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この世の果てで 36

 05, 2010 19:37
拓海はへらへらと笑っている佐久間俊一に勇気を持って向かった
「あなた俺にどうしろって言うんですか?」
開き直ったと取られるような言葉だったが
本当に拓海は佐久間が何を求めて、自分が何をすればいいのか判らなかった。

自分をこんな所に連れてきた目的も判らない。
そんな拓海に「だから言っただろう?お前だけが幸せになるのを許さないって」
「貴方には俺が幸せに見えるんだ?」
全く埒の明かない会話に拓海も苛々してしまった。

「逆切れできる立場だと思ってるの?」
「別に逆切れなんてしてないです・・・お金ですか?」
でも金と言われても納得するような金額を自分が払えるとは思わなかった。

「俺こいつらに借金があるんだよね、500万」
「500万・・・・」
拓海はこの場にこの3人が居た訳がやっと判った。
「俺には、500万なんて大金無理だ・・」
今まで溜めたバイト代をかき集め、
返そうと思ってとってあったあの24万を足しても50万がいい所だった。

「無理だろうなぁ・・」一人の男に揶揄するように言った。
「じゃ体で稼いでもらおうか?」
もう一人の男もニヤニヤしながら言っている。
「体で・・・・」
拓海はマグロ漁船や臓器提供が頭に浮かび、
どっちの方法でも、もう今の生活は出来ないと思った。

「綺麗な顔してるねぇ?」3人の中でも一番偉そうな男が
拓海の顔を人差し指で持ち上げ上を向かせた。
「男でも今は良い値で売れるの知ってる?」
「・・・・」その男が言わんとする事を察知した拓海の顔色が変わった。
「ほほぅ、知ってると見えるね」
その視線から拓海は視線を逸らした。

「それなら話は早い、取り前は俺たちと俊一と君で3分の1づつっていうのは?」
「ふざけるなっ!」
拓海はそう言っておの男の手を振り払った。
その払った手が男の頬を打ってしまった。

「てめぇ兄貴に何するんだよぉ!」
一番若い男が拓海に掴みかかり、そしてお返しのように
拓海の頬を激しく叩いた。
「つっ!」
人に殴られた事など初めての拓海はその一瞬を避ける事は出来ず
口内に血の味が広がった。

「おい、商売物を傷付けるな」
男の声にそれ以上殴られる事は無かったが、
拓海はこの男たちが本気だというのを判った。
「俺はあんた達の為に何かするつもりもないし義務もない」
そう言い捨てると、佐久間が
「ふーん、俺の為にも?」と掴み寄って来た。

拓海は、同じ言葉を佐久間に吐く事が出来ずに黙った。
「お前の親父に殺されてから、俺と母親の人生が変わったんだ」
「・・・あれは事故だと聞いた・・」
拓海は本当にそう聞いていたし、信じていた。
「じゃ何故お前の親父は刑務所に入ったんだ?」
「それは・・・・」そう言われると拓海も言い返す事場が無い。

「せめて俺に500万の慰謝料をやろうっていう気は無いの?」
加害者の息子は何時までも加害者なのか・・・

被害者の家族は周囲から同情され暖かい声を掛けられる。
だが、加害者の家族は周囲の冷たい視線と言葉にいつまでも傷つけられる。
自分も母も充分に罰は受けて来たと思っていた。
だが、それは間違いだったのか?

拓海は肩を突付かれながらも、そんな事を考えていた。

「さあ、何時までもこんな所に居ないで、店行くぞ」
偉そうな男がそう言って皆を促した。
拓海は腕を掴まれたが、店などに連れて行かれたら最後だと思い抵抗を続けたが
4人の男の力に拓海が敵う筈も無かった。

「離せよ、俺に触るなっ!」
「そう抵抗するな、お前だって良い思いして金も手に入るんだ」
「嫌だ!離せ!」

無理矢理に4人掛かりで車に押し込まれようとしている時に
そのワンボックスカーの前後に2台の黒塗りのベンツが囲むように停車した。
4人の男たちも、黒塗りのベンツに一瞬怯んでいた。
そして2台の車の窓にはスモークが貼ってあり、中の様子が伺えない。

前後にぴたっと着けられると車を発進する事が出来ずに
4人の男たちは顔を見あせて目で相談している。
一番若手の男が、前のベンツの運転席に近寄り
下手に出ながら「あのぉ、俺らの車出せないんですけど」
とへこへこしながら声を掛けた。

すると突然その男を弾くように運転席のドアがバーンと開けられた。
黒いスーツを着た大男が降り立った。
一瞬拓海も怯んだが、何処かで見た顔だ・・・
「あ・・っ」拓海がその顔を思い出し、小さく驚きの声を上げた時に
その車の後部座席と、後ろに待機していた車の運転席、後部座席と
それぞれ、男が降り立った。

「あ・・っ」その中に瀬田の姿を認め、
「どうして・・・?」拓海がそう呟いた。

瀬田は呆然としている4人の男を払いのけるように
拓海に近寄り、その殴られた頬に眉を顰めた。
「拓海・・殴られたのか?」
瀬田の声に拓海は殴られた事などすっかり忘れてた自分に気がついた。

「あっ」自分でその頬に触れて少し顔が腫れてる事を確認した。
拓海に向ける瀬田の目は優しいが、男たちに向ける視線は怒気を含み
そのチンピラ風情の男たちを震え上がらした。

そしてその中に佐久間俊一の顔を認めると
その目の中に姿を映しながらじりじりと間合いを詰めて行った。




零時更新できませんで、すみませんでした。
変な時間ですが、更新します。


昨夜の更新無理の記事は削除しようと思っていましたが
あんな記事にもたくさんの拍手して頂きましたので、残しておきます。
応援拍手ありがとうございました。



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