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天使が啼いた夜 堂本紫苑~25~

 01, 2010 00:02
コンコンとドアをノックする音が聞こえた。
浅田が立ち上がりドアを開け中に招き入れた。
「失礼致します、お呼びでしょうか?」
颯爽と入って来た沖田部長代理が訝しげな顔で堂本社長に聞いた。
同期といえど、使われる側の立場は心得ている。

「ああ、君の所は今日が新人の歓迎会だと言ったな?」
『やはりその事か・・・』内心笑いたいのを堪えながら真面目な顔で
「はいそうです、社長もご出席下さるのですか?」
「いいのかっ!」沖田の社交辞令に思わず飛びついた紫龍に横に居た浅田が冷たく放った。
「無理です、予定は詰まっております」
至極冷静な態度で紫龍に待ったを掛ける。

「じょ・・冗談だよ、俺だって忙しい身だ・・」
実際ひとつの課の歓迎会だけ参加するというのは平等では無い。
「そうですか、非常に残念ですね」沖田は笑いを噛み殺してそう言った。

「ところで、沖田・・・これは個人的に頼むんだが」
「何でしょう?」
「あいつは酒にめっぽう弱い、2杯で酔っ払う」
「それは可愛いですね、3杯飲んだらどうなるんでしょう?」
「さ・3杯・・・・それは俺も知らん」
『まさか・・キスしまくるって事は無いだろうな?・・・もしかしてそれ以上?』
急に不安になる紫龍に沖田が冷静な声で
「まぁあまり飲まないように気を配っておきましょう」と言ってくれた。

「頼む・・・用はそれだけだ」
「では失礼します」そう言って頭を下げもう一度紫龍を見た時の目が楽しそうだったのが
紫龍は今ひとつ気に入らなかったが黙って沖田を帰した。

「全く・・・お前は社長としての威厳も何もあったもんじゃない」
沖田が居なくなった部屋で浅田が小言を言う。
「ふん、お前や沖田に何と思われようが俺は構わないよ、紫苑が無事帰ってくれば」
「はぁっ・・・たかが飲み会で大袈裟な事を・・・」
それだけ言うと浅田は呆れたようにまた机に向かって仕事を始めた。


そしてその日の夕方6時、西新宿にある某デパートの屋上のビアガーデンで
福利厚生課の新人歓迎会が執り行われた。
総勢12名の小規模な歓迎会だったが、沖田が部長代理と課長を兼務している事で
上司は沖田一人というアットホームな飲み会だった。

「わあーっ、デパートの屋上にこんなお店があるんですね?」
興奮気味の紫苑に沖田が「堂本君はこういう所は初めてですか?」と聞くと
「はい!飲み会自体も初めてです!」
本当に嬉しそうな顔で答える紫苑に苦笑してしまう。
「でも、大学ではコンパとかあったでしょう?」
「僕は祖母の手伝いとバイトで忙しかったので・・・」

一体どんな学生時代を過ごしたのだろう?と沖田は思った。
コンパにも出た事が無いという事に驚きもした。
「堂本君のお祖母さまはどういう方だったのですか?」
「とても素敵な方でした、家で習字や、行儀作法などを教えていました」
「そうですか、君の立ち振る舞いの美しさはその辺からきているのでしょうかね?」
「ありがとうございます、そう言って頂けると亡くなった祖母も喜んでくれると思います」

そうこうしているうちに、ビールのジョッキが各自に配られた。
「部長代理、乾杯の音頭をお願いします」
女性社員に言われて、沖田が簡単な挨拶をして「乾杯!」とジョッキを上げた。
「かんぱーい!」それぞれ楽しそうにジョッキに口を付けた。
「美味しい!」「美味い!」皆仕事の開放感と冷えたビールにテンションも上がっていた。

「いやー今年のナンバーワンがうちの課に入ってくれたなんて、本当に嬉しいよ」
そう言ったのは40代後半の男性社員だったが、皆同意見だと言うように頷いている。
「そんな・・・これからも宜しくお願い致します」
紫苑も開放感と初めてのビアガーデンで少々興奮気味に答えた。
「さあ、今夜は飲み放題だから、好きなだけ飲んでくれよ」
沖田の声に「はーい」と揃った声が上がった。

紫苑もウキウキする気持ちで飲みならないジョッキのビールを口にした。
そんな紫苑の横に居る沖田が「あまり飲みすぎないように、2杯くらいで止めておきなさいよ」
そう声を掛けた。
「はい・・・」
だが沖田は紫苑の基準の2杯がビールジョッキではなくワイングラスなどの小さいサイズだとは思ってはいなかったのだ。

紫苑はまるで水のようにジョッキを飲み干す女性社員を見て驚いている。
「凄いですね・・・みなさん・・お酒強いんですね」
「なーに言ってるの、まだまだ序の口よ、ほら堂本君も飲んで」
などと言われ、その度にビールに口を付けた。

飲み放題のコースにしているこのグループの担当なのだろうか、
紫苑は「お代わり」の声にジョッキを運んでくるボーイから目が離せなかった。
「彼みたいなタイプが好みなんですか?」
小声で沖田が紫苑に話しかけた。
「い・いえ・・・・」紫苑は恥ずかしくて本音を言うのを止めた。
そんな紫苑に「随分と熱い視線を送ってますね・・・危ないですよ」
「え・・っ?そんな」
何が危ないのか紫苑には理解出来なかったが、
頑張って目の前にあるジョッキを空にする事だけを考えていた。

他の人が3回くらいお代わりした頃にやっと紫苑のジョッキが空になった。
見よう見真似で「お代わり・・下さい」と手を上げた。
ジョッキのビール1杯飲み干す頃には紫苑の頬は色よく染まっていた。
さっきのボーイが他の注文分と一緒にジョッキを大量に持ち紫苑のテーブルにやって来た。

