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愛しい人へ 14

 08, 2010 10:34
麗は午後から自分の身の回りの品を買いに出掛けることにした。
右も左も判らない土地での買い物・・・まして東京での買い物なんて
何処で何を買えばいいのか判らなかった。

出掛けて留守にする旨のメールを送った方がいいだろうと思って杉浦にメールした。
「30分後に1階の入り口に」という短いメールを受け取り
麗は言われるまま30分時間を潰してから部屋を出た。

エレベーターが1階に着きエントランスに出るとそこには一人の若い男性が立っていた。
「君が前原君?」いきなり尋ねられて頷くと
「俺は、杉浦不動産の賃貸部門に居る、粕谷修平(かすや しゅうへい)、
社長から君の買い物に付き合うように頼まれたんだ」と言われ
「・・そんなお仕事中に・・・もしよければ店の場所だけ教えて下されば、僕ひとりで行きますから」
と恐縮して言うと
「ま、俺だって息抜きしたいし・・・折角社長命令で堂々とさぼれるチャンスを不意にしないでくれる?」
とおどけて言われ、それ以上断わる事は出来なかった。

「・・・そうですか・・・申し訳ないですがお願いします」
と頭をさげる少年を修平は見ていた。
『これじゃ社長が俺をお目付け役にするのも判るな・・・』と内心思った。

「で、何を買いに行くの?」
「あ、はい・・下着や靴下、あと普段着るものを2・3枚・・・」
「予算は?」
「えっ?あー・・一万円・・」麗は肌着以外自分で買った事が無かった。
「うーーん、一万円かぁキツイかな?でもユニだったら何とかなるかな?」
一人で解決してしまった修平に任せるしか手段が無かったから
「お願いします」歩き出した背中に慌てて声を掛けた。

足の長い修平の歩幅は広く、仕事人の歩調は早い。
「あの、粕谷さん、お願いがあります。
僕この辺の地理も覚えたいので、もう少しゆっくり歩いて貰えませんか?」
「あ、悪かった、この辺不案内だから頼まれたのに、うっかりしてたよ」
失敗したぁと頭を掻きながら笑う顔に安堵の微笑みを向けると
修平が顔を少し赤らめて、30分程前の事を思い返していた。

いきなり社長の杉浦が1階の賃貸部門に来て皆に聞こえる大きな声で
「この中でこれから体が空いている者居るか?頼みたい事がある」
社長の頼みとならばと人と約束がある者以外は率先して手を挙げる。

修平を含め8人が手を挙げる。
ざっとその8人の顔を見回し、そして更に条件を絞り込む
「この中で彼女が居る奴は?」5人が手を下げ3人が残る。
「格闘技をの経験がある奴は?」結局空手をやっていた修平だけが残った。

ちょっとこっちへと、奥の応接室に連れて行かれて
「うちに今預かっている子が居るから、その子の買い物に付き合ってやってくれ。
昨日北海道から出てきたばかりだからこの辺の地理に疎いから。」
会社の仕事とは関係無い事に少しがっかりするが、ここは営業スマイルで
「かしこまりました!」と返事をする。

「金は持っているはずだが、もし足りなかったら立て替える振りしてくれ」
と5万円預からせられた。
「茶くらい飲めよ」と言われ「はい!」と背筋を伸ばし返事をした。

社長はチラと腕時計を見て「あと5分くらいで降りてくる筈だ、エントランスで待っててくれ」
そう言われたが、相手が男か女かも年齢も聞いてない俺が尋ねると
「18の男だ、男だからな見間違うなよ」と変な念の押され方をした。
社長の含みが判ったのは、前原を見て直ぐだった。

修平は商売柄地理には詳しかったし、自分も会社の上のワンルームを借りている一人だったのでこの辺で買い物もしている。
食品なら此処、ドラッグストアはあそこ、などと案内しながらゆっくり歩く
真剣な目をしていちいち頷く前原が可愛い(勿論人生の先輩として)

ユニ・・に着くと楽しそうに色々見ていた前原が
980円の30%オフに目を光らせる。
2月も後半だ、冬物の大部分は値引きセールになっていた。
カットソーの黒と茶の色違いを持ち見比べていたから
俺は薄いピンクを手にして体に当ててやると、真っ赤な顔して
「ピンクなんて着ないですよ」と口を尖らす。

