのですけど。。。
千尋さんのお話で、後日の姿がちょっとだけ出てくるのですよね。
あれは、この時からどれ位経ったときのことなのでしょう。
クリスマスのお話もとーっても楽しみです。

Edit | Reply | 

-  2010, 12. 20 [Mon] 22:33

管理人のみ閲覧できます

このコメントは管理人のみ閲覧できます

Edit | Reply | 

kikyou  2010, 12. 24 [Fri] 00:01

放置プレイその1 ちこ様

長い間放置してしまい^^;申し訳ありませんでした。
放置プレイとも焦らしプレイともいいますが・・・そろそろ爆発されるのでは?
と心配しております。ごめんなさい。

>人が生まれてくるときに神様が一つの魂を二つに分けて地上に送りだすのだと

凄いロマンチックな言葉ですね( ..)φメモメモ

そしてそのロマンチックを超えるような二人の結びつきがクリスマスに判ります。
楽しみにしてて下さいね~
(まだ書けてないのですが^^パワーで乗り切ります!)

コメントありがとうございました。

Edit | Reply | 

kikyou  2010, 12. 24 [Fri] 00:04

放置プレイその2 NK様

お返事とっても遅くなり申し訳ございません!!

とても嬉しくなる言葉を頂いておきながら・・・放置プレイさせて頂きました。

コメント読むとじーんとします。
この話を一番好きと言って下さるNKさまの気持ちが
伝わってくるんです。

北の大地で起きた奇跡・・・
クリスマス当日になるやもしれませんが・・・
待ってて下さいネ。


遅くなりましたが、コメントありがとうございました。

Edit | Reply | 

WHAT'S NEW?