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天使が啼いた夜 堂本紫苑~20~

 26, 2010 01:15
『離縁?・・・・・』
会社に戻りながら深田は紫苑の言葉の意味を考えていた。
それに電車で社長が紫苑を帰すか、とか態度が少し変だった・・・などと考えながら歩いた。
「やっぱりおかしい」
そう口にすると、自分の降りる15階じゃなく、20階を目指した。
紫苑の部屋があったから何度か来ているが、やはり20階の社長を訪ねるのは気がひけた。

エレベーターの扉が開くと、目の前には目指す相手が今乗り込もうとして立っていた。
「おっ!深田どうした?紫苑なら先に帰したが?」
紫苑がこっちに居ると思って深田が訪ねて来たのだろうと紫龍は思った。
「いえ、社長に会いに来ました、今宜しいですか?」
「中ででいいか?」
余程急いでいるのだろう深田の肩を押すように乗り込んで来た。

B1を押す紫龍の背中を見ながら深田の言った言葉に紫龍は驚き振り向いた。
「それに俺さっき紫苑と会いましたから、駅に向かってたみたいですけど」
「何だって?駅だと?」
その怒気を含んだ反応に深田も『やっぱりな・・』と項垂れた。

「社長は接待だから先に帰るって言ってましたが?」
「あれほど車で帰るように言ったのに」
そう紫龍は言うと、携帯を取り出した。
紫苑の携帯へ掛けているようだが、電話は通じないみたいだった。
「くそっ」小さく呻いて携帯を閉じた頃に地下駐車場に着いた。

エレベーターの扉が開くと、ずっと紫苑を待っていたであろう運転手が社長の姿に驚く。
「あの・・・紫苑様はまだおいでになりませんが?」
少し不安そうな顔の運転手に紫龍は少し眉を顰めてから
「ごくろう、今日はもう帰っていいから」と言うと運転手はあまり理解出来ない顔で、
それでも紫龍に挨拶をして非常階段を上って行った。

そしてもう一度携帯を取り出すと今度は浅田に電話を掛けた。
「浅田、夕方紫苑が20階に来たか聞いてくれ」と
暫くすると、浅田が誰かに確認したのだろう「見えたそうです」
その言葉を聞いてもしかして聞かれた?と思ったが否定もした・・・

「何かあったんですか?」深田の言葉に見合いをするとも言えなかった。
「あいつ、ちょっと変だったもので・・・」
深田も言葉を濁している。
「何が変だったんだ?」
「いや・・・離縁されるかも・・・って」
『聞かれた・・・』
「深田、あとどのくらいで帰れるんだ?」紫龍の問いに
「早くて1時間です」ときっぱり答える。

「そうか・・・悪いが帰ったら部屋を覗いてくれないか?」
「いいですけど、何があったか教えてもらえないんですか?」
「・・・見合いだ、断れない筋からの話だ」言い捨てる紫龍をじっと見て
「紫苑に黙っていたのにバレたんですね?」断言された。
「流石回転が早いな・・・」肩を落としながら深田を褒める。

それにしても紫苑のピンチにはいつも深田が関わってくる。
これは縁なのか偶然なのか・・・紫龍の気持ちが余計に重くなった。
「大丈夫ですよ、まだまだ明るいし、紫苑だってもう大人ですから」
深田が慰めるが、紫龍の顔は晴れはしない。

「じゃ俺、さっさと仕事片付けますから、後で電話・・・っと見合いじゃ無理ですね」
深田の最後の一言が胸にぐさっとくるが文句を言っている暇は紫龍にも無かった。
さっさと見合いを済ませ、自分も帰らなくてはならない。
「悪いな、俺も出来るだけ早く帰るから」
そう言うと自分で運転する為に愛車のジャガーに乗り込んだ。
深田もエレベーターに向かって歩き出す。


その頃無事電車に乗れた紫苑は、まだ空いている車内を見回していた。
『空いてる・・・これなら毎日帰りは電車でもいいかも?』
などとのんびりした事を考えていた。

しかし、紫苑は自宅の最寄り駅で降りる事をしなかった。
その駅を通り越して、降り立ったのは次の駅だった。
『歩きだったらこの駅の方が近いし・・・』
普段は自転車で買い物に来るスーパーだったが、流石に今日は一度帰宅してから
再び外に出る元気は無かった。

スーパーの買い物籠を片手にぶらぶらと店内を見て回った。
いつもの鮮魚コーナーに辿り着く前に後ろから肩をポンと叩かれる。
振り向いた紫苑の顔がぱぁっと明るくなる。
「千秋さん!」
ここで働いているのは知っているが、そう頻繁に出会える訳ではなかった。

「よっ、元気?今日も粋のいいのが入ってるよ」笑顔で千秋が言うが
「今日は生ものは・・・僕ひとりですから?」
「おや、堂本は遅いの?」
「はい・・・せ・接待らしいです」
紫苑は『お見合い』という言葉を口に出せなかった。

「ふ・・ん?何か元気ないと思ったら」千秋が揶揄するように言った後に
「じゃたまには俺とデートする?」と驚く事を提案してきた。
「えっ?千秋さんと?あの・・山口さんは?」
「ああアイツとは毎日会っている訳じゃないから。」
千秋のそんな言葉に紫苑が一瞬不安そうな顔をした。
そんな紫苑に微笑みながら「大丈夫だよ、ちゃんと上手く行ってるから」
そう千秋が少し照れたような顔で言うと

