天使の箱庭＜eternity＞

「僕シャワー浴びてくる」
そう言って涙で汚れた顔を上げた。
「ひとりで大丈夫か？」
「うん、瞬ここにいてね」不安そうになる永遠に「ああ」と頷いた。

永遠がシャワーを浴びに行った隙に、まだ見守っていた岡野に「今日は悪かったな」
と言い、曽根に「先輩ご迷惑おかけしました」と頭を下げた。
「お前大丈夫か？」今後の事も含めて岡野が聞いてきた。
「ああ・・・それと今夜は永遠の部屋に泊まるから」
「判った、突っ走るなよ」と岡野は揶揄するでもなく真剣な顔で言った。

「俺部屋に傷薬持ってるから、待ってろ」曽根がそう言うと部屋を出て行き
暫くすると軟膏を手に戻って来た。
「ありがとうございます」丁寧に受け取って再び頭を下げた。
「俺らだって証言出来るって事を覚えておいてくれよ」そう言うと岡野と曽根が部屋を出ていった。

「曽根先輩、すみません。ありがとうございました」
「俺の部屋で茶でも飲むか？」
何となく曽根も岡野も興奮して簡単には眠れそうになかったのだった。
「はい、お邪魔します」
岡野にとって曽根はとても信頼出来、そして憧れの先輩でもあった。
瞬の暴力沙汰にも神経が興奮しているが、これからの二人を思うと非常識ではあると思ったが違う意味の興奮もあった。


暫くすると、バスタオルを腰に巻いたままで永遠がシャワーを済ませ出てきた。
「随分早いな・・・」やっと余裕の出てきた瞬が声を掛けると
「良かった、いた・・・」やっぱり不安が残っていたのだろう永遠がやっと笑みを浮かべた。
「曽根先輩が薬くれたぞ」チューブの軟膏を見せて永遠に言うと
「うん、ありがとう・・・」少しもぞもぞと体を動かす永遠に
「本当に薬塗っていいのか？」ともう一度念を押して聞いてみた。
永遠は黙ってこくんと頷いた。

「じゃ、ベッドに横になる？」
「うん」永遠はベッドに腰を下ろしてから体を横たえた。
「え・・・っと・・痛い所はどこ？」
「うん・・・ここ」永遠はバスタオルを外して自分からうつ伏せになってお尻に手を伸ばした。

「お尻？」自分が勘違いをしていないか瞬はもう一度確認した。
「うん、自分じゃ上手く塗れないから」
どうして自分にはこんなに無防備なのだろう？
以前からそうだった、瞬の前では平気で着替えもするし、この１年近くで何度も永遠の裸を目にしていた。

「永遠、ひとつ聞いていい？」
「何？」
「俺の前で裸になっても恥ずかしくないのか？」
「え？どうして恥ずかしいの？男同士なんだし・・・・」

それはさっきまで仁科に酷い事をされて泣き叫んでいたとは思えない答えだった。
試しに瞬はクラスメイトの名前を数人あげてみた。
永遠の反応は大きく２つに分かれた。
永遠を邪な目で見ていると思われる奴らに対しては拒絶反応を見せる。
まるで子供や動物のように本能で嗅ぎ分けていた。

「でも瞬が一番いい」
喜んでいいのか悲しむべきなのか瞬にも判らない。
永遠が一番安心している俺が本当は一番そういう目で見ていると知ったらどうなるんだろう？

「ほら塗るから、もう少し腰を上げて」
今はこの位置でいい、もう少し永遠も成長すれば何かが変わるかもしれない・・・
そう思いながら、瞬はチューブから軟膏を搾り出した。

初めて見る永遠の蕾に頭がかあーっと熱くなり眩暈がしそうだった。
傷付いていると思っていたが、そこは切れてもいないし、腫れてもいなかった。
『本当にここに？』こういうもんなのだろうか？
そこは何事も無かったように、小さくそして静かに息づいていた。

指を這わした途端「ひゃっ」という小さな悲鳴が聞こえ慌てた。
「ごめん、痛かった？」
「違う、冷たい・・・」
ほっと安心してゆるゆると軟膏を塗ってやった。
「まだ痛む？中も痛いのか？」
もし本当に挿入されていたら中も痛いかもしれないと、瞬は聞いてみた。
「うん、中も痛い」
「じゃ中も塗る？」
「うん」
ごくりと唾を飲み込む音がしてしまったが、永遠は気付いていないようだった。

瞬はもう一度軟膏を少し取り出し、少し表面を解してから中に指をぷつっと挿入させた。
「う・・」
「だ・大丈夫か？」
「ちょっとビックリしただけ」
瞬は慎重に中に薬を塗りながら関節の辺りまで沈めた。
ゆっくり内壁に塗ってやり指を引き抜いた。
「瞬、ありがとう、痛いの治ったみたい」
「そっそうか、良かったな」
瞬は自分がからかわれているか、それとも試されているのか？そう思ってしまう。

見た限り傷ついている様子も何かを挿入された様子も感じられない。
無理やり挿入されたらもっと酷い有様になってるんじゃないか？
それにそんなに簡単に治るものでも無いだろう？
疑問は沢山あったが、今の永遠にそれを問う事は酷なような気もして止めた。

手を洗い戻って来た時には永遠は既にパジャマに着替えていた。
「一緒に寝よう」永遠は布団を少し捲って瞬を誘った。
性に関しては５歳児並みだ・・・
それしか瞬には考えられなかった。
「瞬・・・明日も一緒に寝てね」
「いいよ・・・あっ！」
考えてみたら・・多分明日から停学だ・・・・
「ごめん永遠、明日から俺少し家に帰るかもしれない」
「どうしてっ？」
しがみつくように瞬の顔をじっと見つめる永遠に何って言っていいか瞬は判らなかった。

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