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雨の日に出逢って 18(終)

 25, 2010 16:58
瀬名が遥の部屋のチャイムをガンガン鳴らすが返答は無かった。
部屋の前で携帯に掛けるが、中で鳴ってる様子も無い。
「ったく何処行ったんだよ?」

自分の住まいのように、同じマンションに住んでいる人間の顔も判らないような所ではない
住んでいるのは皆仕事関係だ、いつまでも此処に居る訳にはいかないので
瀬名は気にしながらも遥の部屋の前を離れた。

やはり自分の部屋で待つのがいいのだろう・・
もしかして遥が自分の部屋をもう訪れる事は無いのでは?
そう思うと瀬名の心も痛んだ・・・・「遥・・・」

とりあえず自分のマンションで待つしかない・・
瀬名は重い足取りで来た道を引き返した。
歩いたら30分ほどの距離だ、車を拾うか迷ったけど
もしかしたら、途中で遥と会えるかもしれないと思って、歩く事にした。

歩きながら途中自販機で缶コーヒーを買って飲んだ。
その時今朝から何も食べてない事に気づいた。
ちょっと迷ったけど、遥が見つかったら美味しい物でも食べに行こうと思って我慢した。


一方遥はいつもより少し重いショルダーバッグを担いで
「あ~お腹空いたぁ・・」一人で呟いていた。
「あっ?」ファーストフードの店を見つけた遥は迷わずそこに入って
ハンバーガーとコーラとポテトを注文して、店内で食べる事にした。

遥にしてみると明日の朝このバッグの中身を捨てる事が出来る・・
それで問題が解決したように思っていた。
これを捨てたら堂々と瀬名に会える。
まさか瀬名がお腹を空かしているのなどとは遥は夢にも思ってなかった。


瀬名は遥を見逃さないように、ゆっくりと歩いて帰った。
家まであと5分ほどの所で瀬名は足を止める。
このガードレールは遥と初めて出逢った場所だ。

『雨の日に探し物が見つかりますよ・・・』
そう占い師に言われて、遥と出逢った・・・
『泣いてる遥可愛いかったなぁ・・・』
あの雨の日を思い出し、瀬名はガードレールに腰を掛けた。

多分自分はあの日に遥に一目惚れしたのだ・・そう思う。
変な奴だと思ったけど、それ以上に惹かれるものがあったのだ。
瀬名が物思いに耽っているといつの間にか数人の女性に囲まれていた。
「SENAさんですよね?」
「キャーッ!本物?握手して下さい」
口々にそう言いながら瀬名に握手を求める。
拒むわけにもいかないので、営業スマイルで答える。
全員に握手して「ごめんね、待ち合わせだから・・」と適当に言葉を濁し
囲んでいた女性達を遠ざけた。

そんな様子を遥が少し離れた物陰から覗いていた。
「瀬名ぁ・・・・」
まさかこんな所に瀬名が居るとは思わないで歩いてきた遥が人だかりを見つけて
そして瀬名を呼ぶ黄色い声を聞いて隠れたのだった。

女性達が去ると、今度はスーツを着た男性が名刺を片手に何か話していた。
そんな男に瀬名が手を振って何かを否定している。
「瀬名・・・格好いい・・」
遠目に見てもやはり格好いい瀬名に遥は熱い視線を送った。

『駄目っ!皆話しかけないで、ぼ・僕の恋人なんだからぁ・・・
ま・まだ恋人だよねぇ?瀬名ぁ・・・・』
何時の間にか遥の頬に熱い涙が流れていた。

瀬名の周りに人が居なくなった・・・
遥は勇気を出して足を一歩踏み出した。
俯き加減に腰を下ろしている瀬名の前で足を止める時にはもう涙でぐちゃぐちゃの顔をしていた。

ふっと瀬名が顔を上げ、そしてその口元が一瞬で緩んだ。
「やぁ君、迷子?」
「うっ・・うっ・・・迷子なんかじゃ無いよ・・・」
「そう?、俺が迷子なんだけど・・・」

「えっ?」
「俺、恋人に酷い事言っちゃって・・・その恋人を探し歩いて迷子になったんだ」
「そ・・その恋人って?」
「うん、そいつ変な奴で、大人のオモチャとかを大人買いするような奴だよ」
「・・・・オモチャ・・」
遥はそれが入っているショルダーバッグを手で押さえた。

瀬名の視線がそのバッグに行ったのに気づき
「す・捨てるからっ!明日の朝が燃やさないゴミの日だから・・その・・瀬名んちの辺りが・・
だから、捨てるからっ!・・・・だから・・僕を捨てないで・・瀬名ぁ」
一度引いた涙が又遥の瞳から零れ落ちた。

「馬鹿だなぁ・・・おいで一緒に帰ろう」
瀬名がそう言って左手を伸ばした。
「う・・うん・・・うっ・・・」
遥の差し出した手をぐいっと引き寄せ、ちゅっと掠めるようなキスをした。

