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この世の果てで 5

 06, 2010 00:00
拓海は会社のエントランスを抜けてもまだ呆然としていた。
面接の日に突然の採用通知・・・
自分はこの会社にどうしても入社したかったが
多分無理だろうと半分は諦めていた。
面接の案内が届いた時には心底驚いた。
そしてまだチャンスはあると・・・

拓海は高校2年の冬・・・体を売った。

買った男の顔など忘れた・・・というよりも見ないように
覚えないように努めた。
身も心も傷ついたあの日拓海は自分が寝入るなどとは思いもしなかった。
そして朝目覚めた時には自分を買った男の姿は消えていた。

ベッドサイドのテーブルにこの財布とホテルの便箋に書いたメモが残されていた。
『もっと自分を大事にしなさい、世の中そう甘くは無い』

「世の中甘いじゃん・・・」

分厚く膨らんだ財布の中の金を数えると24万円もあった。
男を一晩買うには過分な金額だ。
この多すぎるが半端な金額は、きっとあの男の財布に入っていた全部だと気づいた。

あの時は何故と考えるよりも、とにかく病院に支払う金が必要だった。
17歳の拓海が短期間で高額な金を手に入れる方法は限られていた。

「明日までに10万円用意して下さいね」
会計で念を押されて病院を出てから拓海は頼るあても無く街を彷徨った。
何人かの男に声を掛けられ、そういう方法があるのを知った。

2時間もふらふらした挙句「さっきからずっとそうしてるな」
と声を掛けて来た男に「僕を買って下さい」と勇気を出して声を掛けた。
一瞬驚いた顔をされたのは覚えている。
だけどその後の事はあまり覚えていなった。

なるべく顔を見ないように、ホテルに着いて行った。
拓海に声を掛けてきた中年の男たちに比べたら随分若い男だとは思ったが、
この際そんな事を気にしている余裕は無かった。

「体を売るって事はなぁ、命を売るって事と同じなんだよっ」

そう言いながら、その男は乱暴に拓海を貫いた。
想像以上の痛みと、血の匂いに半ば失神している僕の上で
男はその手を緩める事は無かった。

「これに懲りたら二度と体を売ろうなんて考えない事だな」
薄れいく意識の中でそう聞いたような気がした。


あれから5年・・・拓海はこの財布だけを手がかりにあの男を捜した。





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