「良かった」小さな声で紫苑が呟くのが聞こえた。
「もう俺はアイツから離れないよ・・」
少し遠くを見るような顔になったが、直ぐにその顔は現実に戻ってきた。
「良かったら新鮮な刺身を買って俺の部屋で飲まない?」
「えっいいんですか?じゃ僕買いますから見繕って下さい」
そう言う紫苑に「何言ってるんだか?俺なんか君にカジキマグロ10匹でも足りないくらいの借りがあるんだから」
おどけたように千秋はそう言うが、実際紫苑のお陰で今の自分の幸せはあるのだと思っている。

辛さから逃げ、山口からも逃げ彷徨っていた心と体を引き戻してくれたのはこの紫苑だった。
どう感謝してもし足りない程だ。
「あと10分で今日は上がりだから、待っててくれる?」
「はい」千秋の言葉に笑顔を向ける紫苑だったが、千秋はその笑顔に少し翳りがあるのを見逃さなかった。



天使が啼いた夜の番外編「紫苑絶体絶命」で
この山口と千秋は登場しています^^

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ずっと探していたデジカメのCDがやっと見つかって・・
それもEXILEのCDの下に重なってて・・・

つい画像処理して遊んでいたら、こんなに更新がおそくなってしまいました。
すみません・・・^^;
お侘びに、今日の画像載せますネ。
ちょっと時期が早いですが、もうケーキの予約も始まってる時期ですのでいいかな?^^

   
☆☆2010-11-25-33

2010-11-27-1.jpg


あ、こんなんで良かったらお持ち帰りOKですよ(#^.^#)
ちなみにこのサンタさんは、10年ほど前にもらったキッチンタイマーです^^;



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COMMENT - 12

jun  2010, 11. 26 [Fri] 05:27

お早うございます。
紫龍、紫苑が電車で帰ったと知って慌ててる。
ああ、それなのに、
紫苑は呑気に買物して、
しかも千秋の家で飲み会しようとしてる。
紫苑が家にいないと聞いたら、紫龍どうするんだろう。

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tukiyo  2010, 11. 26 [Fri] 08:55

千秋さんか~~~ここで再登場とはぁ。
紫龍メ~~~心配するがイイ~~。

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-  2010, 11. 26 [Fri] 11:53

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紫猫  2010, 11. 26 [Fri] 16:05

なんかこのまま行くと
紫龍と紫苑が行き違いになってしまいそうですね(^^;)
あぁ、でも逆に千秋さんの家に行く途中で見つかったり…
でも紫龍はお見合いで、深田さんが…
でも深田さんもあと1時間くらいかかるって言ってましたし…
ぜんぜん想像が付きませんねw
ですがそれが楽しいのです!!

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purple  2010, 11. 26 [Fri] 19:50

私にとって千秋さんは、結構謎の人です。
結構、興味があります……

ポインセチアは、キキョウさんの手作りですか?

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-  2010, 11. 26 [Fri] 23:21

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kikyou  2010, 11. 26 [Fri] 23:38

junさま

こんばんは。

電車で帰っただけで大騒ぎされる紫苑ってどうよ?って感じですが^^

久しぶりの千秋登場です。
ある意味紫苑の気持ちが一番よく判る人ですから紫苑も安心しているかと。

さぁ紫龍慌ててるでしょうネ(笑)

コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 11. 26 [Fri] 23:40

tukiyoさま

こんばんは。

今は山口と幸せな千秋の久々の登場です^^

そして私は今日書いててふと思ったのは

山口って「緑川光」さんの声のイメージ!って。

あの声を想像して今夜楽しんで下さいネ。

コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 11. 26 [Fri] 23:43

鍵コメ Rさま

こんばんは。

千秋はある意味一番安心ですからネ。

フリー写真!かやさんや、きえさんに触発されて(笑)
最近は携帯で撮るのが多かったんですけど
やっぱ古くても使い慣れたデジカメ楽だわ~

これからも時間あったら撮りたいですね。
画像編集はピクシアだし、そっちの勉強にもなるから楽しいです。

コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 11. 26 [Fri] 23:46

紫猫 さま

こんばんは。

いっぱい想像して下さってありがとうございます(#^.^#)

千秋久々ですが、基本的には紫龍と同等ですからね。
社員ではないし、同級生だし・・・
紫龍に遠慮などいりませんからネ。うふふ♪♪

あ、でも危ない奴じゃありませんからご心配なく~

コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 11. 26 [Fri] 23:51

purple さま

こんばんは。

千秋・・謎ですかっ?!

空白の9年間がありますからねぇ^^

ポインセチア・・・え?手作り・・・

いや・・鉢植えを買っただけで
でもクリスマスバージョンで偽だけど金粉が振ってあって
可愛いですよぉ。
私は「幸福の木」すら枯らしてしまう女なので^^;

撮影と加工は自分ですが・・・・
これからも少しづつ撮りたいですネ。

コメントありがとうございました。

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kikyou  2010, 11. 26 [Fri] 23:53

鍵コメ Cさま

こんばんは。

流石に(設定7月)夕方といってもまだ明るいですからねぇ
痴漢も出没できないでしょう(笑)
期待を裏切って申し訳ないですっ(爆)

さて、紫龍は迎えに来れるんでしょうか?
その前に紫苑が・・・・・お楽しみに!

コメントありがとうございました。

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