『凄い・・・』
ボーイが近づくのをドキドキしながら待った。
すうっとボーイが近づきスムーズにジョッキを置き空いた物を下げて行った。
『やっぱり凄い・・』
紫苑の顔は子供のように嬉々とし、そして又ビールに口を付けていった。

「大丈夫ですか?顔赤いですよ」
「あ・・大丈夫です」
「楽しんでいますか?」
他の社員達は新人の歓迎会だということにかこつけて思い思い飲んでいる。
「沖田部長代理・・・」
紫苑は沖田の問いかけには返事をせずに名前を呼んだ。
「あのボーイさんって凄いですね、あんなに沢山のジョッキを一度に運んでる・・」
「え・・っ?君が興味を持ったのはそこでしたか・・」

こういう場所が初めての紫苑にはそういう事さえも新鮮で感動的だったのだ。
「ええ、凄いですね・・」沖田のその言葉はボーイと紫苑ふたりに向けられた言葉だった。
「ビールって美味しいですね」
「て、そんなに飲んで大丈夫ですか?」
流石の沖田も紫苑の2杯目のジョッキが半分ほど減っていて慌てた。

「大丈夫ですよぉ・・・」
紫苑はそう言った途端に体を沖田に預けるようにもたれて来た。
「堂本君?」
「・・・部長・・眠いです・・・」
その言葉を最後に紫苑は瞳を閉じて、完全に体を沖田に預けてしまったのだった。





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COMMENT - 10

-  2010, 12. 01 [Wed] 00:28

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jun  2010, 12. 01 [Wed] 05:09

お早うございます。
紫苑の歓迎会始まりましたね。
紫苑がボーイを気にしてる、
エッ、紫苑浮気なの?
と思ったら、多くのジョッキを運ぶことにでした。
当然ですよね。紫苑が紫龍以外に興味を持つことなんてありえないです。
でもやっぱり飲み過ぎだー。
沖田さん、どうしますか?

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-  2010, 12. 01 [Wed] 07:11

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tukiyo  2010, 12. 01 [Wed] 09:00

ええ~~っ!紫苑ちゃん、ジョッキで~?と思ったら
やっぱり・・・しかし・・・ぶふふ~^m^
酔っ払い紫苑ちゃんがどんな可愛い姿を見せてくれるのか
楽しみですーーーーたまらん。
そして沖田の社交辞令に飛びつく紫龍~~www
可愛いでないですかぁ。
浅田とのコンビネーションもいいですね~。
紫苑ちゃんがジョッキを沢山持てる男に憧れていると知れば、
紫龍は家でジョッキ運びを練習しそう~ww

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kikyou  2010, 12. 01 [Wed] 12:22

鍵コメ Yさま

こんにちは。

そんなにお酒弱いんですか?
とても意外です・・・とても強そうなんですが^^;

連載が終わったキャラというか・・
本家で通常と番外を含めて116話書いていますからね。
ネタが尽きたというか・・・(笑)

紫苑とお風呂^^
では3人でいかがですか?(*^_^*)

コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 12. 01 [Wed] 12:24

junさま

こんにちは。

世間知らずの紫苑には珍しいことばかりです^^
ビアガーデンもボーイも。
これからももっと知らない事が出てくるでしょうね

そうおしゃる通り飲みすぎです(笑)
沖田はどうするのか・・・
まだちょっと未定です"^_^"

コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 12. 01 [Wed] 12:27

鍵コメ 8さま

こんにちは。
早いですね^^

寝てしまいました^^:

沖田はどうしますかね?(笑)

1・連れて帰って食ってしまう。
2・紫龍を呼んで連れて帰らせる。
3・ボーイを呼んで介護を頼む。
4・その他

4って何だい?(笑)

コメントありがとうございました\(~o~)/

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kikyou  2010, 12. 01 [Wed] 12:31

tukiyoさま

こんにちはー。

酔っ払い紫苑再びです。
でも流石に今回は懲りるでしょうね。

その前に沖田です・・・
どうしましょう?(笑)

紫龍もきっと、仕事どころでは無いと思いますが
しっかり浅田に見張られていますからねぇ、身動きできないはずです。
ここはやはり沖田に頼るしか無いんでしょうね?

単に、ボーイさんの技術に見惚れていただけですが
あのボーイさんが攻めでないことを祈ります(*^_^*)

コメントありがとうございました。

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かや  2010, 12. 01 [Wed] 12:33

社交辞令のお誘いに飛びつく紫龍さんにウケました!
紫苑ちゃんが絡むと~(笑)
沖田さんに良いように遊ばれてますね。
浅田さんも大変だわ。

やっぱり、紫苑ちゃんたら潰れちゃった。
ビールって、度数低いのに~。
アルコール回って舌が鈍くなると、ウーロン茶と間違えません?(私だけ?)
寝ちゃった紫苑ちゃん、どうしましょう?

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kikyou  2010, 12. 01 [Wed] 12:42

かやさま

こんにちは。

紫苑の事になると、赤子の手を捻るよりも簡単な紫龍です^^
毎回こんな紫龍を書くと、本当は格好いいんですと言い訳してる自分が・・・
もしかして結構格好悪いのでは?と自分までも思ってしまいそうです。

紫苑潰れましたねぇ。
ウーロン茶と間違える?
うううう~ん?そこまで飲まないから判らないよ~(笑)

私もコップ半分ぐらいなら「美味しい」と感じて飲めるのですが。

眠った紫苑をどうしましょう?
ご希望があればどうぞ^^


コメントありがとうございました。

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