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この世の果てで 32

 01, 2010 00:00
「えっ・・・?」
自分が男に性の対象として・・・・・?
拓海は一瞬、新山が何を言ってるのか理解出来なかった。
「えっ・・あ・・・っ」

5年前のあの夜、
「ねぇ君幾ら?」
「ねぇホテル行こうか?」
「ねぇ誘ってるの?」
何人もの男に声を掛けられた事を思い出した。
だが拓海は知らなかったのだ、あの辺がそういう人種の集まる所だなんて。

「新山・・・俺って変なの?」
拓海は自分がそういう風に見られてしまう事は
自分が人と何か変わっているせいなのだろうか、と思った。
「拓海は変じゃないさ」
「じゃどうして、どうしてそう思うんだ?」

「お前って、何だか儚げで、その上その辺の女よりもずっと綺麗で・・」
新山が言いにくそうに言葉を続けた。
「だから、男心をそそるっていうか・・・ご・ごめん変な事言って!」
「新山・・・」
「とにかく、変な奴には気をつけろって言いたいんだよ俺は!」

一気にまくし立てるように新山は頭を掻きむしりながら言い放った。
「うん、ありがとう新山・・・で?お前はそういう目で見ちゃいないよな?」
「うう・・・半分だけだよ、文句あるか!」
殆ど開き直りの新山の態度がおかしくて拓海は声を上げて笑った。

そんな拓海を新山は眩しそうに眺め
「ほら、最近お前変わっただろ?だから余計に目立つんだよ」
「え、俺変わった?」
「ああ、以前の何だか鬱蒼とした雰囲気が消えて・・・
最近何か良い事でもあったのか?」
新山に尋ねられ「いや、特にないよ」と答えたが
最近良い事どころか、アパートを荒らされるような酷い目にあった・・・

だけど・・・だけど、そんな俺に気を掛けてくれる奴が・・
拓海の脳裏には瀬田の顔が浮かんだ。
自分では気付かないけど、もし自分が変わったとしたのなら
それは瀬田の存在が大きく影響していると思った。

ふっと今夜の献立は何にしようか?とそんな事が頭を過ぎった。
「ほら、尾崎・・お前がそんな顔をするから・・・」
又訳の判らない事を新山に言われたが、それは聞き流した。


その夜拓海は風呂上りに鏡の前で自分の顔をしげしげと眺めてみた。
綺麗だとか言われたけど、
長年見慣れた自分の顔がそう言われる部類だとは思えなかった。
「何だ、自分の顔に見惚れるのか?」

突然瀬田に声を掛けられ慌てた。
「あっ!そんな事ないです」
そう言い繕ったが何となく自分がいけない事をしてたような
気がして顔が赤くなるのを止められなかった。

「赤い顔して、又逆上せたのか?」
「いえ、そんな事ないです・・あ、おかえりなさい」
拓海は遅くなるから食事も要らないと言われていたので
簡単に食事を済ませ、早々に風呂に入ったばかりだった。

「早かったですね」
「ああ、思ったよりも早く片付いた」
「じゃ食事は?それとも風呂が先ですか?」
拓海は瀬田の脱ぎ捨てた背広を掛けながらそんな事を聞いた。

そんな拓海に微笑みながら「飯は食ってきた、風呂もらおうかな?」
と瀬田に言われ湯加減を見に行こうとした時にその腕を捕られた。
「本当に新婚の奥さんみたいな台詞だな」
「そ・そんな事・・これが俺の仕事ですから」

拓海は後ろからすっぽり抱き締められ、抗うように体を捩りながらそう言った。
「仕事か・・何だか拓海冷たいなぁ」
絶対からかわれている!そう思って
「社長、風呂の準備しますから手を解いて下さい」
「いやだ、もう少し」
駄々っ子のように瀬田が言う事を聞いてくれない。

どきーん!拓海の心臓が跳ねた。
「な・何するん・・・」
後ろから抱き付いていた瀬田の唇が拓海の項に触れたのだ。
「いい香りだ・・・」
「だ・だから社長も早く風呂に・・」
「・・・そうだな、風呂入るか・・」

そう言うと突然拓海の体は解放された。
瀬田が風呂場に去った後、拓海はへなへなとその場に座り込んだ。
唇を付けられた項を手のひらで押さえたまま・・

「信じられない・・あんなのセクハラだ・・・」
拓海は言葉に出したが、腰が抜けたようにその場から離れられなかった。
ズクン・・・その唇の感触を思い出しただけで
拓海は下半身に疼くものがあった。

『ヤバイ・・俺ってかなり変だ・・・』

「おーい拓海ー背中ー」
風呂場から瀬田の呼ぶ大きな声が聞こえ
拓海は仕事だと言い聞かせ、疼く重い腰を上げた。





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