「いや男だってピンク似合えば着たらいいよ」
修平はこのVネックの薄ピンクのカットソーは絶対似合うと思った。
どうしても買おうとしない前原に内緒で買った。

前原は若い割りには派手な色合いを好まず、地味な色ばかりをチョイスしている。
色白の前原には濃い色も似合うが修平としては明るい色目の服を着て欲しかった。
ここで、チノパンやカットソー、ネルシャツ、肌着などと一通り全部揃えた。

「あと、行きたい所あるかな?」と聞くと
「100円ショップ近くにありませんか?」と遠慮しながらも尋ねるので
「5分位先にあるけど?行きたいの?」
「はい・・」

更に歩いて行った100円ショップで大学ノートや筆記用具を買う前原に
ふと疑問が沸く
昨日こっちに来たと聞いたので、土産とか東京の珍しい物とかの買い物かと思ったが
衣類一式や筆記用具・・・・
「前原君、こっちは旅行?」と聞くと
言いにくそうに「・・いえ・・暫くこっちで生活する予定なんです」と答えた。

「ふーん、大学?」
「いえ・・」困った顔で答えるのでそれ以上は聞かない事にした。
「少し歩いたし、疲れただろう?珈琲でも飲まないか?」
そう誘って近くのカフェに二人並んで入る。

美味い珈琲を飲みながら「予算内で買い物出来て良かったな」と声かけると
「粕谷さんのおかげです、今日は色々ありがとうございました」と言う嬉しそうな顔に見惚れそうになった。
「又いつでも付き合うよ、あっ携帯番号聞いていいかな?」
使い方が良く判らないという前原の携帯を預かり
赤外線通信で情報を交換しあう。
何気なくいじってみると、アドレス帳に1件杉浦の名前が登録されてるだけの携帯だった。

普通18才の携帯の情報なんて凄い量だろうに・・・
又新たな疑問を感じたが、詮索するのも躊躇われた。
目の前の少年は扱い方を間違うと簡単に壊れてしまいそうな硝子のような雰囲気があったからだ。

ゆっくり珈琲を飲みながら、近所の情報を与え、楽しく語らってカフェを後にした。
修平は預かった金には手を付けないで、自分の財布から支払いを済ませ
「珈琲くらい遠慮しないでくれよぉ、俺も楽しかったし、これでも社会人だから」
ついでに、さっき買ったピンクのカットソーを押し付ける
「?」びっくりしている前原に「絶対似合うと思うから着てくれないか?」
「返されても俺も困る」と言われ、戸惑いながら麗は受け取った。




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COMMENT - 4

アド  2010, 12. 08 [Wed] 11:10

あああ~~、オモシロイ~~。

麗くんが今後どうなって行くかも気になるけれど、取り巻く環境に順応しようとする現在の様子が、とってもいいです大好きです~~。
彼女持ちで腕っ節の強い社員を選ぶ杉浦さんの警戒心にクスッ!

コメント一緒になってしまいますが「永遠の誓い」汗をかいたからってスルスル全裸になる永遠くんと、記憶を消しさるほどの過去の何かのギャップ!!
kikyouさんのお話作りの巧みさに今朝もビックリ(◎ω◎)

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-  2010, 12. 08 [Wed] 23:45

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kikyou  2010, 12. 10 [Fri] 14:36

アドさま

こんにちは。

永遠の誓いは、ちょっと大変な事になってしまってます^^;
こんなはずじゃなかったと思いながらも、一度そっちの方に流れた話は
軌道修正できません(笑)

麗の話も早々に移しておきたいのですが、結構な手直しがあって。
今読み返すと本当に恥ずかしくなる拙さです・・・
それでも半年後に読み返したら同じ感想なんでしょうね・・・
最近難しさを感じています(^・^)

アドさんのボルゾイも凄いですねぇ。
応援しています!!

コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 12. 10 [Fri] 14:54

鍵コメ Cさま

こんにちは!

えーーっ!先を読んでしまった?
驚きです・・・っていうかバレバレかぁ?(笑)

コメントありがとうございました。
(遅くなってすみません^^;)

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