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雨の日に出逢って 12

 23, 2010 19:55
玄関のドアを開けた遥は毛利の抱えている段ボールに目を見張った。
「へえーこんなに大きいの?」
「いや、数が多いんだ」
そう言いながら、その段ボールを玄関に下ろし、そして領収書と釣銭を遥に渡した。
「22680円・・・毛利さん買い物上手ですね」

3万円予算で頼んでたので、2万ちょっとで買えた事に驚いた声を上げた。
流石にこんなに大量のオモチャを買うのは気が引け
「いや~ビンゴの景品にするんでね・・」とレジで聞かれてもいない事を喋っていた。

「ラッピングもしてくれたんですかぁ?」
「ああ」実はラッピングは毛利が自分で器用にしたものだった。
箱だけでは遥が開けてしまう恐れがある。

「彼女にプレゼントって渡せば?」毛利に言われ
「彼女じゃないよ、彼氏だよ」遥は何でもない事のようにさらっと言う。
「か・彼氏?えっ?」
「だからっ、彼氏なの」

「ハルって・・・ゲイだったのか?」
「そっ!」
「そっ・・・てお前なぁ・・・そんな簡単にカミングアウトなんかするなよ」
毛利は驚きはしたが、何と無くその方がしっくり来るような気がした。

『って事は、このオモチャ・・ハルが使われる方なのか?』

毛利のそんな心配をよそに
「ああ・・・どんなオモチャが入ってるんだろう?楽しみだなぁ・・」
と子供みたいに喜んでいる。

「じゃ・・俺帰るよ」頭が痛くなってきそうだった。
「あ、何か飲み物でも・・・」
「いや・・・今度珈琲でも奢って」
これ以上遥と一緒に居たら、変な気分になりそうな毛利だった。

「俺も誰にも言わないから、職場でゲイだなんて言うんじゃないぞ」
聞かれたら正直に答えそうな遥に口止めする。
「聞かれないと言わないよ・・・」
「いや、聞かれても言わない方が・・・襲われても知らないぞ」
「やだ、襲われたら困る・・・聞かれても言わない」

体育会系の多い職場だ、襲われたら遥の力では抵抗できない。
ゲイの先輩が居ないとも限らない・・
いや居るだろう・・毛利は脳裏に何人かの顔を思い浮かべた。

「いいな、絶対言ったら駄目だからな・・」
「はーい」
本当に判ってるのだろうか?と多少不安になるが、
毛利はそれだけ言うと遥の部屋を後にした。


その頃瀬名はマンションの宅配ロッカーから通販で注文した箱を受け取っていた。
やはり、少しでも顔を公表している瀬名が実店舗に買いに行く訳にはいかなかった。
届いたその小さい箱には、アナルビーズ2種とバイブが1本入っていた。
初心者の遥が怖がったら困るからと、控えめ目な買い物だった。

これに慣れたら、一緒に通販の画面を見て注文しようと思っていた。

瀬名は部屋に入ると、その箱をベッドの脇に置き、
明日発売の週刊誌を持っていた。
先日インタビュー記事が掲載されている週刊誌だ。
たった2ページだが、それは瀬名にとって充分過ぎる程だった。

ベッドに腹ばいになり、その記事を読んでみた。
「げっ、スリーサイズや股下まで書いてある・・・」
「恋人募集中か・・・」
遥が見たら怒るかな?と思いながらも、
女性週刊誌だからそんな機会は無いだろうと胸を撫で下ろした。

だがその週刊誌を遥が見たのは思いのほか早く、発売当日の昼休憩の時だった。
「おばちゃん、Bランチね・・・」
「あいよぉ、ハルちゃんは魚好きだねぇ」
「うん、おばちゃんが作る味噌煮大好きだよ」

そんな会話を交わして、座る場所を探してキョロキョロしていると
同じ課の女性が3人座っていて、1つ席が空いていた。
「あーハルちゃん、こっちどうぞー」気軽に声を掛けてくれるので
遥は「お邪魔しまーす」と言って席に着いた。

彼女たちは殆ど食べ終え、週刊誌を広げていた。
「いいわよねぇSENAって・・・清潔そうで本当に格好いい!」
「ねぇ、彼女募集中だってよぉ」
「そんな居ない訳ないわよねぇ、きっとモデルの誰かと付き合ってるわよ」

最初は気にしないで聞き流していた遥だったが
「セナ」「モデル」に反応した。
「ねぇ僕にも見せて、ちょっとだけ・・・」
「ほらハルちゃん、格好良いよね、最近人気急上昇なのよ彼」

遥が受け取って見たページには瀬名が笑顔で載っていた。
『瀬名ってこんなに有名だったんだ・・・』
「こ・・恋人募集中・・・」
そんな遥に「ねぇ本当に彼女居ないと思う?」などと聞いてくる。
「え・・あ・・・わかんない・・・・」

昨日毛利に念を押されたばかりだし、こんな週刊誌に載るほど有名な瀬名の事を
考えると、今自分が恋人だと言えるはずが無かった。
『でも、もしかして本当に彼女募集中かも・・・』
あんなに格好いい瀬名が自分だけを相手にするとは思えなくなった。

『僕は瀬名に捨てられるかもしれない・・・・そんなの嫌だ』
その時、昨日買って来てもらった大人のオモチャの事を思い出した。
あれをプレゼントして一緒に遊べば、もっともっと仲良くなれるかもしれない・・

普段殆ど平日には逢わないが遥は食事をしながら片手で
瀬名にメールを送った。
「今夜どうしても逢いたい」と。

それから暫くして、受信したメールには「9時頃には帰れそう、俺も逢いたい」とあった。
ほっとしながら遥が携帯をポケットにしまうと
背後から毛利が小声で話しかけてきた。
「あれいつ渡すの?」
勿論あれとは、あの段ボールの中身の事である。

「あ、今夜・・・・・」嬉しそうな遥の顔を見て
「明日有給でもとっておいた方が俺はいいと思うけどな・・・」
「えぇそんな急に無理ですよぁ、それに休むつもりないし」
遥はどうして毛利がそんな休みの事まで言うのか全く判らなかった。

「まぁ、無茶しないで程ほどにしとけよ」
「変な毛利さん」
遥はそう思いながら、味噌汁を「美味しい~」と言いながら飲み干した。




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「天使の箱庭」からの転載で申し訳ございません^^;

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