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天使が啼いた夜 堂本紫苑~28~

 04, 2010 14:42
早起きの紫苑も流石にいつもの時間には目が覚めなかった。
アルコールの入った体に紫龍からの刺激は強すぎた。
自分がどれだけ喘いで、どれだけ紫龍を求めたのか・・・
覚えている記憶だけでも顔から火が出そうな気分だった。
きっと覚えてない事も沢山ありそうで紫龍と顔を合わせるのも本当は避けたいぐらいだ。

そっとベッドから抜け出そうとする紫苑の腕を紫龍がぎゅっと掴んだ。
「あ、お・おはようございます・・・」
「おはよう、体は大丈夫か?」
繋がる事に慣れてるのに、大丈夫かと聞かれる程自分は乱れてしまったのだろうか?
その先の言葉は言わないで欲しいと思っていた紫苑に
「昨夜は・・」と言いかけて紫龍が途中で止めた。
そうなると気になって仕方がない紫苑だ。

「昨夜は・・?」
「いや、素敵だったよ」からかうような目が凄く気になるが
「・・・遅い朝食ですけど、和食と洋食のどちらがいいですか?」
さり気なく紫苑が話題を変えた。
「簡単でいいよ、あ・・冷たい素麺が食べたいな」
「あぁいいですね、僕も食べたいです」
にっこり微笑んでベッドを降りる紫苑を名残惜しそうな顔で紫龍は見送った。

5分ほどベッドの中で横になっていたが、
眠れそうにないので紫龍も起きてキッチンに向かった。
「俺も何か手伝おうか?」
「いいです、簡単ですから」と紫苑に断られテーブルで新聞を広げた。
「穏やかだなあぁ・・・」紫龍はこの平和な時間に感謝した。

紫龍が起きてきた事で紫苑は予定を変えて、先に珈琲を淹れる事にした。
紫龍の前に座り、かりかりと豆を挽きながら紫苑もこの穏やかな日に感謝した。
「いい香りだ・・・ところで紫苑は泳げるのか?」
「プールでなら・・」
「海に行きたいって本気なのか?日焼けするぞ?」
「大丈夫です、男ですから多少の日焼けは」

いやどう見ても赤くなって終わりのタイプの肌だ・・・
下手すれば火傷になりかねない。
「月曜日に浅田にスケジュールの確認をしてみるよ」
「はい、でも無理をして日程を詰めないで下さいね」
紫苑も大まかなスケジュールは把握していたので、
紫龍が長期の休みは取れそうにないのは予想がついていた。
紫龍が無理を言うと浅田が困るのは必然だった。
「あまり浅田さんに無理を言わないで下さいね」
そう念を押しながら、淹れたての珈琲を紫龍の前に置いた。

「判ってる・・・ん、豆代えた?」
「気付きましたか?一種類豆を少し加えたんです」
紫龍の問いに紫苑が嬉しそうに答えた。
紫苑の小さな努力を紫龍が気付いたくれた事が嬉しかった。
その一言が何においてもあるから、紫苑は頑張れるのだ。

「美味いな」
紫龍の言葉に紫苑は心の中で呟いた「紫龍好き」と。

テーブルの上の紫龍の携帯が鳴ったのはその時だった。
「ん、お袋からだ・・・」紫龍は着信を確認すると電話に出た。
「珍しいですね、こんな時間に」
『今紫苑ちゃん近くに居る?いたら場所を変えて』
そう言われたので、さりげなく紫龍は珈琲カップを持ってキッチンからリビングに移動した。

「どうかしましたか?」
『紫龍先日の見合いは断ったんじゃなかったの?』
母の言葉にちゃんと断ったと答えたが
先方が是非もう一度、今度はもう少しラフな雰囲気でお逢いしたいと言って来たらしい
と聞かされた。
「参ったなあ・・・」
この前はバタバタしてしまってゆっくり話も出来なかったのは確かだったが、
だからと言ってもう一度会う気は紫龍にはなかった。

『最初っからお断りすれば良かったわねぇ・・紫苑ちゃんに申し訳ないわ』
母の困った様子に紫龍も溜息を吐いた。
『いっそ紫苑ちゃんに着物でも着せて紹介する?恋人だって』
突飛な母親の提案に、そう言ってしまった母と紫龍は一緒に息を飲んだ
「似合うかも」『素敵・・・』

『今日午後から予定ある?もし時間があるなら予行練習してみない?』
母親の意見に紫龍も苦笑しながら、ちょっと自分も紫苑の着物姿を見てみたい気がしてきた。
「判った、連れて行くよ、でも無理強いはしないでくれよ」
『無理強い?その言葉をそっくり貴方に返すわ』そう笑いながら母は電話を切った。

縁談を断る話から少し反れているような気がするが、紫龍の口元は緩みっぱなしだ。
その顔でキッチンに行ってしまったらしい。
「どうかしたの?」紫苑が不思議そうな顔で聞いてきた。
「いや・・何でも・・今日午後から実家行こうと思うがいいか?」
「ママさん具合でも悪いんですか?」
電話を出た最初の紫龍の反応が気になっていたのだろう、紫苑が心配そうな顔で尋ねて来たが
「いや、すこぶる元気だ、紫苑に会いたいそうだ」
「本当、良かった。行きたいです」

そして手早く素麺の仕度をしながら手土産は何にしようと
一人平和な事を考えている頃に紫龍の実家では、
母親がお手伝いのタキと一緒に若い頃の着物を引っ張り出していた。

「紫苑さまだったら、こっちに色の方がお似合いじゃないですか?」
「あぁ素敵ね、でもこっちの絽の着物も捨てがたいわぁ」
娘のいない二人の中年の婦人たちは、もう玩具箱をひっくり返したような状態の部屋で嬉々として着物や小物選びに夢中になっていた。




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