「瀬名・・・・」
昼間の歩道でこれ以上の事は騒ぎになってしまう。
「さあ、帰ろう・・」
「う・うん・・・・」
普通の恋人同士のように、明るいうちから手を繋いだりする事も出来ない。

あの雨の日に出逢ってふたりこの道を歩いた時も
遥は瀬名の背中を見ながら歩いたのを思い出した。
そしてその背中に「瀬名・・・大好き」とそっと呟いた。

「俺も・・」
『聞こえてたんだ・・・・』
遥は嬉しくなって、瀬名に抱きつきたい気持ちを抑えながら歩いた。

    



          
玄関に入るなり、瀬名が待ちきれないように、遥の顔を両手で挟んだ。
遥が黙って目を閉じると、瀬名の唇が重なる。

「ん?」
「あぁん・・・瀬名・・・」直ぐに離れた唇を求めて強請る。
優しくまた唇が重なった。

そして遥の耳元で「遥の唇ポテトの味がする・・・」瀬名の囁きに
遥は「うん・・・ポテトとハンバーガー食べた・・・瀬名は?」
悪びれずに遥が答える。

「俺はまだ・・・・遥・・キスでお腹いっぱいにして」揶揄するような瀬名に向かって
「キ・・キスだけでいいの?」不安な顔で遥が尋ねる。
「遥がイヤじゃなかったら、全部喰いたい」
そう言うと激しく唇を絡めた。
「あぁん・・・・ぜ・・全部食べてぇ・・・せな・・」
ピンクに染まった頬、まだ涙の跡が残る目尻
「遥・・可愛い・・・」
瀬名の腕の中で遥はつくづく幸せを噛み締めていたのだった。




遥の肩から重みのあるショルダーバッグがずり落ち、ガタンと音を立てた。
「あっ!」
その音に一度唇を離した。

二人はまだ履いていた靴を脱いで部屋の中に入った。
ベッドの縁に腰掛けた瀬名が
「遥・・ごめんな、折角買ってくれたのに捨てろだなって、酷い事言って」
「う・ううん・・・」
「俺ちょっとその毛利って人にヤキモチ焼いてたかも」
「瀬名がヤキモチ?」何だか嬉しくて顔がニヤケテしまう遥だ。

「もしかして、捨てるつもりで全部持ってきた?」
「うん・・・」
遥は1本だけ自分の部屋に置いて来た事は内緒にしようと思った。
遥はショルダーバッグからエコバッグを取り出し、床の上に置いた。
「捨てないで置いておこう?」
「えっ?・・・・でも・・・これは捨てたい」
遥がエコバッグから剥き出しの黒い物を取り出した。

その黒いバイブを見て瀬名が笑いながら
「随分大きいな・・・」そう呟くから
「うん・・・これ使ったら僕壊れるから、捨てて」
「壊れるか試して見る?」完全に瀬名は遥をからかっている。

「やっ!瀬名より大きいのイヤだ・・・」
「どうして?」
「だ・だって・・・・・な・内緒・・」

遥は自分の思った事を直ぐ言ってしまう癖を判っていた。
もし大きいので慣らされ、その後瀬名のを挿れられた時に
『瀬名・・小さいっ・・・』と言ってしまいそうな自分が居るからだ。

「だって・・どんなのよりも瀬名のが一番好きだから・・・・」
これは勿論本当の事だ。
「ふ~ん?」何となく疑ったような物言いに
「だから・・・瀬名ぁ・・・・」色々な想像をしていたら、早く瀬名のが欲しくなって強請った。

「だから何?」本当に瀬名は意地悪だ。
「ぼ・・僕を全部食べて下さいっ!」ヤケッパチのように言った。
そんな遥を愛しそうに見つめが瀬名が
「はい、戴きます」揶揄するように言いながら
そして遥をそっと押し倒して行った。



                ◇◇◇おわり◇◇◇







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「天使の箱庭」からの転載で申し訳ございません^^;



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COMMENT - 2

梨沙  2010, 11. 26 [Fri] 19:26

(≧ω≦。)プププ

初めて この話を読みましたが なんだかコメディーチックで
ラブコメ!?みたいな感じで 楽しかったです! 遥があまりにも天然で もう笑みが止まりませんでした(@⌒ο⌒@)b ウフッ

Edit | Reply | 

kikyou  2010, 11. 26 [Fri] 23:48

梨沙さま

こんばんは。

この話は唯一あほっ子ウケちゃんの話です。

書いていても凄く楽しいでした。
そのうち番外書こうかな?と思って移してきました。

移したいのが沢山あるのですが、なかなか日々の雑務と更新に追われて・・・

楽しんで下さって私も嬉しいです♪♪

コメントありがとうございました!

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