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この世の果てで 1

 04, 2010 02:14
「どうだ、今年の出来は?」
「あっ!社長、お疲れ様です」
まるで小さなテレビ局のように沢山のモニターが並んでいる。
映し出されている映像は面接会場だった。

「300人は居るのか?」
「そうですね、競争率10倍ってとこでしょうか?」
「履歴書だけで何人落とした?」
「327人です」

細かい数字まで答えるのは、社長秘書の狭山浩輔(さやま こうすけ)31歳だ。
声の主を振り返ってちらっと見たのがここの社長の瀬田凌牙(せた りょうが)33歳

「社長、あなたは300人の面接を全部ご覧になるつもりですか?」
「悪いか?」
「そんな暇があったら、決済書類を1枚でも余分に見て欲しいのですが?」
「まぁそんな固い事言うなよ、年に1度の楽しみなんだから」

回転椅子の背凭れをわざとギシギシ言わせながら揶揄するように狭山を見た。

「さあ、君たちはそれぞれの部屋で面接を始めてくれ」
そう人事担当の社員達に声を掛けると、またモニターに目を向けた。

「じゃ行きましょうか」15人の面接官たちが、割り当てられた5つのグループに分かれた。
300人もの面接をこなさなければならない、1日がかりの行事だった。

「これがコピーです」そう言って300枚の履歴書のコピーを秘書に手渡された。
「そんなのなんか必要ないさ、俺の勘って奴は人並み外れているからな・・」
口角を上げ、ほくそ笑みながら言う社長に向かって。
「まるで野生のライオンが獲物を狙っているみたいですね」

この二人は大学の先輩と後輩だった。
秘書の狭山は、学生時代から瀬田に憧れ、多くの条件の良い会社を蹴って
瀬田に着いて来たのだった。
何をやらかすか全く判らない瀬田と一緒にいると、とにかく面白い。

そんな事をぼんやり思っていた狭山の耳に
「見ーつけた」
まるで鬼ごっこの鬼のような嬉しそうな声が聞こえてきた。





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