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この世の果てで 3

 05, 2010 03:10
「失礼します。286番の尾崎拓海(おざき たくみ)です。」
「おお来たか、まあ入りたまえ」
気持ち悪いくらいニコニコ顔の瀬田を不思議な物でも見るように尾崎は見ていた。

「あの・・・私どうして此処に呼ばれたのでしょうか?」
何か怒りを買ったのかもしれないと、そう思いながら此処まで来たのに
何故かそんな雰囲気では無い事が逆に不安になってしまう。

「まぁそんなに固い顔をしないで、珈琲でも飲むか?」
そう言うと、内線で「珈琲3つ持って来て」と命じている。

「突っ立ってないで掛けなさい」
高級な物だと一目で判る革張りのソファに座るように勧められた。
「し・・失礼します」
一礼してそのソファに腰を沈めた。

「尾崎君と言ったかな?」
「はい、尾崎拓海です」
「うん、良い名前だ・・・ところで、君は今財布を持ってるか?」
「は・・はい持ってます」

「ちょっと見せてくれないか?」
尾崎はスーツのポケットから2つ折の革の財布を取り出すと
手を伸ばしている社長のその手の平に乗せた。

瀬田の隣に立っていた狭山がその財布を見て僅かに眉を動かした。
「うちの社の製品だね・・・大事に使ってるようだね」
それだけ言うと、その財布を尾崎に返した。

「尾崎君、君採用決定」
「はい?」
今何かとてつも無い事を言われた気がするが、飲み込めないでいた。
「だから、採用決定。内定じゃないよ、採用」

「あの、私はからかわれているのでしょうか?」
面接の途中で突然放送で呼び出され
財布を見せろと言われ、見せたら即採用?
狐に抓まれたような気分だった。

呆気にとられている尾崎を余所に、何か書類にペンを走らせている。
「はい、採用通知、本来なら郵送するんだけど、目の前に居るんだから・・あげる」

「あげる」と言われて差し出されても・・・・
恐る恐る机に近づいてその用紙を受け取ると
きちんと社印も押された正式な物だった。

「あの・・・どうして?」
「不満かな?」
「い・いえ・・でも?」
「君が社の製品を大事に使ってくれてるからと言っても駄目か?」

そう言いながらも、この部屋に入った時と同じように
始終ニコニコしている社長の顔を尾崎は難しい顔で眺めていただけだった。





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