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この世の果てで 33

 02, 2010 00:00
「なんだ・・服着てるのか?」
残念そうな瀬田の言葉に
「はい、もう俺風呂入りましたから」と淡白な答えを返した。

拓海は瀬田の広い背中を擦りながら、
思いついて今日大学で新山に言われた事を掻い摘んで話した。
だが拓海はこの時肝心な箱崎という不審な男の事を話していなかった。

拓海は内心瀬田の異常なまでなスキンシップが
新山の言う所にあるのかを確かめたかった。
もし瀬田の体が反応していたら・・・自分はもう此処には居られない。
「あったまには前も洗いましょうか?」
拓海は勇気を出してそう提案した。

瀬田とて人の上に立つ身、一連の流れで拓海の意図する事などお見通しだった。
「お、珍しい事を言ってくれるな?頼む」
そう言うと「こっちの方が洗い易いだろう?」と立ち上がった。

簡単に瀬田が了解した訳も判らず、自分から言ってしまった手前
「はい・・」と頷くと、瀬田の前に回った。
筋肉質の広い胸板をスポンジで擦りながら
「何かジムでも通ってるんですか?」
「ああ、今度お前も一緒に通うか?」と言われ
「い・いえ・・俺は・・」
拓海にしてみれば、ジムなんて贅沢の極み。
そんな余裕などない、ジムに通うのなら自分でジョギングでもしよう・・
と漠然と考えていた。

「もう少し力入れろよ」瀬田に指示され、少し力を込めた。
瀬田の割れた腹筋にもスポンジを這わせる。
そうしながら拓海はちらっと瀬田の中心に目をやった。

「何だ、見惚れてるのか?」揶揄されたが
瀬田のソレが何の変化も起こしてない事に安心して
両腕を洗うと「お終い」と口にした。

「ありがとう、気持ち良かったよ、
小学校の頃、ばあ様にいつも背中を流してもらったのを思い出したよ」
『俺はばあ様の代わりか?・・・』
ちょっと面白くない気分で、拓海は風呂場を後にした。

残された瀬田は体中に付いた泡を流すのもそこそこに
湯船に飛び込むように浸かった。
「ふうーっ」深い溜息を吐きながら
『ったく拷問だぜ、拓海・・・』

さっきまで、頭の中で禿げた重役の顔や、
面倒な決算書類の数字を思い浮かべていた。
その思考を全部クリアした途端、下半身に熱が集まり形を変えた。
拓海は反応のない瀬田の下半身に安堵したのは確かだ。

『まだ先は長いな・・・』
そう思いながらも瀬田は浴槽の淵に腰を下ろし
さっきまで自分の体を撫でるように洗っていた拓海を思い出し
その手で自身を扱いた。

『ったく何で俺がひとりでこんな事を・・・』
そう思うものの、動く手を止めるつもりはなかった。


瀬田が風呂から上がると、拓海は絞りたての野菜ジュースを持って来てくれた。
「はい野菜ジュース、どうせツマミ程度しか食べていないんでしょう?」
「ありがとう、お前は気が付くな・・」
「雇い主の健康管理も俺の仕事のひとつですから」
言い訳のように言う拓海の肩を抱いて、その頬にちゅっとキスをした。

「ひぃーっ!な・何してるんですかぁ!」
「感謝のキスだけど?」全く悪びれない瀬田が言うと
「そんな感謝は要りませんからっ!」
「そんなに喜ばなくても・・・」
「喜んでいませんっ!ったく・・外国人じゃあるまいし・・」

「可愛い犬とか猫見ると、ちゅってしたくならないか?」
「へっ?犬や猫・・」
「そうだ」
『あ・・・俺ってペットと同じ?』
それを喜んでいいのか、怒るべきか・・・
「まあ気にするな、スキンシップは平和の証だ」

拓海は言い返す元気も無く、瀬田が空けたグラスを持ってキッチンに向かった。
「あ・・そういえばベッド・・」
思い出して瀬田に聞いてみた。
「あぁあのベッドは店の都合で入らないらしい」
何でも無い事のように瀬田がそう言った。

「じゃ俺・・明日布団買ってきます」
いつまでも瀬田と一緒のベッドという訳にもいかない。
「拓海はそんなに俺と一緒に寝るのが嫌なのか?」
「べ・別に嫌って訳じゃ・・・」言いよどんでいると
「じゃ気にするな、一緒に寝ればいい」と簡単に言われた。

「でも変じゃないですか?大人の男が一緒のベッドって?」
「別に変じゃないだろう?普通だ」
この状態を普通だと言いきる瀬田そのものが普通じゃないのに・・・

でも拓海はきっとあの広いあまり物の無い部屋で
ひとりで寝るのも少し寂しいような気がしていた。

「さあ、寝るぞ」
「あ、はい」ぼんやりしていた拓海の頭をポンポンと軽く叩いて促された。
瀬田の「寝るぞ」の言葉にほいほいとベッドに着いて行く自分ってどうよ?
と自問しながら、拓海は今夜も瀬田のベッドであっという間に眠りに落ちていった。






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