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この世の果てで 34

 03, 2010 00:00
「それで佐久間俊一の画像は手に入ったのか?」
瀬田が狭山に佐久間の事を聞いていた
「はい、この画像ならすぐに判るかと」
瀬田はその画像を自分の携帯に転送してもらった。

「こいつか・・・」
拓海の部屋を荒らした奴だ。
「拓海にも送っておかないとな」
そう言いながら、瀬田は拓海に添付つきのメールを送った。

その頃拓海はちょうど学食でランチを食べていた。
「ん・・?・・あっ」
瀬田からのメールを受信した拓海が開こうとした時に
背後から声が掛かった。

「あれ?今日はあの金魚のフンは一緒じゃないんだ?」
振り向くとあの箱崎という男が立っていた。
「金魚のフンじゃないから」
拓海は新山をそういう風に言われてむっとしながら答えた。

今日は新山は午前中は法事で来れないと言っていた。
午後からは同じ講義を受講するが、まだ新山は来てはいなかった。

「悪い悪い」そう軽口を叩きながら拓海の横の席に腰を下ろした。
拓海は無視するように食事の手を早めた。
「なあ、飲みに行かないか?」
懲りずに箱崎が誘ってくるが、拓海は無視し続けた。

そんな拓海に溜息を吐きながら
「じゃ、食後の珈琲だけでもいいから付き合ってよ」
酒を飲みに行くのは拙いが、お茶だけなら・・・
そう拓海が考えるのも仕方が無いことだった。

「一度お茶に付き合ったら、もう俺に付き纏わない?」
拓海の言葉に箱崎が頷いた。
「いいよ、嫌われてるみたいだから、お茶だけでも感謝だよ」
これで開放さらるのなら・・・
拓海は「じゃお茶だけなら、でも構内で」
としぶしぶだが答えてしまった。

「構内・・・」箱崎は肩を竦めたが
「じゃ俺珈琲買ってくるから、外で飲もう」
そう言って箱崎はいそいそと自販機に向かった。

拓海は気が重かったが、構内だからと少し安心していた。
食べ終わったトレイを片付ける頃には箱崎が紙コップの珈琲を両手に持って
拓海の所にやって来て、外のベンチへと促した。

「あっ、すみません、頂きます」
差し出された紙コップを受け取りながら、一応礼を述べた。
「ブラックで良かった?」
「はい・・」
拓海は何となく居心地が悪くて、話す言葉も出てこない。

「就職決まったんですか?」
先日拓海は箱崎にそう聞かれた事を思い出し、聞き返した。
「俺はまだ決まらないんだよ」
「あ、そうですが・・頑張って下さい」

「でも本当に、今まで会った事ないですよね・・
同じ学年なのに・・やっぱ大学って広いんですね」
そう言いながら拓海は瞼が重くなってきている自分に気付いた。
『なんか・・眠い・・』

「会う訳ないだろ?俺ここの学生じゃないから」
「えっ!?」
箱崎の言葉に何?と思ったものの、拓海はそれ以上しゃべる事なく瞼を閉じた。
「尾崎君?どうした?」
薄れいく意識の中で箱崎の声を聞いた気がした。

殆ど飲みきった拓海の紙コップを手から引き抜き
自分の紙コップと重ねて構内のゴミ箱にぽんと投げ入れた。
そしてポケットから携帯を取り出し
「俺だ、車回してくれ」そう言うと電話を切った。

眠りに付いた拓海をおぶって、裏門に向かって歩き出した。
「尾崎拓海・・今だけは良い夢をみろよ」
寝入っている背中の拓海に話しかけるように箱崎が言葉を放った。

拓海をおぶって裏門を抜けると、その先に1台のワンボックスカーが停車していた。
「おーい、俊一!こっちだ」
「おお、ドア開けろよ」
そして箱崎は拓海の体を後部席に下ろし、自分もその車に乗り込んだ。

「出せよ」箱崎が声を掛けると、その車は静かに大学を離れて行った。


その頃やっと新山が学校に現れた。
講堂で拓海が来るのを待っていたが、なかなか来ない拓海に痺れを切らして
周りの学生に拓海を見なかったか聞いて回った。

「あれ、午前は顔見たぞ」
という答えしか返って来ない。
トイレかなと思いつつも、あと2分もしたら講義が始まってしまう。

新山は何だか嫌な予感がして落ち着かなかった。
そんな新山に、前の席に座っていた男子学生が
「食堂で飯食ってるのは見たぞ、何かあまり見かけない奴と一緒だったけど」

「えっ・・・見かけない奴?」
「ああ、何だかしきりに尾崎に話しかけてたけど・・」
学友の言葉に新山の不安は大きくなる。
『もしかして箱崎と一緒か?』




「おかしい」
「何がおかしいんですか?」狭山は苛付く瀬田に声を掛けた。
「拓海からメールの返信が来ない」
「返信しろって言ったんですか?」
「いや・・だが何時もは必ず返信がある」
ましてや、佐久間俊一の画像を添付しているのだ
見たら必ず何かしらの返信がある筈だ。

そう言いながら瀬田は拓海の携帯に電話を掛けた。
「電源が切れている」
渋い顔で瀬田が言葉を吐いた。





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