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この世の果てで 7

 08, 2010 00:00
拓海は必要な書類を取り寄せ、会社に連絡を入れた翌日にもう一度社長室を訪ねた。

「尾崎さんをお連れしました」女性社員に案内され社長室に入った。
「失礼します、尾崎拓海です」頭を下げる拓海に向かって
「待ってたぞ」という声が掛かった。

『どうして僕などを待っているのだろう?』
平凡で利用価値などない自分を優遇する理由がやはり納得いかなかった。

「ひとつ教えて頂けますか?」
拓海の言葉に口元を緩めながら
「どうぞ、何なりと」と機嫌よく答える社長に向かって

「どうして私を気にかけて下さるのですか?」
「君が気に入ったからでは駄目なのか?」
「私を気に入る時間など無かったはずですが?」
面接の途中で呼び出されたのだ、いつ気に入る暇があるのだろう?

「実はね、君とはずっと以前に一度だけ会った事があるんだよ」
「会った事が・・・?」
拓海には全く覚えが無かった。
自分とこの社長の間に接点があるとは思えなかった。

「私のバイト先かどこかですか?」
拓海はコンビニと居酒屋でバイトの掛け持ちをしていた。
そこに客としてでも来た事があるのだろうか?

「まぁね、そのうち教えてあげるよ、さ、書類を出して」
「はい・・・」
だけどそれもこれで終わりだ。
僕の話を聞いたら・・・きっと不採用だ。


だまって書類に目を通していた瀬田社長が重い口を開いた。
「君の母親は病死か・・・・父親も亡くなってるのか・・病気?」

最後まで言うか迷っていたが、自分へ対しての過剰なまでの評価か興味か?
この社長には本当の事を告白した方がいいような気がした。


「・・・・・父は自殺です。私が10歳の時に獄中で自殺しました」


一瞬この部屋の空気が静寂に包まれた。


「そうか・・・・」

それだけ言葉にすると、社長は拓海に背中を向け、窓の外を眺めていた。






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