2ntブログ

スポンサーサイト

 --, -- --:--
上記の広告は1ヶ月以上更新のないブログに表示されています。
新しい記事を書く事で広告が消せます。

この世の果てで 13

 13, 2010 00:00
尾崎拓海は奨学金を受けながら、2つのバイトを掛け持ちした生活を続けていた。
母が亡くなった時点で生活保護は辞退し、自力で暮らしていた。
コンパの誘いも断り続けているうちに、もう声が掛からなくなって来た。

「そんな生活で何が楽しいんだ?」と時々言われたが、
ひとりで生きていく事はそんなに生易しいものでは無かった。

今日はコンビニのバイトの日だ。
居酒屋でバイトの時には賄いが出るから食べる必要は無かったが
コンビニのバイトの前には外で何か食べなくてはならない。
早めに入って期限切れの弁当の日もあったが
今日は何となく蕎麦が食べたくて、駅近くの蕎麦屋に向かった。

駅の近くの蕎麦屋はワンコインで食べれる・・


拓海が自販機で食券を買おうとしていたら
横から「これはどうやって買うんだ?」
殴りたくなりそうな言葉が聞こえて振り返った
「瀬田社長!」
一緒に食事をしたあの夜から2週間ほどした夕方だった。

「どうして、こんな所に?」
「偶然だ」
「偶然って・・・食券の買い方も知らないような人が?」
「いいから、尾崎のお勧めはどれだ?」

拓海は黙って千円札を入れると、とろろの入った冷たい蕎麦を2つ買った。
「社長は、あっちに座ってて下さい」
長いカウンターの隅を指して、拓海は食券を握って専用のカウンターに向かった。

冷たい蕎麦を2つ盆に乗せて瀬田の隣に座った。
「美味そうだな」
「社長の口に合うかは判りませんが・・・・」

「美味い!」自分で作ったわけではないが、
お世辞にでもそう言ってもらえたら、やっぱり嬉しい。
ちらっと瀬田の顔を見た後に拓海も蕎麦をすすった。

「今日はバイトか?」
「はい・・コンビニのバイトです」
「・・・そうか・・尾崎は家事は得意か?」
家事が得意かと聞かれたのは初めてで、戸惑ったが
同じ年頃の男と比べたら何でも出来るとは思う。

「ま、普通に・・自分で作ってますし」
身の回りの世話をやいてくれる人など居ないのは瀬田だって判っているはず。

「そうか、それは都合が良い、俺の所で家政夫しないか?」
「え?家政婦?」
「別に難しい事じゃない、部屋の掃除と洗濯、夜食の支度くらいだ」
「普通の家政婦雇えばいいじゃないですか?」
瀬田ほどの人間が家政婦を雇えない訳では無いだろう・・
どうして自分にそんな事を言ってきたのか判らない。

「女は面倒くさい」
「別に普通のおばさん雇えばいいのでは?」
もしかして若い女性を雇って何かトラブルでも起こしたのだろうか?
「おばさんも懲りた・・」
え・・どんだけ範囲が広いのだろう?ついそう思ってしまった。
「中年は世話やきで・・プライバシーもあったもんじゃない」
あぁ・・そういう意味で・・・

失笑した拓海に向かって
「笑ってる場合じゃない、洗濯物が溜まってる」
「へっ?」
どう見てもそんな所帯臭い困り事があるようには見えない。

「殆どがクリーニングでしょう?後は洗濯機に入れておけば済む事です」
「その洗濯機の使い方が判らない」
「はぁ・・・っ」
思わず溜息が出てしまう。

「ってか奥さんは!?」
考えてみれば普通なら結婚して奥さんも子供もいる年代だ。
「結婚なんて柄じゃない」
「はぁ・・・っ」
またも溜息を零す拓海に向かって
「だから、尾崎が俺の所でバイトの家政夫すれば良いだろう?」

「もうこれ以上は無理ですから俺」
とても3つ掛け持ちする体力も時間も拓海には無かった。
「今やってるバイトを辞めてくれないか?」
「そんな事をしたら生活できませんから」
家政夫だったら、1日2時間もあれば済むだろう。
だがそんな仕事の量では食べて行けるはずもない。

「無理ですから、じゃ俺バイトあるんで・・」
席を立った拓海に向かい
「あ、バイトもう行かなくていいから、全部辞めた」
「えっ?」
瀬田の言ってる意味が全く判らない。

「君のバイト先に連絡してもう辞めたから」
「・・・信じられない・・・・どうしてそんな勝手な事をするんですか!」
流石の拓海も怒りをあらわにした。

だけどそんな拓海の怒りなど何とも思わないのか
「さ、行こうか新しいバイト先へ」
そう言うと瀬田は嬉しそうな顔をして立ち上がった。

開いた口が塞がらない・・・・
拓海はただ立ち尽くすだけだった。
殴ってしまおうか?そう思う程の怒りを拳に込めていた・・・







沢山の応援ありがとうございます。


ランキングに参加しています。
ぽちっとして下されば嬉しいです。

にほんブログ村 小説ブログ BL小説へ
にほんブログ村


関連記事

COMMENT - 2

miki  2010, 09. 13 [Mon] 03:05

初めまして

こんばんは、初コメです。
社長すがすがしい位、強引ですね。そりゃ拓海も殴りたくなりますよ(笑) これから社長が一体拓海に何を要求して困らせるのか楽しみです(ひどい読者でスイマセン/汗) では、短いですがココまで読んで頂きありがとうございました<m(__)m>

Edit | Reply | 

ぱせり  2010, 09. 13 [Mon] 08:25

mikiさま 初めましてペコッ

おはようございます。
コメントありがとうございます。嬉しいです。

マイペースな瀬田社長です^^
拓海を傍に置く手段を強行突破しそうです。
どうにかして部屋に引っ張り込みたいようです。
今後を楽しみにして下されば嬉しいです。
これからも宜しくお願いします。

Edit | Reply | 

WHAT'S NEW?