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この世の果てで 11

 11, 2010 00:04
あの日瀬田は相手が高校生だと判っていたが、それでも抱いた。
今ここで説教とか金だけとかじゃ駄目だと思った。
知らない他人に身を売る事の怖さを教え込もうと思って抱いた。

何故自分が男を抱くことが出来たのだろう?
それは後で思った事だった。
本当は大事にしてやりたかったが、思い知らす為にもそうすべきでは無いと・・・



あれから定期的に拓海の様子を調べさせた。
民生委員に口を効いたのも瀬田だった。
ある程度生活が保護される事で、拓海の苦労が軽減されるように。


だから母親が亡くなったのも、勿論知っていた。


何故自分がこんなににも拓海が気になるのか?
それが判らないと思うほど瀬田は子供でもウブでも無い。
自分が一度会っただけの、拓海に惚れただけの事だ。
多分病院であの後姿を見た時から・・・

人を好きになるきっかけなんか単純だ。


瀬田が今「あの日お前を買ったのは俺だ」と告白したら
きっと拓海は瀬田の元には来ないだろう。



「尾崎大丈夫か?発進していいか?」
「はい・・・何か俺・・・泣いたりなんかして恥ずかしいです」
泣いて赤くなった目はまだ涙の名残りでキラキラしていたが
「いや、俺も少しふざけすぎた・・すまない」
「いえ・・」

あの日の事はそれぞれの胸の中の秘密の小箱に入れられている。
この箱を開ける日が来るのだろうか?
出来たら、二人同時にその日を迎えられればと、瀬田は思っていた。


やがて車は拓海の住むアパートの前に留まった。
「すみません、こんな所まで」
拓海の住むアパートは安普請の古い建物だった。

二階建てのその建物を瀬田が珍しそうに眺めていると
ちょっと照れたように拓海が
「今時こんなアパート珍しいですよね?」と言うから
「そうだな、ちょっと心配だな・・・」

瀬田は誰かに襲われたりしないだろうか?と心配になったのだが
「そうですね、トラックが通っただけで地震!って驚いてしまいますよ」
そんな方向違いの事を笑いながら答えている。

「少ししたら、うちに会社の寮に移ればいい」
「えっ?寮があったんですか?会社案内には載ってませんでしたが?」
「あぁ数が少ないから大っぴらには宣伝してないが、あるぞ」
「そうですか」安心したような拓海の言葉に
「じゃ、俺は帰るよ」
と手を挙げた。


再び丁寧に礼を述べる拓海と別れひとりハンドルを握った。






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