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この世の果てで 8

 09, 2010 00:00
拓海は瀬田社長に背中を向けられた事で
内心『やっぱり・・』と思っていた。
こんな話を聞いたら採用しようとは思わないだろう。

暫く沈黙が続いたあと、椅子を回転させ振り返った瀬田が口を開いた
「何故そんな事を話した?」
そうだ、黙っていれば判らない事をわざわざ話したのだ。

「社長がどうして私を早々に採用と決められた真意が判らないからです」
「今はまだ話すわけにはいかない」
「今は?」
「そうだ、今はだ・・・」
「僕に話してくれる機会が今後あるという事でしょうか?」
「勿論」

「・・・あんな話を聞いても私を採用して下さるんですか?」
「君の人格には関係ないだろう」

「私は死ぬまで加害者の息子なんです・・・それでも?」
「それがどうした?」

「特に何の取り得も無いし親は居ないし・・・それでも良いのですか?」
「その分君は辛苦を舐めて来たのだろう?
それを今後の人生に役立てたら良いのではないか?」

そう言われてもやはり自分が優遇される事を納得した訳では無かったが
こんな自分でも採用してくれると言うのだから、それに乗ってみようと思った。

「宜しくお願い致します」
そう言ってただ頭を深く下げるしか無かった。

拓海がそう言った途端に瀬田が相好を崩し
「そうか!決めてくれたか?」
そんな瀬田に釣られたように拓海が初めて笑顔を見せた。

「君の笑顔を初めて見たな」
「わ・私だって普通に笑いますよ・・」
そう抗議しながらも、自分が最近あまり笑ってなかった事を気づいた。

ひとりで生きて行く事に夢中であまり余裕が無かった気がする。

「就職が決まった祝いに飯でも食いに行こうか?」
採用する側が祝ってくれるとは思いもしなかった。
「社長って変わってる方ですね?」

「そうか?そんな事は無いぞ」
そう答える瀬田の背後から
「充分に変わってますよ」
今まで沈黙していた狭山が初めて口を開いた。

この長年瀬田の下で働いている狭山ですら
尾崎拓海を採用する本当の理由を聞かされてはいなかった。






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